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都市崩壊編
悪あがき
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「ぐっ……まだだっ!!」
「させるかよ馬鹿」
起き上がって反撃に移ろうとした暗殺者に対し、それを予測していたようにシュンは剣を振り払う。容赦なく風の斬撃が暗殺者の胸元を切り裂き、鮮血が舞う。
「ぐはぁっ!?」
「よりにもよってあの野郎に化けるとはな……だが、これで終わりだ」
「シュン、殺しては駄目よ。色々と聞き出したい事があるの」
暗殺者に止めを刺そうとしたシュンをマリアは止めると、祖母を抱いたまま彼女は血を流す暗殺者に近づき、視線を見下ろす。油断していなければ先ほどの攻撃程度ならば簡単に対応できるため、暗殺者の正体を確かめる。
「顔を見せなさい」
「ぐうっ……」
『風よ』
反抗するように顔を伏せる相手に対してマリアは精霊魔法を発動させ、風の精霊を利用して暗殺者の肉体を浮き上がらせる。空中に放り出された暗殺者は悲鳴を上げて地面に倒れこみ、苦痛の表情を浮かべながらマリアの顔を見上げた。いつの間にか顔立ちが変化しており、カゲマルとは似ても似つかない30代後半程度と思われる男性だと判明する。
「それが貴方の本当の顔だとしたら、見事な変装術ね。相当に腕の立つ暗殺者のようだったけど……一体何処の誰かしら?」
「……それを貴様に教える義理はない」
「確かにそうね。だけど、今素直に話した方が後々苦しまずに楽になれるわよ?言っておくけど、その口の中に入っている毒針を飛ばしたところで無駄よ。嘘だと思うなら試してみなさい」
「…………」
暗殺者を吹き飛ばす際に風の精霊の力を利用して事前に身に着けている装備品も調べており、口内に含まれている針さえも見逃さない。仮に至近距離から毒針を撃たれようとマリアの精霊魔法ならば風の防護壁を張って毒針を吹き飛ばす事も容易く、母親の死によって動揺していなければ普段のマリアならば先ほどの奇襲など一人で対応できた。
母親の遺体を抱き上げたままマリアは冷たい視線を暗殺者に向け、この人物が今回の事件の黒幕である王妃と関わりはあるのは間違いなく、彼女は静かな怒りを抱いたまま暗殺者の腕を踏みつける。
「さあ、答えなさい」
「ぐあっ!?」
「おいおい……嬢ちゃん、それはちょっとご褒美が激しすぎないか?」
容赦なく地面に衝突したときに痛めた右腕を踏みつけると、暗殺者は苦痛の表情を浮かべるがマリアは決して力を緩めず、暗殺者の正体を問う。その情け容赦ない彼女の姿にシュンはあきれた声を上げ、レナ達も冷や汗を流す。
「貴方が普通の暗殺者ではない事は分かっているわ。少し前に顔を合わせたシノビも貴方が化けていたのよね?これほど見事なまでに私の側近を演じる限り、もしかしたらシノビやハンゾウと同じく和国の忍者ではないの?」
「和国……?」
「この王国の東方に存在する独立国家の事よ。私も前に一度だけ訪れたことがあるけど、バルトロス王国とは全く違った文化が発展した国だったわ」
和国という単語が出てきたことにレナは疑問を抱くと、隣にいたシズネが代わりに説明を行う。ハンゾウやカゲマルの故郷でもあり、忍者や侍といった特殊な職業の人間で構成されている国家だと前にレナもアイリスから聞いたことを思い出す。
「仮に貴方が和国の忍者だと仮定した場合、あの王妃は和国とも繋がりがあるのかしら?答えなさい」
「ぐうっ……!?」
「無駄な抵抗は止めなさい。貴方が何をしようと、私には適わない」
肉体を痛めつけられ、右腕を封じられた状態で地面に付した暗殺者に抵抗する手段はないと判断したマリアは睨みつけるが、この状況でも暗殺者の男は降伏を選ばず、何故か笑い声をあげる。
「ふっ……ははははっ!!この俺に、降伏しろだと……思いあがったな小娘がっ!!」
「……見た目ほど、若くはないのだけどね。この状況を切り抜ける力を貴方が持っているというの?周りには貴方を助けてくれるお友達もいないわ」
念のためにマリアは事前に風の精霊を利用して周囲の探索を行うが、半径100メートル以内には人間の気配は感じられず、用心のために緑影のような「身隠しのマント」のような特別な魔道具で姿を隠ぺいする人物もいない事を確認している。さらに魔力感知の能力を発動しても地竜のように地下に隠れる反応も感じられず、周辺には暗殺者の仲間と思われる人物はいない。
しかし、追い詰められているにも関わらずに暗殺者は不適な笑みを浮かべ、その態度に疑問を抱いたマリアは不意に自分が何かを見落としているのではないかと考え、即座に上空に視線を向ける。そして空の上に浮かぶ太陽の光を反射しながら煌めく物体を確認し、暗殺者が握りしめていた短剣である事に気づく。
