429 / 2,085
放浪編
スライムの重要性
しおりを挟む
「全く、アイリスと交信できればもっと楽な潜入方法を教えて貰えたかもしれないのに……うん、誰も居ないな」
気配感知の能力を発動させて室内に人間の気配を感じ取れない事を確認すると、窓から中に移動したレナは水槽を確認して苦笑いを浮かべた。本来は泳ぐ目的で作り出されたプールの水槽には緑色のお湯が溜められており、恐らくは数種類の薬草の粉末を混ぜて入浴剤代わりに利用している事が伺えた。
試しに指で触れてみると本物の温泉のように熱く、大人には丁度いい温度が保たれていた。周囲を観察すると桶や身体を洗う石鹸の類も完備されており、女性の囚人は毎日この場所で身体を清めているらしい。
(話は聞いていたけど、まさか本当に温水プールを銭湯代わりに利用されているとは……でも、この水って何処から引き寄せてるんだろう?排水溝はあるみたいだけど、水はどうやって用意しているんだ?)
浴槽のお湯を何処から用意しているのか気になったレナは観察眼の能力を発動させて様子を調べると、水を追加する蛇口の部分に水属性と火属性の魔石が取り付けられている事に気づき、どうやら水属性の魔石に蓄積させていた水を火属性の魔石で加熱して流し込み、お湯を生み出している事を知る。
(でも、これだけの大きさの浴槽だと掃除も大変そうだな……ん?何だ?)
水面に視線を向けると何かが浮かんでいる事に気づいたレナは浴槽に近寄ると、浮かんでいる物体の正体が全身が緑色の「スライム」である事に気づく。しかも1体や2体ではなく、大量のスライムが湯舟に浸かっていた。
「ぷるぷるっ……」
「ぷるるんっ」
「ぷるんっ?」
「こいつらは……ペットじゃなさそうだな」
大量のスライムが浴槽に浮かんでいる事にレナは驚くが、その中の1体が浴槽から抜け出すと、排水溝の前にまで移動して口を開く。
「ぶるるるっ……」
「うわ、吐いた!?大丈夫か?」
抜け出したスライムは排水溝の前で口を開くと黒色の液体を吐き出し、心配したレナが慌ててスライムの元に駆け寄ろうとしたが、吐き出した物体の中に人間の髪の毛と思われる物が混じっている事に気づいて立ち止まる。やがて体内の遺物を全て吐き出したのかスライムは何事もなかったように浴槽に戻った。
「こいつは……うっ、なるほどそう言う事か。浴槽の汚れをこいつらが吸い取って吐き出しているんだな」
排水溝にこびり付いた液体の正体はどうやら浴槽内部に交じっていた「汚れ」らしく、この大量のスライムは浴槽の内部のお湯を洗浄するために飼育されている事が判明した。どうやらスライムが吐き出したのは汚水らしく、定期的に浴槽内部の汚れを吸収して吐き出しているらしい。
「そういえば前にダインが汚物を処理してくれるスライムもいるとか言ってたけど、こいつらの事だったのか……よし、今日から君達はセイソウミンだ」
『ぷるぷるっ?』
勝手に名前を付けられたスライム達は湯舟の中で頭を傾げる動作を行うが、レナの姿を見ても特に大きな反応を示さないのでスラミンやヒトミンほど知能が高いわけではないらしく、窓から入ってきたレナに興味すら抱かない。
「一匹ぐらいは連れて帰りたいけど、今は余裕もないしな……お腹を壊さないように気を付けろよ」
『ぷるぷるっ……』
大量のスライムと別れを告げてレナはパールの部屋を探し出し、そして室内に存在する部屋を見つけた。恐らくは元々は用具室として利用されていたのだろうが、扉に掲げられている表札には「看守室」と記されていた。
「ここだな……鍵はかかってないな」
取っ手を掴んで簡単に扉が開くことに気づいたレナは用心しながら中の様子を覗き、誰も居ない事を確認する。部屋の中は意外と広く、大量のぬいぐるみや人形が並べられていた。まるで小さな女の子の部屋に入ったような気分に陥りながらもレナは部屋の中に入って目当ての物を探す。
「随分と可愛いらしい部屋だな……さてと、魔法腕輪はありますかね」
タンスやクローゼットの中には様々な衣装が収められ、子供から大人用の下着も存在した。意外と日用品の類は少なく、自分が寛ぐというよりも衣裳部屋のように利用されている節があった。物色する時は後でパールが部屋に戻って来た時に気づかれないように気を配り、彼女が身に着けていたという魔法腕輪を探す。
「ここじゃない、ここでもない……あった!!ここに隠してたのか……」
化粧箱の中から複数の希少な魔石が取り付けられた銀色の腕輪を発見したレナは喜びの声を上げ、自分の魔法腕輪である事を確認するとすぐに空間魔法を発動して異空間に収める。これで退魔刀と魔法腕輪を取り戻し、急いで部屋を抜け出そうとした。しかし、レナが抜け出す前に外側から扉がノックされ、聞きなれない男性の声が響き渡る。
「パール、ここに居るのかい?中に入ってもいいかな?」
「っ……!?」
扉を開けようと手を伸ばした瞬間に聞こえてきた男性の声にレナは焦り、慌てて隠れる場所を探す。しかし、相手は返事も待たずに扉を開き、中に入り込んできた。
気配感知の能力を発動させて室内に人間の気配を感じ取れない事を確認すると、窓から中に移動したレナは水槽を確認して苦笑いを浮かべた。本来は泳ぐ目的で作り出されたプールの水槽には緑色のお湯が溜められており、恐らくは数種類の薬草の粉末を混ぜて入浴剤代わりに利用している事が伺えた。
試しに指で触れてみると本物の温泉のように熱く、大人には丁度いい温度が保たれていた。周囲を観察すると桶や身体を洗う石鹸の類も完備されており、女性の囚人は毎日この場所で身体を清めているらしい。
(話は聞いていたけど、まさか本当に温水プールを銭湯代わりに利用されているとは……でも、この水って何処から引き寄せてるんだろう?排水溝はあるみたいだけど、水はどうやって用意しているんだ?)
