753 / 2,083
外伝 ~ヨツバ王国編~
ティナの決断
しおりを挟む
運び出された石像はデブリ国王、アルン王子、ノルン王女、そして剣聖のシュンとティナの護衛役のリンダが運び込まれ、その光景を見てエルフの兵士は悲痛な表情を浮かべる。自分達が仕える国の王族が石化されたという事実を嫌でも思い知らされるが、逆に石化された状態だからこそ都合が良い事もあった。
「よし、試すよ。アイン、手伝って」
「キュロロッ」
アインが石像を持ち上げると、レナが作り出した黒渦の中にゆっくりと入れる。その光景を全員が固唾を飲んで見つめ、やがて石像は黒渦の中に取り込まれて消え去ってしまう。
「おおっ!!」
「本当に成功した!!」
「なるほど、石像の状態ならば異空間に取り込むことが出来るのか……!!」
「この方法にもっと早く気づいていれば色々と手は打てたのにな……まあ、今更なんだけどさ」
空間魔法ならば石像が回収できる事が判明し、全ての石像を異空間に回収を行う。これで侵入者に石像を破壊される心配はなく、レナの意思で自由に取り出す事ができる。一先ずは石像の安全を確保できたが、ここから問題なのはどのような手段で西聖将の領地へ向かい、精霊薬を分け与えて貰うかであった。
「西聖将の領地へ向かう場合、どれくらい掛かるかな?」
「王都を迂回する場合では恐らくは一週間、王都を横切る場合は4日程だ。そして王都から東壁街へ軍隊が派遣されれば最短で2日で到着する。今の所は王国に動きはないが、恐らくは七影衆の帰還を待ってから動く手筈だろう」
レナの質問にラナが答えると、危険を犯して王都を横切る場合は4日、迂回して安全な経路で向かう場合は1週間かかる場合、往復を考えてもどちらのルートも王都から軍隊が派遣されれば東壁街へ先に戻る事は出来ない。
東壁街の現在の勢力では防衛だけで手一杯であり、しかも魔の草原には残してきた石像の件もある。なので早急に西聖将の領地へとたどり着き、精霊薬を使用して国王たちを元に戻して王都を制圧しているカレハをどうにかしなければならない。猶予は一刻もなく、王都から軍隊を派遣される前にレナは西聖将の領地へ向かう決意を抱く。
「王都を横切る路を進もう。危険かもしれないけど、時間がない」
「レナ、私達も一緒に行く」
「そ、そうだな……レナだけに無茶はさせられないしな」
「拙者も同行するでござる!!」
当然ながらレナだけを危険な目に遭わせるわけにはいかず、コトミン、ダイン、ハンゾウも同行を願い出る。反対した所で付いてくると判断したレナは頷き、ラナとエリナに案内役を頼む。
「悪いけどラナかエリナに道案内を頼みたいんだけど、どっちか一緒に来てくれる?」
「私は七影衆の見張りと負傷した緑影の面倒を見なければならないんだが……」
「あたしもティナ様の傍を離れ過ぎるのは……すいません、兄貴」
「待って!!」
ラナは負傷した仲間の世話と七影衆の監視、エリナはティナの護衛役として傍を離れるわけにはいかないので断ろうとしたが、その話を聞いていたティナが口を挟む。彼女は何時になく真剣な表情を浮かべ、強い決意を抱いた様に大きな声をあげる。
「私も一緒に行く!!アインちゃんに乗ってレナたん達と一緒に行く!!」
『えっ!?』
とんでもない事を言い出したティナに全員が驚愕し、当然だがエリナとリョウコとラナが真っ先に反応してティナの発言に反対した。
「そんな、駄目っすよティナ様!?」
「危険過ぎます!!」
「王女様、それはいけません!!」
「でも、私が行けばきっと西聖将さんも精霊薬を渡してくれると思うの!!だから、一緒に行く!!もう、これ以上じっとなんかしてられないよ!!」
「てぃ、ティナ様?」
普段の彼女らしからぬ強い意志を感じさせる言葉にエリナは戸惑い、どうして彼女がそこまでするのかと尋ねようとすると、先にティナの方が語りだす。
「私、王位継承者って言われても、正直に言ってよく分からなかったよ……けど、カレハ姉様に命を狙われて、しかもお父さんもお兄ちゃんもお姉ちゃんも石像にされて……それに私達のために戦ってくれた他の人達も石像にされてやっと気づいたんだよ。今回の件は全部、私が悪いんじゃないかって……」