「まさかっ……!?」
「くたばれ……魔女がっ!!」
「なっ……嬢ちゃん!?」
上空に浮かんでいた短剣が暗殺者の掛け声に反応するかのように動き出し、再度マリアの胸元に目掛けて落下する。その光景を確認したシュンが咄嗟に剣を振り払って風の斬撃を放ち、空中から接近してきた短剣を吹き飛ばそうとしたが、レナの反鏡剣と同様に刃の部分が鏡張りになっている短剣はシュンの放つ風の斬撃を受け流す。先ほどレナの魔法で短剣が吹き飛ばされたように見えたのは武器を所有していた暗殺者が敢えて攻撃を受けたときに空中に投げ飛ばしただけであり、魔法を跳ね返す性質を持つ短剣は魔術師の最大の脅威となる。
「うぐっ……!?」
「叔母様!?」
「嬢ちゃん!?」
「そんなっ……!?」
全員の目の前で上空から落下してきた短剣がマリアの胸元に突き刺さり、その様子を確認した暗殺者は笑みを浮かべたが、即座に違和感を抱く。胸を貫いたにも関わらずにマリアの衣服には血が滲まず、それどころか短剣を受けたマリア本人も戸惑うように自分の胸に突き刺さる短剣に視線を向けていた。
「これは……!?」
「馬鹿なっ……何故、死なん!?」
「おい、平気なのか嬢ちゃん!?」
「くっ……!!」
「しゃ、シャドウ・バインド!!」
暗殺者を拘束するためにシュンとゴンゾウが駆け出し、ダインも咄嗟に影魔法を発動させてエリナも弓矢を構えるが短剣を胸元に刺した状態のマリアは振り返って全員に逃げるように伝える。
「駄目よ!!私に近づかないで!?」
「えっ……」
「なっ……なんだこれは!?」
マリアの胸元から光が零れ、彼女に突き刺さっていた反鏡剣と同じ材質の短剣が地面に落ちる。その直後にマリアの切り裂かれた胸元の部分が露わになり、内側に隠していた「水晶札」が現れる。魔法の効果を封じ込めて任意に発動させるマリアが独自に発動した魔道具がどうやら短剣から身を守ったらしいが、衝突の際に表面に亀裂が発生し、徐々に光の強さが増していく。
「いけない……暴走しているわ!!早く全員離れて!?」
「暴走だって!?」
「一体どういう……うわっ!?」
慌てて水晶札を取り出そうとしたマリアだが、両腕にハヅキを抱えている状態では上手く取れず、胸元から落としてしまう。罅割れた状態の水晶札が地面に衝突した瞬間、亀裂が広がって遂には粉々に砕け散ってしまい、凄まじい閃光が放たれた。
「うわっ!?」
「レナ!!」
「な、何だっ――!?」
光に飲み込まれた瞬間、レナ達の肉体に転移魔法を発動させたときの浮揚感が襲い掛かり、別の場所へ飛ばされる感覚を味わいながら全員が意識が失った――
※ここで都市崩壊編は終了です。次回から新章「放浪編」に入ります……恐らく、これがレナの最後の旅になると思います。
「させるかよ馬鹿」
起き上がって反撃に移ろうとした暗殺者に対し、それを予測していたようにシュンは剣を振り払う。容赦なく風の斬撃が暗殺者の胸元を切り裂き、鮮血が舞う。
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「よりにもよってあの野郎に化けるとはな……だが、これで終わりだ」
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「顔を見せなさい」
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「それが貴方の本当の顔だとしたら、見事な変装術ね。相当に腕の立つ暗殺者のようだったけど……一体何処の誰かしら?」
「……それを貴様に教える義理はない」
「確かにそうね。だけど、今素直に話した方が後々苦しまずに楽になれるわよ?言っておくけど、その口の中に入っている毒針を飛ばしたところで無駄よ。嘘だと思うなら試してみなさい」
「…………」
暗殺者を吹き飛ばす際に風の精霊の力を利用して事前に身に着けている装備品も調べており、口内に含まれている針さえも見逃さない。仮に至近距離から毒針を撃たれようとマリアの精霊魔法ならば風の防護壁を張って毒針を吹き飛ばす事も容易く、母親の死によって動揺していなければ普段のマリアならば先ほどの奇襲など一人で対応できた。
母親の遺体を抱き上げたままマリアは冷たい視線を暗殺者に向け、この人物が今回の事件の黒幕である王妃と関わりはあるのは間違いなく、彼女は静かな怒りを抱いたまま暗殺者の腕を踏みつける。
「さあ、答えなさい」
「ぐあっ!?」
「おいおい……嬢ちゃん、それはちょっとご褒美が激しすぎないか?」
容赦なく地面に衝突したときに痛めた右腕を踏みつけると、暗殺者は苦痛の表情を浮かべるがマリアは決して力を緩めず、暗殺者の正体を問う。その情け容赦ない彼女の姿にシュンはあきれた声を上げ、レナ達も冷や汗を流す。
