上 下
772 / 2,083
外伝 ~ヨツバ王国編~

魔鎧術と魔刀術

しおりを挟む
『よし、こうなったらスラミンにそこの小川で大量の水を吸収させて、放水であいつの剣の炎を消してやる!!』
『いや、あれは炎のように見えますけど実際は魔力の塊ですから、その方法では消せませんって』
『ならどうすればいいの?』
『魔刀術に対抗するにはこちらも魔刀術を使うしかありません。という事でレナさんも魔刀術を覚えましょう』
『え、そんな簡単に扱える物なの?』


アイリスの言葉にレナは驚くが、彼女曰く既に今のレナならば魔刀術を扱える条件を整えているという。


『お忘れですかレナさん?レナさんは既に魔鎧術を覚えています。魔鎧術も魔刀術も自分の魔力を実体化させるという点では共通しているんです。だから大剣に魔力の鎧を纏わせるイメージを行いながら魔力を流し込めばいいんですよ』
『あ、そっか……ホネミンも前に似たようなことを言ってたな』


レナは魔鎧術の存在を思い出し、普段はあまり使わないので忘れていたが魔力を実体化させる技術は既に身に着けていた。相手が魔刀術を使用するのならばこちらも魔鎧術で対抗するため、アイリスとの交信を遮断したレナは意識を退魔刀に集中させる。


「はああっ!!」
「何っ!?」


大剣に意識を集中させたレナは手元から青色の炎を想像させる自身の魔力を生み出し、そのまま大剣全体に包み込む。かなりの魔力を消耗するが無事に成功し、ホムラの真紅の炎に対してレナは「蒼炎」を想像させ、仲間達も見た事もない魔法剣を扱うレナに驚く。


「あ、青い炎!?レナ、そんな魔法剣も使えたのか!?」
「そんな魔法も覚えていたとは……流石はマリア殿の甥!!」
「……綺麗」


蒼炎を纏った退魔刀を振り翳したレナはホムラと向き合うと、本当にこの剣で対抗できるのか不安を抱くが、それでも退く事は出来ないので勢いよく踏み込む。


「兜砕き!!」
「ぐうっ!?」


全身全霊で振り下ろされた大剣に対してホムラは正面から受け止めるが、あまりの衝撃に足元の地面に亀裂が走り、耐え切れずにホムラも膝を崩す。真紅と蒼の炎を纏った刃同士が高熱を周囲に発生させ、後退したレナは大剣の刃を確認すると、今度は溶かされていない事を知る。

アイリスの言葉通りにこの状態ならば大剣が溶かされる事もなく抵抗出来る事を知り、これで本気で戦えると判断したレナはホムラに向けて戦技を連発した。


「旋風!!回転!!刺突!!」
「くっ……!?」


剣士にとっては最初に覚える基本の戦技だが、レナが繰り出す場合は必殺の威力を誇り、ホムラは剣で受ける度に腕が痺れてしまう。魔刀術さえなければレナも全力で攻撃が行えるため、彼女に向けて最大の一撃を放とうとした。


「一刀……!!」
「このっ……調子に乗るなっ!!」
「だ、駄目ぇっ!!」


一刀両断の戦技を繰り出そうとしたレナに対し、ホムラも反撃を繰り出そうとした瞬間、二人の間に人影が割り込む。慌てて両者共に剣を止めると、割り込んだ人物の顔を見てレナ達は驚きの声を上げた。


「ティナ!?どうしてここに……」
「だ、駄目だよ二人とも!!こんな所で喧嘩しちゃ怒られちゃうよ!?」
「ちっ……退け、邪魔だ王女!!」
「ちょちょ、ホムラさん落ち着いて!!」
「ヒヒンッ!!」


ティナの後にエリナも姿を現し、彼女の後ろにはユニコも現れてホムラを止める。だが、戦闘の際中に邪魔をされたホムラは怒り心頭で二人を怒鳴りつける。


「何の真似だお前達!!こいつらは侵入者だ、ならば西聖将の俺が対処する義務がある!!分かったらそこを退けっ!!」
「はうっ!?」
「ち、違いますってホムラさん!!この人達はあたし達の仲間なんです!!敵じゃありませんから、落ち着いてください!!」
「……何だと?」


エリナの言葉にホムラはレナ達を振り返り、訝し気な表情を浮かべながらも剣を鞘に納める。その様子を見てレナも安心して退魔刀を背中に戻すと、まずは仲間達を呼び寄せる。再会の喜びを分かち合う暇もなく、いったい彼女が何者なのかをレナの仲間達はティナとエリナに尋ね、改めてお互いの自己紹介を行う。


「皆さん、この方は西聖将のホムラさんです。先代の西聖将のゴウカ様がお亡くなりになられたので後を継ぎ、現在はこの西聖将の領地を管理している人です」
「せ、西聖将?この女が……?」
「驚いたでござる。しかし、あの強さはまさしく六聖将級、納得したでござる」
「凄い」
「ホムラさん、この人達はティナ様を救うためにわざわざバルトロス王国から来てくれた……あ、ちょっと!?」
「ふん……」


西聖将と紹介されたホムラは不機嫌そうに鼻を鳴らし、続けてエリナがレナ達の紹介を行おうとしたが、彼女はそれを無視して自分の連れて来た「クロ」という名前の黒馬の元へ向かう。

彼女が乗ってきたクロに視線を向けたレナはエリナが世話しているユニコに視線を向け、皮膚の色や額の角の数に違いはあるが容姿は瓜二つである事に気付き、もしかしたら「ユニコーン」と対を為す「バイコーン」と呼ばれる魔獣ではないかと考える。地球の神話ではユニコーンと相対する存在として語られているが、こちらの世界にもユニコーンと同様に実在したことを初めて知った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

断罪されているのは私の妻なんですが?

すずまる
恋愛
 仕事の都合もあり王家のパーティーに遅れて会場入りすると何やら第一王子殿下が群衆の中の1人を指差し叫んでいた。 「貴様の様に地味なくせに身分とプライドだけは高い女は王太子である俺の婚約者に相応しくない!俺にはこのジャスミンの様に可憐で美しい女性こそが似合うのだ!しかも貴様はジャスミンの美貌に嫉妬して彼女を虐めていたと聞いている!貴様との婚約などこの場で破棄してくれるわ!」  ん?第一王子殿下に婚約者なんていたか?  そう思い指さされていた女性を見ると⋯⋯? *-=-*-=-*-=-*-=-* 本編は1話完結です‪(꒪ㅂ꒪)‬ …が、設定ゆるゆる過ぎたと反省したのでちょっと色付けを鋭意執筆中(; ̄∀ ̄)スミマセン

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!

ペトラ
恋愛
   ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。  戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。  前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。  悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。  他サイトに連載中の話の改訂版になります。

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~

つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。 政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。 他サイトにも公開中。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。