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外伝 ~ヨツバ王国編~
ギンタロウの決断は……
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「……決めたぞ、我らは全軍で挑む!!籠城戦など性に合わん、ケンタウロス族の我らの真価は地上戦だ!!」
『おおっ!!』
籠城したとしても勝ち目がない以上、ほんの僅かな勝利への可能性があるならばギンタロウは軍隊率いてクレナイに挑むことを決意する。だが、万が一の場合を備えて東壁街を守護する兵力は残さなければならない。
「将軍!!出撃するというのであれば東壁街の守備はどうされますか?3000の兵士の内、最低でも500人は残さなければ守る事は出来ないと思いますが……」
「お前たちは何を勘違いしている!!俺は全軍を率いて出発すると言ったのだ!!兵士は一人残らず連れて行く!!」
「えっ!?しかし、それでは街の防備が……」
「案ずるな!!この街には数多くの戦士や狩人がいる!!彼等は兵士でなくとも、十分に強い!!それにバルトロス王国から来てくれた冒険者の戦友も存在する!!彼等にこの街を守ってもらうのだ!!」
東壁街に暮らす民衆の中には戦闘職の人間も多く、人望が厚いギンタロウが声を掛ければ彼等も力を貸してくれるだろう。また、バルトロス王国から援軍に訪れてくれた冒険者は一騎当千の強者ぞろいであり、彼等の力も借りれば十分に籠城出来る戦力は存在した。
「しかし将軍、他国の者に東壁街の守護を任せるのは危険ではないのですか!?もしも彼等が裏切ったら……」
「大馬鹿者がっ!!貴様は共に戦った人間を信用できんのか!?第一にこの戦いはヨツバ王国の内乱だ!!そもそも他国の彼等の力を借りる事自体が恥ずべきことなのだ!!」
「も、申し訳ございません!!私が間違っておりました!!」
「うむ!!分かったのならすぐに準備を整えろ!!我らの力でクレナイを討ち取る覚悟を抱け!!」
不用意な発言を行った兵士の言葉にギンタロウは怒鳴りつけると、すぐに全軍の出撃の準備を急がせる。ギンタロウは自分の鉞に視線を向け、ヨツバ王国最強の将軍に挑む決意を固めるが、その前に最後に妻と娘に別れの挨拶へ向かう。
(これが家族と過ごせる最後の時間かもしれん……いや、何を弱気になっている!!俺は勝つ、勝って家族の元に戻るのだ!!)
クレナイと一戦交える決意を固めたギンタロウは自分の家族の元へ向かい、他の者たちも準備を急ぐ――
――それからしばらく立たない内にギンタロウの屋敷に呼び出された冒険者達は東聖将軍だけが出撃し、自分達は東壁街の守備を任された事に戸惑う。報告を伝えに来た伝令兵に対し、バルは憤慨する。
「おいおい、冗談じゃないよ!!ここまで来てあたし達を置いていくというのかい!?」
「冒険者の貴女方には感謝しています。我々のためにここまで戦ってくれたことを……勿論、貴女達にも目的があっての行動かもしれませんが、それでも北聖将軍が訪れた時、我々を助けてくれたことをギンタロウ将軍は深く感謝しています」
「本当に3000の手勢で挑むのか?相手は5000の精鋭を率いる最強の将軍だと聞くが……」
「我々にとって最高の将軍はギンタロウ将軍です。あの方と共に戦って散るのならば本望です……どうか、この街をお守りください。我々は相打ちになってでもクレナイ将軍と軍隊を止めます」
「決死の覚悟、か」
伝令兵の言葉に冒険者達は黙り込み、それほどの覚悟を抱かなければならない相手にギンタロウは自分の率いる軍勢だけで挑むという話に誰も何も言えない。冒険者達はここへ訪れた理由は各々異なり、氷雨の冒険者はマリアを救い出すため、牙竜の冒険者はバルトロス王国で拘束されているギガンのため、黒虎の冒険者は王国からの依頼を受けてバルと共にこの地に訪れた。
冒険者達は確かにギンタロウの軍勢と同行し、彼等と共にクレナイの軍隊を相手に相打ちまで覚悟して共に戦う道理はない。冒険者達の目的は東聖将の領地を守る事ではなく、自分達の目的を果たすために訪れたに過ぎない。
しかし、ここまで共に行動をしていた東聖将軍がクレナイの軍隊に挑み、自分達は安全な防備の面では安全な東壁街で待機していろと言われても全員が素直に喜ぶことは出来ず、これから相打ち覚悟でクレナイに挑む東聖将軍の事を考えるといたたまれない気持ちに陥る。
「……あたしは一緒に行くよ。ここまで世話になっておいて、手助け無用なんて言われても納得できないからね」
「待てバル!!お前は黒虎のギルドマスターだぞ?ここでお前が離れれば残された冒険者はどうなる!!」
「レナの奴辺りに任せるよ。あたしも一緒に行かせて貰うよ、嫌だと言っても付いて行くからね」
「バル殿……分かりました、ギンタロウ将軍に私が伝えておきます」
「バル!!」
