不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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外伝 ~ヨツバ王国編~

レナVS守護者

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(……心なしか、ゴウライと似ているなこいつ。ただの偶然かな?)


守護者と相対したレナは敵の外見がゴウライとよく似ている事に気付き、ゴウライがダークエルフであったことも同時に思い出す。ゴウライが身に着けている鎧が守護者と酷似している事、ホムラ達とゴウライが同種族である事、これがただの偶然なのかとは思えず、もしかしたらゴウライの出身もこの地ではないのかと考える。


(後でアイリスに聞いてみるか。いや、今はそれよりもこいつに集中しないとな)


相手がアダマンタイトで構成されたゴーレムだとしたら反鏡剣では分が悪く、レナは退魔刀だけを両手で握り締めて向き合う。その一方で守護者の方は背中に抱えていた大太刀を引き抜き、鞘から漆黒の刃が露わになった。レナの退魔刀と同様にアダマンタイトを素材に作り出された剣だと思われ、更に剣を引き抜いた瞬間に熱気が襲い掛かり、刀身に高熱が帯びていた。


「ゴロロロロッ!!」
「来いっ!!」


守護者は大太刀を振り翳すとレナの方も退魔刀を構え、正面から打ち合う。激しい金属音が鳴り響き、両者は鍔迫り合いになる。だが、純粋な力勝負はレナが勝り、守護者の巨体を吹き飛ばす。


「おらぁっ!!」
「ゴロロッ……!?」


力任せに守護者を後方へ吹き飛ばしたレナは追撃を加えようとするが、掴んでいる退魔刀から異様な熱気を感じ取り、刀身部分に視線を向けると異様な熱を放っている事に気付く。どうやら鍔迫り合いになった時に守護者が所持する大太刀の刃の熱のせいで退魔刀の刃も影響を受けたらしく、刃が熱を帯びたらしい。

退魔刀を振り払って熱を冷ましながらレナは守護者と向き合うと、時間が経過するごとに刀身の熱が増しているのか先ほどまで漆黒だったはずの刃が赤色に徐々に変化しており、灼熱の如き熱気を放つ。それを見たレナはまともに大太刀の刃を受けると非常に不味いと判断し、距離を開こうとした。


「ゴロロッ!!」
「くっ!?」


しかし、レナが距離を取る前に守護者は巨体に見合わずに俊敏な動作で駆けつけると、大太刀を横薙ぎに振り払う。咄嗟にレナは「縮地」を発動させて瞬間移動の如く場所を移動して回避するが、守護者はそれを見越していたのかレナが逃げた先に向かう。


「ゴロゴロッ!!」
「うわっと……この、退けっ!!」


執拗に攻撃を行う守護者に対してレナは攻撃を回避しながらも隙を突いて退魔刀を振り払い、顔面部分に強打する。しかし、同じアダマンタイトの素材で構成されているせいか、守護者の兜の部分を少しだけ凹ませる程度の損傷しか与えられず、力任せに破壊する事は難しい事が判明した。


(やっぱり硬いな……なら、一刀両断で蹴りを付けるしかないか)


半端な攻撃では守護者には通用しないと判断したレナは自分の奥の手で仕留めるため、まずは風の聖痕を利用して精霊を呼び集め、守護者を吹き飛ばすために合成魔術を発動させた。


「久々の……風刃!!」
「ゴロォオオオッ!?」


風の精霊の力を借りる事で強化された風の刃が守護者を吹き飛ばし、その隙にレナは一刀両断を発動させるために集中を行う。だが、守護者の方も吹き飛ばされがらも地面に向けて大太刀を突き刺し、勢いを殺す。

守護者はレナと距離が開いた事を確認すると、先ほどのように無謀に突っ込む事もなく、背中の鞘を引き抜く。そして大太刀の柄の部分を鞘に装着すると、奇天烈な「長槍」へと変化させてレナに向けて放つ。


「ゴロロロッ!!」
「槍!?」


まさか大太刀を鞘と組み合わせる事で槍に変化させて攻撃を仕掛けるなど思いもよらず、レナは咄嗟に上空へ飛んで回避する。一刀両断を発動するには高い集中力が必要のため、碌に集中せずに発動させると威力の精度が格段に落ちてしまう。

守護者を確実に倒すには最大限にまで威力を高めた「一刀両断」を発動させるしかなく、それ以外で守護者に勝てる方法はない。しかし、刃を交わすことが出来ないという条件はレナにとって大きな不利であり、退魔刀のような大剣はそもそも攻撃を回避するよりも防御する方が得意とする。


(あの刃に触れたら危険だとは分かってるけど、このままだと不味いな……ん?刃に高熱?)


最近にレナは高熱を放つ刃を扱う剣士と戦ったばかりの事を思い出し、ホムラの魔刀術と相対した時の状況を思い出す。あの時は彼女が長剣に纏わせた真紅の炎によって苦しめられ、退魔刀が危うく破壊されるところだった。しかし、その時にレナも魔鎧術を駆使して自分の魔刀術を生み出した事を思い出す。


(そうだ、あの時の様に魔力で刀身を覆えばあの刃にも対抗出来るかもしれない……やってみるか)


レナは意識を集中させ、手元に魔力を集中させると青色の炎を生み出し、退魔刀全体に覆いこむ。青の炎に包まれる退魔刀を見てレナはこの際に名前を付ける事に決め、無意識に呟く。


「蒼炎刀……という所かな。いや、やっぱり今回こそアイリス剣という名前にしよう」
『なんでやねん!!』


交信を行っていないのにアイリスからのツッコミの声が心の中に響いた様な気がしたが、レナはアイリス剣改め「蒼炎刀」と名付けた魔刀術を利用して守護者に立ち向かう。
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