694 / 2,083
外伝 ~ヨツバ王国編~
ティナと魔獣の快進撃
しおりを挟む
「むううっ……レナたんをこんな目に遭わせるなんて酷い!!私、兵士の人達に怒ってくるね!!」
「いや、怒ってくるって……俺は大丈夫だからさ」
レナはティナを落ち着かせようとしたが、急に酷い立ち眩みに襲われ、身体が倒れてしまう。それを見たティナは慌ててレナを受け止めると、身体が高熱を帯びている事に気付く。
「ううっ……!?」
「レナたん!?やっぱり大丈夫なんかじゃないよ!!」
「ティナ様、兄貴はあたしたちに任せて下さい!!だからティナ様は安全な場所で……」
「……もう我慢できない」
「え、ティナ様?」
ティナはレナをエリナに預けると、彼女の傍にアインとミノが近寄り、契約を交わしている主人の意思を読み取ったように跪く。その光景を見て他の者達はティナの様子がいつもと違う事に気付き、彼女は頂上へ続く山道を見て決意したように頷く。
「エリナ、レナたんを任せるね……」
「ティナ様?あの、どうしたんですか?なんかいつもよりぴりぴりしてません?」
「私だって怒る時は……怒るんだよ」
「ひっ!?」
「な、何だいこの緊張感は……!?」
「ま、不味い……この気配は俺が妻を怒らせたときと同じだ!!」
エリナにレナを預けたティナは普段の彼女ならば考えられない程の「威圧」を放ち、その威圧を感じ取った者達は冷や汗を流す。武人であるバルやギンタロウでさえも彼女から放たれる圧力を感じ取り、全員が動揺してしまう。
――アインとミノを従えたティナは山道に視線を向けると、全員に顔を振り向く。その彼女の顔を見た者達は何故かティナの背後に仁王像のような筋骨隆々の森人族の男性の姿が思い浮かんだ。
「私……もう、怒ったよ」
「ティナ、様?」
「私はもう怒ったよ!!とっても起こったよ~!!」
「ウォオオンッ!!」
「キュロロロッ!!」
「ブモォオオオッ!!」
「ヒヒィンッ!!」
「「ぷるるるんっ!!」」
ティナは叫び声をあげると同時に魔獣達が騒ぎ出し、一斉に山道を駆け上る。スラミンとヒトミンさえも興奮したかのように後に続き、ティナと魔獣達は山道を一気に駆け上って頂上へ向かう。
「え!?ちょ、ティナ王女様!?危険です、戻ってきてください!!」
「いかん!!すぐに王女様を止めろ!!」
「王女様!!戻ってきてください!!」
慌てて他の者達が彼女を止めようとしたが、ティナは白狼種のウルやユニコーンのユニコと同等の速度で駆け抜け、山道を巡回していた警備の兵士達に見つかってしまう。
「ん……な、何だ!?」
「ま、魔獣!?どうしてこんな場所に……」
「おい、こっちに来るぞ!?」
オロナ鉱山を守備する兵士達はティナと彼女に従うように並行する魔獣達の姿を見て驚愕し、一体何が起きているのか理解出来ずに慌てて戦闘体勢に入ろうとしたが、ティナは坂道を一気に登って兵士達の元へ突進する。
「退いてっ!!」
「うわぁっ!?」
「な、何だぁっ!?」
「ぎゃああっ!!」
ティナを止めようとした兵士達は彼女が突き出した掌を受けた途端に吹き飛び、次々と転倒して坂道を転がり落ちていく。しかも転倒した後にティナの後に続いた魔獣達に踏みつぶされ、兵士達の悲鳴が山中に響く。
「ウォオオンッ!!」
「キュロロッ!!」
「ブモォッ!!」
「ヒヒンッ!!」
「な、何なんだこいつらはぁっ!?」
「やめっ……こっちにくるなぁああっ!!」
白狼種、サイクロプス、ミノタウロス、ユニコーンという魔物の中でも危険度が高い魔獣達が迫りくる光景に兵士達は悲鳴をあげて逃げ惑う中、暴走したティナを止めるために他の者達も慌てて追いかけた。
「てぃ、ティナ様!!落ち着いて下さい、止まってぇええっ!!」
「ほら、お菓子をあげるから落ち着いて欲しいでござる!?」
「なんという速度だ……俺達、和国の忍者にも匹敵するぞ!?」
