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外伝 〈ヒロインルート〉

ヒロインルート『シズネ』+『ホネミン』

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――王城での激闘から数か月後、レナは自宅のリビングで正座をしていた。レナの正面には般若の如き怒りの表情を浮かべたシズネが存在し、隣には眠たそうに瞼をこするコトミンの姿が存在した。


「……レナ、私が何で怒っているのか理解しているかしら?」
「はい……」
「貴方、一体誰と結婚したのか分かっているの?」
「シズネさんとです……」
「そう、私が妻よ。なのにどうして私が仕事から戻ってくると、別の女と一緒にベッドで眠っていたのかしら?」
「その……すいませんでした」


シズネの言葉にレナは土下座を行うと、そんな彼を見てコトミンがシズネの肩を掴む。


「シズネ、レナも謝ってるから許してほしい」
「貴女がそれを言うの!?というか、こんな事態になったのも貴女のせいでしょう!?」


時刻は数分前、傭兵の仕事を終えて久々に帰ってきたシズネは夫であるレナがベッドの中でコトミンに抱き着かれた状態で眠っている姿を発見し、烈火のごとく怒り狂っていた。最も別に二人が本気で浮気をしていたとは思っておらず、恐らくはレナが眠っている間にコトミンが潜り込んだという事は分かってはいたが、それでもシズネの苛立ちは抑えきれない。


「全くもう……いくら同居を認めたからと言って、貴方の奥さんは私なのよ?そこのところを理解して欲しいわね……」
「ううっ……シズネが虐める」
「よしよし、レナはいい子いい子……」
「そこ!!だから目の前で堂々とでイチャつくのを止めなさい!?」


レナの頭を撫で始めるコトミンにシズネは叱りつけると、彼女は怒るのも馬鹿馬鹿しくなってソファに座り込む。するとスラミンとヒトミンが彼女の膝の上に飛び込み、甘えてくる。


「ぷるぷるっ♪」
「ぷるるんっ♪」
「あら……二人とも私の事を慰めてくれるの?貴方達は本当にいい子ね……うちの夫と違って」
「ああ、シズネがスラミン達に浮気した……」
「ならこっちも負けずに不倫する」
「どうしてそうなるのよ!?」


これ見よがしにスラミンとヒトミンを可愛がるシズネに対してコトミンはレナの背中に張り付き、彼女に舌をむけてきた。


「むうっ……レナは私達の物」
「私の旦那よ!!いくら貴女が先にレナと出会って一緒に住んでいるからと言っても貴女の物ではないのよ!?」
「そんな事はない、レナは毎晩可愛がってくれる」
「なっ……ま、まさか貴方達!?」
「いやいや、夜眠れないときに膝枕してあげるだけだよ」
「それはそれで嫉妬するわね!!私だってまだされた事ないのに……!!」
「ふっ……レナの膝枕は私専用」


シズネとコトミンはお互いに睨み合って火花を散らし、そんな二人の間に挟まれたレナは頭を抑える。シズネと結婚した後もコトミンは家に残り、現在は3人で暮らしている。最初はレナもシズネに気を遣って新しい家を買おうとしたのだが、彼女の配慮で結局は冒険都市の自宅に3人で暮らす事にした。


「はあ……もう怒るのも疲れたわ。コトミン、貴方がどうしてもレナと離れたくないのなら私のいう事もちゃんと聞きなさい」
「分かってる。一番目の子供はシズネが産む、二番目の子供は私が産む。この約束は守る」
「え、そんな約束してたの!?」
「しょうがないでしょう?貴方だってコトミンと離れたくはないんでしょう?」
「それはそうだけど……でも、子供ってそれでいいのシズネは?」
「仕方ないじゃない……私も結構この子の事は好きなのよ」
「……ぽっ」


コトミンの同居をシズネが認めたのは自分よりも先にレナに好意を抱き、ずっと傍で彼の事を支えていた事を理解しているため、色々と悩んだ末にシズネはコトミンも迎え入れる事にした。幸いにも王族であるレナならば一夫多妻も認められる可能性があるため、シズネは自分が最初にレナの子供を産むことを条件に彼女を受け容れた。


「ほら、何時までも妻を放っておくんじゃないわよ。ここに座って早く慰めなさい」
「分かったよ……でも、その前にお帰りのキスもしとかないと」
「しょ、しょうがないわね……んっ」
「あ、ずるい……」


レナが招き寄せるとシズネは逆らえずに彼に口づけを行い、その様子を見ていたコトミンは羨ましそうな表情を浮かべるが、そんな彼女にシズネは勝ち誇った笑みを浮かべる。


「貴女はキスはまだ駄目よ。私が子供を授かるまではね」
「むうっ……シズネの意地悪」
「意地悪で結構よ。ほら、レナ……今度は貴方の番よ」
「分かったよ……んっ?何か唇の感触がいつもと違うような……」
「ぷるるんっ……」
「……レナ、それはスラミン」


口付けしようとした瞬間にスラミンが割込み、頬の部分をレナにキスされたスラミンは照れたような表情を浮かべる。それを見て3人は笑い声をあげ、何だかんだで上手く結婚生活を過ごしていた――