「貴方が普通の暗殺者ではない事は分かっているわ。少し前に顔を合わせたシノビも貴方が化けていたのよね?これほど見事なまでに私の側近を演じる限り、もしかしたらシノビやハンゾウと同じく和国の忍者ではないの?」
「和国……?」
「この王国の東方に存在する独立国家の事よ。私も前に一度だけ訪れたことがあるけど、バルトロス王国とは全く違った文化が発展した国だったわ」
和国という単語が出てきたことにレナは疑問を抱くと、隣にいたシズネが代わりに説明を行う。ハンゾウやカゲマルの故郷でもあり、忍者や侍といった特殊な職業の人間で構成されている国家だと前にレナもアイリスから聞いたことを思い出す。
「仮に貴方が和国の忍者だと仮定した場合、あの王妃は和国とも繋がりがあるのかしら?答えなさい」
「ぐうっ……!?」
「無駄な抵抗は止めなさい。貴方が何をしようと、私には適わない」
肉体を痛めつけられ、右腕を封じられた状態で地面に付した暗殺者に抵抗する手段はないと判断したマリアは睨みつけるが、この状況でも暗殺者の男は降伏を選ばず、何故か笑い声をあげる。
「ふっ……ははははっ!!この俺に、降伏しろだと……思いあがったな小娘がっ!!」
「……見た目ほど、若くはないのだけどね。この状況を切り抜ける力を貴方が持っているというの?周りには貴方を助けてくれるお友達もいないわ」
念のためにマリアは事前に風の精霊を利用して周囲の探索を行うが、半径100メートル以内には人間の気配は感じられず、用心のために緑影のような「身隠しのマント」のような特別な魔道具で姿を隠ぺいする人物もいない事を確認している。さらに魔力感知の能力を発動しても地竜のように地下に隠れる反応も感じられず、周辺には暗殺者の仲間と思われる人物はいない。
しかし、追い詰められているにも関わらずに暗殺者は不適な笑みを浮かべ、その態度に疑問を抱いたマリアは不意に自分が何かを見落としているのではないかと考え、即座に上空に視線を向ける。そして空の上に浮かぶ太陽の光を反射しながら煌めく物体を確認し、暗殺者が握りしめていた短剣である事に気づく。
「まさかっ……!?」
「くたばれ……魔女がっ!!」
「なっ……嬢ちゃん!?」
上空に浮かんでいた短剣が暗殺者の掛け声に反応するかのように動き出し、再度マリアの胸元に目掛けて落下する。その光景を確認したシュンが咄嗟に剣を振り払って風の斬撃を放ち、空中から接近してきた短剣を吹き飛ばそうとしたが、レナの反鏡剣と同様に刃の部分が鏡張りになっている短剣はシュンの放つ風の斬撃を受け流す。先ほどレナの魔法で短剣が吹き飛ばされたように見えたのは武器を所有していた暗殺者が敢えて攻撃を受けたときに空中に投げ飛ばしただけであり、魔法を跳ね返す性質を持つ短剣は魔術師の最大の脅威となる。
「うぐっ……!?」
「叔母様!?」
「嬢ちゃん!?」
「そんなっ……!?」
全員の目の前で上空から落下してきた短剣がマリアの胸元に突き刺さり、その様子を確認した暗殺者は笑みを浮かべたが、即座に違和感を抱く。胸を貫いたにも関わらずにマリアの衣服には血が滲まず、それどころか短剣を受けたマリア本人も戸惑うように自分の胸に突き刺さる短剣に視線を向けていた。
「これは……!?」
「馬鹿なっ……何故、死なん!?」
「おい、平気なのか嬢ちゃん!?」
「くっ……!!」
「しゃ、シャドウ・バインド!!」
暗殺者を拘束するためにシュンとゴンゾウが駆け出し、ダインも咄嗟に影魔法を発動させてエリナも弓矢を構えるが短剣を胸元に刺した状態のマリアは振り返って全員に逃げるように伝える。
「駄目よ!!私に近づかないで!?」
「えっ……」
「なっ……なんだこれは!?」
マリアの胸元から光が零れ、彼女に突き刺さっていた反鏡剣と同じ材質の短剣が地面に落ちる。その直後にマリアの切り裂かれた胸元の部分が露わになり、内側に隠していた「水晶札」が現れる。魔法の効果を封じ込めて任意に発動させるマリアが独自に発動した魔道具がどうやら短剣から身を守ったらしいが、衝突の際に表面に亀裂が発生し、徐々に光の強さが増していく。
「いけない……暴走しているわ!!早く全員離れて!?」
「暴走だって!?」
「一体どういう……うわっ!?」
慌てて水晶札を取り出そうとしたマリアだが、両腕にハヅキを抱えている状態では上手く取れず、胸元から落としてしまう。罅割れた状態の水晶札が地面に衝突した瞬間、亀裂が広がって遂には粉々に砕け散ってしまい、凄まじい閃光が放たれた。
「うわっ!?」
「レナ!!」
「な、何だっ――!?」
光に飲み込まれた瞬間、レナ達の肉体に転移魔法を発動させたときの浮揚感が襲い掛かり、別の場所へ飛ばされる感覚を味わいながら全員が意識が失った――
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