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外伝 ~ヨツバ王国編~

七影

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「姫様、無事ですか!?」
「えっ?」
「エリナ!?どうした、外の様子を見張っていたんじゃないのか?」
「こちらは平気です。ティナ様も無事です」
「無事だぞ~」


エリナは屋敷に乗り込むとティナ達は驚いて彼女を迎え、とりあえずは襲われていなかった事を確認したエリナは安堵するが、すぐに屋敷を警護していた兵士と緑影が倒されていることを報告する。


「大変っす!!もう既に警護をしていた兵士も緑影の人達も倒されています!!屋敷の外で全員が倒れてて……」
「何だと!?馬鹿な、一体どうやって……!?」
「馬鹿な……」


この場の誰一人として警護を行っていた者達が外部からの侵入者に既に倒されていた事に気付けず、戦闘音さえも耳にしていない。ラナが竹笛を吹いても仲間たちが駆けつけない理由を悟り、笛を握りつぶす。


「まさか、奴等が……!?」
「ラナの姉さん、何か心当たりがあるんですか!?」
「……七影衆だ」
「七影衆……それはなんですか?」


ラナの言葉に全員が首を傾げ、この場に存在する者達は「七影衆」という聞きなれない単語に戸惑うが、ラナ曰くこの国を影で支えてきた緑影の中でも特殊な存在だという。


「皆が七影衆を知らないのは仕方がない。彼等を知るのはハヅキ様と王族、その他にごく一部の貴族にしか知らされていない。七影衆は緑影の中でも指折りの実力者にしか与えられない称号だ」
「七人の暗殺者、という事でしょうか?」
「その見解で合っている。だが、彼等は滅多に人前には姿を現さない。ハヅキ様の直属の配下といっても差し支えない存在だが、普段は別々に行動をしている。彼等は身内にも正体を隠し、普段は一般人を振舞って生活していると聞いている。だから彼等と連絡を取れるのは緑影を管理するハヅキ家当主のみ……つまり、彼等を動かせるのはハヅキ様だけのはずだ!!いくらカレハ王女が命じようとしても連絡手段が分からなければ動くはずが……」
『そこまでだ』


七影衆の説明を行うラナに対し、屋敷の外側から複数人の声が掛けられ、全員が驚いて屋敷の庭を覗くとそこには老若男女が入り混じった7人の森人族が存在した。全員が緑影の装束を着込んでおり、少年、青年、大男、若い女性、老人、老婆、最後に覆面とマントで身を隠した何者かが立っていた。

音も気配もなく現れた7人に対してエリナたちは身構えるが、ラナは彼等を見て全身から冷や汗を流し、武器を落としてしまう。その反応を見て全員が彼等が七影衆と呼ばれる存在だと気付く。


「し、七影衆……いつの間に!?」
「ラナ、お前は何をしている?」
「緑影の中でも古参で信頼の厚いお前がどうして国に背く?」
「答えなさい、ラナ」


七影衆はラナに視線を向けて言葉を掛けると、彼女は彼等から殺気を感じ取り、他の仲間たちを始末したのは七影衆だと確信する。それだけに彼女は怒りを抱き、同じ緑影の仲間でありながらカレハ王女に与した彼等を非難した。


「ふざけるな!!貴様等の方こそ何を考えている!?カレハ王女はこの国を乗っ取ろうとしている悪、七影衆ともあろう者がカレハ王女の本性を気付かないはずがないだろう!!」
『…………』


ラナの言葉に七影衆は無表情のまま黙り込み、その光景を見て不気味に思ったエリナはティナを守るように前に出た。リョウコもヨウコをティナに預けて鉞を構えると、ラナも武器を拾い上げて七影衆と向き合う。


「七影衆!!お前たちの方こそどうしてカレハ王女に寝返った!?そもそも何故、ハヅキ様としか連絡が取れないはずのお前たちが動いた!!」
「ラナ、お前の方こそ何も知らないのか?」
「ハヅキ様は亡くなられた事は我々も承知している」
「だが、ハヅキ様の跡を継ぐ者が現れた。だから我々は動いたのだ」
「既に我々は命令を受けている。ハヅキ家の新たな当主からな」
「な、なんだと……貴様等、まさか!?」


ハヅキ家の当主という言葉にラナは目を見開き、瞬時に彼等に命令を下した存在を見抜く。カレハ王女によって捕縛されていたと思われた人物であり、最近になってカレハ王女に六聖将とハヅキ家の当主に任じられた存在は一人しか存在しない。


「マリア様が……お前達に命じたというのか!?」
「その通りだ」
「あの方はハヅキ様の娘、当主を引き継ぐのは道理」
「我々はマリア様に忠誠を誓い、最初の指令を受けた」
「ティナ王女の保護、東聖将、及びバルトロス王国の関係者を殺せとな」
「そして……風の聖痕を持つ少年の捕縛もだ」
「レナたんを!?」
「兄貴に何をする気っすか!!」
「キュロロッ!!」


風の聖痕の所有者であるレナの捕縛と聞いてティナは驚愕し、エリナとアインは怒りを露わにするが、七影衆はティナ達の後ろの方で使用人に抱えられているレナの存在を見て目つきを鋭くさせた。
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