982 / 2,083
真・闘技祭編
7人の聖痕所有者
しおりを挟む
「ゴウライ本人は自分が聖痕の所有者だとは気づいていなかったようだけど、背中に紋様があったわ。恐らくは地属性の聖痕ね」
「地属性……?」
「現代で言えば土属性の事ね。かつては地属性と呼ばれていたのだけど、使い手が少なく、地面の土砂を操作する程度の魔法だと認識されてからは土属性と言われるようになったわ」
「へえ、そうだったのかい。それはあたしも初耳だね」
マリア曰く、土属性はかつては地属性と呼ばれていたらしい。だが、その地属性の聖痕をどうして剣士であるゴウライが宿していたのかに関しては彼女も不思議に思っていた。
「気になる事があるとすれば生粋の戦闘職であるゴウライが聖痕を所持していた事ね。本来、聖痕というのは魔力が強い人間、分かりやすく言えば魔術師が継承しやすいの。ハヅキ家の風の聖痕のように代々継承者が他の人間に継承する前に譲り渡したのなら話は別だけど……」
「じゃあ、誰かがゴウライの奴に地属性の聖痕を託したのかい?でも、なんでそんな事を……」
「あの……ゴウライさんは地属性の聖痕を自分が宿している事を知らなかったんですか?」
ミナが口を挟むと、マリアは腕を組んで頷く。ゴウライ本人は本当に地属性の聖痕の事も何も知らなかったらしく、そもそも彼女は背中に紋様がある事さえも知らなかった。
その一方で気になる事はゴウライと同郷で六聖将の一角でもあるホムラも聖痕の所有者であった。王城でマリアは彼女と遭遇した際、一目で彼女が聖痕の所有者だと気づいたという。
「ホムラに関しては恐らくは火属性の聖痕の所有者である事は間違いないわ。という事は一時期とはいえ、ヨツバ王国は3人の聖痕所有者を抱えていた事になる。これがただの偶然だとは思えないわね」
「どういう意味だい?まさか、ヨツバ王国は3つの聖痕を代々継承する人間がいたのかい?」
「人間ではなくて森人族よ。でも、確かにそう考える方が打倒ね。問題があるとすればそれをどうして隠していたのか……西聖将にはまだ秘密が隠されているはずよ」
「な、何だか話が難しくなってきたけど、僕は結局なんで呼ばれたわけ?」
話が自分の闘技祭の参加から聖痕の所有者の話に切り替わっている事にダインが指摘すると、マリアは本題に入る前に5人の聖痕所有者の名前を語る。
「風の聖痕はレナ、火の聖痕はホムラ、地の聖痕はゴウライ、聖の聖痕はレミア、闇の聖痕はダイン……残るのは水の聖痕と雷の聖痕の所有者のみとなった。これは明らかに異常事態よ、歴史上でも聖痕の所有者が5人も現れるなんて普通ではないわ」
「え?どうしてだい?」
「歴史上でも聖痕の所有者同士が集まるのは稀な事よ。それにこれはあくまでも私の予感だけど、恐らくは今度の闘技祭で残りの2名の所有者も現れる、とうよりも「目覚める」かもしれないわ」
「目覚める……?」
「はっきりと言ってしまえば聖痕を覚醒させる人間が現れるという事よ」
「覚醒!?」
どういう意味なのかと全員がマリアに視線を向けると、これまでの話を聞いて彼女は誰もが抱くであろう疑問を口にした。
「仮に聖痕の所有者が誰かに継承する前に死亡した場合、その聖痕はどうなると思う?」
「え?それは……消えてなくなるんじゃないのかい?」
「いいえ、聖痕が消滅する事はあり得ない。その場合は世界の何処かで新たな聖痕の所有者が目覚めるのよ」
「所有者が目覚める!?」
「……かつてハヅキ家が三大貴族に選ばれる前、私にとっては祖母に当たる女性は唐突に風の聖痕が芽生えた。このお陰でハヅキ家は特別な扱いを受けるようになり、現在の地位を確立したといっても過言ではない。祖母は風の聖痕に芽生えたのは恐らくはその時代に存在した元々の聖痕の所有者が既に死亡していたのだけど、突如として聖痕の所有権が祖母に移ったのよ」
「所有権が移った!?そんな事があり得るのかい!?」
ハヅキ家がまだ三大貴族ではなかった時代、マリアの祖母に当たる「ハヅキ」は突如として風の聖痕が芽生え、この事実を知った当時のヨツバ王国の国王はハヅキ家を丁重に扱うようになったという。
