上 下
953 / 2,083
S級冒険者編

鏡刀VS雪月花

しおりを挟む
「あら、それなら私が相手をしてあげるわ」
「シズネが?」
「砲撃魔法とまではいかないけれど、雪月花の力を使えば十分でしょう?」


シズネは自身の雪月花を見せると、確かに魔剣である雪月花に対抗できる力を持つならば鏡刀が反鏡剣の性質を受け継いだことを証明できる。話を聞いていたリーリスは先ほどの訓練場を使うように促す。


「それなら訓練場の方へ案内しますよ。元々は勇者同士が戦えるように設計されているので簡単には壊れませんよ」
「訓練場?そんな物まであったのか……」
「ちょ、ちょっと待てよ!!それならこれ、この漆黒のローブをくれよ!!うちの家宝にするから!!」
「あ、なら僕もこのレジェンドスピアを!!」
「私も欲しいのがある」
「はいはい、分かりましたよ。じゃあ、とりあえずお二人は先に行っててください。場所は分かるでしょう?」
「うん、分かった」


レナとシズネ以外の者たちは自分が欲しい装備品をリーリスに頼み込み、彼女が対応している間にレナは訓練場までシズネを案内した――




――元々は勇者専用に作り出された施設と言いうだけはあり、施設内には勇者のための様々な訓練設備も用意されていた。レナはリーリスに先ほど案内された場所に辿り着くと、早速だが鏡刀を引き抜いて雪月花を構えるシズネに頼む。


「とりあえず実戦で扱えるかを確かめたいから、いつも通りに実戦方式の組手でいいかな?」
「ええ、構わないわ。あの仮想世界という所で私も雪月花の新しい使い道を覚えたからちょうどいいわ」
「新しい使い道?」
「戦ってみてのお楽しみよ」


シズネは雪月花を構えると、最初から本気で挑むつもりなのか刀身に冷気を放ち、彼女の周囲が徐々に凍り付いていく。その様子を確認したレナは退魔刀を手放すと、今回は鏡刀だけで向かい合う。基本的には普段のレナは退魔刀と鏡刀の二刀流、力が強い敵と戦う時は対抗するために退魔刀のみで戦う事はあるが、今回は鏡刀のみで挑む。

二人はしばらくの間は見つめ合っていたが、やがてシズネが動き出す。相手が想い人であろうと試合とあれば容赦はせず、彼女は雪月花の冷気を刃先に集中させると、距離が開いているにも関わらずに突き出す。


「はあっ!!」
「うわっ!?」


刃先から冷気の塊が放出され、その攻撃を受けるのはまずいと判断したレナは回避すると、塊は壁に衝突した瞬間に壁一面が凍り付く。凍結化までの速度と規模が尋常ではなく、恐らくは掠っただけでも人間ならば一瞬で凍り付く事が予想された。

攻撃を回避するのには成功したが、シズネの方は今度は雪月花を横に構え、魔力を送り込んで冷気を更に放出した状態で横なぎに振り払う。


「はあっ!!」
「くっ!?」


今度は塊ではなく、三日月のような形をした斬撃を放ち、それを確認したレナはここで鏡刀を構える。逃げてばかりではいられず、鏡刀を信じて正面から迫りくる冷気に放つ。


「兜砕き!!」
「っ!?」


一気に刃を振り下ろした瞬間、刀身が冷気の斬撃に触れた瞬間に魔力が拡散され、斬撃が霧と化して消え去ってしまう。その様子を確認したシズネは驚く一方、レナの方は斬撃を無効化した事を悟り、自分自身も驚く。

どうやら本当に大太刀は反鏡剣の性質を受け継いだらしく、自分の元に相棒が戻ってきたような感覚を覚えたレナは笑みを浮かべ、鏡刀を構えると今度は自分から仕掛けた。


「行くぞ、シズネ!!」
「来なさい!!」


二人は正面から刃を交えると、激しい金属音が鳴り響き、そのまま互いに斬り合う。幾度も刃が交差する度に訓練である事を忘れ、剣鬼と青の剣聖の激しい戦闘が繰り広げられる。バルトロス王国内でも5本指には入る剣士同士の戦闘はすさまじく、やがて互いに剣技を繰り出す。


