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放浪編

ハンググラインダー

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「うへぇっ……予想はしてたけど、凄い力だな。森人族はこんな魔法を扱えるのか」


風の聖痕によって魔法が強化されている事もあるのだろうが、通常の魔法と違って精霊の力を借りたお陰で魔力の消耗量が抑えられており、通常の5倍以上の威力を引き出しながらも普段の半分程度の魔力しか消耗していない事に気づく。もしもレナが本気で魔法を使用していた場合、更に威力を増した攻撃も行えるだろう。

しかも聖痕の力は魔法の強化だけではなく、風その物を精霊を利用して操る事も発覚した。試しにレナが掌を伸ばして意識を集中させると離れた場所に小規模の竜巻を生み出す事も判明し、その竜巻を自由自在に動かしたり、腕を払う動作だけで強風を放つ事も出来た。


(改めて確認すると本当に凄い能力だな。もしかしたらこの力を使えば本当に脱出できるかも……)


レナは異空間に収めた脱出用の道具を思い出すと、試しに空間魔法を発動させて作業場から回収した鉄格子とテント用の大きな布を取り出す。錬金術師の能力を利用してこの二つを組み合わせ、地球での知識を生かしてレナはこの二つの材料から「ハンググライダー」を作り上げた。


「外見はそれっぽくできたけど、上手く飛べるかな……」


ハンググライダーに関しては地球に居た頃に親戚の叔父が所持している物を何度か見せてもらっているので記憶を掘り起こして作り上げてみたが、実際にレナがハンググライダーを利用して飛んだ事はない。しかし、ハンググライダーが飛ぶ際に必要とする風の力を人為的に生み出す事が出来るのならば飛ぶことも不可能じゃないと考えたレナは出来上がったハンググライダーに乗り込み、風の聖痕の力を利用して飛び立つ事が出来ないのかを試す。


「上手くいってくれよ……飛べ!!」


自分の身体をしっかりと固定させるとレナはハンググライダーを抱えた状態で駆け出し、勢いよく跳躍した瞬間に聖痕の力を発動させた。

レナが聖痕の力を利用してハンググラインダーに風の力を与えると、徐々に浮上して最終的には天井付近まで接近する。風の力を調整すれば方向転換、あるいは移動速度の向上が発覚し、自由自在に空を飛べる事が判明した。しかも精霊の力を借りているのでレナの肉体に殆ど負荷は掛からず、長距離の移動にも適していた。


「凄い……本当に空を飛んでるんだ。これなら監獄から抜け出せ……うわっ!?」


だが、調子に乗って移動速度を上昇しすぎたせいか操作を失敗して羽根の部分が天井に衝突してしまい、慌てて体勢を整え直して床の上に着地する。一瞬でも油断すると危険な事態に陥る事を理解したレナはハンググラインダーを空間魔法で異空間に戻す。


「あ、危なかった……飛ぶときは気を付けないとな。それにしても大分奥まで進んたな、すぐに戻らないと……あれ?」


飛ぶ事に夢中になって休憩室から随分と離れた場所に移動した事に気づいたレナは道を引き返そうとすると、都合よく地上に続く梯子を発見する。


「ここにも梯子があったのか。面倒だし、ここから登ってみるか……」


どうやらレナとネズミが入ったマンホール以外にも地上に通じる場所があるらしく、戻るのも面倒に考えたレナは梯子を利用して地上に引き返す事にした――




――地上へと続く梯子を上りきると、マンホールの蓋を開けてレナは地上の様子を伺う。幸いにも周囲には人間の姿は見えず、誰にも見つからないうちにマンホールの蓋を戻すとレナは自分が囚人区の宿舎(校舎)の反対側に移動した事を知る。位置的には廃棄場の近くのマンホールから抜け出したようであり、昼間に囚人服を回収した場所に戻って来た事になる。


「ありゃ、またここに戻って来たのか。でも、案外ここなら見つかりにくいかもしれないしな……」


今現在も看守長の命令で女囚館に侵入したレナを兵士達が捜索しているはずであり、人目のない廃棄場にレナが辿り着いたのは幸運だったのかもしれない。最もいずれはこの場所にも兵士が訪れる事は間違いなく、今のうちにレナは簡単な変装をするために空間魔法を発動させて大きな箱を取り出す。


「まさかこれを再び使う羽目になるとは……仕方ない、白銀の剣士ルナの復活だ」


闘技祭に出場する際に正体が気付かれないように「銀砂」と呼ばれるこの世界の染毛剤を取り出したレナは手慣れた手つきで髪の毛に銀色の砂を付着させ、黒髪から銀髪へと変色させる。更に変装用の眼帯も取り出し、片目を隠す事で顔を隠す。囚人の中には体の一部を破損した人間も多く、レナのように眼帯を行う人間も少なからず存在したので顔を隠す道具を身に着けても兵士に咎められることはない。

無事に「ルナ」の姿に変装したレナは廃棄場から離れ、まずはゴンゾウとネズミと合流する前にレナはある人物の捜索を行う。書置きも残さずに地下から抜け出したので早々に用事を済ませる必要があり、他の人間に気づかれないように「隠密」と「無音歩行」のスキルを駆使しながら目的の人物を探すために行動を開始した。



※今回の投稿の5秒前

アイリス「さあ、吐きなさい!!私を小説の挿絵に出さない本当の理由を!!でないとボタンを押しますよ!!」( ゚Д゚)ノ公開ボタン
カタナヅキ「ううっ……そ、それだけは答えられない。(;´・ω・)グフウッ」
アイリス「往生際が悪い作者ですね……ポチっとな(#・ω・)ノカチッ」
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