他の冒険者の制止を振り払い、伝令兵と共に立去ろうとするバルを見て冒険者達は顔を見合わせ、複雑そうな表情で見送るしかなかった。だが、そんなバルの前に複数の影が立ちふさがる。
『おおっ!!』
籠城したとしても勝ち目がない以上、ほんの僅かな勝利への可能性があるならばギンタロウは軍隊率いてクレナイに挑むことを決意する。だが、万が一の場合を備えて東壁街を守護する兵力は残さなければならない。
「将軍!!出撃するというのであれば東壁街の守備はどうされますか?3000の兵士の内、最低でも500人は残さなければ守る事は出来ないと思いますが……」
「お前たちは何を勘違いしている!!俺は全軍を率いて出発すると言ったのだ!!兵士は一人残らず連れて行く!!」
「えっ!?しかし、それでは街の防備が……」
「案ずるな!!この街には数多くの戦士や狩人がいる!!彼等は兵士でなくとも、十分に強い!!それにバルトロス王国から来てくれた冒険者の戦友も存在する!!彼等にこの街を守ってもらうのだ!!」
東壁街に暮らす民衆の中には戦闘職の人間も多く、人望が厚いギンタロウが声を掛ければ彼等も力を貸してくれるだろう。また、バルトロス王国から援軍に訪れてくれた冒険者は一騎当千の強者ぞろいであり、彼等の力も借りれば十分に籠城出来る戦力は存在した。
「しかし将軍、他国の者に東壁街の守護を任せるのは危険ではないのですか!?もしも彼等が裏切ったら……」
「大馬鹿者がっ!!貴様は共に戦った人間を信用できんのか!?第一にこの戦いはヨツバ王国の内乱だ!!そもそも他国の彼等の力を借りる事自体が恥ずべきことなのだ!!」
「も、申し訳ございません!!私が間違っておりました!!」
「うむ!!分かったのならすぐに準備を整えろ!!我らの力でクレナイを討ち取る覚悟を抱け!!」
不用意な発言を行った兵士の言葉にギンタロウは怒鳴りつけると、すぐに全軍の出撃の準備を急がせる。ギンタロウは自分の鉞に視線を向け、ヨツバ王国最強の将軍に挑む決意を固めるが、その前に最後に妻と娘に別れの挨拶へ向かう。
(これが家族と過ごせる最後の時間かもしれん……いや、何を弱気になっている!!俺は勝つ、勝って家族の元に戻るのだ!!)
クレナイと一戦交える決意を固めたギンタロウは自分の家族の元へ向かい、他の者たちも準備を急ぐ――
――それからしばらく立たない内にギンタロウの屋敷に呼び出された冒険者達は東聖将軍だけが出撃し、自分達は東壁街の守備を任された事に戸惑う。報告を伝えに来た伝令兵に対し、バルは憤慨する。
「おいおい、冗談じゃないよ!!ここまで来てあたし達を置いていくというのかい!?」
「冒険者の貴女方には感謝しています。我々のためにここまで戦ってくれたことを……勿論、貴女達にも目的があっての行動かもしれませんが、それでも北聖将軍が訪れた時、我々を助けてくれたことをギンタロウ将軍は深く感謝しています」
「本当に3000の手勢で挑むのか?相手は5000の精鋭を率いる最強の将軍だと聞くが……」
「我々にとって最高の将軍はギンタロウ将軍です。あの方と共に戦って散るのならば本望です……どうか、この街をお守りください。我々は相打ちになってでもクレナイ将軍と軍隊を止めます」
「決死の覚悟、か」
伝令兵の言葉に冒険者達は黙り込み、それほどの覚悟を抱かなければならない相手にギンタロウは自分の率いる軍勢だけで挑むという話に誰も何も言えない。冒険者達はここへ訪れた理由は各々異なり、氷雨の冒険者はマリアを救い出すため、牙竜の冒険者はバルトロス王国で拘束されているギガンのため、黒虎の冒険者は王国からの依頼を受けてバルと共にこの地に訪れた。
冒険者達は確かにギンタロウの軍勢と同行し、彼等と共にクレナイの軍隊を相手に相打ちまで覚悟して共に戦う道理はない。冒険者達の目的は東聖将の領地を守る事ではなく、自分達の目的を果たすために訪れたに過ぎない。
しかし、ここまで共に行動をしていた東聖将軍がクレナイの軍隊に挑み、自分達は安全な防備の面では安全な東壁街で待機していろと言われても全員が素直に喜ぶことは出来ず、これから相打ち覚悟でクレナイに挑む東聖将軍の事を考えるといたたまれない気持ちに陥る。
「……あたしは一緒に行くよ。ここまで世話になっておいて、手助け無用なんて言われても納得できないからね」
「待てバル!!お前は黒虎のギルドマスターだぞ?ここでお前が離れれば残された冒険者はどうなる!!」
「レナの奴辺りに任せるよ。あたしも一緒に行かせて貰うよ、嫌だと言っても付いて行くからね」
「バル殿……分かりました、ギンタロウ将軍に私が伝えておきます」
「バル!!」
他の冒険者の制止を振り払い、伝令兵と共に立去ろうとするバルを見て冒険者達は顔を見合わせ、複雑そうな表情で見送るしかなかった。だが、そんなバルの前に複数の影が立ちふさがる。
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