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外伝 ~ヨツバ王国編~

500人の人質

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「ギンタロウさんはカレハの要求を……」
「当然だが受け入れられん!!俺が東聖将でなくなれば代わりに送られてくるのはカレハ王女を支持する森人族が送り込まれるからな!!そうなればこの地のケンタウロス族がどうなるかも分からん!!だが……」
「だが?」
「要求を断ればカレハ王女は無理やりにでも俺から東聖将の位を剥奪するだろう!!それに逆らえない理由はもう一つある……それはレイビの奴に貸し与えている兵士達の事だ!!」
「そういえば南方の領地を管理するためには他の六聖将の兵士を借り受けているんでしたよね」
「うむ!!俺の配下の500人の兵士を奴に貸し与えている!!だが、数週間前から彼等との連絡が途絶えた!!きっとレイビの奴に捕まったのだろう!!」
「ええっ!?」


ギンタロウによると南方の領地の守護のために派遣していた500名の森人族の兵士がレイビに人質に取られているらしく、連絡が取れない状況だという。仮にレイビが兵士達を人質にしていた場合、ギンタロウも迂闊には動く事は出来ない。


「カレハ王女の返答を伺う使者が明後日には到着する予定だ!!もしも次の使者が訪れるまでに返事をしなければ俺は強制的に東聖将の位を剥奪されるだろう!!だが、カレハ王女に従えばこれまで通りに東聖将は続けられるが、今後はカレハ王女に従わなければならん!!」
「そんな物、虚偽の報告を行って形だけでも従えばいいだけだろう」
「それは無理だ!!要求に従う場合、俺に監視役を送り込み、俺の家族を王都で暮らす様に命じてくるだろう!!そうなれば俺はカレハ王女に逆らう事は出来ん!!」
「つまり承諾しようと拒否しようとカレハ王女の思う壺という事でござるな」
「汚い手を使うな……」


仮にカレハの要求を引き受けた場合でもギンタロウは家族を人質に取られ、監視役を付けられれば逆らう事も出来ず、カレハに従うしかない。だからといって拒否した所で状況はより悪化してしまい、南聖将のレイビに人質に取られた兵士達の身が危ない。

従えば表面上はこれまで通りにギンタロウが東聖将を務め、監視と人質を取られる事を除けば今まで通りに領地を治められるだろう。拒否すれば家族を守る事が出来ても配下の500人の兵士が危険に晒されるため、ギンタロウも思い悩んでいるという。


「正直、どうすればいいのか俺も困っている!!他の将軍に助けを求めようにも北聖将の奴は堅物で王族の命令には逆らえんし、西聖将は当てにならん!!守備将とはあまり接点がないし、一番の頼りの防護将も常にカレハ王女に仕えているので相談する事も出来ん!!正に八方塞がりだな、はっはっはっ……」


流石のギンタロウも現在の状況に悩んでいるらしく、笑い声にも覇気がない。だが、レナ達の方も当てにしていたギンタロウがこの様子では力を借りる事も難しく、これでは計画が台無しである。


「困りましたね……叔父さんが東聖将の座を降りるとなるとあたし達の計画も台無しになりますよ」
「どうする?明後日まで何か手を打たないと俺達は終わりだぞ?」
「明後日までキラウを見つけ出して捕まえてデブリ国王の石化を解除させるのも難しそうだし……」
「こっちも八方塞がりでござるな……」


東聖将であるギンタロウが味方に付けないとなるとレナ達はキラウの捕縛とマリアの救出も難しくなり、二日以内に両方の目的を果たすなど不可能に近い。他に味方してくれる六聖将のここ辺りもなく、最早これまでかと考えた時、レナはある考えに思い至る。


「あの、もしも捕まっている兵士の人達を解放させる方法があればギンタロウさんは……」
「何!?そんな方法があるのか!?」
「ちょ、落ち着いて下さい!?もしもの話しですよ!?」


レナの言葉にギンタロウは即座に反応し、机を乗り越えてレナの両肩を掴み、天井付近まで持ち上げる。流石に将軍を務めるだけはあって力も非常に強く、ギンタロウはレナに縋りつく。