「零距離、刺突!!」
「疾風撃!!」


シズネは最速の戦技を放ち、レナの方も速度に特化した戦技を発動させると、二人の刃が触れた瞬間に衝撃波が発生し、互いの身体が後方へと下がる。かつて彼女はこの攻撃でレナを敗北させたが、今回は弾き返されてしまい、それどころか彼女の方が追い込まれてしまう。

以前と比べてレナは大きく成長しているのに対し、シズネの方は肉体面に関しては残念ながら大きな成長はしていない。純粋な剣の腕ならばシズネが勝るのだろうが、レナの方も幾度も六聖将や火竜や九尾との戦闘で強くなり、更なる高みへと登ろうとしていた。


「まだまだぁっ!!」
「くぅっ!?」


レナは勢いよく床を踏みつけると、体勢を崩しているシズネに向けて突進し、刃を放つ。そして彼女の腹部に衝突するかと思われた瞬間、刃が停止する。その様子を見たシズネは驚いた表情を浮かべたが、レナは額に汗を流しながらも呟く。


「俺の、勝ち?」
「……ええ、認めるわ」
「よし、初めて勝った!!」
「あれ、もう終わっちゃったんですか?」


苦笑を浮かべたシズネの言葉にレナは初めての彼女に勝利した事を喜ぶと、訓練場にリーリスが他の者を引き連れて訪れてきた。どうやらもう試合が終わっている事に気づいたリーリスは残念そうに呟く。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

狂乱令嬢ニア・リストン

南野海風
ファンタジー
 この時代において、最も新しき英雄の名は、これから記されることになります。  素手で魔獣を屠る、血雨を歩く者。  傷つき倒れる者を助ける、白き癒し手。  堅牢なる鎧さえ意味をなさない、騎士殺し。  ただただ死闘を求める、自殺願望者。  ほかにも暴走お嬢様、爆走天使、暴虐の姫君、破滅の舞踏、などなど。  様々な異名で呼ばれた彼女ですが、やはり一番有名なのは「狂乱令嬢」の名。    彼女の名は、これより歴史書の一ページに刻まれることになります。  英雄の名に相応しい狂乱令嬢の、華麗なる戦いの記録。  そして、望まないまでも拒む理由もなく歩を進めた、偶像の軌跡。  狂乱令嬢ニア・リストン。  彼女の物語は、とある夜から始まりました。

狙って追放された創聖魔法使いは異世界を謳歌する

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーから追放される~異世界転生前の記憶が戻ったのにこのままいいように使われてたまるか!  【第15回ファンタジー小説大賞の爽快バトル賞を受賞しました】 ここは異世界エールドラド。その中の国家の1つ⋯⋯グランドダイン帝国の首都シュバルツバイン。  主人公リックはグランドダイン帝国子爵家の次男であり、回復、支援を主とする補助魔法の使い手で勇者パーティーの一員だった。  そんな中グランドダイン帝国の第二皇子で勇者のハインツに公衆の面前で宣言される。 「リック⋯⋯お前は勇者パーティーから追放する」  その言葉にリックは絶望し地面に膝を着く。 「もう2度と俺達の前に現れるな」  そう言って勇者パーティーはリックの前から去っていった。  それを見ていた周囲の人達もリックに声をかけるわけでもなく、1人2人と消えていく。  そしてこの場に誰もいなくなった時リックは⋯⋯笑っていた。 「記憶が戻った今、あんなワガママ皇子には従っていられない。俺はこれからこの異世界を謳歌するぞ」  そう⋯⋯リックは以前生きていた前世の記憶があり、女神の力で異世界転生した者だった。  これは狙って勇者パーティーから追放され、前世の記憶と女神から貰った力を使って無双するリックのドタバタハーレム物語である。 *他サイトにも掲載しています。

