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放浪編

緑影のラナ

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「姿を見せろエリナ!!正々堂々と戦え!!」
「この臆病者が……!!」
「王国四騎士の恥知らずがっ……卑怯者めっ!!」


倒れた部下達が負傷した箇所を抑えながら騒ぎ出し、その姿を見て隊長は彼等が敢えてエリナの注意を引くために暴言を吐いている事を悟る。暗殺業を生業とする緑影の人間が「卑怯」などという言葉を使うはずがなく、戦闘不能に追い込まれながらも隊長のために部下達はエリナを罵倒して自分達に狙いを移そうとした。

100年以上も付き合いのある部下達の配慮に隊長は頷き、森の中で隠れているエリナの様子を伺う。片腕を封じられた状態でも隊長はエリナに反撃する術を持ち合わせており、腕の中に仕込んでいた短剣を取り出す。エリナが隠れている位置さえ特定できれば「投擲」のスキルで短剣を狙い撃つ事は難しくはなく、狙うとしたらエリナが矢を打ち出した直後である。


(見事だエリナ、お前を侮った自分が恥ずかしい)


次の攻撃でエリナか自分の命が確実に失う事を覚悟した隊長は内心でエリナを侮った事を謝罪する。新参者の兵士が王女ティナのお気に入りという理由で王国四騎士に選抜されたという事に隊長は不満を抱いていたが、そ自分のの認識が間違っていた事を悟る。

ただの成り上がり者が緑影の中でも精鋭である自分達をここまで追い詰めるはずがなく、緑影の隊長である「ラナ」はエリナの実力を認めた。彼女の狙撃の腕は間違いなく王国四騎士の名に恥じぬ程の正確性を誇り、あと数年も修行すれば一流の狩人として誰もが認める存在になるだろう。

しかし、いくら相手の事を認めようと任務の妨げになるのならば容赦はせず、短剣を背中に隠しながらラナは茂みの様子を伺う。一瞬でもエリナの注意が自分以外の存在に向いたら短剣を投擲して仕留める自信はあり、彼女の行為を察した部下達は喚き散らす。


「エリナ!!我々は王女様を連れ出す様に命じられている……しかし、最悪の場合は殺害の許可も下りているぞ!!」
「貴様が姿を現さないのならばティナ様はここで殺す!!」
「さあ、姿を現せ!!そうすれば命は奪わん……約束する!!」


部下達の言葉にラナは茂美の様子を伺い、一瞬だけエリナが躊躇したようにボーガンの照準を揺らした事を見抜く。それを見たラナは最後の警告を行う。


「エリナ、これが最後の警告だ!!我々に投降しろ、そうすればティナ王女もこの白狼種も見逃してやる!!」


ラナの言葉が森中に響き渡り、しばらくの間は沈黙が訪れた。ラナはエリナが投降する事を願い、これほどの逸材を逃すのは惜しいと考えた。森人族は「約束」を尊ぶ存在なので彼女達の言葉には嘘はなく、もしもエリナが投降すれば宣言通りに彼女を許すつもりだった。



――警告から十数秒経過すると、茂みの中からボーガンを取り出したエリナが姿を現す。その様子を屋敷の敷地から確認したラナは彼女が投降する気になったのかと思ったが、姿を現したエリナはボーガンを下ろさずに叫ぶ。



「アイン!!今っす!!」
「キュロロロッ!!」
「何だと!?」


エリナが叫び声を上げた瞬間、森の中からアインの雄たけびが響き渡り、木々が震える。そのあまりの音量に聴覚が人間よりも優れている森人族であるラナ達は咄嗟に耳を抑えてしまい、その隙を逃さずに事前に耳栓をしていたエリナはボーガンを射抜く。


「強化射撃!!」
「うぐぁっ!?」


戦技を発動させて射抜かれた矢はラナの右足の爪先に突き刺さり、鏃が地面にめり込んで足元を固定させる。激痛を味わいながらもラナは足に突き刺さった矢を抜こうとしたが、余程深く刺さっているのか引き抜けない。


「くそっ!!こんな物……!?」


矢が地面から抜けないと判断したラナは引き抜くのを辞めて突き刺さった箇所を短剣で切ろうとしたが、自分の足に刺さっている矢が「黒色の金属」で構成されている事に気付き、短剣の刃で切りつけても掠り傷一つ与えられない。


「何だこれは!?こんな物……ぐあっ!?」
「アダマンタイト製の矢だから簡単には抜けないよ」
「っ!?」


背後から声をかけられたラナは振り返ると、何時の間にか屋敷の敷地内に少年が立っており、その足元には気絶した部下が倒れていた。その光景を見たラナは少年の顔を見て恐怖の表情を浮かべる。


「お前は……!?」
「人の家の前でよくも色々と騒ぎを起こしてくれたな……容赦はしないぞ」


退魔刀を抱えたレナはラナの元へ近づき、鋭い視線を向ける。その瞳を異様な威圧感を感じ取ったラナは冷や汗を流し、握りしめていた短剣を投げつけた。


「近寄るなっ!!」
「おっと」
「なっ!?」


だが、3メートルの距離から投げられた短剣に対してレナは何事もないように空中で掴み取る。ラナはこれまでの暗殺稼業の中で自分の短剣を正面から受け止めた人間など一度も遭遇した事はなく、しかも人間の子供に受け止められたことに動揺を隠せない。


「な、何者だ……お前は一体何なんだ!?」
「……この家の住居人だよ。元、だけどね」


受け止めた短剣を握り締めながらレナはラナを睨みつけ、自分が住んでいた屋敷を荒らす存在に対して若干の怒りを抱き、短剣を放り捨てて退魔刀を引き抜いた。




※ちょっと中途半端ですが、これで今回の章は終了します。それと2話投稿も申し訳ありませんが終了となります……ですが、物語も終わりが見えてきましたので気合を入れて投稿しますよ!!

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