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ダイン 監獄都市編

僕の過去は……

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――幼少期、まだダインが公爵家で暮らしていた頃、彼はよく地下に閉じ込められていた。正確に言えば地下で育てられていたという方が正しい。ダインは生まれた時に彼が「呪術師」ではなく、闇魔導士である事が原因であった。シャドウ家の男児は殆どが呪術師として生まれるのに対し、彼だけは闇魔導士として生まれた。

基本的にはこの世界の人間は二つの職業を持ち合わせているが、ダインの場合は一つしか職業を持たない「固有職シングル」であり、彼は闇魔導士以外の職業は覚えていなかった。そのせいで父親はダインの母親が浮気し、闇魔導士の人間との間に出来た子供ではないかと疑い、彼の母親とダインを毛嫌いしていた。

ダインの母親は決して浮気などもしておらず、シャドウ家の先祖の中には呪術師の称号を持ち合わせていない男性も少なからず存在した。それでも父親はダインが自分の息子なのか疑い続け、彼の事を碌に愛そうとはしなかった。母親が生きている間はダインも色々と気にかけて貰えたが、結局はその母親も彼が8歳の頃に心労がたたって病にかかり、死んでしまう。

母親が死んでから頼れる存在もいなくなり、彼は公爵家の人間として生まれながらに奴隷同然のように酷い日々を送る。しかも母親が死んでからは父親はダインの事を冷遇し、彼が逆らえないように服従の腕輪を装着させ、自分に逆らえないようにした。

そんな日々を送りながらダインは家を抜け出す事を決めたのは10才の時だった。この年齢に至るまではダインは影魔法も碌に扱えなかったが、肉体がある程度まで成長すると彼も影魔法を操れるようになり、ある時に服従の腕輪を外された後、彼は屋敷から脱走した。逃げる時はシャドウ家の人間が馬鹿にしていた影魔法を利用すると、割とあっさりと逃げ出す事が出来た。

シャドウ家は逃げ出したダインの事に関しては気にも留めず、それどころか彼が消えた後に病で死んでしまったという噂を流し、拍子抜けする彼等はダインを追いかけるどころか探す事もせずに放置する。子供のダインが外の世界に出た所で生き延びる事も出来ないと思い込み、結局は放置する。



オウネンはダインが外の世界で生き延びている事を知っていたが、彼を放置していたのはのためであり、オウネンの標的はダインではなく彼の父親だった。オウネンは自分の肉体が維持できないときにダインの父親の肉体を奪い、もしも父親の肉体に何か起きた場合はダインの肉体を狙うつもりだった。つまり、ダインは敢えて見逃されていた事をオウネンと再会した時に知らされる。




王都を抜け出したダインは王都の将軍を止め、冒険者ギルドのギルドマスターに就任していたバルと出会い、しばらくの間は彼女の元で世話になった。年齢が15才を迎えるとダインはバルの元へ離れ、別のギルドへと所属した。この時にバルの元を離れたのは自分自身が彼女に甘えずとも一人で生きていける事を示すためである。

それから数年後にダインはレナ達と出会い、彼等と共に生きてきた。レナが自分と同じように幼少期に家を抜け出したという話を聞いた時は既視感を抱き、彼の元を離れられずに楽しく過ごしていた。それなのに唐突に監獄都市に送り込まれ、少女の囚人に買われる羽目になってしまう。


(くそっ……こんな腕輪、絶対に外してやる)


ダインは忌々し気に自分の腕に取りつかれた「服従の腕輪」に視線を向け、この腕輪は力ずくでは引き剥がせない。この腕輪を解除する方法は「支配の指輪」を所持している人間しか解除できず、仮に力ずくや魔法の力で壊そうとしても破壊できない。

子供の頃に散々にダインは服従の腕輪を外そうとしたが、石で叩いてもびくともせず、壊そうとする度に腕輪が発熱して火傷を負う。しかも厄介な事に支配の指輪を所持する人間と一定の距離を離れるとこの腕輪は自動的に締め付けるため、あまりに離れすぎると腕が引きちぎられかねないくらいに締め上げられる。

腕輪から逃れる方法は支配の指輪の持ち主に解除させるか、あるいは腕を切り落とす以外に方法はない。これがレナならば錬金術師の能力で解除出来ただろうが、生憎とダインには彼のような真似は出来ない。


(とりあえずはこのチビのいう事に従うか……絶対にこの腕輪を外して僕は皆の所に戻るんだ!!)


今頃はきっと他の仲間達が自分の事を探しているとダインは信じて疑わず、皆の元へ戻るために彼はしばらくの間は少女のいう事を聞く事にした。流石に腕を切り落としてまで逃げようとは思えず、今のところは少女に従い、服従の腕輪を解除させる機会をダインは伺うしかない。

そんな彼の考えを読み取ったのか、少女はダインを見てわざとらしい笑顔を浮かべ、その表情を見てダインはしかめっ面を浮かべる。顔立ちは整っているのだがいかんせん年齢が若すぎるため、ダインからすれば生意気な子供にしか見えない。恐らく年齢は13か14才ぐらいだろうが、看守の兵士に敬語を付けられるぐらいに立場の強い事から普通の囚人ではないのは明らかだった。
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