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最終章 前編 〈王都編〉
バルからの手紙 〈ミナと合流〉
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「それはそうとレナさんには色々と聞きたいことがあるんやけど……5日前、この街で何が起きたのか知っとるんやろ?」
「はい。でも、それを説明する前にこの街の現状も教えてほしいんです」
「そやな……レナさん達が姿を消した間に色々な出来事が起きたで」
――フェリスの説明によると、冒険都市内で暴れていた地竜は表向きは冒険者と王国軍の協力によって討伐された事という。だが、実際の所は地竜を倒したのはマリア率いる氷雨のギルドメンバーとレナ達なので王国軍は関与していない。それでも地竜の討伐後にレナ達が転移魔法陣によって姿を消した事を利用して地竜の討伐は冒険者と王国軍の貢献であると発表した。
無論、地竜とレナ達が戦闘を行っていた場面を見ていた民衆も多く、襲撃の際に現れたゴブリンの上位種達に関しても殆どが冒険者達が相手をしていたのは彼等も知っていた。だが、地竜の討伐を終えた直後にレナ達が居なくなった事でそれを証明する者達もいなかったのが仇となる。
長年の間、この冒険都市を裏で支えていたマリアまでもが姿を消した事に疑問を抱く人間も居たが、大半の民衆は地竜やゴブリンの討伐したのは冒険者達であると信じている。しかし、都市の外に住む人間達には王国軍が冒険者と協力して地竜を倒した報告され、地竜の襲撃の際に姿を消したレナ達を今回の事件の黒幕だという噂まで流れていた。
冒険都市の地竜とゴブリンの襲撃は全て王妃の計略なのだが、それを証明する術はなく、街の住民の中には本当にマリア達が逃げ出したのではないかと疑う者も少なくはない。しかも王国軍は今回の事件の重要参考人としてマリア達の手配書まで発注して捜索を行っている。
「本当にあの後は大変やったで、うちの商会もマリアさんとこと契約を結んでいたから匿っているのか疑われて兵士達が連日押し寄せくるし、マリアさんと親しくしていた王国貴族まで掌を返して王妃に寝返ったり、本当に最悪の5日間やったわ」
「そんな事になっていたのか……それで叔母様の居場所は本当に知らないんですか?」
「ああ、うちは本当に知らん。だけど、マリアさんとこの側近のシノビ・カゲマルさんが一回尋ねに来たけどな」
「カゲマルさんが?今は何処に居るんですか?」
マリアの側近として常日頃から彼女に仕えているカゲマルが訪れたという話を聞き、彼がここに居るのならばナオの救出の協力を頼めないかとレナが考えたが、申し訳なさそうにフェリスは首を振る。
「それがな……カゲマルさんもうちにマリア様の居場所を知らないか聞いてきたんやけど、うちも知らないと答えるとすぐに消えたんや。ああ、だけど王都に向かうとか言ってたな」
「王都へ?」
「確か前にマリアさんが王都に隠れ家を持っているとうちも聞いた事があるから、もしかしたらそこに向かったのかも知れへん。でも、隠れ家の居場所は流石に聞いてなくてな……」
「そうですか……」
「レナ、王都の事は緑影の奴等が戻って来た時に聞けばいいんじゃないの?」
ダインの言葉にレナは頷き、王都の状況はラナ達が戻って来た時に尋ねる事にした。もしかしたらラナ達ならばマリアの隠れ家を見つけ出す可能性もあるため、ここに訪れた用事を済ませたレナ達は退散する事にした。
「色々と教えて頂いてありがとうございます」
「何かあんまり役立つ情報とかを教えられなくてごめんなぁっ……あ、ちょい待ち、もしも氷雨のギルドに向かうのなら気を付けた方がいいで。あそこにはもう王国軍が占拠して冒険者も殆どおらへんからな」
