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外伝 ~ヨツバ王国編~

西聖将の領地

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「ぷるぷるぷるっ……ぷるんっ!?」
「ん?どうしたのでござるかスラミン?」
「ぷるぷるぷ~る!!」
「何か見つけたと言ってるみたい」


スラミンを抱えたコトミンが翻訳すると、何を見つけたのか気になったレナ達はスラミンが示す方角へ向けて移動を行う。その結果、森の中で流れている小川を発見した。


「なんだ、ただの小川じゃん。スラミン、お腹減って水を飲みたかったのか?」
「ぷるるんっ」
「違う、この小川は小川じゃない」
「え?どういう意味?」


見た限りでは森の中に流れる小川にしか見えないが、コトミンとスラミンだけは目の前の小川から水の臭いがしない事に気付き、彼女は小川に向けて小石を投げ込む。


「見てて」
「見てって……うわっ!?何だ!?」
「これは……」


コトミンが小石を投げつけた瞬間、小川の中に入り込む前に小石は空中で何かに衝突したように弾かれ、空間に波紋が生じた。それを見たレナ達は驚き、試しにレナが退魔刀を引き抜いて波紋が生じた空間に伸ばすと、まるでゴムのような物に触れた感覚が広がる。

どうやら透明なゴムのような壁が小川の前に存在するらしく、この壁に遮られて水の臭いが感じられなかったらしい。しかもレナが退魔刀の力を込めて押し込むと、弾力性があるのか跳ね返されてしまう。それを確認したレナは退魔刀を背中に戻し、見えない壁に触れながら様子を伺う。


「何だろうこの壁……結界石の障壁みたいな物かな?」
「でも、こんなの見たことないぞ……というより、この先にどうやって進めばいいんだ?」
「この感触、スライムと似ている」
「ぷるるんっ……」
「キュロロ……」


全員で見えない壁に触れてどうすれば侵入できるのか悩み、この先が目的地なのに入る手段がなければ先へ進めないため、レナは見えない壁を突破する方法を考える。


(これが魔法によって作り出された物なら、反鏡剣を使えば……)


全員を下がらせてレナは反鏡剣を引き抜くと、あらゆる魔法を跳ね返す素材で構成された反鏡剣ならば結界を破れるかもしれず、レナは戦技を発動させて切りつける。


「兜砕き!!」


全力で剣を振りぬいた瞬間、刃はあっさりと見えない壁を切り裂き、隙間を作り出す事に成功する。しかし、すぐに壁の隙間は塞がり始め、だいたい10秒ほどで閉じてしまう。それを確認したレナは頷き、仲間達に提案した。


「うん、反鏡剣なら隙間が作れるみたいだから先へ進めそう」
「いや、でもこれ明かに侵入者が入ってこないようにしているよな……本当に大丈夫なのか?」
「まあ、ティナ達がこの中に居るのは間違いないし……それにデブリ国王たちの石像は俺が預かってるんだし、大丈夫だよ……多分」
「その最後の一言で一気に不安になったでござる」
「とにかく、こんな所で立ちどまっても仕方ないよ。先へ進もう」


レナの言葉に全員が従い、見えない壁に隙間を作り出して全員が渡り切る。見えない壁の中に入っても特に外観が変化したわけではなく、本当に透明な壁が遮っていただけで別におかしな点はない。このまま先へ進もうとした時、ミノが何かを発見したのか地面を指差す。


「ブモォッ!!」
「どうしたのミノ?あ、これは……ウルの足跡だ!!やっぱり、ティナ達もここへ来てたんだ!!」


地面に大きな狼の足跡を発見し、長年共に過ごしたレナだからこそ足跡の正体がウルだと見抜く。そして観察眼の能力を発動させるとウルの足跡でどちらの方角へ向かったのかがはっきりと分かり、まだ足跡が出来てからそれほど時間は経過していない様子だった。


「よし、足跡を追って行こう!!今なら追いつけるかも!!」
「承知したでござる」
「やっと合流か……あれ?コトミンとスラミンはどこ行った?」
「ここにいる、スラミンに水分補給させている」
「ぷるるんっ♪」


コトミンは小川の中にスラミンを突っ込み、小川の水を飲み込ませる。王都を抜け出す際に大分無理をさせたのでスラミンも水分補給させて疲れを癒そうとするが、唐突にスラミンが震えだす。


「ぷるんっ!?ぷるぷるっ!!」
「きゃっ!?」
「スラミン!?どうしたの急に!?」
「ぷるるるんっ!!」


スラミンはコトミンの手元を離れると小川の中に飛び込み、大量の水分を補給して体積を肥大化させる。そんなスラミンの行動に全員が驚く中、ハンゾウが声を上げた。


「む、この気配……誰かが接近してくるでござる!!」
「え!?ティナ達か!?」
「いや、数が合わないでござる……レナ殿、すぐにここを離れた方がいいでござる!!」
「分かった、スラミン戻っておいで!!」
「ぷるるっ……」


大量の水分を吸収して通常時の3倍近くは大きくなったスラミンだが、レナの声を聞いて仕方なく小川から身を乗り出す。しかし、その間にも遠方から馬の足跡のような音が鳴り響き、レナ達の元へ接近していた。
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