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闘技祭 決戦編

初級魔術師のアルミナ

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「喰らえっ!!」


迫りくるアルミナに対し、タザンは両腕の鉄球を左右から叩きつけるために腕を突き出す。しかし、鉄球がアルミナに直撃する寸前、彼女は両手を交差させて魔法を発動させた。


氷盾シールド
「何ぃっ!?」


アルミナの左右に雪の結晶を想像させる氷の盾が誕生し、鉄球を弾き返す。その光景を目撃したタザンは目を見開き、直後に弾かれた鉄球に両腕が引き寄せられて体勢を崩してしまう。


「うおおっ!!」
「おっと」
「ふげぇっ!?」


前のめりに倒れ込もうとしたタザンの顔面を踏みつけてアルミナは空中に跳躍し、新体操選手のように空中で回転しながら彼女は両手を広げて再び魔法を発動させる。


氷鎖チェーン
「うおっ!?」


アルミナの掌から氷塊の鎖が誕生し、タザンの肉体に絡みつく。まるで蛇のように鎖は全身に絡まると、冷気を発生させてタザンの肉体を徐々に凍り付かせる。


「ぐぐぐっ……こ、この魔法はぁっ!?」
「動かない方が良いよ。大丈夫、殺さないよ」


勝利を確信したようにアルミナは氷の鎖を握りしめながらタザンに近づこうとすると、タザンは額に青筋を浮かべて全身の筋肉を膨張させ、力尽くで鎖を引き剥がそうとした。


「何の……これしきの事でぇええっ!!」
「おっと、無駄だよ」
「ぐうっ!?」


鎖を破壊される前にアルミナは首元の締め付けを強めさせ、流石のタザンも苦痛の表情を浮かべて跪く。時間が経過する事にタザンの肉体が氷結化し、感覚が麻痺して上手く力も扱えないのか膨張した筋肉も縮小する。それでも戦意だけは衰えず、タザンは鎖を噛み砕こうともがく。


「ふんぎぎぎっ……!!」
「無駄だよ。僕の魔法は破れない」


巨人族顔負けの腕力を誇るタザンだが、アルミナの氷の鎖に関してはびくともせず、徐々に意識を奪われる。このままの状態を維持すればいずれタザンの意識は失うだろう。


「さあ、これで終わりだ」
「うぐぅっ!?」


さらにアルミナは容赦なく鎖を引き寄せてタザンの身体を仰け反らせ、首元を締め付ける。抵抗する事もままならないタザンはやがて白目を剥き、泡を吹いて気絶してしまう。


「あががっ……!!」
「おっと、もう気絶していたのか。すまなかったね……けど、念のために止めは刺させてもらうよ」


気絶したと思われるタザンに対し、アルミナは鎖を解除すると背中の十字架型の杖を構えた瞬間、取り付けられている3つの水属性の魔水晶が光り輝く。その直後、タザンの頭上に5メートルを超える氷塊が出現し、背中から叩きつけられた。


氷隕石メテオ
「うほぉおおおっ……!?」


背中から巨大な氷塊が衝突したタザンの悲鳴が響き渡り、地面に亀裂が走る。それを確認したアルミナ様子を確認し、完全に気絶した事を確認すると杖を背中に戻す。


「少しやり過ぎたか……まあ、別に構わないか」
「こりゃまたたまげたわい……なんという魔法じゃ」
「おっと、そう言えば貴方が残ってましたね」


背後から気配を感じ取ったアルミナは振り返ると、鉄槌を構えたジイが呆れた表情を浮かべながら立ち尽くしていた。背後から攻撃を仕掛けるつもりだったらしいが、アルミナが気付いている事を知って立ち止まってしまう。


「もう一人の方は……もう動ける様子じゃなさそうですね」
「そう言う事じゃな。まあ、あれだけの一撃を受けて動ける方がおかしいがのう」


ダンに関してはタザンに吹き飛ばされて意識を失ったのか倒れたまま動く様子はなく、少なくとも戦える状態ではない。残されたアルミナとジイは向かい合い、お互いを牽制するように睨みつける。


「アルミナといったな……お主のその魔法、もしや初級魔法か?」
「ええ、その通りですよ」


アルミナの返答にジイが納得したように頷き、彼女がこれまでに生み出した氷の盾や氷の鎖は「氷塊」の魔法の応用であると見抜く。しかし、初級魔法は誰にでも覚えられる簡単な魔法とはいえ、アルミナのように氷塊を変形させて攻撃に利用する人間は滅多に存在しない。


「お主、初級魔術師だな……あの伝説の英雄と同じ職業の冒険者と相まみえるとはな」
「伝説の帝国の英雄と比べると私もまだまだですよ。さて……そろそろ終わらせますよ」
「抜かせ小娘がっ」


ジイは鉄槌を握りしめるとアルミナは右手を構え、意識を集中させて新たな氷の武器を作り出す。彼女がこれまでに形成した盾と鎖とは異なり、今度は筒状の氷塊を作り上げる。ジイは最初は槍を作り出すのかと思ったが、最終的にアルミナの手に残ったのは巨大な「鎌」だった。


「私はこれを氷鎌サイズと呼んでいるよ」
「聞いとらんわいそんな事」
「それは失礼……では、始めましょうか」


死神の持つ鎌を想像させる氷の武器を手にしたアルミナに対し、ジイはタザンの時のように鎖で拘束される心配がなくなった事を安心しながらも鉄槌を構える。
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