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真・闘技祭 本選編

シズネVSキバ

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『それではこれより第五試合を行います!!両選手、既に試合場に登場していますね!!』
『おおっ!!次の試合は青の剣聖のシズネ選手ですか!!対する相手は……獣人国の国王であるキバ選手だ!!』


試合場には雪月花と白百合を腰に差したシズネと、獣人国の代表選手にして現役の国王であるキバが向かい合う。シズネは一国の王であるキバを前にしても態度は崩さず、それどころか少し拍子抜け表情を浮かべる。


「初戦の相手がまさか貴方とはね……」
「やあ、シズネちゃん。元気?前にうちの国でも活躍してくれたよね~」
『おっと!?これは意外、どうやらシズネ選手とキバ選手はお知り合いのようです!!』


傭兵であるシズネは獣人国にも赴き、実はキバとも面識があった。彼がまだ国王に就任する前に顔を合わせた事があり、その時はシズネは彼の元で一時期働いていた事がある。


「キバ国王……いいえ、今はキバと呼ばせてもらうわ。貴方では私に勝てない、棄権をお勧めするわ」
「そういうわけにもいかないんだよね~こう見えて、僕って王様だから……無様な姿は見せられないんだよ。シズネちゃんこそ棄権したら?今なら君のお気に入りの王子様に慰めてもらえるかも知れないよ」
「そう、なら全力で来なさい。叩き潰してあげるわ」
「ははは、お手柔らかに……」


二人とも表面上は普通に接しているが、言葉の端々に挑発と捉えられる言葉を告げる。互いに視線を交わして火花を散らし、その気迫を感じ取ったのか試合の合図の鐘が鳴らされる。


『では……試合開始ぃっ!!』
「刺突!!」
「牙斬!!」


試合が始まった瞬間、シズネは雪月花を抜いて突きを繰り出すと、キバは両腰に掲げていた短剣を引き抜き、それをシズネの放った刃を受け止める。金属音が鳴り響き、キバは後方へと対比すると、笑みを浮かべて短剣を両手に構えた。反対にシズネの方は眉を顰める。

キバは短剣を逆手に持ち直してシズネの様子を調べるが、彼女は何を考えたのか雪月花を鞘に戻すと、黙って立ち尽くす。その光景に観衆は戸惑い、キバも武器を収めたシズネに疑問を抱く。


「あ、あれ……シズネちゃん?試合、始まってるよ?」
「……もう終わってるわよ」
「えっ……」
「貴方、自分の武器がどうなっているのかも見えないの?」


シズネの言葉にキバは自分の両手の短剣に視線を向けると、いつの間にか短剣の刃が凍り付いており、やがて刃が砕けてしまう。その光景を見た観客は驚愕の表情を浮かべ、一方でキバの方は武器を失い、冷や汗を流す。そんな彼に対してシズネは淡々と告げた。


「貴方、武器無しで私に勝てると思ってるの?」
「はははっ……参ったね、こりゃ。降参するよ」
『そ、そこまでぇっ!!勝者、シズネ選手です!!』
『えええっ!?早い、早いですよ国王様ぁっ!!』


あっさりとキバは降伏を宣言すると、試合は終了してシズネの勝利となる。その光景をみていたラビットは呆れた声を上げ、獣人族の観客は非常に落胆する。その様子を見届けた他の観衆も唖然とするが、特等席のデブリは頭を抱える。


「全く、なんという試合じゃ……試合開始前の話の方が長かったではないか」
「……素晴らしい、あの魔剣を完璧に使いこなしている。これは盲点でしたね、胸が少々心許ないので声を掛けませんでしたが、彼女も十分に私の妻として相応しい人材……いや、やはり胸が小さすぎますね」
「……その言葉、絶対に本人に言っては駄目よ」


ヨシテルの言葉にマリアが反応し、流石の彼女もシズネに同情する。当のシズネ本人がヨシテルの言葉が聞こえていれば間違いなく彼を氷漬けにしただろう――





――試合時間の最短記録をシズネが更新した頃、通路の方では既に次の選手が待ち構えていた。次の試合に登場する予定のミナは城門の前で軽く運動を行い、自分の対戦相手が何者かと内心では緊張していた。


(ふうっ……集中、集中!!必ず次の試合に勝つんだ!!)


ミナは精神を集中させるように槍を握りしめ、気合を込めるように頬を叩く。そして城門が開かれるのを待っていると、ここで後方の通路から足音を耳にする。


(あれ……僕の試合の次の人がもう来たのかな?)


足音を耳にしたミナは不思議に思って振り返ると、そこには通路の奥の方から近づく人影を発見し、何者かと戸惑う。まだ自分の試合が始まる前にもう次の試合の選手が訪れたのかと思ったが、姿を現したのは思いもよらぬ人物だった。


「あれ、君って確か選手の……!?」
「…………」


姿を現した人物を見てミナは驚き、どうしてこの場にいるのかと戸惑うが、そんな彼女に対して現れた人物はゆっくりと手を伸ばす――





――それから1分もしないうちにシズネが城門を潜り抜けると、通路にて倒れているミナを発見する。彼女は驚いた表情を浮かべてミナに駆け寄ると、ミナが深手を負って倒れている事に気付く。いったい何があったのか通路内には彼女の血が広がっていた。
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