上 下
375 / 2,083
都市崩壊編

地竜 最終決戦

しおりを挟む
『がはははっ!!流石だなお前達、ならば吾輩はもう片方の足をやるぞ!!』


体勢を崩した地竜の隙を逃さずにゴウライは背中の「デュランダル」を引き抜き、レナの退魔刀を上回る重量と硬度を誇る大剣を軽々と振り抜いて地竜の前脚に叩きつける。切り裂くというよりも叩きつけるという表現が正しく、頑丈な岩石の外殻が一撃で亀裂が生じた。


『オアアッ……!?』
『ぬうっ?意外と硬いな……ならばこれでどうだ!!旋風!!』
『ッ……!?』


ゴウライは一撃では破壊できなかった地竜の前脚に対して今度は戦技を発動させて攻撃した瞬間、轟音と共に地竜の片足が崩れ去り、完全に前脚を破戒された地竜は前のめりに倒れこむ。その様子を確認した他の剣聖も動き出し、地竜の巨体を支える残された足を狙う。


「回転!!」
「和風牙!!」


ジャンヌとロウガは地竜の後脚に攻撃を仕掛け、横回転と縦回転を加えた斬撃を叩きこむ。地竜の全身を覆う岩石の外殻は鋼鉄を遥かに上回るはずだが、回転を加えて最大速度で振り払われた刃を受けた瞬間に外殻が剥がれ落ちる。それでも完全な破壊までには至らず、全体に亀裂が広がる程度だった。


「退け!!とっておきを食らわしてやる!!」


亀裂が生じた地竜の後脚に対してシュンが駆け寄ると、刀身に風の刃を纏わせて彼は刃を突き刺した瞬間、内部から風の魔力が溢れ出して外殻が内側から破壊される。


『ウオオッ!?』
「へ、どうだ!!俺の新しい剣技は!?」
「馬鹿者!!まだ脚は残っているぞ!!」


シュンの攻撃によって地竜の左後脚は砕け散ったが、最後に右後脚が残されており、たった1本の足だけになりながらも地竜は起き上がろうと動き出す。


『オオオオオッ……!!』
「まだ立つ気か!?」
「退いて下さい!!」


身体を震えさせながらも必死に起き上がろうとする地竜に対してシュンは驚くが、そんな彼の横をレナは通り抜ける。既に両足は素足の状態のままであり、覚えたての「瞬動術」を発動させて限界まで速度を高めた状態でレナは退魔刀を両手に握りしめ、最後の地竜の後脚に向けて攻撃を仕掛ける。


(この一撃で仕留める!!)


大剣を繰り出す前にレナは「重撃剣」を発動させ、手元に紅色の魔力を滲ませた状態で横向きに構えた退魔刀を振り翳し、全身全霊の力を込めて振り払う。


「がああああっ!!」
『ッ――!?』


狼の咆哮を想像させる大声を叫びながらレナは退魔刀の刃を地竜の後脚に叩きつけた瞬間、衝撃波のような振動が発生し、地竜の最後の脚が完全に砕け散った。その結果、四肢を失った地竜は立ち上がる事も出来ずに胴体が倒れこみ、派手に土煙を舞い上げながら地面に沈む。


『複合戦技「鬼刃二式」を習得しました』
「……二式?」


攻撃を仕掛けた直後にレナの視界に新たな戦技が覚えた事を示す画面が表示され、何時の間にか剣鬼の能力を覚醒させていたのか退魔刀の刃には紅色の魔力が纏っていたが、やがて消え去る。


『オァアアアアッ……!!』
「ふうっ……どうやら終わったようね」
「うむ、この状態ではこやつも何も出来まい」
「後は止めを刺すだけだな……」


四肢を失った事でまともに動くことも出来ないのか地竜は悲し気な鳴き声を上げ、せいぜい身体に振動を加える程度の事しか出来ない。完全に地竜の核を破壊するまでは安心できないが、それでも行動不能に追い込んだ事は間違いない。


「よし、後はこいつの中に隠れている核を見つけ出してぶっ壊せばいいだけだな?お前等は下がってろ、俺一人で片付けてやる」
「何!?それは聞き捨てならんぞシュン!!これ程の大物を倒せばどれほどの経験値が得られる事か……その役目はお前のような若造に任せる事は出来ん!!」
「うるせえジジイ!!ていうか、若造も何も俺の方が年上だろうが!!」
「ま、まあまあ……落ち着いて下さい御二人とも」
「全く、こんな状況でも言い争いを始めるなんて呑気な奴等ね……」


地竜に止めを刺して経験値を入手しようとしたシュンをロウガが抑え、慌ててジャンヌが二人を宥めるとシズネはそんな彼等のやり取りに呆れてしまう。そんな彼女の元にカゲマルを背負ったゴンゾウが現れる。


「皆、無事か?」
「すまない……世話をかけたな」
「貴方は……ごめんなさい、名前は何だったかしら?氷雨のギルドマスターとよく一緒に居る人よね?」
「……カゲマルだ」


ゴンゾウに背負われたカゲマルを見て初対面だったシズネは訝しみ、そんな彼女の反応に溜息を吐きながらもカゲマルは自己紹介を行う。基本的には氷雨のギルドの中でも実力者で人望はあるカゲマルだが、世間一般ではマリアの付き人という認識しかされていないため、部外者であるシズネが知らないのも無理はない。実際の所、カゲマルの場合は役職的に目立ちすぎるわけにはいかず、普段から隠密行動を取っているせいで影が薄い。


「どうやら皆は無事のようだけど……他の人は大丈夫かな?」
「そうだ!!確かアカイの馬鹿は何処に消えた!?あの馬鹿野郎が地竜の奴に踏み潰される所は見たが……」
「……ここだ」


シュンが思い出したようにアカイの姿を探すと、彼の背後からアカイの声が響き渡り、全員が振り返るとリンダに肩を貸して貰いながらレナ達の元へ歩むアカイの姿が存在した。
しおりを挟む
感想 5,087

あなたにおすすめの小説

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

異世界居酒屋さわこさん細腕繁盛記

鬼ノ城ミヤ(天邪鬼ミヤ)
ファンタジー
陸奥さわこ 3*才独身 父が経営していた居酒屋「酒話(さけばなし)」を父の他界とともに引き継いで5年 折からの不況の煽りによってこの度閉店することに…… 家賃の安い郊外へ引っ越したさわこだったが不動産屋の手違いで入居予定だったアパートはすでに入居済 途方にくれてバス停でたたずんでいたさわこは、そこで 「薬草を採りにきていた」 という不思議な女子に出会う。 意気投合したその女性の自宅へお邪魔することになったさわこだが…… このお話は ひょんなことから世界を行き来する能力をもつ酒好きな魔法使いバテアの家に居候することになったさわこが、バテアの魔法道具のお店の裏で居酒屋さわこさんを開店し、異世界でがんばるお話です

異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?

すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。 一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。 「俺とデートしない?」 「僕と一緒にいようよ。」 「俺だけがお前を守れる。」 (なんでそんなことを私にばっかり言うの!?) そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。 「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」 「・・・・へ!?」 『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!? ※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。 ※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。 ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。