「何を言ってるんですか!!姫様は何も悪い事なんて……」
「だけど、私がちゃんとしていればこんな事は起きなかったんじゃないの!?もっと私がしっかりしていればカレハ姉様にここまで好き勝手される事なんてなかったはずだよ!!」
「そ、それは……」
ティナも彼女なりに現在のヨツバ王国の状況は把握しており、カレハの暴走を止めるのは本来は王位正統後継者である自分が行う役割だとは理解していた。しかし、今まで彼女は自分自身でカレハを止めるなど考えつくことも出来ず、レナや他の人間に任せていた。
だが、魔の草原でギンタロウを初めとして大勢の人間が石化された事により、ティナ自身もやっと気付く。自分こそが一番にカレハを止めるべきなのにそれを怠り、そのせいで大勢の人間に迷惑を掛けたことを。だからこそティナは今からでも何かの役に立ちたいと思い、同行を願い出る。
「よし、試すよ。アイン、手伝って」
「キュロロッ」
アインが石像を持ち上げると、レナが作り出した黒渦の中にゆっくりと入れる。その光景を全員が固唾を飲んで見つめ、やがて石像は黒渦の中に取り込まれて消え去ってしまう。
「おおっ!!」
「本当に成功した!!」
「なるほど、石像の状態ならば異空間に取り込むことが出来るのか……!!」
「この方法にもっと早く気づいていれば色々と手は打てたのにな……まあ、今更なんだけどさ」
空間魔法ならば石像が回収できる事が判明し、全ての石像を異空間に回収を行う。これで侵入者に石像を破壊される心配はなく、レナの意思で自由に取り出す事ができる。一先ずは石像の安全を確保できたが、ここから問題なのはどのような手段で西聖将の領地へ向かい、精霊薬を分け与えて貰うかであった。
「西聖将の領地へ向かう場合、どれくらい掛かるかな?」
「王都を迂回する場合では恐らくは一週間、王都を横切る場合は4日程だ。そして王都から東壁街へ軍隊が派遣されれば最短で2日で到着する。今の所は王国に動きはないが、恐らくは七影衆の帰還を待ってから動く手筈だろう」
レナの質問にラナが答えると、危険を犯して王都を横切る場合は4日、迂回して安全な経路で向かう場合は1週間かかる場合、往復を考えてもどちらのルートも王都から軍隊が派遣されれば東壁街へ先に戻る事は出来ない。
東壁街の現在の勢力では防衛だけで手一杯であり、しかも魔の草原には残してきた石像の件もある。なので早急に西聖将の領地へとたどり着き、精霊薬を使用して国王たちを元に戻して王都を制圧しているカレハをどうにかしなければならない。猶予は一刻もなく、王都から軍隊を派遣される前にレナは西聖将の領地へ向かう決意を抱く。
「王都を横切る路を進もう。危険かもしれないけど、時間がない」
「レナ、私達も一緒に行く」
「そ、そうだな……レナだけに無茶はさせられないしな」
「拙者も同行するでござる!!」
当然ながらレナだけを危険な目に遭わせるわけにはいかず、コトミン、ダイン、ハンゾウも同行を願い出る。反対した所で付いてくると判断したレナは頷き、ラナとエリナに案内役を頼む。
「悪いけどラナかエリナに道案内を頼みたいんだけど、どっちか一緒に来てくれる?」
「私は七影衆の見張りと負傷した緑影の面倒を見なければならないんだが……」
「あたしもティナ様の傍を離れ過ぎるのは……すいません、兄貴」
「待って!!」
ラナは負傷した仲間の世話と七影衆の監視、エリナはティナの護衛役として傍を離れるわけにはいかないので断ろうとしたが、その話を聞いていたティナが口を挟む。彼女は何時になく真剣な表情を浮かべ、強い決意を抱いた様に大きな声をあげる。
「私も一緒に行く!!アインちゃんに乗ってレナたん達と一緒に行く!!」
『えっ!?』
とんでもない事を言い出したティナに全員が驚愕し、当然だがエリナとリョウコとラナが真っ先に反応してティナの発言に反対した。
「そんな、駄目っすよティナ様!?」
「危険過ぎます!!」
「王女様、それはいけません!!」
