不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

文字の大きさ
上 下
1,111 / 2,085
真・闘技祭 本選編

剛力の使い手同士

しおりを挟む
「くぅっ……魔鎧術、覚えておいて助かりました」
「なるほど、全身に魔力の鎧を作って防いだのか……やるじゃん」


ジャンヌは起き上がると、彼女は微量ではあるが全身に紅色の魔力を纏い、多方面からの風の斬撃を防いだ事が発覚する。彼女が得意とする土属性は「重力」を司る魔法のため、重力の鎧によって風の斬撃を最小限の威力に抑えて耐え切った事が判明した。

どうにか起き上がったジャンヌではあるが、彼女の魔力量はそれほど多くはなく、既に体力はかなり削られていた。シズネやレナのようなエルフや人魚族の血筋でもなく、魔術師の職業ではない彼女では魔鎧術や魔刀術は肉体の負担が大きい。

しかし、魔力が少なくといっても工夫すれば魔力量に勝る相手にも勝つ事は不可能ではない。ジャンヌは旋斧を構えると、近くに存在したゴンゾウへ向けて駆け出す。


「はああっ!!」
「ぬうっ!?」


ゴンゾウは接近するジャンヌに対して両腕を構えると、闘拳で彼女の旋斧の刃を防ごうとした。それに対してジャンヌは両手に握りしめた旋斧を握りしめると、攻撃の瞬間に魔刀術を発動させ、紅色の魔力を帯びた刃がゴンゾウの闘拳に衝突する。


「うおっ!?」
「せいやぁっ!!」


ジャンヌの繰り出した攻撃によってゴンゾウは後方へと押し込まれ、石畳の床にゴンゾウが踏ん張った足の焦げ跡が生まれる。その光景を見ていた実況席のホネミンや観客席の者達は驚愕の声を上げる。


『ふ、吹っ飛んだ!?本選の出場者の中でも重量級のゴンゾウ選手の身体を人間であるジャンヌ選手が吹っ飛ばしました!!』
『信じられません!!なんて腕力でしょうか!?』
「す、すげえっ……」
「あれが剣聖の実力なのか!?」


旗から見ればジャンヌの怪力でゴンゾウが押し込まれた様に見えるだろうが、実際の所はジャンヌは攻撃の際に魔刀術を発動させ、自分の武器に重力を加えて攻撃をした。彼女の所有する旋斧は普通の剣と比べても相当な重量が誇り、更に重力を増加させた事で巨人族さえも吹き飛ばす威力を生み出す。

ゴンゾウはジャンヌの攻撃に驚き、同時に高揚感を抱く。強者を前にしたゴンゾウは戦士としての本能で喜びを隠しきれず、遂に力を解放する事にした。巨人族の中でも一部の者にしか扱えない「鬼人化」を彼は発動させた。


「うおおおおっ!!」
『こ、これは!?ゴンゾウ選手の血管が浮き上がり、肌が赤くなりました!!』
『うわわっ!?ま、まさかこれが噂に聞く鬼人化ですか!?』


鬼人化によって肉体の限界まで能力を上昇させたゴンゾウの姿に観衆は動揺し、一方でレナはゴンゾウと向かい合う。この状態でのゴンゾウと戦った事はないが、鬼人化という言葉にレナは引っかかりを覚え、挑発を行う。


「鬼人化ね……なら、俺も「剣鬼」として相手をするよ」
「……望むところだ!!」


レナは瞳の色を紅色へと変色させると、彼が本気で戦おうとしていることを察したゴンゾウはレナと向かい合う。ゴンゾウが両手の闘拳を構えると、レナは鏡刀に視線を向けてこれでは分が悪いと判断する。下手に鏡刀で受けるとゴンゾウの攻撃力ならば破壊されかねず、鏡刀を鞘に戻したレナは掌を地面に押し付ける。

唐突に試合場の膝を突いたレナの行動に誰もが戸惑う中、彼は意識を集中させると錬金術師の「形状高速変化」を発動させ、剣の形をした「石の剣」を作り出す。更に石の剣を手にしたレナは魔鎧術を発動させ、剣の表面に青色の炎を纏わせた。


「よし、こんなもんか」
『なな、何が起きたんでしょうか!?レナ選手の目の前で唐突に剣が出現したかと思うと、今度は全体が炎に染まりました!!というか、レナ選手は熱くないんでしょうか?』
『あれも錬金術師の能力ですよ。レナ選手の持っている刀では出来ない芸当ですからね』


鏡刀では魔刀術は発動する事は出来ないため、新しい武器を作り出す必要があった。改めて左手に退魔刀と右手に蒼炎を纏った剣を手にしたレナはゴンゾウと向かい合うと、二人は同時に繰り出す。


「行くぞ、レナぁああああっ!!」
「来いっ!!ゴンゾウ!!」


二人は同時に駆け出すと両手の武器を振りかざし、互いに全力の一撃を繰り出そうとした。しかし、そんな二人の間に割り込む影が存在し、両手に旋斧を握りしめたジャンヌが割って入る。


「私を……無視しないでくださいっ!!」
「うおっ!?」
「ぬうっ!?」


両手に握りしめた旋斧を利用してジャンヌは自分の身体を軸にして回転を行い、まるでベーゴマの様に高速回転する事で遠心力を加えた攻撃を放つ。咄嗟にレナとゴンゾウは防ぐ事に成功するが、その衝撃を受けて身体が大きく仰け反り、距離を取る。

ジャンヌは遂に得意とする「回転」の戦技を発動させ、さらにこの状態から彼女は魔刀術を発動させる。紅色の魔力を纏った旋斧を両手に掲げながらジャンヌは二人に猛攻を仕掛けた。
しおりを挟む
感想 5,090

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

月が導く異世界道中

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  漫遊編始めました。  外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました

taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件 『穢らわしい娼婦の子供』 『ロクに魔法も使えない出来損ない』 『皇帝になれない無能皇子』 皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。 だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。 毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき…… 『なんだあの威力の魔法は…?』 『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』 『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』 『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』 そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。