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最終章 王国編
剣鬼突入
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――王城の各所で戦闘や策略が繰り広げられる中、上空の方でも異変が起きていた。異世界の知識と錬金術師の能力で作り出したハンググラインダーに乗り込んだレナが空から城内へ侵入するために挑む。
「やっぱり作戦は気付かれていたか……アイリスの予想通りだな」
ホネミンが王城に囚われているので現在の王都近辺の情報はアイリスも見通す事は出来ないが、これまでの傾向と王国軍の動きから彼女は革命団の作戦が既に予想されている事に気付いていた。それでも作戦を実行したのはこの機を逃せば王妃を討ち取る好機はない。
上空からレナは王城の様子を確認し、既に正門には大勢の民衆とヴァルキュリア騎士団を筆頭にした革命団の隊員も集まり、城門に押し寄せていた。民衆の前では流石に王国軍も手荒な真似は出来ず、兵士が必死に彼等を追い払おうとするが、既に1000人を超える民衆が集まっていた。
「ナオ姫様を解放しろ!!」
「王妃様を出せ!!」
「我等が姫様を返せ!!」
「き、貴様等!!ここを何処だと思っている!!立ち去れ、早く立ち去らないと拘束するぞ!!」
城門では兵士達と民衆が激しく言い争い、城壁にも既に大勢の兵士が集まっていた。だが、市民を相手に攻撃を仕掛ける様子はなく、そんな事をすれば王妃の印象が悪化し、処刑されるナオの冤罪を信じる者達も増えるだろう。民衆はどんどんと集まり続け、城下町を巡回している兵士達は街の各所で発生している火災に対応で手一杯なのか未だに集まる様子はない。
ここまでは作戦通りではあるが、正門とは反対に裏門の方では革命団の主力部隊が苦戦を強いられ、既に激しい戦闘が繰り広げられていた。城壁から魔法や弓矢の攻撃を受けて革命団の部隊が次々とやられている様子にレナは眉をしかめ、それでも当初の作戦通りに彼等の加勢は後回しにして王城の中心地に向けて移動する。
これ以上に時間をかければいずれ王都を囲む防壁に配備されている兵士達も動員し、王城へ集結するだろう。だが、その前にレナはアイリスの提案でこちらの方にも手を打っていた。防壁周辺の兵士達はしばらくの間は動けないようにレナはある手段を使って彼等の注意を王城から別の物へ向けさせていた――
――同時刻、王都の防壁に存在する兵士達は城下町から放たれる煙を目にしながらも街へ兵士を送り込む余裕はなく、数千を超える兵士達は防壁の前に押し寄せる魔物と大群と相対していた。
「くそ、何なのだこいつらは!?一体何処から現れた!?」
「た、隊長!!我々はどうすれば……!!」
『ガアアアアッ!!』
防壁の前には無数のゴブリンやオーク、あるいはトロールなどの大型の魔物が押し寄せ、防壁を突破しようと押しかけていた。唐突に出現した大量の魔物に対して兵士達は必死に応戦を繰り広げるが、中にはミノタウロスやサイクロプスなどの魔人族も加わっていた。
「ブモォオオオッ!!」
「キュロロロッ!!」
「うわぁっ!?」
「た、助けてくれぇっ!?」
「馬鹿者!!取り乱すな、数は我々の方が圧倒的に多いのだぞ!?」
腕力に長けた魔人族は投石を行って城壁の兵士達に攻撃を仕掛け、その姿を見て怖気つく兵士達を隊長は怒鳴りつける。一体何処から現れたのかは分からないが、王国兵は籠城戦を強いられる。
「ウオオオオッ!!」
「ま、不味い!!このままでは城門が破られます!!」
「ええい、魔術兵は何をしている!!早く奴等を仕留めろ!!」
「ですがこれだけの数を相手に我々だけでは……!!」
