不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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S級冒険者編

妊娠中

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「――いや、まさか素材を剥ぎ取ると言い出したときは殺しちゃうのかと思いましたよ」
「殺しはしないよ。だけど、ただで見逃すほどお人好しでもないしね」
「ガアッ……」


しばらく時間が経過した後、レナは白竜の傷口に対して回復魔法を施していた。傷口を治療を行うレナ達に対して先ほどまで暴れ狂っていた白竜は無抵抗で受け入れ、大人しくしていた。

治療を行う間にもリーリスは白竜の傷口付近の鱗を引き剥がし、それをゴレムと呼ぶ工務用ロボットに手渡す。竜種の鱗は剥がされてもすぐに新しい鱗が生えてくるので問題なく、むしろ傷口を塞ぐ際に邪魔なので鱗を次々と引き剥がしていく。


「レナ君、こっちの方の鱗はだいたい引き剥がしたよ~」
「お疲れ様、もう降りてきていいよ」
「うん……それにしても本当に凄いね、レナ君の能力。僕が持ち出したレジェンドスピアがあっという間に直しちゃったし」


白竜の背中の上で鱗を引き剥がしていたミナがレナに声をかけ、彼女の手元には白竜の吐息を防ぐために使用したレジェンドスピアが存在した。先の攻防でレジェンドスピアは白竜の吐息を拡散し、攻撃を防ぐ事に成功した。しかし、その際にレジェンドスピアは破損してしまう。

勇気を振り絞って助けに来てくれたミナだが、手に入れたレジェンドスピアが壊れた事で非常に落ち込んでいたのでレナは錬金術師の能力でレジェンドスピアの修復を行う。その結果、前のレジェンドスピアよりは少々刃の形が変化してしまったが、復活を果たしたレジェンドスピアをミナに託す。


「それにしてもあの白竜の吐息を防ぐなんて、結構な凄い武器なんだな……」
「それはそうだよ!!だって、あの伝説の槍騎士の勇者さまが使っていた武器だからね!!ああ、嬉しいな……僕の家の家宝にしようかな……本当に直してくれてありがとう!!」


レジェンドスピアを抱きしめてミナは頬ずりを行い、余程嬉しいのか彼女は槍を修復してくれたレナに感謝する。そんなミナに対してレナは気にしなくていいと首を振り、白竜の治療を負える。


「よし、一応は傷口は塞ぐ事は出来たかな。といっても、表面を塞いだだけだから完治には程遠いけどね」
「大丈夫ですよ、白竜の再生能力なら2、3日は放っておけば完治しますよ」
「ガウッ」
「うわっ……びっくりした、急に顔近づけるなよ」


白竜は傷の治療をしてくれたレナ達に対して首を伸ばし、顔を近づけてくる。咄嗟に攻撃を仕掛けてくるのかとレナは警戒したが、白竜は口を開いて舌を伸ばす。

どうやら自分達に対してお礼を言いたいらしく、先ほどまでの態度が嘘のように大人しくなった白竜にレナは戸惑うと、ここでリーリスが白竜のお腹の部分に耳を押し付ける。


「……ほほう、やはりそういう事でしたか」
「どうしたの?」
「この白竜、どうやら妊娠してますね。出産の直前だったようです」
「えっ!?妊娠!?」
「……本当だ、確かにこいつの中から別の魔力が感じられる」


リーリスの言葉にミナは驚き、レナは魔力感知を発動させると、確かに白竜の強大な魔力で覆い隠されていて分かりにくかったが白竜の胎内に別の魔力を感知した。どうやらこちらの白竜は妊娠しており、出産前だったので気性が激しくなっていたらしい。

大切な子供を産む前だったの白竜は安全な場所を探し、この場所の存在に気づいて訪れたらしい。そして建物に攻撃を仕掛けた理由は恐らくは初めて見る人工物を警戒して見た事もない獣だと誤認して攻撃を仕掛けた様子だった。


「ふむ、この様子だと卵を産むまでもう少しかかりそうですね。それにこの白竜、ちょっと子供を産むには少々年齢が若すぎますね」
「そういえばこいつの他に2体の白竜がいるんだっけ?」
「はい、そうです。この白竜が子供を産めば4体目となりますね」
「へえ……この子、雌だったんだ」
「いえ、白竜に性別はありませんよ。単体生殖が出来るというだけです」
「ガアッ?」


自分の腹の前で何事かを話し合う3人に白竜は首を傾げ、その様子を見て先ほどまで獰猛性を露にしていた竜種とは思えず、レナは何だか気が抜けてしまう。一方でリーリスの方は他の仲間達の姿が見えない事に気づき、不思議に思う。


「あれ、そういえばレナさんのお仲間さんたちは何処へ行ったんですか?」
「ああ、今はセイソウミンブラザーズを湖に返しに行ってるよ。そういえばあそこでシルバースライムとかいうのを見かけたけど、あいつって本当に凄い経験値を持ってるの?」
「へえ、シルバースライムを見つけたんですか。それは凄いですね、あのスライムは数十年に1度の割合でしか誕生しない希少種なんですよ。実験してみたいので捕まえてきてもらってもいいですか?」
「だ、駄目だよ!!あんな可愛いスライムに酷いことをするなんて!!」


リーリスの発言にミナは反対し、人として信じられない表情を浮かべる。最も相手は人間ではなく、アンドロイドなのでリーリスは気にした風もなくレナに話しかけた。
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