※読者様の要望に応え、本格的なホネミンルートを書きました。本編とはパラレルワールドの世界観なので深い事は気にしないでください(´ω`)




――塔の大迷宮から無事に抜け出したホネミンを保護してから数か月の時が流れ、レナは彼女と共に旅を続けていた。旅の目的は彼女の肉体を取り戻す方法を探すため、世界中に存在する古代遺跡の中で封印された勇者の聖遺物を探していた。


「本当にこの遺跡に勇者の聖遺物があるの?もう三日は探索してるのに見つからないんだけど……」
『間違いありませんよ!!古文書を調べた結果、ここにはあらゆる病や怪我を治すという薬が封印されてるんです!!それを使えばきっと私の肉体も再生されるはずなんです!!』
「いや、それはどうだろう……無理だと思うけどね」


仲間達と共にレナはホネミンが発見した古代遺跡を探索し、彼女が探し求める伝説の秘薬を探す。ホネミンの予測ではこの薬を使えば彼女が失った肉体を再生する事が出来るそうだが、そもそも皮膚や眼球や内臓させ存在しない彼女の肉体をゼロから再生する事が出来るのか疑問ではあるが。


「む、レナさん!!宝箱を発見しました!!きっとこの中ですよ!!」
「これ?開ければいいの?」
「はい、気を付けて下さいね」


二人は宝箱が設置されている部屋にたどり着き、レナは掌を宝箱に触れて鍵を開く。そこには紫色に光り輝く液体が入った水晶製の小瓶が存在し、それを発見したホネミンは歓喜の声を上げる。


『見つけましたよ!!これが伝説の秘薬です!!これを使えば私は元の姿に……!!』
「いや、あからさまに怪しい色なんだけど……飲んで平気なの?俺がアイリスと交信して中身の成分を聞いた方が……」
『ごくごくごくっ……ぷはぁっ!!』
「もう飲んだ!?」


レナが止める暇もなくホネミンは中身の液体を飲み干すと、徐々に彼女の身体がに異変が生じ、彼女の肉体の外見を構成していたプルミンが唐突に引き剥がされる。


「ぷるっくりん!?」
「うわぁっ!?どうしたプルミン?」
「ぷるっくん……」
『ほ、ほぁあああっ……!?』


プルミンが離れた途端にホネミンはその場で身悶え、魔鎧術を構成する事も出来ずに膝を付く。彼女を心配したレナが手を伸ばそうとした瞬間、ホネミンの身体が唐突に光り輝いた――




――数分後、遺跡の出入口に戻ったレナは一人の裸の少女を抱きかかえ、プルミンを連れて外へ抜け出す。そして改めて少女に振り返ると、レナは毛布を被せて少女を座らせる。


「えっと……元に戻れて良かったね。ホネミンちゃん」
「ううっ……まさか薬が足りなくて完全に再生できず、幼女にまで戻るとは予想外でした……くしゅんっ!!」
「ぷるっくりん」


レナの目の前には年齢が10歳程度の少女が存在し、彼女は裸で過ごした事で身体を冷やしたのかくしゃみを行い、そんな少女に対してレナは隣に座って慰めるように頭を撫でる。


「でも、良かったね。まさか本当に肉体を取り戻せるなんて……というか、骨の骨格が大人だったのに幼女に戻って大丈夫なの?」
「原理は分かりませんが、小さくなる時に骨自体も縮小化したみたいです。多分、今の私は10~11歳ぐらいの年齢に若返ってますね」
「まあ、小さいままだったのは意外だけど、無事に生身の肉体は取り戻したのかな?」
「そうですね、身体が小さい事以外は元通りです」


ホネミンは自分の身体を確認して嬉しそうな表情を浮かべ、遂に本物の肉体を取り戻した事に感動する。そんな彼女に対してレナは微笑み、同時に仲間達にどのように説明するか悩む。


「それにしてもホネミンが骨っ娘から幼女に進化するとは……4年後ぐらいには普通の美少女に進化するのかな?」
「何ですか進化って……まあ、レナさんのお陰で肉体を取り戻せました。本当にありがとうございます。お詫びに膝の上に座りましょう」
「何でだよ。別にいいけどさ……」


自分の膝の上に乗って本当の子供のように鼻歌を歌いながらのんびり過ごすホネミンに対してレナは苦笑し、彼女が身体を冷やさないように後ろから抱きしめると、ホネミンは頬を赤く染める。


「ひゃんっ!?後ろから抱きしめるなんて……レナさんも意外と大胆ですね」
「いや、他意はないんだけど」
「ふうっ……幼女の力ではレナさんに抵抗出来ませんね。よし、覚悟を決めました。さあ、好きにしてください……でも、身体は好きにされても私の心は屈しませんよ!!」
「どこの女騎士だ」


小さくなっても騒がしいホネミンにレナはため息を吐き出し、それでも生身の彼女の体温を感じる事に新鮮さを感じながら他の仲間達が戻ってくるまでホネミンと時を過ごした。





※シズネルートのその2も1時間後に投降します!!
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