不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません？

ダイン 監獄都市編

お前……まだ出番があったのか！？

「ああ、くそっ……こんな事、いつまで続ければいいんだよ」
「囚人共にやらせるわけにはいかないから仕方ないだろうが……」
「ちくしょう、この調子だと今年中はずっとこんな作業ばっかりやらされそうだな……おい、そこのお前等！！見せ物じゃねえんだぞ！！さっさと行きやがれっ！！」


地面にへたり込んでいる兵士達は馬車に乗っているダイン達を見て悪態を吐き、見るからに全員が自分達の作業に不満を抱いている様子だった。日頃から囚人を働かせてばかりいたために自分達が作業する側になるとすぐにへばってしまうらしい。


「あんなのは無視して先に行きましょう。普段から真面目に働いていればこんな目に遭わずに済んだんですよ」
「ちょ、声が大きいって……聞かれたらどうするんだよ！？」
「大丈夫ですよ、そんな事よりもほら……あそこが試験場のようですね」


ミイネが前方を指差すと、ダインは彼女が指し示す方向に視線を向けるとそこには兵士の宿舎が存在した。まさか宿舎で試験が行われるのかダインは驚いたが、彼女が示しているのは宿舎の前に存在する大理石で構成された闘技台だった。

どうやら宿舎の前に兵士の簡易ではあるが兵士の訓練施設が用意されているらしく、その場所には既に十数名の囚人の姿があった。どうやら彼等も試験を受ける側の人間らしく、最後に訪れたのがダイン達らしい。


「お前達、集合時間ぎりぎりだぞ！！試験を受けるのなら早く来い！！」
「すいませんね、ではダインさん。頑張ってください」
「ギギィッ(応援してるぜ！！)」
「ううっ……やるしかないのか」


石畳製の闘技台の前に立っていた看守に声をかけられ、ここまで来た以上は覚悟を決めるしかなく、ダインは杖を片手に馬車を降りる。だが、ここでダインは集まっている囚人達に視線を向けてある人物に気付き、驚きの声を上げる。


「あれ、お前は……確か、僕にちょっかいをかけた大男！！名前は……そうだ、マケイヌ！！」
「ケマイヌだ！！ぶっ殺されてえのか！？」
「やかましいぞ！！これ以上に無暗に騒げば失格にするぞ！！」


闘技者の試験を受ける囚人の中には昨日にダインに殴り飛ばされて気絶したケマイヌも含まれており、彼はダインに気付くと怒りを露にするが看守に怒鳴りつけられて渋々と大人しく引き下がる。どうやらケマイヌも闘技者の試験を受けるためにここへ訪れてきたらしく、ダインは嫌な表情を浮かべた。


「お前、あの偉そうな奴の下っ端じゃなかったのか……なんでこんな場所にいるんだよ」
「うるせえ、前に怪我を負って試合に出場しなかったせいで闘技者の資格を剥奪されたんだよ……そういうてめえこそ、なんで生きてやがる。ガルルのお頭に殺されてなかったのか？」
「ガルル？ああ、昨日の巨人族の男か……あいつなら懲罰房行きにしてやったよ」
「な、何だと！？」
「だからうるさいと言っているだろう！！次に騒げば本当に失格させるぞ！！」


ダインはケマイヌの隣に並ぶと話を聞く限りではケマイヌはガルルが昨夜に懲罰房に送り込まれた事を知らないらしく、彼はここにいるのは闘技者に返り咲くためらしい。経緯は不明だがケマイヌは闘技者だったらしいが、怪我が理由で試合に出場できず、資格を剥奪されたのでもう一度試験を受けなおしにきたらしい。

この闘技者の試験は月に一度の割合でしか行われず、しかも一度でも試合を出場しなければ強制的に闘技者の資格を剥奪される規則があるらしい。その事はダインも初めて知り、これで闘技者になっても試合が決まれば必ず出場せざるを得ない。


「よし、全員集まったな！！それではこれより試験を行う前に闘技者の規則を説明する！！しっかりと聞いておけ、一度しか言わないからな！！まずは――」


看守の説明が始まり、最初に試験を受ける際に囚人は闘技者の規則を教わる事が義務付けられている。簡単に規則を纏めると、以上の３つが規則となる。


――――――――――

１．闘技者は必ず試合に出場しなければならない。どのような理由があろうと試合が決まれば出場しなければならず、病気や怪我であろうと欠場は認められない。これを破った場合は闘技者の資格を剥奪される

２．試合の際に使用する武器や防具は訓練場に用意された代物、自作した武器や道具を使っても構わない。但し、武器や防具の管理は兵士が行い、兵士区から抜け出す際は自分が制作した武器であろうと持ち帰る事は許されない

３．観客の要望によっては試合の対戦相手は外の世界から連れ出した人物と戦う場合、殺す事は許されない。但し、囚人同士や魔物との対戦の場合は相手を殺害する事を許可する。降参を申し出たとしても相手が受け入れない限りは認められず、仮に気絶したとしても試合は続行される

――――――――――


この３つの規則が闘技者が必ず守らなければならない規則であり、この規則を故意に破った場合は闘技者の視覚を剥奪されるか、最悪の場合は兵士に処刑される事を看守は説明した。