「そうなんですか?」
「ああ、黒虎のギルドの方も同じ感じや。どっちも急にギルドマスターが消えてから王国軍に好き勝手されとる」
「え?バルも居なくなったんですか?」
冒険都市に存在する黒虎と氷雨のギルドは既に王国軍の管理下に置かれているらしく、これでは内密に出向いて知り合いの冒険者に協力を頼む事も難しいと知ったレナ達は困った顔を浮かべると、不意に何かを思い出したようにフェリスは立ち上がる。
「あっ、そうやった!!バルさんに関してはうちも連絡先を知っとるで!!何でも今は昔の知り合いと一緒に王都で革命団という組織と一緒に行動してるらしくて……えっと、確かこの辺に手紙があったはずや」
「革命団?」
「何それ……ダサい名前だな」
机の中を漁ってフェリスはバルから届いた手紙をレナ達に差し出し、二人は手紙の内容を確認するとどうやらバルは無事だったらしく、現在は王都で滞在している旨が記されていた。内容によれば今現在の王国に不満を抱く者達が集まり、王国を支配する王妃に対抗するための組織が存在するらしい。
バルは知り合いの「元冒険者」と共に革命団の元へ赴き、しばらくの間は王都に滞在するとだけ記されていた。残念ながら革命団の詳細や王都の何処で滞在しているのかまでは記されておらず、それでもバルが王都に存在する事は間違いなかった。
「なんかバルも大変そうだな……それにしても俺たち以外にも王妃に対抗しようとする組織があるのか」
「革命団ね……名前はダサいけど、こいつらと合流すれば僕達の計画も成功率があがるんじゃないの?」
「計画?何の話や?」
「実は……」
レナは6日後に処刑されるナオを救出するため、散らばった仲間達を探している事を伝えると、フェリスは難しい表情を浮かべてレナ達の計画の危険性を指摘する。
「それはいくら何でも難しいと思うで……王女様の処刑となれば王妃も流石に厳重な警備も施すのは間違いない。それに王都には何万の兵士もおるんやで?しかも大将軍の3人も居たとすればいくらレナさん達でも救出は難しいんやないか?」
「分かっています。でも、叔母様が見つからない限りは俺達にこれ以外の方法はないんです」
「気持ちはわかるけどな……何か勝算があるのなら話は別やけど」
「勝算、といえる程でもないですけど、何の作戦も立てずに挑むわけじゃありませんから」
フェリスの言葉にレナは空間魔法に収めている「レーヴァティン」と右腕に宿った「風の聖痕」を思い出し、いざという時はこの二つを利用してナオを救い出すつもりだった。だが、確かにフェリスの言葉通りに現状では戦力が圧倒的に足らず、どうにか仲間を集める必要があった。
「フェリスさんにお願いしたい事があるんです。今、この街に滞在している冒険者の中で俺達に協力してくれそうな人はどれくらい居ますか?」
「そういわれてもな。殆どの冒険者はきっと王国兵が目を見張らせているはずやし……あ、でも心当たりがあるで」
「え、あるの!?」
「何でそこで驚くんや。ここは嬉しがる所やろ……レナさんも知っている人物やで」
「え、本当ですか?」
「名前は……確かミナさんやったかな?あの子ならここにいるで」
「「ミナ?」」
意外な名前が出てきたことにレナとダインが驚いた瞬間、部屋の扉がノックも無しに開け放たれ、慌てふためいた様子の赤髪のポニーテールが特徴的な部屋の中に入り込んできた。
「失礼します!!あの、ここにレナ君がいるって……!!」
「ミナ!?」
「え、嘘!?どうしてここに!?」
部屋の中に入り込んできたミナにレナとダインは驚きの声を上げると、彼女はレナの顔を見て驚愕の表情を浮かべるが、すぐに笑顔を浮かべてレナに抱き着く。
「レナ君!!無事だったんだね!!」
「うぷっ!?」