「でも、私が行けばきっと西聖将さんも精霊薬を渡してくれると思うの!!だから、一緒に行く!!もう、これ以上じっとなんかしてられないよ!!」
「てぃ、ティナ様?」
普段の彼女らしからぬ強い意志を感じさせる言葉にエリナは戸惑い、どうして彼女がそこまでするのかと尋ねようとすると、先にティナの方が語りだす。
「私、王位継承者って言われても、正直に言ってよく分からなかったよ……けど、カレハ姉様に命を狙われて、しかもお父さんもお兄ちゃんもお姉ちゃんも石像にされて……それに私達のために戦ってくれた他の人達も石像にされてやっと気づいたんだよ。今回の件は全部、私が悪いんじゃないかって……」
「何を言ってるんですか!!姫様は何も悪い事なんて……」
「だけど、私がちゃんとしていればこんな事は起きなかったんじゃないの!?もっと私がしっかりしていればカレハ姉様にここまで好き勝手される事なんてなかったはずだよ!!」
「そ、それは……」
ティナも彼女なりに現在のヨツバ王国の状況は把握しており、カレハの暴走を止めるのは本来は王位正統後継者である自分が行う役割だとは理解していた。しかし、今まで彼女は自分自身でカレハを止めるなど考えつくことも出来ず、レナや他の人間に任せていた。
だが、魔の草原でギンタロウを初めとして大勢の人間が石化された事により、ティナ自身もやっと気付く。自分こそが一番にカレハを止めるべきなのにそれを怠り、そのせいで大勢の人間に迷惑を掛けたことを。だからこそティナは今からでも何かの役に立ちたいと思い、同行を願い出る。
0
お気に入りに追加
16,550
あなたにおすすめの小説
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ
ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
コミカライズもスタートしています
毎月最初の金曜日に更新です
お楽しみください!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
異世界居酒屋さわこさん細腕繁盛記
鬼ノ城ミヤ(天邪鬼ミヤ)
ファンタジー
陸奥さわこ 3*才独身
父が経営していた居酒屋「酒話(さけばなし)」を父の他界とともに引き継いで5年
折からの不況の煽りによってこの度閉店することに……
家賃の安い郊外へ引っ越したさわこだったが不動産屋の手違いで入居予定だったアパートはすでに入居済
途方にくれてバス停でたたずんでいたさわこは、そこで
「薬草を採りにきていた」
という不思議な女子に出会う。
意気投合したその女性の自宅へお邪魔することになったさわこだが……
このお話は
ひょんなことから世界を行き来する能力をもつ酒好きな魔法使いバテアの家に居候することになったさわこが、バテアの魔法道具のお店の裏で居酒屋さわこさんを開店し、異世界でがんばるお話です
異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?
すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。
一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。
「俺とデートしない?」
「僕と一緒にいようよ。」
「俺だけがお前を守れる。」
(なんでそんなことを私にばっかり言うの!?)
そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。
「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」
「・・・・へ!?」
『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。
※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。
ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。