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放浪編
久々の威圧
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「安心したまえ、毒と言っても命に影響を及ぼす程の代物じゃない。但し、一時的に体内の魔力を搔き乱す程度の効果しかないからな」
「魔力を搔き乱す……?」
「この果実水の中には数種類の薬草を一定の割合で調合した粉末が入っている。僕のような戦闘職の人間には特に大きな効果は及ぼさないが、君のような強力な魔術師には厄介な代物でね……魔法の発現を封じる事が出来るのさ」
「……なるほど」
ぺらぺらと毒薬の効能を話すラルフの不用心さに呆れながらもレナは掌に視線を向け、試しにラルフに気づかれないように指先に意識を集中させて魔鎧術を発動させる。その結果、特に問題なく指先に青色の炎を想像させる魔力が指先を覆いこみ、特に身体に異変はない。
(魔法を封じる毒薬を仕込めば俺を取り押さえられると思っていたのか?所長という割には警戒心が薄い奴だな……)
毒耐性の技能のお陰でどうやらラルフが仕込んだ毒はレナの肉体は受け付けなかったらしく、魔法を使用しても特に問題はない。しかし、完全にレナの魔法を封じたと思い込んだラルフは余裕の態度を保つ。
「時々、君のように高レベルの魔術師がこの監獄に送り込まれる事があってね。中には魔石や魔道具の触媒も無しに強力な魔法を扱える人間もいるから作り出された毒薬さ。ちなみに薬の効果は24時間は続く、その間は君は無力という事だね」
「あんた、俺がオーガをぶっ飛ばしたのを見てなかったの?」
「それも魔法の力だろう?上手く他の人間は誤魔化せたようだが、僕にはお見通しだ」
レナの試験場で発揮した驚異的な能力の正体が魔法の力である事は事実であり、意外と観察能力が高いラルフに内心驚きながらもレナはこの後に彼が告げる言葉を予測して嫌な予感を浮かぶ。案の定というべきかレナが魔法が使えないと思い込んだラルフは壁に立てかけられていた黄金製の剣を掴み取り、座り込んでいるレナに刃先を向ける。
「さあ、自分の立場が分かっただろう。君の正体を教えてもらおうか、一体何処からこの監獄都市に入り込んだ?」
「……そうきたか」
ラルフはレナが監獄都市の侵入者だと判断し、正体を明かそうとするがレナ自身も別に好きでこの場所に訪れたわけではない。しかし、素直に自分の正体とここまでに至る経緯を語っても信じてくれるとは思えず、そもそもレナも自分が監獄都市行きの馬車に乗り込んでいたのか理由を知らない。
(俺が起きたときには馬車の中に放り込まれていたけど、衣服以外の装備は奪われている……それにさっきの兵士が俺の反鏡剣を持っていた。という事は俺の装備を奪ったのはこの監獄都市の人間という事になるけど、それなら看守と所長の反応がおかしいな)
意識が戻った時には既にレナは監獄都市に向かう囚人達の馬車に拘束された状態だった。その後、看守のミノタウロスが囚人達の資料の中にレナの情報が無い事に気づき、ラルフもレナが送り込まれるという情報を聞いていなかった。だが、気絶していたレナを捕まえて装備を奪い、囚人行きの馬車に乗せた人間は確実に存在する。
(アイリスと情報を交換出来れば良いんだけど……本当に更新出来ないな)
聖痕の影響で未だにアイリスとは交信が行えず、彼女に自分の身に何が起きたのか問いただす事も出来ない。手がかりが残っているとすればレナの所持していた反鏡剣を持っていた兵士だけであり、その兵士からどのような経緯で反鏡剣を入手したのかを尋ねる必要があった。
「何を黙っている?質問に答えろ!!」
「……さあ、俺も何が何だか分かりません」
「貴様……」
別に煽る必要はないのだが剣先を構えてくるラルフの行動に苛立ちを覚えたレナは適当に返事をすると、自分を馬鹿にされたと感じ取ったラルフは剣を振りかざす。だが、その光景を見たレナは「威圧」のスキルを発動させてラルフの行動を止める。
「止めろ」
「ひいっ!?」
蛇に睨まれた帰るのようにラルフは情けない悲鳴を上げて剣を落としてしまい、腰を抜かす。そんな彼の姿を見て威圧を解除したレナは立ち上がり、机の上に置かれている瓶に視線を向けた。
(魔法の力を弱める、か……何かに使えそうだな)
机の上に存在する瓶を見てレナは空間魔法を発動させ、瓶の上空に黒渦を作り出して回収を行う。ラルフは腰を抜かして地面にもたれていたので机の上の異変にまでは気づかず、威圧が解除された事で恐怖心が消えたのか慌てて剣を拾いなおして立ち上がる。
「お、お前……今、何をした?」
「……さあ?別に何も」
「このっ……くっ!!」
レナの返答を聞いてラルフは剣を握りしめるが、再び睨まれる事を恐れたラルフは歯を食いしばりながら剣を下ろすと、部屋の扉に向けて大声を上げた。
「ゴウキ!!お前の出番だ!!このガキを懲罰房へ送り込め!!」
「……ゴウキ?」
