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闘技祭 決戦編

アルミナ・レスト

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――死亡者が出るという事態が起きたが、午後の部の予選試合は順調に進んだ。有名処の選手の殆どが前半の予選試合で出場したので盛り上がりに欠けるのではないかと危惧されていたが、一般参加の選手達は厳しい条件を乗り越えて闘技祭に勝ち抜いただけはあり、数多くの実力者が揃っていた。

二試合目に死亡者が出るという想定外の事態に襲われたが、闘技祭では試合中の相手の殺害は禁じられていない。それでも魔人族であるミノタウロスが他の選手を圧倒する光景を見て気分を害した人間も多かったが、その後の試合は何事もなく予定通りに進行が行われた。そして遂に夕方を迎える頃には残す試合は1つだけとなり、ラビットが最後の試合の出場者の報告を行う。


『それでは本日最後の予選試合を行います!!この試合が終了次第、闘技祭初日の催しの締め括りとなります!!また、闘技祭の本戦は明後日となりますのでご注意下さい!!』
「遂に最後か……」
「一体誰が出るんだ?」


ラビットの言葉を聞いて観客達は期待感を露わにしながら発表される選手を待つ。最も別に待たずとも試合場で待機している残りの選手を確認すれば良いだけの話だが、何故か試合場には3人しか存在しなかった。


『では選手を発表します!!冒険者歴50年、依頼達成率99.9%を自称する老将ジイ選手の登場です!!』
「ほっほっほっ……若い女子の声援が欲しいのう」


随分と年老いた小髭族の老人が現れ、彼の姿を見た人間は訝しむ。小髭族は小柄な体格が特徴的ではあるが、現れた老人は普通の小髭族の成人男性よりも小さく、しかもかなりの猫背なので余計に身長が小さく見えてしまう。しかも鍛冶用に使用すると思われる大きな鉄槌を引きずりながら登場なので不安感を煽られる。


「おいおい爺さん大丈夫か?」
「本当に戦えるのかよっ!?」
「試合中にお漏らしするんじゃねえぞ~」


ジイの姿を見て男性客の何人かが冷やかしの声援を送ると、今までは愛想笑いを浮かべていたジイの目が見開かれ、観客席に怒鳴りつける。


「黙らぬかガキがぁっ!!貴様らのような青二才に心配される謂れはないわぁっ!!」
『ひいっ!?』


予想外の声量と迫力に観客達は黙り込み、老人とは思えぬ覇気を見せつけるジイにレナは興味を抱く。


「あの人……多分、本当に強いよ」
「当然だ。ジイさんは牙竜の冒険者ギルドの中でも一番の古株だからな」
「僕も噂ぐらいは聞いた事があるぞ。確かレベルも70を超える凄い爺さんなんだろ?」


ジイはゴンゾウが所属している牙竜のギルドの冒険者らしく、現在のギルドマスターのギガンよりも長く仕えている。全盛期のアイラやマリアとも交流があるため、冒険都市の中でも有名な人物だった。


「ジイさんは未だに現役の冒険者だが、牙竜の専属鍛冶師の契約も交わしている。俺も前は武器をよく見て貰っていた」
「そんなんだ。じゃあ、朝に出会ったガジとかいう人とどっちの腕が上かな?」
「それは分からない。だが、俺は前に酒の席でジイさんはガジの師匠だと聞いている」
「え!?それ本当なのか!?あの伝説の鍛冶師の師匠!?」
「あの人、そんなに有名な人だったの?」


レナは朝方に遭遇したタイガとアカイと行動を共にしていた老人の事を思い出し、ダインによると相当に有名な鍛冶師だったらしく、本当にガジの師匠がジイであるとすれば鍛冶師としての腕前も一流なのは間違いない。


「まあ、酒の席の話だからジイさんも話を盛っていたのかもしれないが、それでもジイさんの腕前は見事だ。実際に他のギルドに所属している冒険者からも依頼を受けて武器の点検や製作を依頼されているからな」
「へえ……」


自慢げに自分のギルドに所属するジイの事を語るゴンゾウだが、レナの興味は既に他の人物に移っていた。試合場に佇む二人の選手の内の一人にレナは視線を向け、違和感を抱く。


(あの女の人……!?)


壁に背中を預けるように佇む女性を見てレナは不思議に既視感を感じ取る。種族的には人間と思われるが、森人族のように髪の毛は金髪であり、美貌も整っていた。身長は170センチは存在し、モデルのように素晴らしいプロポーションを誇る。

レナは女性が背中に背負っている「十字架」を想像させる大きな杖が非常に気にかかり、違和感の正体に気付く。それは女性の顔立ちが「アリア」と似ていたのだ。違いが存在すればアリアよりも大人びた顔立ちをしているという点であり、もしもアリアが生きて年齢を重ねていたらこのように育つのではないかと思わせるほど瓜二つだった。


(アリア……!?いや、違う……アリアなはずがない。でも……)


あまりにもアリアと女性の容姿が似ている事にレナは動揺を隠せず、試合よりも女性の方に注意を向けてしまう。アリアは死んだ事は確認済みであり、彼女が生きているはずがないが、それでもアリアとうり二つの容姿を持つ人物が現れた事にレナは動揺を隠せなかった。
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