ティナを止めるためにエリナは大声を上げるが、先頭を走るティナは彼女の声が聞こえていないのか山道を駆け上る。その光景を見てギンタロウは何かを思い出したかの様に叫ぶ。
「駄目だ、あの状態のティナ王女は止める事は出来んぞ!!」
「ど、どういう事ですか!?あの状態とは一体何ですか!?」
「昔、一度だけティナ王女があのような状態に陥った事を俺は見た事がある!!デブリ国王が他の王族の方々を連れて狩猟に出かけた際、ティナ王女が当時可愛がっていた一角兎の子供がコボルトに襲われて怪我をした!!その時、ティナ王女が今のような状態に陥ってコボルトを追いかけ回した事がある!!しかもティナ王女はその時まだ5才だったはずだ!!」
「嘘でしょう!?」
5才の子供だったティナがコボルトを追いかけ回したという話を聞いて他の者達は激しく動揺するが、ギンタロウによると彼女は子供の頃から並外れた身体能力と魔力を持ち合わせていたという。
「いや、怒ってくるって……俺は大丈夫だからさ」
レナはティナを落ち着かせようとしたが、急に酷い立ち眩みに襲われ、身体が倒れてしまう。それを見たティナは慌ててレナを受け止めると、身体が高熱を帯びている事に気付く。
「ううっ……!?」
「レナたん!?やっぱり大丈夫なんかじゃないよ!!」
「ティナ様、兄貴はあたしたちに任せて下さい!!だからティナ様は安全な場所で……」
「……もう我慢できない」
「え、ティナ様?」
ティナはレナをエリナに預けると、彼女の傍にアインとミノが近寄り、契約を交わしている主人の意思を読み取ったように跪く。その光景を見て他の者達はティナの様子がいつもと違う事に気付き、彼女は頂上へ続く山道を見て決意したように頷く。
「エリナ、レナたんを任せるね……」
「ティナ様?あの、どうしたんですか?なんかいつもよりぴりぴりしてません?」
「私だって怒る時は……怒るんだよ」
「ひっ!?」
「な、何だいこの緊張感は……!?」
「ま、不味い……この気配は俺が妻を怒らせたときと同じだ!!」
エリナにレナを預けたティナは普段の彼女ならば考えられない程の「威圧」を放ち、その威圧を感じ取った者達は冷や汗を流す。武人であるバルやギンタロウでさえも彼女から放たれる圧力を感じ取り、全員が動揺してしまう。
――アインとミノを従えたティナは山道に視線を向けると、全員に顔を振り向く。その彼女の顔を見た者達は何故かティナの背後に仁王像のような筋骨隆々の森人族の男性の姿が思い浮かんだ。
「私……もう、怒ったよ」
「ティナ、様?」
「私はもう怒ったよ!!とっても起こったよ~!!」
「ウォオオンッ!!」
「キュロロロッ!!」
「ブモォオオオッ!!」
「ヒヒィンッ!!」
「「ぷるるるんっ!!」」
ティナは叫び声をあげると同時に魔獣達が騒ぎ出し、一斉に山道を駆け上る。スラミンとヒトミンさえも興奮したかのように後に続き、ティナと魔獣達は山道を一気に駆け上って頂上へ向かう。
「え!?ちょ、ティナ王女様!?危険です、戻ってきてください!!」
「いかん!!すぐに王女様を止めろ!!」
「王女様!!戻ってきてください!!」
慌てて他の者達が彼女を止めようとしたが、ティナは白狼種のウルやユニコーンのユニコと同等の速度で駆け抜け、山道を巡回していた警備の兵士達に見つかってしまう。
「ん……な、何だ!?」
「ま、魔獣!?どうしてこんな場所に……」
「おい、こっちに来るぞ!?」
オロナ鉱山を守備する兵士達はティナと彼女に従うように並行する魔獣達の姿を見て驚愕し、一体何が起きているのか理解出来ずに慌てて戦闘体勢に入ろうとしたが、ティナは坂道を一気に登って兵士達の元へ突進する。
「退いてっ!!」
「うわぁっ!?」
「な、何だぁっ!?」
「ぎゃああっ!!」
ティナを止めようとした兵士達は彼女が突き出した掌を受けた途端に吹き飛び、次々と転倒して坂道を転がり落ちていく。しかも転倒した後にティナの後に続いた魔獣達に踏みつぶされ、兵士達の悲鳴が山中に響く。
