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外伝 ~ヨツバ王国編~
フェンリルの暴走
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――レイビがフェンリルの子供を見つけたのはただの偶然だった。彼がまだ子供の頃、森の中で弱っているフェンリルの子供を発見し、保護した事が切っ掛けだった。
森人族の間ではフェンリルは神聖な生物として敬愛され、同時にその力を恐れられていた。フェンリルの子供を見つけた事をレイビは他の者に知らせると彼等はフェンリルを恐れて隔離すると考え、自分一人で育て上げる事を決心する。魔物使いが魔物に対して情を抱くのは珍しくはなく、この時からレイビは心の何処かでフェンリルを自分の物にしたいと考えていたと思われる。
フェンリルを育て始めてから数十年が経過すると、立派に育ったフェンリルはレイビの命令を忠実に従う。また、レイビの方も最初はフェンリルの力だけを重視していたが、長い時を共に過ごす事で本当の家族のように大切に想う。レイビとフェンリルの間には確かな絆が生まれ、やがてレイビはフェンリルの主として六聖将に抜擢された。
しかし、フェンリルにはある大きな問題を抱えていた。それは満月の晩にのみ、フェンリルは精神が落ち着かず、暴れる癖を持っていた。これまでに発見されたフェンリルにそのような特徴はないため、レイビはフェンリルが満月の晩にのみ暴れる理由は子供の頃にフェンリルの身に何かが起きてトラウマになっているのではないかと推測する。
このレイビの予感は正しく、フェンリルは満月の晩に家族を失った記憶を持っていた。フェンリルの母親は出産のときに体力を使い果たしてしまい、その時に他の魔獣に襲われて殺されてしまう。生まれたばかりのフェンリルはどうにか逃げ切ったところをレイビに保護され、生き延びる事が出来た。
満月が訪れる度にフェンリルが暴走するのは生まれて間もなく母親の死を目にした事が原因で間違いなく、満月の晩を抑える度にレイビは魔物使いの能力を利用してフェンリルを落ち着かせていた。
しかし、レイビとの契約を解除され、更に家族同然に親しみを持っていたレイビが目の前で自殺した事により、フェンリルはこれまでに抑えていた自分の能力を引き出してレナ達に襲いかかろうとしていた。
「――ガアアアアッ!!」
「な、何だこれは!?」
「身体が光って……」
「まさか……魔鎧術!?」
フェンリルの肉体から白色の光が零れ落ちると、まるで白狼種のように全身が白く光り輝き、自身を拘束していた影魔法を強制的に解除した。その光景を見たレナはフェンリルが「魔鎧術」を使用したと認識し、色合いから聖属性の魔力を身に纏う事で影魔法を無効化したように見える。
「いかん!!早く止めを刺せ!!」
「金剛撃!!」
「グガァッ……!?」
完全に拘束を解除される前に鬼人化を発動させたゴンゾウが攻撃を仕掛けるが、彼の強烈な一撃を受けてもフェンリルは体勢を崩す事もなく、逆に尻尾を振り翳してゴンゾウに叩きつけた。
「ガアッ!!」
「ぐあっ!?」
「ゴンちゃん!!」
「……だ、大丈夫だ、今は敵に集中しろ!!」
尻尾を振り払っただけでゴンゾウの身体が吹き飛び、近くの岩へ衝突してしまう。その様子を見たレナは慌てて駆けつけようとしたが、ゴンゾウは血を流しながらも起き上がってフェンリルと向かい合う。鬼人化を発動していたお陰で致命傷は避けられたが、それでも損傷は激しく、頭から血が止まらない。
「ガアアッ!!」
「くっ……全員離れなさい!!雪月花の力を解放するわ!!」
「皆、離れろ!!」
シズネは雪月花を構えると刀身から冷気を放ち、フェンリルに向けて駆け出す。彼女の存在に気付いたフェンリルは右腕を振り翳そうとしたが、直感で危険を感じ取って攻撃を中断する。
「刺突!!」
「ウォンッ!!」
「躱した!?あの巨体で!?」
雪月花の能力を解放させたシズネが突きを繰り出すと、フェンリルはその場を跳躍して彼女の攻撃を回避し、別の場所へ降り立つ。結果としてそれが功を奏し、シズネの繰り出した雪月花の刃は別の岩へ衝突した瞬間、岩の全体が内側から凍結し、粉々へ砕け散る。もしもフェンリルが攻撃を受けていたら内側から凍結化されて破壊されていただろう。
「回転!!」
「強化射撃!!」
「和風牙!!」
「ガアアッ!!」
ジャンヌ、エリナ、ロウガが三方向から同時に攻撃を仕掛けるが、フェンリルは今度は回避を行わずに正面から攻撃を受けた。だが、剣の刃も矢の鏃もフェンリルが全身に纏う魔力の鎧によって阻まれ、弾き返されてしまう。
「ガアアッ!!」
「うおっ!?」
「きゃっ!?」
「そ、そんな……!!」
攻撃を弾き返したフェンリルは3人を振り払い、止めの一撃を繰り出すためにまずはエリナを狙う。だが、そんなフェンリルの背後から接近する人影が存在し、刀身に紅色の魔力を纏わせたレナが切りかかった。