浴槽のお湯を何処から用意しているのか気になったレナは観察眼の能力を発動させて様子を調べると、水を追加する蛇口の部分に水属性と火属性の魔石が取り付けられている事に気づき、どうやら水属性の魔石に蓄積させていた水を火属性の魔石で加熱して流し込み、お湯を生み出している事を知る。
(でも、これだけの大きさの浴槽だと掃除も大変そうだな……ん?何だ?)
水面に視線を向けると何かが浮かんでいる事に気づいたレナは浴槽に近寄ると、浮かんでいる物体の正体が全身が緑色の「スライム」である事に気づく。しかも1体や2体ではなく、大量のスライムが湯舟に浸かっていた。
「ぷるぷるっ……」
「ぷるるんっ」
「ぷるんっ?」
「こいつらは……ペットじゃなさそうだな」
大量のスライムが浴槽に浮かんでいる事にレナは驚くが、その中の1体が浴槽から抜け出すと、排水溝の前にまで移動して口を開く。
「ぶるるるっ……」
「うわ、吐いた!?大丈夫か?」
抜け出したスライムは排水溝の前で口を開くと黒色の液体を吐き出し、心配したレナが慌ててスライムの元に駆け寄ろうとしたが、吐き出した物体の中に人間の髪の毛と思われる物が混じっている事に気づいて立ち止まる。やがて体内の遺物を全て吐き出したのかスライムは何事もなかったように浴槽に戻った。
「こいつは……うっ、なるほどそう言う事か。浴槽の汚れをこいつらが吸い取って吐き出しているんだな」
排水溝にこびり付いた液体の正体はどうやら浴槽内部に交じっていた「汚れ」らしく、この大量のスライムは浴槽の内部のお湯を洗浄するために飼育されている事が判明した。どうやらスライムが吐き出したのは汚水らしく、定期的に浴槽内部の汚れを吸収して吐き出しているらしい。
「そういえば前にダインが汚物を処理してくれるスライムもいるとか言ってたけど、こいつらの事だったのか……よし、今日から君達はセイソウミンだ」
『ぷるぷるっ?』
勝手に名前を付けられたスライム達は湯舟の中で頭を傾げる動作を行うが、レナの姿を見ても特に大きな反応を示さないのでスラミンやヒトミンほど知能が高いわけではないらしく、窓から入ってきたレナに興味すら抱かない。
「一匹ぐらいは連れて帰りたいけど、今は余裕もないしな……お腹を壊さないように気を付けろよ」
『ぷるぷるっ……』
大量のスライムと別れを告げてレナはパールの部屋を探し出し、そして室内に存在する部屋を見つけた。恐らくは元々は用具室として利用されていたのだろうが、扉に掲げられている表札には「看守室」と記されていた。
「ここだな……鍵はかかってないな」
取っ手を掴んで簡単に扉が開くことに気づいたレナは用心しながら中の様子を覗き、誰も居ない事を確認する。部屋の中は意外と広く、大量のぬいぐるみや人形が並べられていた。まるで小さな女の子の部屋に入ったような気分に陥りながらもレナは部屋の中に入って目当ての物を探す。
「随分と可愛いらしい部屋だな……さてと、魔法腕輪はありますかね」
タンスやクローゼットの中には様々な衣装が収められ、子供から大人用の下着も存在した。意外と日用品の類は少なく、自分が寛ぐというよりも衣裳部屋のように利用されている節があった。物色する時は後でパールが部屋に戻って来た時に気づかれないように気を配り、彼女が身に着けていたという魔法腕輪を探す。
「ここじゃない、ここでもない……あった!!ここに隠してたのか……」
化粧箱の中から複数の希少な魔石が取り付けられた銀色の腕輪を発見したレナは喜びの声を上げ、自分の魔法腕輪である事を確認するとすぐに空間魔法を発動して異空間に収める。これで退魔刀と魔法腕輪を取り戻し、急いで部屋を抜け出そうとした。しかし、レナが抜け出す前に外側から扉がノックされ、聞きなれない男性の声が響き渡る。
「パール、ここに居るのかい?中に入ってもいいかな?」
「っ……!?」
扉を開けようと手を伸ばした瞬間に聞こえてきた男性の声にレナは焦り、慌てて隠れる場所を探す。しかし、相手は返事も待たずに扉を開き、中に入り込んできた。
0
お気に入りに追加
16,615
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
聖女としてきたはずが要らないと言われてしまったため、異世界でふわふわパンを焼こうと思います!
伊桜らな
ファンタジー
家業パン屋さんで働くメルは、パンが大好き。
いきなり聖女召喚の儀やらで異世界に呼ばれちゃったのに「いらない」と言われて追い出されてしまう。どうすればいいか分からなかったとき、公爵家当主に拾われ公爵家にお世話になる。
衣食住は確保できたって思ったのに、パンが美味しくないしめちゃくちゃ硬い!!
パン好きなメルは、厨房を使いふわふわパン作りを始める。
*表紙画は月兎なつめ様に描いて頂きました。*
ー(*)のマークはRシーンがあります。ー
少しだけ展開を変えました。申し訳ありません。
ホットランキング 1位(2021.10.17)
ファンタジーランキング1位(2021.10.17)
小説ランキング 1位(2021.10.17)
ありがとうございます。読んでくださる皆様に感謝です。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。