「ウォオオンッ!!」
「キュロロッ!!」
「ブモォッ!!」
「ヒヒンッ!!」
「な、何なんだこいつらはぁっ!?」
「やめっ……こっちにくるなぁああっ!!」
白狼種、サイクロプス、ミノタウロス、ユニコーンという魔物の中でも危険度が高い魔獣達が迫りくる光景に兵士達は悲鳴をあげて逃げ惑う中、暴走したティナを止めるために他の者達も慌てて追いかけた。
「てぃ、ティナ様!!落ち着いて下さい、止まってぇええっ!!」
「ほら、お菓子をあげるから落ち着いて欲しいでござる!?」
「なんという速度だ……俺達、和国の忍者にも匹敵するぞ!?」
ティナを止めるためにエリナは大声を上げるが、先頭を走るティナは彼女の声が聞こえていないのか山道を駆け上る。その光景を見てギンタロウは何かを思い出したかの様に叫ぶ。
「駄目だ、あの状態のティナ王女は止める事は出来んぞ!!」
「ど、どういう事ですか!?あの状態とは一体何ですか!?」
「昔、一度だけティナ王女があのような状態に陥った事を俺は見た事がある!!デブリ国王が他の王族の方々を連れて狩猟に出かけた際、ティナ王女が当時可愛がっていた一角兎の子供がコボルトに襲われて怪我をした!!その時、ティナ王女が今のような状態に陥ってコボルトを追いかけ回した事がある!!しかもティナ王女はその時まだ5才だったはずだ!!」
「嘘でしょう!?」
5才の子供だったティナがコボルトを追いかけ回したという話を聞いて他の者達は激しく動揺するが、ギンタロウによると彼女は子供の頃から並外れた身体能力と魔力を持ち合わせていたという。
0
お気に入りに追加
16,510
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢の選んだ末路〜嫌われ妻は愛する夫に復讐を果たします〜
ノルジャン
恋愛
モアーナは夫のオセローに嫌われていた。夫には白い結婚を続け、お互いに愛人をつくろうと言われたのだった。それでも彼女はオセローを愛していた。だが自尊心の強いモアーナはやはり結婚生活に耐えられず、愛してくれない夫に復讐を果たす。その復讐とは……?
※残酷な描写あり
⭐︎6話からマリー、9話目からオセロー視点で完結。
ムーンライトノベルズ からの転載です。
西谷夫妻の新婚事情~元教え子は元担任教師に溺愛される~
雪宮凛
恋愛
結婚し、西谷明人の姓を名乗り始めて三か月。舞香は今日も、新妻としての役目を果たそうと必死になる。
元高校の担任教師×元不良女子高生の、とある新婚生活の一幕。
※ムーンライトノベルズ様にも、同じ作品を転載しています。
孤独な令嬢は狼の番になり溺愛される
夕日(夕日凪)
恋愛
アルファポリス様より書籍化致しました!8月18日が出荷日となっております。
第二部を後日更新開始予定ですので、お気に入りはそのままでお待ち頂けますと嬉しいです。
ルミナ・マシェット子爵家令嬢は、義母と義姉達から虐待を受けながら生きていた。しかしある日、獣人国の貴族アイル・アストリー公爵が邸を訪れ…。「この娘は私の番だ。今ここで、花嫁として貰い受ける」
そう言われその日のうちに彼に嫁入りする事になり…。今まで愛と幸せを知らなかった彼女に突然の溺愛生活が降りかかる…!
モブだった私、今日からヒロインです!
まぁ
恋愛
かもなく不可もない人生を歩んで二十八年。周りが次々と結婚していく中、彼氏いない歴が長い陽菜は焦って……はいなかった。
このまま人生静かに流れるならそれでもいいかな。
そう思っていた時、突然目の前に金髪碧眼のイケメン外国人アレンが…… アレンは陽菜を気に入り迫る。
だがイケメンなだけのアレンには金持ち、有名会社CEOなど、とんでもないセレブ様。まるで少女漫画のような付属品がいっぱいのアレン……
モブ人生街道まっしぐらな自分がどうして?
