上 下
721 / 2,083
外伝 ~ヨツバ王国編~

仲間達の決心

しおりを挟む
「このままレナが目を覚まさなかったら、僕達どうすればいいんだろうな」
「……大丈夫だ、レナは必ず起きる」
「そうだよな……よし、何時までも落ち込んでても仕方ないな!!」


ダインは何かを決心したようにゴンゾウの背中から降りると、彼は自分の杖を握り締める。ここから先はもうレナだけに苦労をさせないと心に誓い、ダインはゴンゾウに宣言した。


「ゴンゾウ、僕は決めたぞ!!レナが目を覚ますまでの間に僕達はもっと強くなるんだ!!レナの力を借りなくても大手柄を上げられるぐらいにな!!」
「強くなる?何か考えがあるのか?」
「へへっ……僕だって成長してるんだよ。新しい魔法をもう少しで生み出せそうなんだ。この魔法が完成すればもう影魔法が役に立たないなんて馬鹿にする奴等はいなくなるぐらい凄い魔法だからな!!」
「そうなのか……実は俺の方も新しい戦技を身に着けられそうだ。まだ、扱い慣れてはいないが完成したらきっと今以上に強くなれる気がする」
「何だよ、ゴンゾウもそんなとっておきがあったのかよ……僕だけが強くなって見返してやろうと思ったのに」
「ふっ、抜け駆けはさせないぞ」


ゴンゾウもダインも新しい技を身に着けるために訓練を積んでおり、二人はレナが目を覚ます前に強くなるため、技の完成を急ぐ。そんな二人の様子を陰から覗き見る者がいた。


「……今はちょっと入りにくいわね」


二人の様子を見ていたのはシズネであり、彼女はレナの見舞いに赴く途中に二人を見かけて声を掛けようとしたが、二人の会話が耳に入った。ここで話しかけてもどちらの邪魔になるだけだと考えたシズネは立ち去る事を決め、自分の腰に差した雪月花に視線を向ける。


「私も負けていられないわね。貴方の力をもっと引き出して見せるわ」


ゴンゾウとダインの決意を感じ取ったシズネの方も今以上に自分の持つ魔剣の力を扱えるようになるため、レナの見舞いは中断し、自分も鍛錬に励む事にした。



――七大魔剣の一角である雪月花は非常に危険な能力を所有しており、その力を完全に解放させればあの七大聖剣にも匹敵する力を引き出せる可能性は十分にあった。だが、反面に魔剣の力を引き出せば引き出す程に所有者に大きな負担が掛かるため、これまでシズネは魔剣の力をある程度抑えた状態でしか使った事がない。

しかし、フェンリルとの戦闘の際にシズネは自分が力を出し惜しみしたせいでレナに無理をさせたのではないかと考え込み、大切な人を守るためならば自分の身を削る事を躊躇する事を止め、彼女は雪月花の持つ力を全て引き出す覚悟を決めた。


(もう、貴方だけに苦しい思いはさせないわ……貴方が死ぬときは私も一緒よ、レナ)


雪月花を握り締め、何があろうとレナを守る事を決めたシズネは鍛錬に励むためにその場を立ち去る。




――同時刻、レナの看病を行っていたコトミンは桶の水を入れ替えるために井戸に移動して新しい水を汲もうとしていた。彼女は井戸から水を汲み上げる途中、桶の中の水面に映し出された自分の顔を見て黙り込む。


(レナはもう限界……これ以上は無理をさせちゃ駄目)


誰よりもレナと長い付き合いであるコトミンだからこそ、現在のレナが危うい状態である事を理解していた。肉体の方も危険な状態ではあるが、それよりも問題なのはレナの精神面である。


(レナはいつも一人で問題を解決しようとする……私達はそんなに頼りにならない?)


