不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません？

真・闘技祭 予選編

忍の実力

「何だお前ら……ハンゾウの親戚か？」
「ハンゾウだと？あんな小娘と一緒にするな、我等は忍六人衆！！」
「なんか危ない単語が飛び出してきたな！！」


ハンジロウの他に６人の忍者に囲まれたレナは退魔刀と鏡刀を構えると、忍者たちは各々が別々の武器を取り出す。苦無、手裏剣、小太刀、吹き矢、鉤縄、鎖鎌など、忍者らしい武器を取り出す。それを確認したレナは面倒そうにハンジロウに視線を向け、自分と真剣勝負する気ではなかったのかと煽る。


「他の仲間を煙で隠して俺に不意打ちするつもりだったのか？それでも侍か？」
「笑止……どんな手でも勝てばいいのだ！！手段など選んではいられぬ、あの御方を優勝に導くまではな！！」
「あの御方？」
「隙ありっ！！」


会話の最中に吹き矢を構えた忍者がレナに向けて針を放つが、その攻撃に対してレナは軽く身体を動かして回避を行う。それを見た他の者達も動き出し、それぞれの武器を繰り出す。


「いくら剣聖級の実力があるといっても、我等を相手に勝てる可能性は皆無！！行くぞ！！」
「いいから、さっさと来い」
「後悔するなよ！！はあっ！！」


まずは最初に鎖鎌を構えた男がレナに仕掛け、鏡刀を握りしめているレナの左腕に鎖を絡みつかせる。それを確認した忍者は笑みを浮かべるが、すぐに手元に違和感を抱く。


「よし、捕まえた……ぬおっ！？」
「おらぁっ！！」


男がいくら鎖を引っ張ろうとしてもびくともせず、逆にレナは腕を動かすと忍者の身体が引き寄せる。まるで巨人族やオーガ、下手をしたらそれ以上の力で鎖を引き寄せられた忍者は体勢を崩し、そのままレナの元に近付いた瞬間に顎を蹴り飛ばされる。

顎を蹴られた忍者は白目を剥いて地面に倒れ込み、その隙にレナは片腕に絡みついた鎖を無造作に腕を振り払って取り外す。その様子を見ていた者達は驚愕の表情を浮かべ、ハンジロウも冷や汗を流す。


「何という膂力……噂以上の化物か」
「化物って……失礼な奴だな」
「お前達、様子見は無しだ。全員で掛かるぞ！！」
『うおおおっ！！』


鎖鎌を所有していた男が破れた事で忍者たちは全員でレナに仕掛けようとするが、それに対してレナは退魔刀を背中に戻し、鏡刀だけを手にして動き出す。最初にレナは縮地を発動させてまずは手裏剣を構えていた男の背後へと移動を行う。

一瞬で場所を移動したレナに忍者達は驚くが、即座に反応して吹き矢を所有していた男が構える。それを見越してレナは手裏剣を掲げた男の身体を掴み、吹き矢を所有していた男に放り込む。


「どらぁっ！！」
「ぐはぁっ！？」
「ぎゃあっ！？」


レナに投げ飛ばされた男はもう片方の男に叩きつけられて地面に倒れ込み、二人とも白目を剥いて気絶した。本気を出したレナの腕力はゴンゾウにも匹敵し、それだけの力で投げ飛ばされれば無事では済まない。一方で他の３人忍者とハンジロウは瞬く間に３人の忍者を倒したレナに脅威を抱く。


「ば、馬鹿なっ！？三郎と四郎まで！？」
「えっ、お前ら兄弟だったの？」
「くそっ……こうなったらお前達は下がっていろ！！俺がやるっ！！」


ハンジロウは刀を構えると、レナに向けて接近して刃を振りかざす。その攻撃に対してレナは後ろに飛んで攻撃を回避すると、ハンジロウは懐から小袋を取り出して中に入っていた「撒菱まきびし」をばら撒く。

辺り一面に撒菱が広がった事で足場に気を付けなければならず、これでは気軽に縮地を発動する事は出来ない。その事でハンジロウは笑みを浮かべ、レナに刀を向けた。


「どうだ、これで貴様も本気で動く事は出来まい！？」
「お前さ……馬鹿だろ」
「何っ！？」
「自分が戦っている相手がただの剣士だと思っていたのか？」


レナはハンジロウの行動に心底呆れかえり、右腕を伸ばす。その光景にハンジロウは戸惑うが、すぐに彼はレナの「風の聖痕」に気付き、嫌な予感を浮かべた。実際にこの数秒後に彼は聖痕の力を思い知らされる事になる。

風の聖痕を発動させてレナは周囲に存在した風の精霊の力を借りると、腕に竜巻の如く風の魔力を纏わせ、地面に散らばった撒菱を全て吹き飛ばす。その結果、ハンジロウと忍者達の元に無数の撒菱が襲い掛かり、彼等は悲鳴を上げて自分の身体に突き刺さる撒菱にもがき苦しむ。


『ぎゃあああっ！？さ、刺さったぁっ！！』
「お前ら……中々面白かったよ！！」


ハンジロウと忍者達がコントのような苦しみ方をしている間、レナは退魔刀を振りかざして身体を一回転させ、一気に４人を吹き飛ばす。空中に吹き飛んだ男達はあまりの衝撃に身体に突き刺さった撒菱は全て剥がれると、地面に倒れ込む。

どう見ても戦闘が続行できる状態ではなく、４人とも完全に意識を失っていた。そして一部始終を見ていた冒険者達はあまりのレナの強さに圧倒され、そんな彼等にレナは淡々と告げる。


「さあ、次は誰だ？」
『…………』


冒険者達は無言でレナに背中を向けると、そのまま駆け出す。その様子を見てレナは呆れた表情を浮かべながらも追跡する事はせず、そろそろ真面目に魔物の素材を回収して予選を突破しようと考えた時、ここで闘技場から放送音アナウンスが届く。