扉の外には誰も存在しないはずだが、ラルフが声を上げた瞬間に扉に振動が走り、やがて枠の部分に罅割れが生じる。一体何事かとレナは驚いた顔を浮かべると、それを見たラルフは笑みを浮かべて扉を指差す。
「魔力を搔き乱す……?」
「この果実水の中には数種類の薬草を一定の割合で調合した粉末が入っている。僕のような戦闘職の人間には特に大きな効果は及ぼさないが、君のような強力な魔術師には厄介な代物でね……魔法の発現を封じる事が出来るのさ」
「……なるほど」
ぺらぺらと毒薬の効能を話すラルフの不用心さに呆れながらもレナは掌に視線を向け、試しにラルフに気づかれないように指先に意識を集中させて魔鎧術を発動させる。その結果、特に問題なく指先に青色の炎を想像させる魔力が指先を覆いこみ、特に身体に異変はない。
(魔法を封じる毒薬を仕込めば俺を取り押さえられると思っていたのか?所長という割には警戒心が薄い奴だな……)
毒耐性の技能のお陰でどうやらラルフが仕込んだ毒はレナの肉体は受け付けなかったらしく、魔法を使用しても特に問題はない。しかし、完全にレナの魔法を封じたと思い込んだラルフは余裕の態度を保つ。
「時々、君のように高レベルの魔術師がこの監獄に送り込まれる事があってね。中には魔石や魔道具の触媒も無しに強力な魔法を扱える人間もいるから作り出された毒薬さ。ちなみに薬の効果は24時間は続く、その間は君は無力という事だね」
「あんた、俺がオーガをぶっ飛ばしたのを見てなかったの?」
「それも魔法の力だろう?上手く他の人間は誤魔化せたようだが、僕にはお見通しだ」
レナの試験場で発揮した驚異的な能力の正体が魔法の力である事は事実であり、意外と観察能力が高いラルフに内心驚きながらもレナはこの後に彼が告げる言葉を予測して嫌な予感を浮かぶ。案の定というべきかレナが魔法が使えないと思い込んだラルフは壁に立てかけられていた黄金製の剣を掴み取り、座り込んでいるレナに刃先を向ける。
「さあ、自分の立場が分かっただろう。君の正体を教えてもらおうか、一体何処からこの監獄都市に入り込んだ?」
「……そうきたか」
ラルフはレナが監獄都市の侵入者だと判断し、正体を明かそうとするがレナ自身も別に好きでこの場所に訪れたわけではない。しかし、素直に自分の正体とここまでに至る経緯を語っても信じてくれるとは思えず、そもそもレナも自分が監獄都市行きの馬車に乗り込んでいたのか理由を知らない。
(俺が起きたときには馬車の中に放り込まれていたけど、衣服以外の装備は奪われている……それにさっきの兵士が俺の反鏡剣を持っていた。という事は俺の装備を奪ったのはこの監獄都市の人間という事になるけど、それなら看守と所長の反応がおかしいな)
意識が戻った時には既にレナは監獄都市に向かう囚人達の馬車に拘束された状態だった。その後、看守のミノタウロスが囚人達の資料の中にレナの情報が無い事に気づき、ラルフもレナが送り込まれるという情報を聞いていなかった。だが、気絶していたレナを捕まえて装備を奪い、囚人行きの馬車に乗せた人間は確実に存在する。
(アイリスと情報を交換出来れば良いんだけど……本当に更新出来ないな)
聖痕の影響で未だにアイリスとは交信が行えず、彼女に自分の身に何が起きたのか問いただす事も出来ない。手がかりが残っているとすればレナの所持していた反鏡剣を持っていた兵士だけであり、その兵士からどのような経緯で反鏡剣を入手したのかを尋ねる必要があった。
「何を黙っている?質問に答えろ!!」
「……さあ、俺も何が何だか分かりません」
「貴様……」
別に煽る必要はないのだが剣先を構えてくるラルフの行動に苛立ちを覚えたレナは適当に返事をすると、自分を馬鹿にされたと感じ取ったラルフは剣を振りかざす。だが、その光景を見たレナは「威圧」のスキルを発動させてラルフの行動を止める。
「止めろ」
「ひいっ!?」
蛇に睨まれた帰るのようにラルフは情けない悲鳴を上げて剣を落としてしまい、腰を抜かす。そんな彼の姿を見て威圧を解除したレナは立ち上がり、机の上に置かれている瓶に視線を向けた。
(魔法の力を弱める、か……何かに使えそうだな)
机の上に存在する瓶を見てレナは空間魔法を発動させ、瓶の上空に黒渦を作り出して回収を行う。ラルフは腰を抜かして地面にもたれていたので机の上の異変にまでは気づかず、威圧が解除された事で恐怖心が消えたのか慌てて剣を拾いなおして立ち上がる。
「お、お前……今、何をした?」
「……さあ?別に何も」
「このっ……くっ!!」
レナの返答を聞いてラルフは剣を握りしめるが、再び睨まれる事を恐れたラルフは歯を食いしばりながら剣を下ろすと、部屋の扉に向けて大声を上げた。
「ゴウキ!!お前の出番だ!!このガキを懲罰房へ送り込め!!」
「……ゴウキ?」
扉の外には誰も存在しないはずだが、ラルフが声を上げた瞬間に扉に振動が走り、やがて枠の部分に罅割れが生じる。一体何事かとレナは驚いた顔を浮かべると、それを見たラルフは笑みを浮かべて扉を指差す。
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