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放浪編

監獄都市からの脱出

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「なるほど、これが許可証という奴ですか。意外としょぼい紙切れですね」
「な、何者だ!?」


ラルフは背後を振り返ると、何時の間にか仮面を装着した状態のネズミが立っており、その手元には「出所許可証」と記された用紙が2枚握りしめられていた。驚いたラルフは机に視線を向けると、何時の間にか重要書類が入っている鍵付きの引き出しが明けられている事に気付く。

音も気配も立てずに部屋の中に忍び込んだネズミは目当ての書類を盗み出し、その内容を確認して書類に監獄所長の名前と拇印を押すだけで獣人国軍の関所を通過出来る事を確かめる。レナとゴンゾウにネズミは頷くと、二人は即座にラルフを取り囲む。


「さてと……残りはあんただけだな」
「大人しくしてもらうぞ」
「ひいいっ!?」


二人に挟まれたラルフは情けない悲鳴をあげて腰を抜かしてしまい、そんな彼にネズミが万年筆を差し出すと書類に署名を行うように促す。


「さあ、無駄な抵抗は止めてこれに名前と印をお願いします。あ、そうそう……ついでに金目の物があったら教えてくれませんかね?」
「あ、ああっ……」
「呆けていたところで状況は変わりませんよ。ほら、吐いてもらいましょうか……金庫の隠し場所を」
「なんか俺達が悪人のように思えて来たんだけど……」


容赦なく許可証の署名だけではなく、監獄都市に送り込まれる予算を不正利用して集めた金品の類を要求するネズミにラルフは顔色を青くした――





――数時間後、無事に目的の物を手に入れたレナとゴンゾウは兵士に偽装したネズミの馬車に乗り込み、獣人国軍の関所へと到着した。山岳地帯に存在する関所と聞いていたのでどれほど厳重な警備が敷かれているのかとレナ達は身構えたが、到着した場所は山道に設けた小さな砦に100名程度の兵士が配置されている程度だった。

小髭族の兵士に偽装したネズミが関所の兵士に話を通すと、鑑定士の職業の人間が許可証の確認を行い、記された文字と拇印が監獄所長のラルフの物であると確認するとあっさりと馬車を通してくれた。


「ふむ、確かにこれは本物の許可証だな。いいだろう、中に通してやれ!!」
「どうも」
「言っておくが関所を潜り抜けるまではお前達は囚人扱いだ。下手な真似はするなよ?」


関所の兵士の案内の元、馬車から降りたレナ達は砦の中へ案内され、砦の裏側に待機した新しい馬車の元まで案内される。ここから先は別の兵士が引率するらしく、遂にレナ達はネズミと別れる時を迎える。


「どうやらここまでのようですね……ここから先は御二人だけです。気を付けてください」
「ああ……ネズミ、お前には世話になったな」
「ネズミ、色々と助けてくれてありがとう」
「……どういたしまして」


レナとゴンゾウは最後にネズミと抱き合い、お礼と別れの言葉を告げる。他の兵士に怪しまれないようにすぐに離れるが、不意にネズミが何かを思い出したようにレナの手を握り締めて引き留めた。


「あ、そうだ……お二人に伝えたい事があります」
「えっ?」
「本当は内緒なんですけど……誰にも話さないでくださいね」


二人の顔を引き寄せると、ネズミは他の人間に聞こえない声量である事を話し、その言葉を聞いたレナとゴンゾウは驚愕の表情を浮かべ、同時に納得したように頷く。


「なるほど……それは驚いたな」
「この都市にきて一番びっくりしたよ」
「ふふふっ……他の人には秘密ですよ。あ、そうだった。この子も最後のお別れをしたいそうです」
「チュイッ!!」


ネズミが懐に手を伸ばすとマウスが飛び出し、二人に別れを告げるように両手を振ると兵士に見つからないようにすぐに隠れてしまう。その様子を見てレナとゴンゾウは笑みを浮かべ、馬車に乗り込もうとした。だが、途中でレナはネズミに贈り物がある事を思い出す。


「あ……そういえば忘れていた。ネズミ、これあげるよ」
「え?これは……指輪ですか?」


馬車の中からレナは緑色の翡翠がはめ込まれた指輪をネズミに放り投げ、受け止めたネズミは不思議に思いながら指輪を観察すると、輪の裏側にネズミの紋様が刻まれている事に気付く。


「ミスリルゴーレムの核と手錠の鎖を改造して作った指輪だよ。本当は街で売ろうかと思っていたんだけど、お前にやるよ」
「いいんですか?これ、きっと凄い価値があるのに……」
「お前に助けられた恩と比べたらこんな物じゃ釣り合わないよ」
「ネズミ、必ずまた会いに来るからな。その時は必ず回復薬代を支払うぞ」
「あははっ……それは犯罪を犯して囚人として戻ってくるという意味ですか?」


レナから受け取った指輪を握り締め、ゴンゾウの言葉に苦笑いを浮かべながらもネズミは最後の別れの言葉を告げると、馬車が裏口の扉に向けて走り出す。


「じゃあな!!またいつか会おうな!!」
「お前の事は忘れないぞ!!」
「……ええ、さようなら」
「チュチュッ……」


頭に被った兵士の兜で涙を隠しながらネズミは去っていく馬車に手を振り、ネズミの胸元からマウスも寂しそうに去り行く馬車を見送る。初めて出来た友達の去る姿にネズミは目頭を抑え、馬車が完全に見えなくなるまで見送りを続けた――




※この話の投稿するために何度も書き直しました。あ、内容に問題があったわけではなく、急に接続が悪くなってデータが飛んだだけですが……バックアップ機能とかがあればなぁ(;´・ω・)
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