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外伝 ~ヨツバ王国編~

王都の様子

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『アイビス!!』
『なんです……ちょっと待ってください、今違う名前で呼びませんでした?』
『アイビスカス!!』
『開き直って言い直しましたよこの人!!』
『それよりも王都の様子はどうなってる?』


移動の際中にレナはアイリスと交信を行い、王都の様子を伺う。だが、以前にアイリスが話していた通り、王都には「月光樹」と呼ばれる特殊な樹木が埋め込まれており、残念ながらアイリスでも王城内の様子を探る事は出来ないという。


『う~ん……駄目ですね。王城には至る箇所に月光樹が生えているせいで中の様子を探る事も出来ませんし、王城内の人間の様子も分かりません。なのでカレハが何を考えているのかは私でも読み取る事は出来ません』
『くそ、やっぱり駄目か……』
『ですけど、王城から出てきた兵士の記憶を読み取る限りでは既にカレハは東壁街へ向けた新しい討伐隊を派遣する様子はありません。キラウのお陰で守備将軍ごと東聖将軍を石化させる事には成功しましたが、やはり防衛に適した東壁街を責めるとなるとそれなりの人数の兵士を派遣しなければなりませんからね』
『具体的には王都にはどれくらいの兵士が残っている?』
『守備将と護衛将が抜けたせいで王都の配置されている兵士はそれほど多くはありません。せいぜい3000程度でしょうね。それでも王都の守備を任される程の強者揃いです』


カレハはまだ新しい討伐部隊の派遣の準備をしていない事にレナは安心するが、それでも王都には3000近くの兵士が残っている事を知る。レナはこのまま王都を横切って西聖将の領地へ向かうつもりだったが、やはり無謀過ぎたかと考えてしまう。


『このまま移動して西聖将の領地まで無事に辿り着けると思う?』
『難しいですね……王都の周辺にも侵入者を警戒して数百人の兵士を待機させていますし、残された緑影の隊員も集められています。しかも王都の周辺にも月光樹が植え付けられている地域が多いので私が様子を調べて安全な道を教える事も難しいです』
『参ったな……やっぱり、迂回しておくべきだったかな?』
『いえ、そちらの方が西聖将の領地へ辿り着く可能性は低かったでしょうね。北側には1万を超える北聖将軍、南側の方も先日に南聖将が討伐された事で血獣やフェンリルの脅威がなくなった事で魔物達が活発的に行動しています。その魔物の対処のために数千人の兵士が派遣されていますから、どちらの路も西聖将の領地へ辿り着く事は更に難しかったはずです』
「そうか……」


結果的にはレナの判断は間違ってはいなかったらしく、各領地へ軍隊を派遣させた事で王都に残された兵士の数は減少し、実は最も西聖将の領地へ辿り着く可能性が高い経路は王都を横切って西聖将の領地へ向かう方法だった。しかし、いくら可能性が高いといっても森の中には数百人の兵士と緑影が配置されている以上、簡単には辿り着けない。

猶予は数日、その間に西聖将の元へ辿り着き、石像を戻す精霊薬を分けて貰えばデブリ国王を元に戻す事が出来る。彼が元に戻ればカレハに従っていた者達もデブリ国王には逆らえず、カレハを追い込むことが出来る。しかし、そのためにはどうにか西聖将の領地へ辿り着かなければならなかった。


『最も早く西聖将の領地へ辿り着く方法とかはないの?』
『私も色々と考えましたが、やはり危険を犯さずに安全に辿り着く方法の場合だと時間が掛かりすぎます。逆に危険ですが、西聖将の領地へ一気に近づける方法ならありますけど……』
『そんな方法があるの?』


アイリスによると時間は掛かるが安全で確実に西聖将の領地へ辿り着ける方法か、あるいは失敗すれば命を落としかねない程の危険性はるが、成功すれば最速最短で西聖将の領地へ辿り着ける方法を考えたという。安全面を考慮すれば前者一択だが、東壁街へ残した者達の事を考えると今は時間がどうしても惜しいレナはもう一つの方法を選択する。


『アイリス、危険な方法の詳細を教えて』
『はあ……やっぱりそちらを選びますか。仕方ありませんね、レナさんならそういうと思いましたよ。ですが、この方法は本当に危険ですよ?』
『大丈夫だ、問題ない』
『いや、そのセリフを聞いて一気に不安になったんですけど……そんな装備で大丈夫なんですかと言い返しそうになったじゃないですか』
『いいから早く教えてくれよ』


このような状況でもボケをかますレナに呆れてしまうが、アイリスはレナの望み通りにある方法を伝える。彼女から全ての話を聞き終えたレナはあまりの方法に呆れを通り越して感心してしまう。


『……よくそんな作戦を考え付いたな』
『どうします?辞めておきます?』
『いや、その作戦で行こう』


レナはアイリスの提案に賛成し、相当に危険な真似をする事になるが、この方法ならば確実に王都近辺に存在する兵士達を引き付ける事が出来る。そしてその間に手薄となった警備を掻い潜り、西聖将の領地へ辿り着ける事も不可能ではなかった。
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