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S級冒険者編

ホネミンとマリア

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――ホネミンが肉体を取り戻す方法、そして地球へ戻れるかもしれない可能性を探るため、塔の大迷宮へ向かう前に万全の準備を行う。最も今回の遠征は前回の時とは異なり、わざわざ旅立つ必要はなく、マリアの協力で転移魔法陣の水晶札を分けて貰えば移動は一瞬で済む。そのためにレナはホネミンを連れてマリアの元へ訪れる。


「というわけで叔母様、このホネミンは俺達のご先祖様みたいな存在だから協力して欲しいんだ」
『どうもどうも、この時代にも私の家系の人が残っているのは感慨深いですね』
「……ちょっと待ってもらえるかしら、理解が追い付かないわ」


氷雨のギルドにてレナはホネミンの紹介を行い、何気にこの2人が顔を合わせたのは初めてかもしれず、レナはホネミンの正体がハヅキ家の先祖である事を告げる。アイラという名前もエルフの間では長女に名付けるという習慣を作り上げた張本人でもあり、言ってしまえば「初代アイラ」というべき存在でだった。

ホネミンとマリアはこれまでに一度も顔を合わせた事がないわけではないが、お互いの事情をよく知らずに接していた。だが、レナの説明を受けたマリアは自分達の先祖の中で最も偉大な存在として語り継がれている「アイラ」が今尚も生きており、この時代に存在したという事実に動揺を隠せない。


「ハヅキ家の英雄であるアイラの名前は当然知っていたけれど……まさか、肉体を魔物に喰われて骨だけの状態で生き残っていたなんて信じられないわね」
『嘘じゃありませんよ、私は勇者が残したという秘宝のお陰で生き延びる事が出来たんですよ』
「こうしてみる限りでは普通の森人族にしか見えないけれど……」
「それもそうだね、なら真の姿を見せてあげなさいホネミン」
『はいはい、仕方ないですね……プルミン、ブレイク!!』
「ぷるっくりんっ」


魔鎧術を発動させ、人の姿を保っていたホネミンの身体から擬態中だったプルミンが剥がれると、やがて魔鎧術を解除したホネミンが元の骨だけの状態へと陥る。その姿を見たマリアは珍しく呆気に取られた表情を浮かべ、文字通りに骨身になったホネミンはカタカタと顎を鳴らす。


「………………」
「うん、まあそういう反応するのが当たり前だよね。ちなみにこの状態だと話す事が出来ないから、筆談で会話するしかないんだ」
『もう元に戻ってもいいですかね?』


ホネミンは事前に用意しておいた羊皮紙に万年筆で書き込むと、マリアは戸惑いの表情を浮かべながらも頷き、やがてホネミンは元の姿から人間へ擬態した姿へと戻る。


『ふうっ、レナさんの精霊薬のお陰でこの姿を維持できるようになりましたが、やっぱり疲れますね……それで、私の正体を見た感想はどうですか?』
「……生きているというよりも、まるで自分の骨に憑依した幽霊みたいな存在だという事は分かったわ」
『なるほど、そう解釈しますか。まあ、私自身も自分が生きているのか、それともゴースト的な存在で現世に留まっているのか分からない時期がありますからね』


ホネミン自身もどうして自分がこの姿で生きているのかを理解していない節があり、普通の人間ならば肉体を失えば死んでしまうはずである。だが、彼女は勇者の残した聖遺物のお陰で骨だけの状態でも生き延びていた。


『まあ、私がどうして生きているのかはどうでもいいんですよ。レナさん達のハヅキ家の先祖である事も割とどうでもいい話です』
「いや、それはどうでもいいのかな……割と重要な話だと思うけど」
『ともかく!!私にとって大事なのは肉体を取り戻すという事です!!数百年間、碌に外の世界に出る事も出来なかったのはこの身体のせいなんですよ!!私は人間になりた~いっ!!』
「その台詞は止めろ!!そもそもお前は森人族だろうがっ!!」
『心は人間です!!』


危険なネタを口走ったホネミンをレナは叱りつける一方、マリアは頭を抑えながら次々と発覚する情報の理解に追いつかず、とりあえずは紅茶を飲んで一息を吐く。


「ふうっ……まあ、とりあえずは貴女がハヅキ家の所縁のある人物というのは信じるわ。レナがそんな無意味な嘘を吐くはずがないし、それに悪霊の類とも違う事は確かね。一応は聞くけど、死霊使いとは関わっていないわよね?」
『私を死霊使いが使役する死霊人形扱いするのは止めて下さい。私は誰にも使役されていませんし、魔物でもありません。れっきとした人間です!!あ、種族的には森人族でしたけど……』
「そう……それで、私にどうしてほしいのかしら?」
「とりあえず塔の大迷宮に向かいたいから転移魔法陣の水晶札を1枚分けて欲しい。あと、出来れば強い戦力が欲しいから冒険者の何人かを借りたいんだけど……」
「それぐらいならすぐに用意出来るけれど……困ったわね、今うちで動かせる剣聖は誰もいないわ。ゴウライはまた旅に出てしまったし、ジャンヌの方は九尾の一件で大将軍のレミアと親交を深めて現在は王都の竜槍隊と交えて訓練中、ハヤテとシュンはヨツバ王国に留まっているから呼び出すのも時間が掛かるわ。ロウガは……論外ね」
「だよね」


剣聖であるロウガはマリアに忠誠を誓う一方、剣鬼であるレナを危険視しているので同行は望めない。だが、ここで冒険者の中でも実力があり、レナ達にも親交がある人物をマリアは思い出す。
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