風の聖痕を宿したハヅキは当時の時代では最高の魔術師だと称され、その魔力は凄まじく、ハヅキ家の歴代の当主の中でも一番の魔術師だと言われていた。マリアはその祖母の血を濃く継いでおり、どちらも時代を代表する優秀な魔術師だった。
「祖母のハヅキが風の聖痕が目覚めた理由は不明だったけれど、祖母が生まれる前の時代に風の聖痕の所有者は存在したわ。だけど、その人物はもう既に死んでしまっていた。それにも関わらずに祖母は先代の所有者が死亡した10年後に風の聖痕を継承したと言われているわ」
「え、どういう事だい?10年前……?」
「ちょっと待ってくれよ……あ、いや、待ってください。もしも風の聖痕の所有権が他人に入れ替わる場合、その先代の聖痕の所有者が死んだときに他の人間に聖痕の所有権が移るんじゃないんすか?」
マリアの話を聞いていたダインは疑問を抱くと、彼女は聖痕の所有者が唐突な死を迎えた場合、他の人間に聖痕の所有権が移る場合はとある条件が必要だと考えていた。
「地属性……?」
「現代で言えば土属性の事ね。かつては地属性と呼ばれていたのだけど、使い手が少なく、地面の土砂を操作する程度の魔法だと認識されてからは土属性と言われるようになったわ」
「へえ、そうだったのかい。それはあたしも初耳だね」
マリア曰く、土属性はかつては地属性と呼ばれていたらしい。だが、その地属性の聖痕をどうして剣士であるゴウライが宿していたのかに関しては彼女も不思議に思っていた。
「気になる事があるとすれば生粋の戦闘職であるゴウライが聖痕を所持していた事ね。本来、聖痕というのは魔力が強い人間、分かりやすく言えば魔術師が継承しやすいの。ハヅキ家の風の聖痕のように代々継承者が他の人間に継承する前に譲り渡したのなら話は別だけど……」
「じゃあ、誰かがゴウライの奴に地属性の聖痕を託したのかい?でも、なんでそんな事を……」
「あの……ゴウライさんは地属性の聖痕を自分が宿している事を知らなかったんですか?」
ミナが口を挟むと、マリアは腕を組んで頷く。ゴウライ本人は本当に地属性の聖痕の事も何も知らなかったらしく、そもそも彼女は背中に紋様がある事さえも知らなかった。
その一方で気になる事はゴウライと同郷で六聖将の一角でもあるホムラも聖痕の所有者であった。王城でマリアは彼女と遭遇した際、一目で彼女が聖痕の所有者だと気づいたという。
「ホムラに関しては恐らくは火属性の聖痕の所有者である事は間違いないわ。という事は一時期とはいえ、ヨツバ王国は3人の聖痕所有者を抱えていた事になる。これがただの偶然だとは思えないわね」
「どういう意味だい?まさか、ヨツバ王国は3つの聖痕を代々継承する人間がいたのかい?」
「人間ではなくて森人族よ。でも、確かにそう考える方が打倒ね。問題があるとすればそれをどうして隠していたのか……西聖将にはまだ秘密が隠されているはずよ」
「な、何だか話が難しくなってきたけど、僕は結局なんで呼ばれたわけ?」
話が自分の闘技祭の参加から聖痕の所有者の話に切り替わっている事にダインが指摘すると、マリアは本題に入る前に5人の聖痕所有者の名前を語る。
「風の聖痕はレナ、火の聖痕はホムラ、地の聖痕はゴウライ、聖の聖痕はレミア、闇の聖痕はダイン……残るのは水の聖痕と雷の聖痕の所有者のみとなった。これは明らかに異常事態よ、歴史上でも聖痕の所有者が5人も現れるなんて普通ではないわ」
「え?どうしてだい?」
「歴史上でも聖痕の所有者同士が集まるのは稀な事よ。それにこれはあくまでも私の予感だけど、恐らくは今度の闘技祭で残りの2名の所有者も現れる、とうよりも「目覚める」かもしれないわ」
「目覚める……?」
「はっきりと言ってしまえば聖痕を覚醒させる人間が現れるという事よ」
「覚醒!?」
どういう意味なのかと全員がマリアに視線を向けると、これまでの話を聞いて彼女は誰もが抱くであろう疑問を口にした。
「仮に聖痕の所有者が誰かに継承する前に死亡した場合、その聖痕はどうなると思う?」
「え?それは……消えてなくなるんじゃないのかい?」