抱き着かれたレナはミナのそれなりにふくよかな胸元に顔を挟まれ、机の上に押し倒される。まさか意外な所で意外な人物と再会したが、とりあえずは彼女も無事だったことを喜ぶ。
「はい。でも、それを説明する前にこの街の現状も教えてほしいんです」
「そやな……レナさん達が姿を消した間に色々な出来事が起きたで」
――フェリスの説明によると、冒険都市内で暴れていた地竜は表向きは冒険者と王国軍の協力によって討伐された事という。だが、実際の所は地竜を倒したのはマリア率いる氷雨のギルドメンバーとレナ達なので王国軍は関与していない。それでも地竜の討伐後にレナ達が転移魔法陣によって姿を消した事を利用して地竜の討伐は冒険者と王国軍の貢献であると発表した。
無論、地竜とレナ達が戦闘を行っていた場面を見ていた民衆も多く、襲撃の際に現れたゴブリンの上位種達に関しても殆どが冒険者達が相手をしていたのは彼等も知っていた。だが、地竜の討伐を終えた直後にレナ達が居なくなった事でそれを証明する者達もいなかったのが仇となる。
長年の間、この冒険都市を裏で支えていたマリアまでもが姿を消した事に疑問を抱く人間も居たが、大半の民衆は地竜やゴブリンの討伐したのは冒険者達であると信じている。しかし、都市の外に住む人間達には王国軍が冒険者と協力して地竜を倒した報告され、地竜の襲撃の際に姿を消したレナ達を今回の事件の黒幕だという噂まで流れていた。
冒険都市の地竜とゴブリンの襲撃は全て王妃の計略なのだが、それを証明する術はなく、街の住民の中には本当にマリア達が逃げ出したのではないかと疑う者も少なくはない。しかも王国軍は今回の事件の重要参考人としてマリア達の手配書まで発注して捜索を行っている。
「本当にあの後は大変やったで、うちの商会もマリアさんとこと契約を結んでいたから匿っているのか疑われて兵士達が連日押し寄せくるし、マリアさんと親しくしていた王国貴族まで掌を返して王妃に寝返ったり、本当に最悪の5日間やったわ」
「そんな事になっていたのか……それで叔母様の居場所は本当に知らないんですか?」
「ああ、うちは本当に知らん。だけど、マリアさんとこの側近のシノビ・カゲマルさんが一回尋ねに来たけどな」
「カゲマルさんが?今は何処に居るんですか?」
マリアの側近として常日頃から彼女に仕えているカゲマルが訪れたという話を聞き、彼がここに居るのならばナオの救出の協力を頼めないかとレナが考えたが、申し訳なさそうにフェリスは首を振る。
「それがな……カゲマルさんもうちにマリア様の居場所を知らないか聞いてきたんやけど、うちも知らないと答えるとすぐに消えたんや。ああ、だけど王都に向かうとか言ってたな」
「王都へ?」
「確か前にマリアさんが王都に隠れ家を持っているとうちも聞いた事があるから、もしかしたらそこに向かったのかも知れへん。でも、隠れ家の居場所は流石に聞いてなくてな……」
「そうですか……」
「レナ、王都の事は緑影の奴等が戻って来た時に聞けばいいんじゃないの?」
ダインの言葉にレナは頷き、王都の状況はラナ達が戻って来た時に尋ねる事にした。もしかしたらラナ達ならばマリアの隠れ家を見つけ出す可能性もあるため、ここに訪れた用事を済ませたレナ達は退散する事にした。
「色々と教えて頂いてありがとうございます」
「何かあんまり役立つ情報とかを教えられなくてごめんなぁっ……あ、ちょい待ち、もしも氷雨のギルドに向かうのなら気を付けた方がいいで。あそこにはもう王国軍が占拠して冒険者も殆どおらへんからな」
「そうなんですか?」
「ああ、黒虎のギルドの方も同じ感じや。どっちも急にギルドマスターが消えてから王国軍に好き勝手されとる」
「え?バルも居なくなったんですか?」