これまでの行動でレナは基本的には自分一人で解決出来る問題は一人で行い、他の人間に協力を求める事はあっても一番大変な役目はいつも自分が担っていた。そのせいで本人も知らず知らずに大きな負担を抱えるようになり、遂に無理が祟って倒れてしまう。

仮にレナが目覚めたとしても、彼がまた無茶をするだろうとコトミンは予測していた。しかし、それだけは何としても止めなければならないと感じたコトミンは何かを決心したように頷く。


(レナは私が守る……一生守る)


もうこれ以上はレナに無理をさせないと誓ったコトミンはまずはレナの身体を楽にさせるため、治療に専念する事にした――






――それから二日後の夕方、遂に東壁街に向けて接近するクレナイの軍隊の元へギンタロウが送り付けた使者の一行が到着する。予想よりも軍隊の進行速度は早く、既にクレナイは東聖将の領地内へ入っていた。


「六聖将筆頭、守備将のクレナイだ。お前達が東聖将ギンタロウの使者と聞いているが、何の用事でやってきた?」


幕舎の中にてギンタロウの側近であるキン、ギン、ドウの3名、更に護衛として付いてきたカゲマル、ハンゾウ、アヤメの3名は目の前に立つクレナイの迫力に圧倒される。6人とも優れた武人であるが故、クレナイから発せられる威圧を敏感に感じ取り、全員が冷や汗を流す。


(これがヨツバ王国最強の将か……なるほど、ゴウライとは違った雰囲気の武人だな)


バルトロス王国最強の剣士と言われているゴウライも常人とは異なる雰囲気を持つが、クレナイの場合は彼女とは違った独特の雰囲気を纏っており、迂闊に話しかける事も出来ないほどにカゲマル達は圧迫感を味わう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約者の浮気相手が子を授かったので

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ファンヌはリヴァス王国王太子クラウスの婚約者である。 ある日、クラウスが想いを寄せている女性――アデラが子を授かったと言う。 アデラと一緒になりたいクラウスは、ファンヌに婚約解消を迫る。 ファンヌはそれを受け入れ、さっさと手続きを済ませてしまった。 自由になった彼女は学校へと戻り、大好きな薬草や茶葉の『研究』に没頭する予定だった。 しかし、師であるエルランドが学校を辞めて自国へ戻ると言い出す。 彼は自然豊かな国ベロテニア王国の出身であった。 ベロテニア王国は、薬草や茶葉の生育に力を入れているし、何よりも獣人の血を引く者も数多くいるという魅力的な国である。 まだまだエルランドと共に茶葉や薬草の『研究』を続けたいファンヌは、エルランドと共にベロテニア王国へと向かうのだが――。 ※表紙イラストはタイトルから「お絵描きばりぐっどくん」に作成してもらいました。 ※完結しました

悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!

ペトラ
恋愛
   ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。  戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。  前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。  悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。  他サイトに連載中の話の改訂版になります。

(完結)お姉様を選んだことを今更後悔しても遅いです!

青空一夏
恋愛
私はブロッサム・ビアス。ビアス候爵家の次女で、私の婚約者はフロイド・ターナー伯爵令息だった。結婚式を一ヶ月後に控え、私は仕上がってきたドレスをお父様達に見せていた。 すると、お母様達は思いがけない言葉を口にする。 「まぁ、素敵! そのドレスはお腹周りをカバーできて良いわね。コーデリアにぴったりよ」 「まだ、コーデリアのお腹は目立たないが、それなら大丈夫だろう」 なぜ、お姉様の名前がでてくるの? なんと、お姉様は私の婚約者の子供を妊娠していると言い出して、フロイドは私に婚約破棄をつきつけたのだった。 ※タグの追加や変更あるかもしれません。 ※因果応報的ざまぁのはず。 ※作者独自の世界のゆるふわ設定。 ※過去作のリメイク版です。過去作品は非公開にしました。 ※表紙は作者作成AIイラスト。ブロッサムのイメージイラストです。

え?そちらが有責ですよね?

碧桜 汐香
恋愛
婚約者に浮気をされているはずなのに、声の大きい婚約者たちが真実の愛だともてはやされ、罵倒される日々を送る公爵令嬢。 卒業パーティーで全てを明らかにしてやります!