※モブ止まりの私がヒロインになる?の完全R指定付きの姉妹ものですが、単品で全然お召し上がりになれます。
※印はR部分になります。
婚約解消して次期辺境伯に嫁いでみた
cyaru
恋愛
一目惚れで婚約を申し込まれたキュレット伯爵家のソシャリー。
お相手はボラツク侯爵家の次期当主ケイン。眉目秀麗でこれまで数多くの縁談が女性側から持ち込まれてきたがケインは女性には興味がないようで18歳になっても婚約者は今までいなかった。
婚約をした時は良かったのだが、問題は1か月に起きた。
過去にボラツク侯爵家から放逐された侯爵の妹が亡くなった。放っておけばいいのに侯爵は簡素な葬儀も行ったのだが、亡くなった妹の娘が牧師と共にやってきた。若い頃の妹にそっくりな娘はロザリア。
ボラツク侯爵家はロザリアを引き取り面倒を見ることを決定した。
婚約の時にはなかったがロザリアが独り立ちできる状態までが期間。
明らかにソシャリーが嫁げば、ロザリアがもれなくついてくる。
「マジか…」ソシャリーは心から遠慮したいと願う。
そして婚約者同士の距離を縮め、お互いの考えを語り合う場が月に数回設けられるようになったが、全てにもれなくロザリアがついてくる。
茶会に観劇、誕生日の贈り物もロザリアに買ったものを譲ってあげると謎の善意を押し売り。夜会もケインがエスコートしダンスを踊るのはロザリア。
幾度となく抗議を受け、ケインは考えを改めると誓ってくれたが本当に考えを改めたのか。改めていれば婚約は継続、そうでなければ解消だがソシャリーも年齢的に次を決めておかないと家のお荷物になってしまう。
「こちらは嫁いでくれるならそれに越したことはない」と父が用意をしてくれたのは「自分の責任なので面倒を見ている子の数は35」という次期辺境伯だった?!
★↑例の如く恐ろしく省略してます。
★9月14日投稿開始、完結は9月16日です。
★コメントの返信は遅いです。
★タグが勝手すぎる!と思う方。ごめんなさい。検索してもヒットしないよう工夫してます。
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。【妄想史であり世界史ではない】事をご理解ください。登場人物、場所全て架空です。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義なのでリアルな世界の常識と混同されないようお願いします。
※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません
【R-18】踊り狂えその身朽ちるまで
あっきコタロウ
恋愛
投稿小説&漫画「そしてふたりでワルツを(http://www.alphapolis.co.jp/content/cover/630048599/)」のR-18外伝集。
連作のつもりだけどエロだから好きな所だけおつまみしてってください。
ニッチなものが含まれるのでまえがきにてシチュ明記。苦手な回は避けてどうぞ。
IF(7話)は本編からの派生。
【完結】淫魔なのに出乳症になってしまった僕の顛末♡
虹色金魚 (旧 怪盗枝豆 )
BL
娼館で男妾として働く淫魔で、かわいい系美少年のラミュカ(♂)は、ある日突然おっぱいからミルクが出てきてしまった!!お客には喜ばれるが心の中では嵐が吹き荒れる。
そんなラミュカに、同期で友人の同じく淫魔のロゼが、魔界の病院を紹介してくれた。
そこでの診察結果は…………
※実はかわいいものが大好き美しい悪魔先生(カタリナ)×かわいい系淫魔ラミュカ
※ラミュカ(受)が出乳症という病気(?)になって、男の子なのにおっぱいからミルクが出て来て困っちゃうお話です。
※ラミュカは種族&お仕事上客とエッチをガッツリしてます。
※シリアスではありません。
※ギャグです。
※主人公アホかと思います。
※1話だいたい2000字前後位です。
※こちらR-18になります。えっちぃことしてるのには☆印、えっちしてるのには※印が入っています。
※ムーンライトさんでも掲載しています。
※宇宙のように広いお心でお読みください※
よくある婚約破棄なので
おのまとぺ
恋愛
ディアモンテ公爵家の令嬢ララが婚約を破棄された。
その噂は風に乗ってすぐにルーベ王国中に広がった。なんといっても相手は美男子と名高いフィルガルド王子。若い二人の結婚の日を国民は今か今かと夢見ていたのだ。
言葉数の少ない公爵令嬢が友人からの慰めに対して放った一言は、社交界に小さな波紋を呼ぶ。「災難だったわね」と声を掛けたアネット嬢にララが返した言葉は短かった。
「よくある婚約破棄なので」
・すれ違う二人をめぐる短い話
・前編は各自の証言になります
・後編は◆→ララ、◇→フィルガルド
・全25話完結
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。