「頼む!!あいつらを助ける方法があるのならば教えてくれ!!もしもレイビの奴から兵士を取り返す事が出来れば俺はお前達の願いを何でも引き受けるぞぉっ!!」
「分かりました!!分かりましたから離してください!!いててっ!?」
「ちょ、叔父さん落ち着いて下さい!!兄貴の頭が天井に当たってるんですけど!!」
「ハンゾウ!!鎮痛剤だ!!」
「承知!!」


興奮するギンタロウを宥めてレナはどうにか下ろしてもらうと、痛む頭を抑えながらギンタロウに再度確認を行う。


「あの、本当に兵士の人達を救い出せたらギンタロウさんは俺達に協力してくれるんですか?」
「ああ、男に二言はない!!その時は全力で俺はお前達を助けよう!!」
「しかし、人質を取り戻してもカレハ王女の要求を断れば東聖将の座も危ういのでは?」
「それも問題ない!!俺がカレハ王女に逆らえない理由は兵士達が人質に取られているからだ!!だが、兵士さえ戻れば俺は家族を守れるし監視役も追い払う事が出来る!!万事解決だ!!」
「そんな単純な話ではないと思うでござるが……」
「でも、叔父さんが味方になってくれるならあたし達も安心して行動出来ますよ?」


東聖将が味方に付けばレナ達は拠点を入手し、マリアとキラウの捜索を行う事も出来る。ならば最初にやる事は決まっており、レナはカゲマルから受け取った水晶札を取り出す。


「よし、ならこれを使ってバルトロス王国へ戻ろう」
「おお、遂にシズネ殿たちを呼び寄せるのでござるな!!」
「あ、そっか!!剣聖の人達を味方につけて皆で助けに行くんですね!?」
「剣聖?どういう事だ?」


水晶札を取り出したレナにギンタロウは首を傾げるが、レナは水晶札を発動させてバルトロス王国へ帰還し、王城内に待機しているはずのシズネ達を呼び寄せようとした時、屋敷内で慌ただしい足音が鳴り響く。


「しょ、将軍!!将軍はここにおられますか!?」
「どうした?何事だ!!」


確認もせずに障子が開け開かれ、土足でケンタウロスの兵士が室内に入り込んできた。一体何事かとレナ達は兵士に視線を向けると、何故かその兵士は全身が血塗れの状態だった。その姿を見たギンタロウは即座に兵士の身体を抱き起し、何が起きたのかを問う。


「おい、その傷はどうした!?一体何が起きた!?」
「ま、魔物です……既に街中に何体も……侵入されています」
「魔物だと!?そんな馬鹿な……あの岩壁を登って来たというのか!?」


岩山に取り囲まれている街の中に魔物が出現したという話にギンタロウは信じられず、魔物が四方を取り囲む岩壁を上り詰めて侵入してきたのかとギンタロウは問い質すが、兵士は首を振る。


「ち、違います……実は先ほど、荷車を抱えた集団が街中に入って来て……それで荷物を点検しようとしたら、木箱の中から魔物が……!!」
「何だと!?」
「叔父さん!!まずはその人を治療しないと……兄貴、お願いします!!」
「分かってる!!」


負傷したケンタウロスにレナは回復魔法を施すと、ギンタロウは兵士を彼に任せ、怒りの表情を浮かべながら壁際に立てかけていた二振りの鉞を握り締めて廊下に飛び出す。


「お前達はそいつを任せた!!俺は魔物の討伐に向かう!!エリナ、お前も準備が整ったら付いてこい!!」
「あ、叔父さん!?」
「しょ、将軍……お待ちください!!」


侵入した魔物の特徴も聞かずにギンタロウは鉞を両手に抱えて駆け出し、屋敷の外へ抜け出す。慌ててエリナもクロスボウを取り出すとギンタロウの後に続こうとしたが、治療を受けている兵士が彼女の腕を掴んで止める。




※完全復活!!(/・ω・)/ヤッタゼ 明日以降も10時投稿します!!
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