樹木を抱えたオーガの数体が城門に向けて突撃し、力ずくで破壊しようと試みる。それを見た隊長は魔術兵の砲撃魔法で対処させようとした。だが、地上から攻める魔物だけではなく、上空から奇襲を仕掛ける魔物も存在した。
「クエエエエッ!!」
「なっ!?ぐ、グリフォンだと!?どうして王国領地にグリフォンが……うわぁっ!?」
本来ならば帝国領には生息しないグリフォンまで出現し、城壁に立っていた兵士に襲いかかる。一体何が起きているのか王国兵は理解できなかったが、考えている暇もなく兵士達は応戦に集中する。
――この魔物の大群はレナが王都の地下通路に存在したメドゥーサによって石化された魔物達だった。レナによってメドゥーサが討たれた事で石化していた魔物達は開放され、地上へ出現する。その魔物達を王都へ引き寄せたのは当然レナ達であり、実はレナが起きた後に仲間を連れて例の地下通路へ引き換えしていた。
地下通路内では大多数の魔物が解放され、通路内で激しく生存競争が行われていた。何十年、何百年と石化されていた魔物達は身体が自由になった途端に暴れ狂い、とても手が付けられない状態だった。その様子を見たレナはこの地下通路内の出入口の一つを解放し、魔物を引き寄せる。
地下通路に続く出入口は複数存在するが、その殆どが閉鎖されている。但し、緑影が発見した出入口に関しては封鎖を免れ、その出入口をレナ達は魔法で破壊して地上へ魔物を引き寄せる。魔物を呼び寄せる方法は緑影が所持していた「吸引香」と呼ばれる嗅覚の鋭い魔物を引き寄せる特殊な香草で作り出した魔道具を使用した。
『よくこんな物を持ってたね』
『これは本来は罠に使うための魔道具だ。敵地に侵入し、この吸引香を使用して魔物を引き寄せて相手が混乱している隙に仕掛けるための道具なんだがな……』
吸引香によって最初に力の弱いゴブリンが引き寄せられ、そのゴブリンを捕食するため別の魔物が外に誘き出され、更にその魔物を捕食する魔物を外へ導く。時間が掛かったが地上に出現した魔物は真っ先に人間の街を視認すると王都へ押し寄せる。彼等は元々は地下通路に入り込んだのは人間の街を襲うためであり、王都へ無数の魔物が襲撃を仕掛けた。
結果的には地下通路内の魔物の対応で防壁を守護する王国兵は城下町や王城へ援軍を送る余裕はなく、大量に現れた魔物の討伐に手一杯だった。襲撃を受けているのは南門だけだが、あまりの魔物の数に南門の兵士だけでは対処しきれず、すぐに他の城門の兵士達も呼び寄せられるだろう――
――そして防壁の兵士達の足止めに成功したレナはハンググラインダーを利用して王城の上空へと辿り着くと、一度旋回して城内の様子を伺い、約16年ぶりに帰還を果たした王城を観察する。この場所でレナは産まれ、そして母親のアイラと共に追い出された場所だった。
「これが王城か……赤ん坊の頃はよく覚えてないけど、こんなに綺麗な城だったのか」
王城の全体図を見るのは初めてのため、レナは自分の想像よりも美しい城の風景に圧倒されるが、今からその城に殴り込みをかける事を思い出してハンググラインダーで出来る限り接近する。
「さあ、あと少し……うわっ!?」
だが、降下中に城内から発砲音が響き渡り、ハンググラインダーに衝撃が走った。どうやら羽根の部分を何かで打ち抜かれたらしく、バランスを崩したハンググラインダーが急速に降下し、咄嗟にレナは自分とハンググラインダーを繋ぐロープを切り裂く。
「くそ、氷塊!!」
ハンググラインダーから脱出したレナは空中に固定した氷塊の円盤を生み出し、地上に墜落する事を免れる。羽根を打ち抜かれたハンググラインダーはやがて全体に炎が燃え広がり、そのまま城壁に衝突して粉々に砕け散る。その様子を見てレナは疑問を抱くが、すぐに嫌な予感を抱いて腰に差していた反鏡剣を引き抜く。
「はあっ!!」
「嘘っ……!?」