「いいえ、聖痕が消滅する事はあり得ない。その場合は世界の何処かで新たな聖痕の所有者が目覚めるのよ」
「所有者が目覚める!?」
「……かつてハヅキ家が三大貴族に選ばれる前、私にとっては祖母に当たる女性は唐突に風の聖痕が芽生えた。このお陰でハヅキ家は特別な扱いを受けるようになり、現在の地位を確立したといっても過言ではない。祖母は風の聖痕に芽生えたのは恐らくはその時代に存在した元々の聖痕の所有者が既に死亡していたのだけど、突如として聖痕の所有権が祖母に移ったのよ」
「所有権が移った!?そんな事があり得るのかい!?」
ハヅキ家がまだ三大貴族ではなかった時代、マリアの祖母に当たる「ハヅキ」は突如として風の聖痕が芽生え、この事実を知った当時のヨツバ王国の国王はハヅキ家を丁重に扱うようになったという。
風の聖痕を宿したハヅキは当時の時代では最高の魔術師だと称され、その魔力は凄まじく、ハヅキ家の歴代の当主の中でも一番の魔術師だと言われていた。マリアはその祖母の血を濃く継いでおり、どちらも時代を代表する優秀な魔術師だった。
「祖母のハヅキが風の聖痕が目覚めた理由は不明だったけれど、祖母が生まれる前の時代に風の聖痕の所有者は存在したわ。だけど、その人物はもう既に死んでしまっていた。それにも関わらずに祖母は先代の所有者が死亡した10年後に風の聖痕を継承したと言われているわ」
「え、どういう事だい?10年前……?」
「ちょっと待ってくれよ……あ、いや、待ってください。もしも風の聖痕の所有権が他人に入れ替わる場合、その先代の聖痕の所有者が死んだときに他の人間に聖痕の所有権が移るんじゃないんすか?」
マリアの話を聞いていたダインは疑問を抱くと、彼女は聖痕の所有者が唐突な死を迎えた場合、他の人間に聖痕の所有権が移る場合はとある条件が必要だと考えていた。
0
お気に入りに追加
16,534
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
断罪されているのは私の妻なんですが?
すずまる
恋愛
仕事の都合もあり王家のパーティーに遅れて会場入りすると何やら第一王子殿下が群衆の中の1人を指差し叫んでいた。
「貴様の様に地味なくせに身分とプライドだけは高い女は王太子である俺の婚約者に相応しくない!俺にはこのジャスミンの様に可憐で美しい女性こそが似合うのだ!しかも貴様はジャスミンの美貌に嫉妬して彼女を虐めていたと聞いている!貴様との婚約などこの場で破棄してくれるわ!」
ん?第一王子殿下に婚約者なんていたか?
そう思い指さされていた女性を見ると⋯⋯?
*-=-*-=-*-=-*-=-*
本編は1話完結です(꒪ㅂ꒪)
…が、設定ゆるゆる過ぎたと反省したのでちょっと色付けを鋭意執筆中(; ̄∀ ̄)スミマセン
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!
ペトラ
恋愛
ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。
戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。
前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。
悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。
他サイトに連載中の話の改訂版になります。
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~
つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。
政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。
他サイトにも公開中。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。