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外伝 ~ヨツバ王国編~

ティナの決断

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運び出された石像はデブリ国王、アルン王子、ノルン王女、そして剣聖のシュンとティナの護衛役のリンダが運び込まれ、その光景を見てエルフの兵士は悲痛な表情を浮かべる。自分達が仕える国の王族が石化されたという事実を嫌でも思い知らされるが、逆に石化された状態だからこそ都合が良い事もあった。


「よし、試すよ。アイン、手伝って」
「キュロロッ」


アインが石像を持ち上げると、レナが作り出した黒渦の中にゆっくりと入れる。その光景を全員が固唾を飲んで見つめ、やがて石像は黒渦の中に取り込まれて消え去ってしまう。


「おおっ!!」
「本当に成功した!!」
「なるほど、石像の状態ならば異空間に取り込むことが出来るのか……!!」
「この方法にもっと早く気づいていれば色々と手は打てたのにな……まあ、今更なんだけどさ」


空間魔法ならば石像が回収できる事が判明し、全ての石像を異空間に回収を行う。これで侵入者に石像を破壊される心配はなく、レナの意思で自由に取り出す事ができる。一先ずは石像の安全を確保できたが、ここから問題なのはどのような手段で西聖将の領地へ向かい、精霊薬を分け与えて貰うかであった。


「西聖将の領地へ向かう場合、どれくらい掛かるかな?」
「王都を迂回する場合では恐らくは一週間、王都を横切る場合は4日程だ。そして王都から東壁街へ軍隊が派遣されれば最短で2日で到着する。今の所は王国に動きはないが、恐らくは七影衆の帰還を待ってから動く手筈だろう」


レナの質問にラナが答えると、危険を犯して王都を横切る場合は4日、迂回して安全な経路で向かう場合は1週間かかる場合、往復を考えてもどちらのルートも王都から軍隊が派遣されれば東壁街へ先に戻る事は出来ない。

東壁街の現在の勢力では防衛だけで手一杯であり、しかも魔の草原には残してきた石像の件もある。なので早急に西聖将の領地へとたどり着き、精霊薬を使用して国王たちを元に戻して王都を制圧しているカレハをどうにかしなければならない。猶予は一刻もなく、王都から軍隊を派遣される前にレナは西聖将の領地へ向かう決意を抱く。


「王都を横切る路を進もう。危険かもしれないけど、時間がない」
「レナ、私達も一緒に行く」
「そ、そうだな……レナだけに無茶はさせられないしな」
「拙者も同行するでござる!!」


当然ながらレナだけを危険な目に遭わせるわけにはいかず、コトミン、ダイン、ハンゾウも同行を願い出る。反対した所で付いてくると判断したレナは頷き、ラナとエリナに案内役を頼む。


「悪いけどラナかエリナに道案内を頼みたいんだけど、どっちか一緒に来てくれる?」
「私は七影衆の見張りと負傷した緑影の面倒を見なければならないんだが……」
「あたしもティナ様の傍を離れ過ぎるのは……すいません、兄貴」
「待って!!」


ラナは負傷した仲間の世話と七影衆の監視、エリナはティナの護衛役として傍を離れるわけにはいかないので断ろうとしたが、その話を聞いていたティナが口を挟む。彼女は何時になく真剣な表情を浮かべ、強い決意を抱いた様に大きな声をあげる。


「私も一緒に行く!!アインちゃんに乗ってレナたん達と一緒に行く!!」
『えっ!?』


とんでもない事を言い出したティナに全員が驚愕し、当然だがエリナとリョウコとラナが真っ先に反応してティナの発言に反対した。


「そんな、駄目っすよティナ様!?」
「危険過ぎます!!」
「王女様、それはいけません!!」
「でも、私が行けばきっと西聖将さんも精霊薬を渡してくれると思うの!!だから、一緒に行く!!もう、これ以上じっとなんかしてられないよ!!」
「てぃ、ティナ様?」


普段の彼女らしからぬ強い意志を感じさせる言葉にエリナは戸惑い、どうして彼女がそこまでするのかと尋ねようとすると、先にティナの方が語りだす。


「私、王位継承者って言われても、正直に言ってよく分からなかったよ……けど、カレハ姉様に命を狙われて、しかもお父さんもお兄ちゃんもお姉ちゃんも石像にされて……それに私達のために戦ってくれた他の人達も石像にされてやっと気づいたんだよ。今回の件は全部、私が悪いんじゃないかって……」
「何を言ってるんですか!!姫様は何も悪い事なんて……」
「だけど、私がちゃんとしていればこんな事は起きなかったんじゃないの!?もっと私がしっかりしていればカレハ姉様にここまで好き勝手される事なんてなかったはずだよ!!」
「そ、それは……」


ティナも彼女なりに現在のヨツバ王国の状況は把握しており、カレハの暴走を止めるのは本来は王位正統後継者である自分が行う役割だとは理解していた。しかし、今まで彼女は自分自身でカレハを止めるなど考えつくことも出来ず、レナや他の人間に任せていた。

だが、魔の草原でギンタロウを初めとして大勢の人間が石化された事により、ティナ自身もやっと気付く。自分こそが一番にカレハを止めるべきなのにそれを怠り、そのせいで大勢の人間に迷惑を掛けたことを。だからこそティナは今からでも何かの役に立ちたいと思い、同行を願い出る。
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