不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません？

ダイン 監獄都市編

僕、明日から生きていけるのかな……

「な、何だよお前等……やる気か！？」
『…………』


ダインは睨みつけてくる男達に杖を構えると、その様子を見て男達は黙って立ち去っていく。何事もなく彼等が引いてくれた事にダインは安堵するが、周囲の囚人達が自分に視線を向けている事に気付く。

一部始終を見ていた囚人達はガルルが看守に急に殴りつけてきた理由はダインが何かをした事は察しており、警戒するような視線を向けていた。自分が注目している事に気付いたダインは戸惑うと、ミイネが肩を掴む。


「少しばかり目立ちすぎましたね……今日の所はもう帰りましょう」
「え？あ、ああ……」
「ギギィッ(行こうぜ)」


ミイネとゴブに腕を掴まれたダインは二人に引き寄せられ、その様子を見たドルトンとマサルは付いていく。もう食堂にいられる雰囲気ではなく、５人はその場を離れた――




――この宿舎内で安全な場所は限られており、ミイネが借りている部屋へと戻ると改めてダインは食事を行う。結局はシチューが台無しになったためにパンしか食べれなかったが、彼に同情して他の者がパンを少しだけ分けてくれた。


「ほらよ、坊主。俺のパンも半分やるよ」
「儂のも少し分けてやろう。年齢のせいか、あまり多くは食えなくなったからのう」
「ギギィッ(ちょっとあげる)」
「あ、ありがとな……でも、パンばっかりだと喉が渇くんだけど」
「水もありますよ。飲みますか？」


ダインは皆の好意に感謝しながらも改めて卓を挟んでミイネと向かい合い、これからの事を話し合う。ミイネによると今回の一件でダインは他の囚人にも知られてしまい、良くも悪くも他の囚人に顔を覚えられてしまった。


「さっきのは流石に少しやり過ぎましたね。まあ、あのガルルが看守に捕まる所を見れたのは爽快でしたけど……」
「何だよ、別にやられたからやり返しただけだぞ？」
「あ、別に怒っているわけじゃないんですよ。ですけど、公衆の面前でダインさんが力を見せたのは色々とまずかったですね」
「おう、そういえばさっきのは何だったんだ？ガルルとかいう野郎が急にあんなことを仕出かすなんて、何をやらかしたんだ？」
「儂も気になるのう」
「それは……」


ドルトンとマサルもダインが何かを仕出かしてガルルを操り、兵士にちょっかいをかけさせたことは理解していた。その方法までは突き止めていないようだが、ダインは説明する前にミイネが注意する。


「ダインさん、ここでは無暗に貴方の力の事は話さない方がいいですよ。誰に対してもです」
「えっ？」
「さっきの一件で貴方はただの新入りの囚人ではなくなりました。あのガルルを嵌めた囚人として、これからは他の囚人にも警戒されるでしょう。勿論、ガルルからも恨みを買いました」
「それが問題なのか？別にいいんじゃないの？坊主の力を知れば他の奴等もちょっかいをかけてこないだろう？」
「確かにそう考える人も少なからずいるでしょう。だけど、必ずこのように考える人も現れます。自分の脅威となる前に消した方がいいと……ね」
「け、消す！？僕、消されるのか！？」


ダインはミイネの言葉に驚き、彼女の声音は真剣そのもので決してふざけてはいなかった。先ほどの一件だけで自分の事を消そうとする囚人が現れるという事にダインは震え上がった。

ガルルは監獄都市内の囚人の派閥の中でも相当に大きな存在らしく、普段ならば看守でさえも彼を恐れて無暗に近づこうとはしない。だが、今回の一件でダインはそのガルルを嵌めた事により、完全にガルルの派閥を敵に回した。


「前々から僕はガルルに目を付けられていましたが、奴の配下にちょっかいをかけられる事はあっても直接にガルルに狙われた事はありません。ですけど、ダインさんがあそこまでした以上は明日からはガルルの派閥に所属する囚人に目を付けられるでしょうね」
「あ、あいつ……そんなにやばい奴なのか？」
「囚人の間ではガルル、ゴウキ、ヤバンの３人は「三巨頭」と恐れられるほどの存在です。特にガルルは他の二人と比べて配下の数は少ないですが、自身の腕力だけでのし上がった男です」
「三巨頭！？僕、そんなやばそうな奴に喧嘩を売ったの！？」
「おいおい、大丈夫か？そんな奴等に目を付けられて……」
「大丈夫なわけはないでしょう。恐らく、明日からは普通の仕事は受けられませんよ。ガルルの配下が所属する仕事に参加すれば何かされるか分かりませんからね」


ミイネの言葉にダインは表情を青ざめ、まさか自分に喧嘩を売ってきた相手がそれほど危険な存在だとは思わず、しかもダインの好意によって懲罰房に送り込んでしまった。今更謝罪しようとガルルが許すとは思えず、目を付けられてしまった。

だが、今更後悔した所で遅く、先に手を出してきたのはガルルである事からミイネもダインを攻めるような真似はしない。そのため、彼女は明日からダインに受けさせるはずの仕事内容を伝える。





※ダイン「更新遅れてるじゃないか！！」( ﾟДﾟ)つ))Д｀)ﾊｸﾞｯ！？