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ダイン 監獄都市編

ひいっ!!もう僕、家に帰るぅっ!!

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「――ひいいっ!?こっちに来るなよ!!」
「おい、ちょこまかと逃げるな!!」
「くそ、こいつ足だけはやたらと早いぞ!!」
「そっちに回り込めっ!!」


監獄都市の宿舎内にて囚人の怒声とダインの悲鳴が響き渡り、部屋を出た途端に待ち伏せしていた囚人達からダインは逃げ惑う。彼等は昨夜にダインに絡んできた囚人達であり、自分達の頭が懲罰房に送り込まれたため、彼に復讐するために朝から待ち伏せしていた。

宿舎内にて複数人の囚人に追い掛け回され、必死に逃げ惑うダインであったが、ここで外に繋がる窓の方からゴブが顔を出すとダインを呼びかける。彼はどうやら既に外側に移動していたらしく、窓を開いてダインに逃げる様に促す。


「ギギィッ!!」
「あっ、お前……そんなところにいたのか!?」
「ほら、何してるんですか!!早く出てください!!」


ゴブの傍にはミイネの姿も存在し、二人の元にダインは駆け込むと窓枠を乗り越えて外へ飛び出す。他の囚人達が追いつく前に窓を閉めて身を伏せると、廊下の方で囚人の怒鳴り声が響く。


『くそ、あの野郎何処に消えた!?』
『探せ!!ここら辺に隠れているはずだ!!』
『よくもうちの頭と兄貴を嵌めやがったな……ぶっ殺してやる!!』


宿舎の方から聞こえてくる怒声にダインは顔色を青くしながらも身を隠してやり過ごし、やがて聞こえなくなるとミイネとゴブも安堵の表情を浮かべ、無事に逃げ延びる事が出来たダインの方を掴む。


「全く、だから言ったじゃないですか。もうダインさんは狙われている立場なんだから、無暗に一人で行動したら駄目だって……」
「用を足しに行こうとしただけだよ!!というか、こんなに騒ぎになっているのに看守の奴等は何をしてるんだよ!?」
「日中の間は宿舎にいる看守も労働作業を行う囚人の監視の任務が与えられているから、必要最低限の人員しか配置されていません。それに兵士が偶然いたとしても見て見ぬふりをすると思いますよ。囚人の中には兵士に賄賂を渡して大人しくさせている人も多いですからね」
「どんだけ腐ってるんだよ、この都市は……」
「ギギィッ(これからは一緒にいた方がいいぜ、新入り)」


厠に行くだけでも命の危機に晒された事にダインは頭を抱えるが、嘆いている暇などなく、ミイネはダインの腕を引いて闘技者になるための試験を受けるため、彼を試験場へと連れていく。


「さあ、落ち込んでいる暇はありませんよ。闘技者になるために試験場へ行きましょう。場所は兵士区です」
「へ、兵士区?でも、そこは囚人が立ち入るのは禁止されているんだろ?」
「大丈夫です、闘技者の試験場は兵士区にあるので試験を申し込んでいれば入る事が出来ます。僕もダインさんの主人なので特別に入れる許可は貰っていますから、行きましょう」


以前に兵士区は囚人が入り込めば容赦なく殺害されると聞いていただけにダインは不安を抱くが、闘技者になるためには兵士区に存在する試験場に向かわなければならず、ミイネとゴブと共にダインは兵士区へと向かう――





――都市という名前が付けられているだけに監獄内は非常に広く、その規模はバルトロス王国の冒険都市にも匹敵する。かつては王都として栄えていた冒険都市と同規模の大きさを誇る監獄など世界中を探してもここにしか存在しない(但し、監獄島などの特別な環境下に存在する監獄は除く)。

兵士区に向かうためだけにダインはミイネが事前に兵士に話を通して借りた馬車に乗り込み、囚人区から兵士区へと移動を行う。各区域には金網が設置されており、出入口以外から入れないように設計されている。


「ほら、ここが兵士区ですよ。こんな機会じゃないと入れませんし、よく見ておいた方がいいですよ」
「ここが兵士区……何か、思っていたよりも殺風景だな」
「ギギィッ」


ゴブが馬車を運転する間、ダインは兵士区の様子を伺うと驚くほどに殺風景な光景が広がっていた。監獄都市で暮らす兵士の区画というから兵士が鍛える器具が揃えられた訓練場のような場所を想像していたが、予想に反して兵士区に存在するのは兵士が暮らすための宿舎程度しか存在せず、他の場所は荒れ果てた地面だけが広がっていた。


「前にも話しましたけど、1年ほど前に監獄都市内に存在した5つの区画が4つになった事でそれぞれの区画が改築工事が行われました。この兵士区は他の三つの区の中でも改設中なんですよ」
「ああ、だからさっきから兵士が資材を運んでいるのか……」


ミイネの言葉を聞いてダインは首を回すと、大勢の兵士が荷車を利用して木材などを運び込み、兵士区内にて建設作業を行っていた。宿舎はどうにか完成したが、他の設備に関してはまだ作り出せていない状況らしく、作業区で加工済みの資材を運び出しているらしい。


「兵士区には囚人は入れませんから、作業を行うのは兵士だけです。間違っても囚人に作業を手伝わせたら兵士区の内部情報が漏れる可能性がありますからね。だから普段は偉そうに囚人をこき使う看守もああして真面目に汗を働いて働いているんですよ」
「僕の眼には真面目に働いているどころか、へばってるようにしか見えないんだけど……」


ダインの視線の先には大勢の兵士が地面に座り込み、疲れ切った表情を浮かべていた。普段からきつい作業は囚人に任せきりだったため、いざという時に自分達が身体を動かすと体力がすぐに切れて疲れて動けない様子だった。
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