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最終章 前編 〈王都編〉

※没にしたダインの閑話です。本編とは一切関りはありません

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※今回の話は大分前に書いていたダインのメイン回です。本編の内容とは矛盾もあります。


――レナ達が監獄都市を抜け出した頃と同時刻、バルトロス王国の王都に存在する屋敷の地下室にてある人物が監禁されていた。暗闇に覆われた地下の牢獄に閉じ込められ、既に二日近くも食料も水も与えられていない。そんな彼の元に屋敷の所有者が訪れた。


「久しいな、ダインよ」
「……くそ、親父か」
「ふん、随分と生意気な口を利くようになったな」


牢獄の中に捕らわれていたのは数日前に冒険都市から王都へ「転移」してしまった冒険者のダインであり、地下牢に閉じ込められて衰弱した状態のダインが顔を上げると、そこには自分の父親の姿を確認して悪態を吐く。檻越しにダインの顔を確認した父親は顔をしかめ、数年ぶりに見た我が子の変貌ぶりに落胆する。


「貴様が冒険者としてひっそりと暮らしていると聞いた時は耳を疑ったが、どうやら本当に生き残っていたようだな。死んでくれた方がこちらとしては都合が良かったのだがな」
「相変わらずだな……くそ野郎」
「口の利き方に気を付けろ。お前はシャドル家の当主を相手にしているのだぞ?」
「ぺっ!!」


シャドル家という名前を口にした父親に向けてダインは唾を吐き、憎々し気に睨みつける。そんな実の息子の態度に父親は不快な表情を浮かべるが、気を取り直したようにダインに顔を向ける。


「ダイン、どうして私がお前を再びここへ招き入れたと思う?言っておくがお前をシャドル家に迎え入れようとしているわけではない。甘い考えは抱くな」
「誰がそんな事を考えるかよ……腐れ貴族に戻るつもりなら死んだ方がマシだ」
「手厳しいな……正直に言えば貴様のような忌み子など顔を合わせたくもないが、ある御方の命令でお前を引き渡す事が決まった」
「はあっ……?」


父親の言葉にダインは呆気に取られ、自分を捨てた癖に今更何を言っているのかと疑問を抱くが、父親は詳細を伝えるつもりはないのかその場を立ち去ろうとした。


「話はここまでだ。半月後、お前をここから解放してやる。それまではせいぜい生き延びろ」
「待てよ!!一体どういう意味だ!?僕をどうするつもりだ!!」
「それを答える義理はない。お前はただの道具だ……我がシャドル家の栄光を取り戻すための贄となれ」
「……くそ親父が!!死んじまえっ!!」


普段は口は悪いが決して他人を傷つけるような真似をしないダインだが、実の父親に対して本気の殺意を滲ませながら檻の中で怒鳴り散らし、そんな息子の態度を嘲笑うようにダインの父親「シャドル・グノウ」は地下牢から姿を消した――



※本来の予定ではダインの祖父ではなく、父親が当主として登場予定でした。ダインは捕まり、それをレナ達が助けるという話でした。
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