不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません？

カタナヅキ

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ダイン　監獄都市編

僕に闘技者なれって！？

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「ちょ、ちょっと待てよ！！明日から普通の仕事を受けられないなら僕達はどうやって生きてくんだよ！？金も使い切ったから明日の朝食も食べられないんだろ？」
「配給用のパンぐらいは食べられますよ。まあ、おかずを買うお金はありませんけど」
「おいおい、大丈夫かよ……」
「大丈夫じゃないからダインさんには明日からバリバリ働いて貰いますよ。僕の用心棒兼……闘技者としてね」
「と、闘技者？そういえばさっきもそんな事を言っていたような……」

闘技者という言葉にダインは戸惑うと、改めてミイネは闘技者の説明を行う。この監獄都市では都市の外に存在する闘技区に入れる囚人が存在し、その者達は闘技者と呼ばれる特殊な役割を任される職業だった。

「闘技者は闘技場、ダインさん達が戦った「死合場」と呼ばれる闘技台で戦います。観客はこの監獄都市に暮らす囚人や看守、あるいは外部から訪れ奴隷商人や傭兵、あるいは国の将軍が訪れます」
「まさか、あの闘技場で戦わされるのか！？」
「そういう事ですよ。闘技者となった囚人は一定の期間ごとに必ず試合に出場する義務を与えられます。この試合というのが他の囚人との対戦だけとは限らず、時には捕獲した魔物や観客が連れてきた対戦相手と戦う事もあります」
「そんな事をして何になるんだ？囚人が痛めつけられるのを見て喜ぶ奴等がいるのか？」

ミイネの言葉を聞いてマサルは闘技者という職業の意味が分からず、いくら死刑囚とはいえ、危険な魔物と囚人を戦わせる様を見るなど褒められた事ではない。だが、ミイネによると闘技者はこの監獄都市で収監される囚人にとって外の世界に出られる可能性を秘めた職業だという。

「闘技者は外の世界から訪れた観衆の前で戦います。もしも観客の中に闘技者を気に入った者がいたら、場合によっては奴隷として買収し、この都市から連れ出される可能性もあります」
「外の世界に！？」
「それは本当ならば……確かに闘技者になりたがる者も多いじゃろうな」

試合で活躍すれば闘技者は観衆から注目を浴び、場合によっては外の世界の人間が奴隷として闘技者を購入し、外の世界へ連れ出す可能性もある。実際に過去に何度か本当に囚人が買収された事があるため、腕に自信のある人間はこぞって闘技者になる事を希望する。

しかし、闘技者は監獄都市で受けられる仕事の中でも一番に死亡率が高く、どれほどの腕自慢であろうと対戦相手が狂暴な魔物や、観客が外の世界から連れてきた屈強な戦士の可能性もある。仮に奴隷として購入されても罪を許されて自由になったわけではなく、その後の人生は奴隷として過ごさなければならない。

「奴隷として購入されればこの監獄都市から抜け出す事が出来ます。ですけど、必ずしもそれが幸せとは限りませんよ。ここから解放される時は服従の腕輪を装着され、主人には支配の指輪が渡されますから主人に逆らう事も出来ません」
「何だよそれ……じゃあ、外の世界に連れ出されても僕達は不自由のままなのかよ」
「いいえ、仮に奴隷として連れ出されたとしてもこの監獄都市で暮らすよりも逃走できる可能性もあります。場合によっては主人に気に入られたら奴隷の身分から解放されるかもしれませんし、あるいは国の将軍や傭兵なら奴隷としてではなく、兵士や仲間として最初から受け入れられる事もあるそうです」
「そ、そうか……そっちの方もきつそうだが、奴隷じゃないだけマシか」
「しかし、儂のような年寄りでは闘技者になるのは無理そうじゃの……流石にあんな化物に襲われては今度こそ真てしまうかもしれん」

ミイネの説明にマサルは納得するが、ドルトンの方は疲れた表情でため息を吐き出す。彼の様に年を取って肉体が衰えた老人では闘技者になる事さえも出来ない。しかも厄介な事に闘技者になるためには試験も受ける必要があるという。

「闘技者は人気が高い仕事ですからね。仕事の規定人数が設けられています、だけど実は先日に１名の闘技者が試合中に亡くなった事で空きが出来ました」
「空き？おい、待てよ……まさか、僕にその試験を受けて闘技者になれってのか！？」
「その通りですよ。ちなみに試験に合格した物は看守から三角銀貨５０枚も渡される事が約束されてます」
「ぎ、銀貨５０枚……」

闘技者になるだけで普通に暮らすだけなら半月近くは食事に困らずに済む三角金額が渡され、これだけの大金を得る機会は早々になく、しかも闘技者として活躍すれば更に稼げる可能性もある事をミイネは伝える。

「闘技者に合格して試合に勝てば最低でも三角銀貨２０枚が支払われます。試合で目立つ勝ち方をすれば外の世界の観客から注目を浴び、もしかしたら外の世界に連れ出してくれるかもしれませんよ」
「う、ううっ……でも、あんな危険な事を何度もやらされるのか？」
「おい、止めとけよ坊主……お前さんだって試合の後、大変だっただろ？」
「また、あんな化物と戦うかもしれんのだぞ。命は大事にした方がいいぞ、若いの……」

マサルとドルトンの言葉にダインは黙り込み、ミイネはこの二人を連れ出した事は失敗したかと思った。ここでダインが拒否すればミイネは支配の指輪を利用して無理やりにでもダインを闘技者の試験に受けさせるつもりだった。

ミイネも後がないのは事実のため、もしもダインが闘技者になれない場合、彼女も無事ではすまない。ダインを購入した時点でミイネとダインは運命共同体であり、もう後を引く事は出来なかった。

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