ヤケになってドレスを脱いだら、なんだかえらい事になりました

杜野秋人
恋愛
「そなたとの婚約、今この場をもって破棄してくれる!」 王族専用の壇上から、立太子間近と言われる第一王子が、声高にそう叫んだ。それを、第一王子の婚約者アレクシアは黙って聞いていた。 第一王子は次々と、アレクシアの不行跡や不品行をあげつらい、容姿をけなし、彼女を責める。傍らに呼び寄せたアレクシアの異母妹が訴えるままに、鵜呑みにして信じ込んだのだろう。 確かに婚約してからの5年間、第一王子とは一度も会わなかったし手紙や贈り物のやり取りもしなかった。だがそれは「させてもらえなかった」が正しい。全ては母が死んだ後に乗り込んできた後妻と、その娘である異母妹の仕組んだことで、父がそれを許可したからこそそんな事がまかり通ったのだということに、第一王子は気付かないらしい。 唯一の味方だと信じていた第一王子までも、アレクシアの味方ではなくなった。 もう味方はいない。 誰への義理もない。 ならば、もうどうにでもなればいい。 アレクシアはスッと背筋を伸ばした。 そうして彼女が次に取った行動に、第一王子は驚愕することになる⸺! ◆虐げられてるドアマットヒロインって、見たら分かるじゃんね?って作品が最近多いので便乗してみました(笑)。 ◆虐待を窺わせる描写が少しだけあるのでR15で。 ◆ざまぁは二段階。いわゆるおまいう系のざまぁを含みます。 ◆全8話、最終話だけ少し長めです。 恋愛は後半で、メインディッシュはざまぁでどうぞ。 ◆片手間で書いたんで、主要人物以外の固有名詞はありません。どこの国とも設定してないんで悪しからず。 ◆この作品はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆過去作のヒロインと本作主人公の名前が丸被りしてたので、名前を変更しています。(2024/09/03) ◆9/2、HOTランキング11→7位!ありがとうございます! 9/3、HOTランキング5位→3位!ありがとうございます!

かつて私のお母様に婚約破棄を突き付けた国王陛下が倅と婚約して後ろ盾になれと脅してきました

お好み焼き
恋愛
私のお母様は学生時代に婚約破棄されました。当時王太子だった現国王陛下にです。その国王陛下が「リザベリーナ嬢。余の倅と婚約して後ろ盾になれ。これは王命である」と私に圧をかけてきました。

婚約破棄はいいですが、あなた学院に届け出てる仕事と違いませんか?

来住野つかさ
恋愛
侯爵令嬢オリヴィア・マルティネスの現在の状況を端的に表すならば、絶体絶命と言える。何故なら今は王立学院卒業式の記念パーティの真っ最中。華々しいこの催しの中で、婚約者のシェルドン第三王子殿下に婚約破棄と断罪を言い渡されているからだ。 パン屋で働く苦学生・平民のミナを隣において、シェルドン殿下と側近候補達に断罪される段になって、オリヴィアは先手を打つ。「ミナさん、あなた学院に提出している『就業許可申請書』に書いた勤務内容に偽りがありますわよね?」―― よくある婚約破棄ものです。R15は保険です。あからさまな表現はないはずです。 ※この作品は『カクヨム』『小説家になろう』にも掲載しています。

【完結】幼い頃から婚約を誓っていた伯爵に婚約破棄されましたが、数年後に驚くべき事実が発覚したので会いに行こうと思います

菊池 快晴
恋愛
令嬢メアリーは、幼い頃から将来を誓い合ったゼイン伯爵に婚約破棄される。 その隣には見知らぬ女性が立っていた。 二人は傍から見ても仲睦まじいカップルだった。 両家の挨拶を終えて、幸せな結婚前パーティで、その出来事は起こった。 メアリーは彼との出会いを思い返しながら打ちひしがれる。 数年後、心の傷がようやく癒えた頃、メアリーの前に、謎の女性が現れる。 彼女の口から発せられた言葉は、ゼインのとんでもない事実だった――。 ※ハッピーエンド&純愛 他サイトでも掲載しております。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。