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真・闘技祭 本選編
本選開始1時間前
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――翌日、改築された本選会場改め「第二闘技場」には多くの観客が押し寄せていた。観客の中には他国から訪れた観光客も多く、更には各国の王たちも集まっていた。その中にはマリアも存在し、彼女はアイラと共に並んで闘技場の様子を伺う。
「あら?前の闘技場とは試合場が大きく変わったわね。周囲が水堀になっているわ」
「あの水堀が場外らしいわ。あそこに落ちた選手は失格扱い、だけど水堀に完全に身体が沈む前ならば復帰は許されるそうよ」
「それは面白いわね、ああ……血が疼くわ。やっぱり、私も出るべきだったかしら」
「御二人、あたしも座っていいかい?」
観客席の最前列にある特等席に座っていたアイラとマリアの元に頭に包帯を巻いたバルが訪れ、彼女の姿を見て二人は驚く。バルは少し気まずそうな表情を浮かべてマリアの隣に座ると、彼女に謝罪した。
「悪いね……色々とお膳立てをしてもらったのにこんな有様で」
「それは構わないけれど、いったいどうしたのよ、その怪我は?」
「バルちゃん、まさか喧嘩!?もう駄目じゃない、ギルドマスターになったんだから喧嘩はほどほどにしないと……」
「いや、違いますよ!!シズネの奴に頼まれて相手をしてたんですけど、ちょっと油断して……」
バルはの怪我の具合を見てアイラは心配するが、彼女の話によると試合前にバルはシズネに頼まれて組手を行ったらしく、頭の傷は彼女に付けられたという。別に深手というほどでもないので回復薬や回復魔法を使わずに自然に治るまで待つつもりらしく、バルは大きなため息を吐き出す。
あまり接点のないように思われるバルとシズネだったが、昨日にバルの元にシズネが訪れ、レナやゴウライと同じく大剣を扱う剣士である彼女にシズネは練習相手として対戦を申し込む。バルとしても本選に出場できなかった手前、少しでもナオのために役立ちたいと考えた彼女はバルトロス王国の代表選手でもあるシズネに協力する。
「シズネちゃんと戦って怪我をしたの?」
「貴女、この間は勘を大分取り戻したと言っていたじゃない」
「ああ……ここ最近は大分昔のように身体を動かせるようになったと思ったんだけどね。手も足もでなかったよ、それにあの娘、よりにもよってアイラさんの剣技を一丁前に習得してましたよ」
「私の……はっ!?ま、まさか遂にシズネちゃんもハヅキ家に代々伝わるビキニ流秘奥義、絶天狼抜刀剣を!?」
「いや、その奥義はあたしも知りませんけど!?」
「ビキニ流!?ハヅキ家にそんな剣技が伝わっていたのも私も初耳なのだけど!?」
「……騒がしいな、何かあったのか?」
アイラの発言にマリアとバルが戸惑う中、3人の元にS級冒険者にして予選では惜しくも敗退したムサシが近寄る。彼女の姿を見てバルは驚きの表情を浮かべ、アイラの方も彼女を見て驚く。
「貴女は確か、S級冒険者のムサシ……さん?」
「む、貴女は……元S級冒険者のアイラ殿で間違いないか?」
「ムサシ、久しぶりね。私の事は覚えているかしら?」
「当然だ、マリア殿だったな。貴女の甥と戦った時に顔を合わせたはず」
「へえ、あんたが噂の……」
ムサシはアイラの事を知っており、元S級冒険者にしてマリアと並ぶ実力者として名を馳せていたアイラと会えた事を喜び、握手を求める。最も巨人族と人間では身体の大きさが違うのでアイラは差し出された手に対して苦笑いを浮かべながらも指先を掴む感じで握手を行う。
予選に敗退したとはいえ、代表選手には特別に特等席が用意されており、最前線で試合を観戦できる。ムサシは惜しくもハルナに敗れた後は復帰できずに制限時間内に合格する事が出来なかった。そのため、巨人族は代表選手はギガンとゴンゾウの二人しか勝ち進めず、各国の中では最も合格者が少ない。
「S級冒険者のあんたがまさか予選落ちとはね……あんたみたいな奴が勝ち残れなかったのならあたしが落ちても仕方ないね」
「確か、貴女は剣鬼の後継者と言われたバルか……もう引退したと聞いていたが、予選に出ていたのか?」
「えっ!?あ、いや……も、もしもの話さ!!もしもあたしが出場していたらきっと予選にも勝ち残れなかったんだろうね……」
「貴女、まだ他の人間に気付かれていないと思っていたの……?」
バルの言葉にムサシは疑問を抱くと、慌てて彼女は言い直す。表向きはバルは仮面剣士として出場し、正体を隠しながらも予選に参加していたのだが、結局は力及ばずに予選に落ちてしまった。現役から大分長い期間を離れていた事が原因の一つでもあるが、仮に全盛期の彼女でも予選に勝ち残れたのかは分からない。それほどまでに今回の試合の合格者達は質が高かった。