自分の頭部に目掛けて放たれた「弾丸」をレナは反鏡剣で弾くと、城壁の方から驚いたような声が上がり、そちらに視線を向けるとそこにはライフル型の魔道具を構えた「カノン」が立っていた。
「やっぱり作戦は気付かれていたか……アイリスの予想通りだな」
ホネミンが王城に囚われているので現在の王都近辺の情報はアイリスも見通す事は出来ないが、これまでの傾向と王国軍の動きから彼女は革命団の作戦が既に予想されている事に気付いていた。それでも作戦を実行したのはこの機を逃せば王妃を討ち取る好機はない。
上空からレナは王城の様子を確認し、既に正門には大勢の民衆とヴァルキュリア騎士団を筆頭にした革命団の隊員も集まり、城門に押し寄せていた。民衆の前では流石に王国軍も手荒な真似は出来ず、兵士が必死に彼等を追い払おうとするが、既に1000人を超える民衆が集まっていた。
「ナオ姫様を解放しろ!!」
「王妃様を出せ!!」
「我等が姫様を返せ!!」
「き、貴様等!!ここを何処だと思っている!!立ち去れ、早く立ち去らないと拘束するぞ!!」
城門では兵士達と民衆が激しく言い争い、城壁にも既に大勢の兵士が集まっていた。だが、市民を相手に攻撃を仕掛ける様子はなく、そんな事をすれば王妃の印象が悪化し、処刑されるナオの冤罪を信じる者達も増えるだろう。民衆はどんどんと集まり続け、城下町を巡回している兵士達は街の各所で発生している火災に対応で手一杯なのか未だに集まる様子はない。
ここまでは作戦通りではあるが、正門とは反対に裏門の方では革命団の主力部隊が苦戦を強いられ、既に激しい戦闘が繰り広げられていた。城壁から魔法や弓矢の攻撃を受けて革命団の部隊が次々とやられている様子にレナは眉をしかめ、それでも当初の作戦通りに彼等の加勢は後回しにして王城の中心地に向けて移動する。
これ以上に時間をかければいずれ王都を囲む防壁に配備されている兵士達も動員し、王城へ集結するだろう。だが、その前にレナはアイリスの提案でこちらの方にも手を打っていた。防壁周辺の兵士達はしばらくの間は動けないようにレナはある手段を使って彼等の注意を王城から別の物へ向けさせていた――
――同時刻、王都の防壁に存在する兵士達は城下町から放たれる煙を目にしながらも街へ兵士を送り込む余裕はなく、数千を超える兵士達は防壁の前に押し寄せる魔物と大群と相対していた。
「くそ、何なのだこいつらは!?一体何処から現れた!?」
「た、隊長!!我々はどうすれば……!!」
『ガアアアアッ!!』
防壁の前には無数のゴブリンやオーク、あるいはトロールなどの大型の魔物が押し寄せ、防壁を突破しようと押しかけていた。唐突に出現した大量の魔物に対して兵士達は必死に応戦を繰り広げるが、中にはミノタウロスやサイクロプスなどの魔人族も加わっていた。
「ブモォオオオッ!!」
「キュロロロッ!!」
「うわぁっ!?」
「た、助けてくれぇっ!?」
「馬鹿者!!取り乱すな、数は我々の方が圧倒的に多いのだぞ!?」
腕力に長けた魔人族は投石を行って城壁の兵士達に攻撃を仕掛け、その姿を見て怖気つく兵士達を隊長は怒鳴りつける。一体何処から現れたのかは分からないが、王国兵は籠城戦を強いられる。
「ウオオオオッ!!」
「ま、不味い!!このままでは城門が破られます!!」
「ええい、魔術兵は何をしている!!早く奴等を仕留めろ!!」
「ですがこれだけの数を相手に我々だけでは……!!」
樹木を抱えたオーガの数体が城門に向けて突撃し、力ずくで破壊しようと試みる。それを見た隊長は魔術兵の砲撃魔法で対処させようとした。だが、地上から攻める魔物だけではなく、上空から奇襲を仕掛ける魔物も存在した。
「クエエエエッ!!」
「なっ!?ぐ、グリフォンだと!?どうして王国領地にグリフォンが……うわぁっ!?」
