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S級冒険者編

S級冒険者の数

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「俺に不満を抱いているS級冒険者は何人いるの?そういえばS級冒険者は世界で何人ぐらいいるの?」
「貴方を合わせれば丁度10人ね。私も姉さんも現役の時の時代はもっと多くいたわ」


世間一般ではS級冒険者は世界に10人もいないと言われているが、その言葉はあながち間違いでもなく、現時点ではレナがS級冒険者に昇格するまでの間は9人しかいなかったらしい。そして氷雨に所属する5人の剣聖を除けば他のS級冒険者は4人、その中でもレナの昇格に不満を抱いているのが3人だった。


「とりあえず、これから貴方は3人のS級冒険者の元へ向かい、実力を見せる必要があるわね」
「なるほど、けどS級冒険者は世界各地に散らばってるんでしょ?会いに行くだけでも時間が掛かりそうだな」
「大丈夫よ、そこは考慮しているわ。本日中に用事を終わらせましょう」
「え、どうやって……あ、そうか!!叔母様の転移魔法か!!」
「そういう事ね。冒険者時代に私は色々な場所に足を運んでいるから彼等が本拠地としている街に転移する事は簡単よ」
「たく、嬢ちゃんは本当に規格外だな」
『同意』


マリアは転移魔法陣を発動させる水晶札を取り出し、これを使用すればS級冒険者が拠点とする街に一瞬で移動する事が出来た。そう考えるとわざわざ旅に出る必要もなくなり、今日中に3人のS級冒険者と出会う事も難しくはない。

但し、S級冒険者は多忙なので街に出向いても仕事で離れている場合も考慮し、今回はマリアも同行するという。水晶札は一度使用すれば効果を失うため、万が一の場合を考えてマリアも行動を共にすれば不慮の事故で戻れないという事態は避けっられる。


「今回は護衛役としてカゲマルとハンゾウも連れて行くわ。シュン、ハヤテ、ラナ私が不在の間はここを任せたわよ」
「へいへい」
『承知』
「了解しました」
「叔母様と一緒に旅か……何気に一緒に行動するのは初めてだっけ?」
「ふふふ……私が一緒だからといって油断しては駄目よ。それにこれから会うのはS級冒険者、いくら貴方が強いといっても油断しては駄目よ。彼等は紛れもなく「英雄」の領域に至っているのだから」


S級冒険者はほぼ全員がレベル70を超えており、決して油断は出来ない相手である。だが、レナとしても他のS級冒険者には興味がある一方、バルトロス王国とヨツバ王国以外の国家に赴く事に緊張してしまう。


「さて、では出発しましょう。最初に向かうのは獣人国ね」
「獣人国か……別名はわんにゃんパラダイス」
「何を言ってるんだお前は……」
「別に犬型と猫型の獣人だけが住んでいるわけじゃないぞ」


シュンとラナのツッコミを受けながらもレナはカゲマルとハンゾウと合流し、マリアの転移魔法陣を使用して遂にヨツバ王国以外の他国へと赴く――





――転移魔法陣によってレナが辿り着いた場所は延々と荒れ果てた荒野であり、その荒野の中に存在する大きな街だった。バルトロス王国は草原地帯が多いのに対し、獣人国の領地の殆どが荒野で覆われている。農作物を育てるのは不向きな環境ではあるが、反面に食用の魔物が多数生息するという。

荒野と言われれば生物が住みにくそうな環境に思われるが、獣人国では環境が厳しい地方であればあるほど何故か数多くの魔物が生息する傾向があり、転移して早々にレナは遠目でボアと呼ばれる猪型の魔物が群れを成して移動する光景を目撃した。


「へえ~……話は聞いていたけど、本当にずっと先まで荒野が広がってるんだ」
「拙者たちにはあまり見慣れない光景でござるな。冒険都市の北部に存在する荒野は見たことがあるでござるが……」
「おい、観光気分に浸るな。ここへ来た目的を忘れたのか?」
「そうね、少しは緊張感を持ちなさい二人とも。これから会うのはS級冒険者の中でも気性が荒い男よ」


マリアの言葉にレナとハンゾウは振り返ると、2人の視界に冒険都市よりも巨大な城壁で囲まれた街が存在し、この街に目当てのS級冒険者が暮らしているという。マリアの話によると先祖は獣人国の将軍を勤め、先祖代々高名な武芸者が多く、獣人国にたった一人だけ所属するS級冒険者らしい。

手続きを終えて街に入ったレナ達を出迎えたのは獣人国の兵士であり、事前にマリアから連絡を受けていたのか彼等は馬車を用意してレナ達をS級冒険者の元まで案内するという。


「お待ちしておりましたマリア殿、既に話は伺っています。どうぞ、こちらの馬車にお乗りください」
「あら、それは助かるわね」


迎えに訪れた兵士の一人がマリアに頭を下げ、どうやらこの男がこの街の警備を勤める隊長らしく、レナ達を見まわして目を細める。どうやら武人であるが故にレナ達がただ者ではない事を見抜き、すぐにレナに対して握手を求めてきた。


「初めましてバルトロス王国のS級冒険者殿、私はこの街の警備を任されているワンと申します」
「え?よく俺がS級冒険者だと分かりましたね」
「御冗談を……それだけの覇気を纏っている御方を付き添いの人間とは思いませんよ」


ワンは頬に冷や汗を流し、他の兵士達も尋常ではない汗を流す。人間よりも感覚に優れている彼等はレナが知らず知らずに放つ「威圧」を感じ取り、彼等はすぐにレナがただ者ではないと悟る。
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