(さて……ここから先はあんたらに任せるよ。姫様のため、きっと優勝しておくれ)
本選の選手入場の時間を間もなく迎え、これから1時間もしないうちに闘技祭の本選が開始される。試合の組み合わせの発表の前には選手たちが全員登場し、紹介が行われる手はずだった。そしてバルが祈っている間にも観客席に実況兼司会進行役のホネミンとラビットの声が響き渡る。
「あら?前の闘技場とは試合場が大きく変わったわね。周囲が水堀になっているわ」
「あの水堀が場外らしいわ。あそこに落ちた選手は失格扱い、だけど水堀に完全に身体が沈む前ならば復帰は許されるそうよ」
「それは面白いわね、ああ……血が疼くわ。やっぱり、私も出るべきだったかしら」
「御二人、あたしも座っていいかい?」
観客席の最前列にある特等席に座っていたアイラとマリアの元に頭に包帯を巻いたバルが訪れ、彼女の姿を見て二人は驚く。バルは少し気まずそうな表情を浮かべてマリアの隣に座ると、彼女に謝罪した。
「悪いね……色々とお膳立てをしてもらったのにこんな有様で」
「それは構わないけれど、いったいどうしたのよ、その怪我は?」
「バルちゃん、まさか喧嘩!?もう駄目じゃない、ギルドマスターになったんだから喧嘩はほどほどにしないと……」
「いや、違いますよ!!シズネの奴に頼まれて相手をしてたんですけど、ちょっと油断して……」
バルはの怪我の具合を見てアイラは心配するが、彼女の話によると試合前にバルはシズネに頼まれて組手を行ったらしく、頭の傷は彼女に付けられたという。別に深手というほどでもないので回復薬や回復魔法を使わずに自然に治るまで待つつもりらしく、バルは大きなため息を吐き出す。
あまり接点のないように思われるバルとシズネだったが、昨日にバルの元にシズネが訪れ、レナやゴウライと同じく大剣を扱う剣士である彼女にシズネは練習相手として対戦を申し込む。バルとしても本選に出場できなかった手前、少しでもナオのために役立ちたいと考えた彼女はバルトロス王国の代表選手でもあるシズネに協力する。
「シズネちゃんと戦って怪我をしたの?」
「貴女、この間は勘を大分取り戻したと言っていたじゃない」
「ああ……ここ最近は大分昔のように身体を動かせるようになったと思ったんだけどね。手も足もでなかったよ、それにあの娘、よりにもよってアイラさんの剣技を一丁前に習得してましたよ」
「私の……はっ!?ま、まさか遂にシズネちゃんもハヅキ家に代々伝わるビキニ流秘奥義、絶天狼抜刀剣を!?」
「いや、その奥義はあたしも知りませんけど!?」
「ビキニ流!?ハヅキ家にそんな剣技が伝わっていたのも私も初耳なのだけど!?」
「……騒がしいな、何かあったのか?」
アイラの発言にマリアとバルが戸惑う中、3人の元にS級冒険者にして予選では惜しくも敗退したムサシが近寄る。彼女の姿を見てバルは驚きの表情を浮かべ、アイラの方も彼女を見て驚く。
「貴女は確か、S級冒険者のムサシ……さん?」
「む、貴女は……元S級冒険者のアイラ殿で間違いないか?」
「ムサシ、久しぶりね。私の事は覚えているかしら?」
「当然だ、マリア殿だったな。貴女の甥と戦った時に顔を合わせたはず」
「へえ、あんたが噂の……」
ムサシはアイラの事を知っており、元S級冒険者にしてマリアと並ぶ実力者として名を馳せていたアイラと会えた事を喜び、握手を求める。最も巨人族と人間では身体の大きさが違うのでアイラは差し出された手に対して苦笑いを浮かべながらも指先を掴む感じで握手を行う。
予選に敗退したとはいえ、代表選手には特別に特等席が用意されており、最前線で試合を観戦できる。ムサシは惜しくもハルナに敗れた後は復帰できずに制限時間内に合格する事が出来なかった。そのため、巨人族は代表選手はギガンとゴンゾウの二人しか勝ち進めず、各国の中では最も合格者が少ない。
「S級冒険者のあんたがまさか予選落ちとはね……あんたみたいな奴が勝ち残れなかったのならあたしが落ちても仕方ないね」
「確か、貴女は剣鬼の後継者と言われたバルか……もう引退したと聞いていたが、予選に出ていたのか?」
「えっ!?あ、いや……も、もしもの話さ!!もしもあたしが出場していたらきっと予選にも勝ち残れなかったんだろうね……」
「貴女、まだ他の人間に気付かれていないと思っていたの……?」
バルの言葉にムサシは疑問を抱くと、慌てて彼女は言い直す。表向きはバルは仮面剣士として出場し、正体を隠しながらも予選に参加していたのだが、結局は力及ばずに予選に落ちてしまった。現役から大分長い期間を離れていた事が原因の一つでもあるが、仮に全盛期の彼女でも予選に勝ち残れたのかは分からない。それほどまでに今回の試合の合格者達は質が高かった。
(さて……ここから先はあんたらに任せるよ。姫様のため、きっと優勝しておくれ)
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