冒険都市に存在する黒虎と氷雨のギルドは既に王国軍の管理下に置かれているらしく、これでは内密に出向いて知り合いの冒険者に協力を頼む事も難しいと知ったレナ達は困った顔を浮かべると、不意に何かを思い出したようにフェリスは立ち上がる。
「あっ、そうやった!!バルさんに関してはうちも連絡先を知っとるで!!何でも今は昔の知り合いと一緒に王都で革命団という組織と一緒に行動してるらしくて……えっと、確かこの辺に手紙があったはずや」
「革命団?」
「何それ……ダサい名前だな」
机の中を漁ってフェリスはバルから届いた手紙をレナ達に差し出し、二人は手紙の内容を確認するとどうやらバルは無事だったらしく、現在は王都で滞在している旨が記されていた。内容によれば今現在の王国に不満を抱く者達が集まり、王国を支配する王妃に対抗するための組織が存在するらしい。
バルは知り合いの「元冒険者」と共に革命団の元へ赴き、しばらくの間は王都に滞在するとだけ記されていた。残念ながら革命団の詳細や王都の何処で滞在しているのかまでは記されておらず、それでもバルが王都に存在する事は間違いなかった。
「なんかバルも大変そうだな……それにしても俺たち以外にも王妃に対抗しようとする組織があるのか」
「革命団ね……名前はダサいけど、こいつらと合流すれば僕達の計画も成功率があがるんじゃないの?」
「計画?何の話や?」
「実は……」
レナは6日後に処刑されるナオを救出するため、散らばった仲間達を探している事を伝えると、フェリスは難しい表情を浮かべてレナ達の計画の危険性を指摘する。
「それはいくら何でも難しいと思うで……王女様の処刑となれば王妃も流石に厳重な警備も施すのは間違いない。それに王都には何万の兵士もおるんやで?しかも大将軍の3人も居たとすればいくらレナさん達でも救出は難しいんやないか?」
「分かっています。でも、叔母様が見つからない限りは俺達にこれ以外の方法はないんです」
「気持ちはわかるけどな……何か勝算があるのなら話は別やけど」
「勝算、といえる程でもないですけど、何の作戦も立てずに挑むわけじゃありませんから」
フェリスの言葉にレナは空間魔法に収めている「レーヴァティン」と右腕に宿った「風の聖痕」を思い出し、いざという時はこの二つを利用してナオを救い出すつもりだった。だが、確かにフェリスの言葉通りに現状では戦力が圧倒的に足らず、どうにか仲間を集める必要があった。
「フェリスさんにお願いしたい事があるんです。今、この街に滞在している冒険者の中で俺達に協力してくれそうな人はどれくらい居ますか?」
「そういわれてもな。殆どの冒険者はきっと王国兵が目を見張らせているはずやし……あ、でも心当たりがあるで」
「え、あるの!?」
「何でそこで驚くんや。ここは嬉しがる所やろ……レナさんも知っている人物やで」
「え、本当ですか?」
「名前は……確かミナさんやったかな?あの子ならここにいるで」
「「ミナ?」」
意外な名前が出てきたことにレナとダインが驚いた瞬間、部屋の扉がノックも無しに開け放たれ、慌てふためいた様子の赤髪のポニーテールが特徴的な部屋の中に入り込んできた。
「失礼します!!あの、ここにレナ君がいるって……!!」
「ミナ!?」
「え、嘘!?どうしてここに!?」
部屋の中に入り込んできたミナにレナとダインは驚きの声を上げると、彼女はレナの顔を見て驚愕の表情を浮かべるが、すぐに笑顔を浮かべてレナに抱き着く。
「レナ君!!無事だったんだね!!」
「うぷっ!?」
抱き着かれたレナはミナのそれなりにふくよかな胸元に顔を挟まれ、机の上に押し倒される。まさか意外な所で意外な人物と再会したが、とりあえずは彼女も無事だったことを喜ぶ。
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