王宮まかない料理番は偉大 見習いですが、とっておきのレシピで心もお腹も満たします

櫛田こころ
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞〜癒し系ほっこりファンタジー賞〜受賞作品】 2022/7/29発売❣️ 2022/12/5【WEB版完結】2023/7/29【番外編開始】 ​───────『自分はイージアス城のまかない担当なだけです』。 いつからか、いつ来たかはわからない、イージアス城に在籍しているとある下位料理人。男のようで女、女のようで男に見えるその存在は、イージアス国のイージアス城にある厨房で……日夜、まかない料理を作っていた。 近衛騎士から、王女、王妃。はてには、国王の疲れた胃袋を優しく包み込んでくれる珍味の数々。 その名は、イツキ。 聞き慣れない名前の彼か彼女かわからない人間は、日々王宮の贅沢料理とは違う胃袋を落ち着かせてくれる、素朴な料理を振る舞ってくれるのだった。 *少し特殊なまかない料理が出てきます。作者の実体験によるものです。 *日本と同じようで違う異世界で料理を作ります。なので、麺類や出汁も似通っています。

病弱が転生 ~やっぱり体力は無いけれど知識だけは豊富です~

於田縫紀
ファンタジー
 ここは魔法がある世界。ただし各人がそれぞれ遺伝で受け継いだ魔法や日常生活に使える魔法を持っている。商家の次男に生まれた俺が受け継いだのは鑑定魔法、商売で使うにはいいが今一つさえない魔法だ。  しかし流行風邪で寝込んだ俺は前世の記憶を思い出す。病弱で病院からほとんど出る事無く日々を送っていた頃の記憶と、動けないかわりにネットや読書で知識を詰め込んだ知識を。  そしてある日、白い花を見て鑑定した事で、俺は前世の知識を使ってお金を稼げそうな事に気付いた。ならば今のぱっとしない暮らしをもっと豊かにしよう。俺は親友のシンハ君と挑戦を開始した。  対人戦闘ほぼ無し、知識チート系学園ものです。

傍若無人な姉の代わりに働かされていた妹、辺境領地に左遷されたと思ったら待っていたのは王子様でした!? ~無自覚天才錬金術師の辺境街づくり~

日之影ソラ
恋愛
【新作連載スタート!!】 https://ncode.syosetu.com/n1741iq/ https://www.alphapolis.co.jp/novel/516811515/430858199 【小説家になろうで先行公開中】 https://ncode.syosetu.com/n0091ip/ 働かずパーティーに参加したり、男と遊んでばかりいる姉の代わりに宮廷で錬金術師として働き続けていた妹のルミナ。両親も、姉も、婚約者すら頼れない。一人で孤独に耐えながら、日夜働いていた彼女に対して、婚約者から突然の婚約破棄と、辺境への転属を告げられる。 地位も婚約者も失ってさぞ悲しむと期待した彼らが見たのは、あっさりと受け入れて荷造りを始めるルミナの姿で……?

この度、双子の妹が私になりすまして旦那様と初夜を済ませてしまったので、 私は妹として生きる事になりました

秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
*レンタル配信されました。 レンタルだけの番外編ssもあるので、お読み頂けたら嬉しいです。 【伯爵令嬢のアンネリーゼは侯爵令息のオスカーと結婚をした。籍を入れたその夜、初夜を迎える筈だったが急激な睡魔に襲われて意識を手放してしまった。そして、朝目を覚ますと双子の妹であるアンナマリーが自分になり代わり旦那のオスカーと初夜を済ませてしまっていた。しかも両親は「見た目は同じなんだし、済ませてしまったなら仕方ないわ。アンネリーゼ、貴女は今日からアンナマリーとして過ごしなさい」と告げた。 そして妹として過ごす事になったアンネリーゼは妹の代わりに学院に通う事となり……更にそこで最悪な事態に見舞われて……?】

断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた

兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。

ほんわりゲームしてます I

仲村 嘉高
ファンタジー
※本作は、長編の為に分割された1話〜505話側になります。(許可済)  506話以降を読みたい方は、アプリなら作者名から登録作品へ、Webの場合は画面下へスクロールするとある……はず? ─────────────── 友人達に誘われて最先端のVRMMOの世界へ! 「好きな事して良いよ」 友人からの説明はそれだけ。 じゃあ、お言葉に甘えて好きな事して過ごしますか! そんなお話。 倒さなきゃいけない魔王もいないし、勿論デスゲームでもない。 恋愛シミュレーションでもないからフラグも立たない。 のんびりまったりと、ゲームしているだけのお話です。 R15は保険です。 下ネタがたまに入ります。 BLではありません。 ※作者が「こんなのやりたいな〜」位の軽い気持ちで書いてます。 着地点(最終回)とか、全然決めてません。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。