「加速剣撃、兜割り!!」
「ウォンッ!?」
魔法剣を発動させて繰り出されたレナの一撃はフェンリルの背中に衝突し、魔力同士が衝突して弾ける。同時にフェンリルとレナの退魔刀に強い衝撃が走り、お互いが吹き飛ばされた。
森人族の間ではフェンリルは神聖な生物として敬愛され、同時にその力を恐れられていた。フェンリルの子供を見つけた事をレイビは他の者に知らせると彼等はフェンリルを恐れて隔離すると考え、自分一人で育て上げる事を決心する。魔物使いが魔物に対して情を抱くのは珍しくはなく、この時からレイビは心の何処かでフェンリルを自分の物にしたいと考えていたと思われる。
フェンリルを育て始めてから数十年が経過すると、立派に育ったフェンリルはレイビの命令を忠実に従う。また、レイビの方も最初はフェンリルの力だけを重視していたが、長い時を共に過ごす事で本当の家族のように大切に想う。レイビとフェンリルの間には確かな絆が生まれ、やがてレイビはフェンリルの主として六聖将に抜擢された。
しかし、フェンリルにはある大きな問題を抱えていた。それは満月の晩にのみ、フェンリルは精神が落ち着かず、暴れる癖を持っていた。これまでに発見されたフェンリルにそのような特徴はないため、レイビはフェンリルが満月の晩にのみ暴れる理由は子供の頃にフェンリルの身に何かが起きてトラウマになっているのではないかと推測する。
このレイビの予感は正しく、フェンリルは満月の晩に家族を失った記憶を持っていた。フェンリルの母親は出産のときに体力を使い果たしてしまい、その時に他の魔獣に襲われて殺されてしまう。生まれたばかりのフェンリルはどうにか逃げ切ったところをレイビに保護され、生き延びる事が出来た。
満月が訪れる度にフェンリルが暴走するのは生まれて間もなく母親の死を目にした事が原因で間違いなく、満月の晩を抑える度にレイビは魔物使いの能力を利用してフェンリルを落ち着かせていた。
しかし、レイビとの契約を解除され、更に家族同然に親しみを持っていたレイビが目の前で自殺した事により、フェンリルはこれまでに抑えていた自分の能力を引き出してレナ達に襲いかかろうとしていた。
「――ガアアアアッ!!」
「な、何だこれは!?」
「身体が光って……」
「まさか……魔鎧術!?」
フェンリルの肉体から白色の光が零れ落ちると、まるで白狼種のように全身が白く光り輝き、自身を拘束していた影魔法を強制的に解除した。その光景を見たレナはフェンリルが「魔鎧術」を使用したと認識し、色合いから聖属性の魔力を身に纏う事で影魔法を無効化したように見える。
「いかん!!早く止めを刺せ!!」
「金剛撃!!」
「グガァッ……!?」
完全に拘束を解除される前に鬼人化を発動させたゴンゾウが攻撃を仕掛けるが、彼の強烈な一撃を受けてもフェンリルは体勢を崩す事もなく、逆に尻尾を振り翳してゴンゾウに叩きつけた。
「ガアッ!!」
「ぐあっ!?」
「ゴンちゃん!!」
「……だ、大丈夫だ、今は敵に集中しろ!!」
尻尾を振り払っただけでゴンゾウの身体が吹き飛び、近くの岩へ衝突してしまう。その様子を見たレナは慌てて駆けつけようとしたが、ゴンゾウは血を流しながらも起き上がってフェンリルと向かい合う。鬼人化を発動していたお陰で致命傷は避けられたが、それでも損傷は激しく、頭から血が止まらない。
「ガアアッ!!」
「くっ……全員離れなさい!!雪月花の力を解放するわ!!」
「皆、離れろ!!」
シズネは雪月花を構えると刀身から冷気を放ち、フェンリルに向けて駆け出す。彼女の存在に気付いたフェンリルは右腕を振り翳そうとしたが、直感で危険を感じ取って攻撃を中断する。
「刺突!!」
「ウォンッ!!」
「躱した!?あの巨体で!?」
雪月花の能力を解放させたシズネが突きを繰り出すと、フェンリルはその場を跳躍して彼女の攻撃を回避し、別の場所へ降り立つ。結果としてそれが功を奏し、シズネの繰り出した雪月花の刃は別の岩へ衝突した瞬間、岩の全体が内側から凍結し、粉々へ砕け散る。もしもフェンリルが攻撃を受けていたら内側から凍結化されて破壊されていただろう。
「回転!!」
「強化射撃!!」
「和風牙!!」
「ガアアッ!!」
ジャンヌ、エリナ、ロウガが三方向から同時に攻撃を仕掛けるが、フェンリルは今度は回避を行わずに正面から攻撃を受けた。だが、剣の刃も矢の鏃もフェンリルが全身に纏う魔力の鎧によって阻まれ、弾き返されてしまう。
「ガアアッ!!」
「うおっ!?」
「きゃっ!?」
「そ、そんな……!!」
攻撃を弾き返したフェンリルは3人を振り払い、止めの一撃を繰り出すためにまずはエリナを狙う。だが、そんなフェンリルの背後から接近する人影が存在し、刀身に紅色の魔力を纏わせたレナが切りかかった。
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