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S級冒険者編

二人目のS級冒険者の元へ……

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「さて、メダルは受け取った以上は長居は不要ね。次のS級冒険者の元へ行きましょう」
「何?お、おい!!もう行くのか!?」
「こっちも事情があるのよ。今日中に用事は済ませておきたいの」
「いや、しかし久しぶりの再会だぞ?アイラの息子とも少し話がしたいし、歓迎の宴の準備もしているのに……」
「悪いけれど急いでいるの、宴はまた今度にしてちょうだい」


ライオネルは立ち去ろうとするマリアを引き留めようとするが、彼女は水晶札を取り出してレナを引き寄せる。カゲマルとハンゾウも傍に移動すると、ライオネルを置いて彼女は転移魔法を発動させた。


「それじゃあね、ライオネル。また会いましょう」
「お、おい!!マリア――」


言葉を言い終える前にマリアは魔法を発動させ、次の目的地へと転移した――




――転移を終えたレナ達の視界に「高原」を想像させる光景が広がり、転移を成功した事を確認したマリアは周囲を見渡す。近辺には人が暮らしていそうな建物は見当たらず、代わりに大きな丘の上に巨大な石柱が立っていた。その石柱の傍に人影が存在した。


「どうやら時間通りに来てくれた様ね」
「マリア殿、ここは……?」
「巨人国の領地よ。最も辺境の地崩だから人は暮らしていないわ」
「巨人国……ここが」


次のS級冒険者は巨人国を拠点としているらしく、マリアの話によると巨人国の領地の中でも辺境地方に転移したという。そして石柱の傍に座る人物が次のレナの対戦相手であるS級冒険者らしい。

レナ達は丘の上に建てられた石柱の元へ向かうと、近付けば近づくほどに石柱がどれだけ巨大な建造物である事が思い知らされ、座っている人物の大きさも理解する。どうやら今度の対戦相手は「巨人族」らしく、しかも女性のようだった。


「待たせたわね、貴女がS級冒険者のムサシかしら?」
「……いかにも」


マリアが声を掛けると座っていた巨人族の女性が片目を開き、視線を向けてきた。容姿に関しては座っていた状態でも立っているレナと目線が合い、黒毛の髪の毛をポニーテールに纏めている。顔立ちの方は可愛らしく、一方で右目を眼帯で覆い隠していた。体型の方は巨人族にしては珍しく筋肉質な身体つきではなく、ナオのように無駄がなくそれでいながら胸元だけが女性らしさを主張するように大きい。

石柱に背中を預けていた女性は立ち上がると、その身長は3メートルを軽く超え、恐らくはゴンゾウと同程度の身長だった。巨人族の女性の間では平均身長なのだろうが、人間であるレナ達は見上げなければ顔を合わせる事も出来ない。ムサシと呼ばれた女性はレナとカゲマルに視線を向け、マリアに尋ねた。


「私がS級冒険者のムサシだ……貴女がマリア殿か」
「ええ、初めまして。貴女の父親には昔、世話になったわ」
「謙遜されるな、父からは貴女の話はよく聞いている。そしてアイラ殿事も……それで、どちらがアイラ殿の息子だ?」


ムサシとマリアは初対面のようだが、話しぶりからお互いの存在だけは知っていたらしく、ムサシはカゲマルとレナを見比べてどちらが自分と戦う事になる相手なのかを尋ねる。そんな彼女にマリアはレナを引き寄せて紹介を行う。


「この子がレナよ。私と少し似ているでしょう?」
「むっ……確かに面影がある」
「どうも初めまして、レナと申します」
「初めまして、ムサシと申す」
「拙者はハンゾウと申す」
「カゲマルだ」


自己紹介を行うとムサシは丁寧にお辞儀を行い、レナ達もそれに倣う。戦う前にマリアはムサシの父親の事を話す。


「彼女の父親は元S級冒険者にしてこの国の大将軍の弟よ。今は引退していると聞いたけど、現役時代に私と姉さんがこの国へ訪れた時に共に戦ったことがあるの」
「巨人国に火竜が襲来したとき、父がマリア殿とアイラ殿と協力して打ち倒したと聞いています。そしてアイラ殿の息子さんも火竜を討伐してS級冒険者へ昇格を果たした事も……」
「俺一人で倒したという訳じゃないんですけど……」
「それでも竜種を相手に勝利した事は事実、謙遜されるな」
「おろ?ムサシ殿はレナ殿が火竜を討伐した事を信じているのでござるか?」
「勿論、父が世話になったアイラ殿の息子ならばそれぐらいの芸当が出来てもおかしくはない。こうして実際に会って、只者ではない事は分かった時点で疑う余地はない」


ムサシはレナを見ただけで只者ではない事を感じ取り、火竜を討伐したという話を信じたという。それならば戦う必要はなく、S級冒険者として認めてくれるかとレナは期待したが、ムサシは石柱に立てかけていた「大剣」を掴む。レナの退魔刀の2倍近くの大きさは存在し、しかも刀身は金属ではなく「岩石」で構成されていた。


「しかし、それと今回の呼び出しの件は別の話。S級冒険者の義務として其方の実力を計らせてもらう……異論はないな?」
「ええっ……」
「仕方がないわね。レナ、相手をしてやりなさい」


実力を認めても勝負とは別の話だとムサシは告げると、レナはやはりこうなるのかと思いながらもマリア達を下がらせて退魔刀を取り出す。流石に今回の相手は油断できず、ライオネルの時と同様に本気で戦わなければ分が悪いと判断したレナは退魔刀を構えた。
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