本来ならば帝国領には生息しないグリフォンまで出現し、城壁に立っていた兵士に襲いかかる。一体何が起きているのか王国兵は理解できなかったが、考えている暇もなく兵士達は応戦に集中する。
――この魔物の大群はレナが王都の地下通路に存在したメドゥーサによって石化された魔物達だった。レナによってメドゥーサが討たれた事で石化していた魔物達は開放され、地上へ出現する。その魔物達を王都へ引き寄せたのは当然レナ達であり、実はレナが起きた後に仲間を連れて例の地下通路へ引き換えしていた。
地下通路内では大多数の魔物が解放され、通路内で激しく生存競争が行われていた。何十年、何百年と石化されていた魔物達は身体が自由になった途端に暴れ狂い、とても手が付けられない状態だった。その様子を見たレナはこの地下通路内の出入口の一つを解放し、魔物を引き寄せる。
地下通路に続く出入口は複数存在するが、その殆どが閉鎖されている。但し、緑影が発見した出入口に関しては封鎖を免れ、その出入口をレナ達は魔法で破壊して地上へ魔物を引き寄せる。魔物を呼び寄せる方法は緑影が所持していた「吸引香」と呼ばれる嗅覚の鋭い魔物を引き寄せる特殊な香草で作り出した魔道具を使用した。
『よくこんな物を持ってたね』
『これは本来は罠に使うための魔道具だ。敵地に侵入し、この吸引香を使用して魔物を引き寄せて相手が混乱している隙に仕掛けるための道具なんだがな……』
吸引香によって最初に力の弱いゴブリンが引き寄せられ、そのゴブリンを捕食するため別の魔物が外に誘き出され、更にその魔物を捕食する魔物を外へ導く。時間が掛かったが地上に出現した魔物は真っ先に人間の街を視認すると王都へ押し寄せる。彼等は元々は地下通路に入り込んだのは人間の街を襲うためであり、王都へ無数の魔物が襲撃を仕掛けた。
結果的には地下通路内の魔物の対応で防壁を守護する王国兵は城下町や王城へ援軍を送る余裕はなく、大量に現れた魔物の討伐に手一杯だった。襲撃を受けているのは南門だけだが、あまりの魔物の数に南門の兵士だけでは対処しきれず、すぐに他の城門の兵士達も呼び寄せられるだろう――
――そして防壁の兵士達の足止めに成功したレナはハンググラインダーを利用して王城の上空へと辿り着くと、一度旋回して城内の様子を伺い、約16年ぶりに帰還を果たした王城を観察する。この場所でレナは産まれ、そして母親のアイラと共に追い出された場所だった。
「これが王城か……赤ん坊の頃はよく覚えてないけど、こんなに綺麗な城だったのか」
王城の全体図を見るのは初めてのため、レナは自分の想像よりも美しい城の風景に圧倒されるが、今からその城に殴り込みをかける事を思い出してハンググラインダーで出来る限り接近する。
「さあ、あと少し……うわっ!?」
だが、降下中に城内から発砲音が響き渡り、ハンググラインダーに衝撃が走った。どうやら羽根の部分を何かで打ち抜かれたらしく、バランスを崩したハンググラインダーが急速に降下し、咄嗟にレナは自分とハンググラインダーを繋ぐロープを切り裂く。
「くそ、氷塊!!」
ハンググラインダーから脱出したレナは空中に固定した氷塊の円盤を生み出し、地上に墜落する事を免れる。羽根を打ち抜かれたハンググラインダーはやがて全体に炎が燃え広がり、そのまま城壁に衝突して粉々に砕け散る。その様子を見てレナは疑問を抱くが、すぐに嫌な予感を抱いて腰に差していた反鏡剣を引き抜く。
「はあっ!!」
「嘘っ……!?」
自分の頭部に目掛けて放たれた「弾丸」をレナは反鏡剣で弾くと、城壁の方から驚いたような声が上がり、そちらに視線を向けるとそこにはライフル型の魔道具を構えた「カノン」が立っていた。
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