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闘技祭 決戦編
水晶札の万能説
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「くっ……頭が重い。魔力を消費し過ぎたか……」
「ぷるぷるっ」
「いや、スラミン殿が乗っているだけでござる」
「でもうちらは変装してますよね?逃げる必要なかったんじゃないですか?」
「あんな場所に残っていたら間違いなく事情聴取されるでしょ。そうなったらミドルにも気づかれてたよ」
空間魔法のお陰で移動する事は出来たが結局は振出しに戻ってしまい、ここからどのように逃げ出すのか考えなければならない。幸いにも兵士達はレナ達の事を捜索しているだけで一般人には姫が誘拐されたことを報告しておらず、どうにかティナを家族の元に戻せば誤魔化せる可能性もある。
「レナ殿、マリア殿の転移魔法が封じられた水晶札はないのでござるか?」
「あっ、そういえばそうだった。これを使えば安全にティナを氷雨の冒険者ギルドに移動出来るんだった」
「え?転移魔法?そんな魔法まで使えるんですか?」
もしもの時のためにマリアから渡された水晶札の事を思い出し、レナは空間魔法を発動させて水晶札を取り出す。っこれを利用すれば安全に冒険者ギルドへ移動できるが、元の場所には戻れない。
「これを使えば冒険者ギルドへは避難できるけど、ティナの家族に事情を伝えないといけないな。ハンゾウに頼める」
「問題ないでござる。拙者一人ならどうにか部屋の中に潜入できるかも知れないでござる」
「大丈夫なんすか?」
「忍者の力を信じて欲しいでござる」
「じゃあ、水晶札を使うよ……いや、待てよ?」
レナは水晶札を利用してティナだけでも安全な場所へ移動させようとした時、ある考えを思いつく。この方法ならば水晶札を利用してもこちらに戻る事が出来るかも知れず、壁に向けて掌を伸ばす。
「レナ?何してるの?」
「ちょっとね……よし、水晶札を使うよ。俺の傍に来て」
「ひしっ」
「そんなに密着しなくてもいいよ」
水晶札を掲げたレナにコトミンは真っ先に抱き着き、エリナとティナも彼の傍に近寄る。一度だけハンゾウに視線を向けて頷いた後、レナは水晶札を発動させた――
――水晶札から放たれた閃光によってレナ達の姿が消え去り、残されたハンゾウは無事に魔法が発動した事を確認する。彼女はすぐに現在の衣装から元の服に着替えるため、まずは顔に張り付いたスラミンの分身を引き剥がす。
「ふんぎぎぎっ……ふんっ!!い、意外と粘着力が強いでござる……」
「ぷるぷるっ」
「……こうしてみると愛らしいでござるな」
顔から引きはがしたスライムはハンゾウの掌の中で丸まり、通常のスラミンの5分の1程度の大きさしかない。そんな小型スラミンの愛らしさに癒されるが、慌てて本来の目的を思い出して自分の上着を脱ごうとする。
「いやいや、癒されている場合ではないでござる。すぐにここから離れなければ……ぬっ!?何奴!!」
服を着替えようとした瞬間、ハンゾウの背後から人の気配を感じ取り、彼女は咄嗟に腰に差していた短刀を引き抜いて構える。しかし、彼女の後方に存在したのは人間が通れる程の「黒渦」であり、非常に見覚えのある光景だった。
「よっと」
「ぷるるんっ」
「レナ殿!?」
黒渦から姿を現したのは右肩にスラミンを乗せたレナであり、どうして水晶札を使用して冒険者ギルドに戻ったはずのレナが現れた事にハンゾウは驚くが、すぐに空間魔法を利用して戻ってきたことを悟る。
「おおっ!!転移する前に事前に空間魔法を発動していたのでござるな!!」
「そうだよ……ちょっとややこしいから、今度からはこれの事を黒渦と呼ぶことにしたよ」
空間魔法を発動させる際に生じる「黒渦」の名前を命名し、レナはスラミンを彼女と同様にスラミンを引き剥がすと異空間に預けていた衣服を用意し、ハンゾウに渡す。
「ほら、これを渡し忘れてた。ハンゾウも俺に荷物を預けていた事を忘れてたでしょ」
「あ、拙者の黒装束!?そういえばレナ殿に預けていたままでござった……」
「さあ、早く着替えて移動しよう。ハンゾウはティナの家族に説明に向かってよ」
「それは構わないでござるが、レナ殿はどうするのでござる?」
「俺?俺はね……こいつと暴れてくるよ」
「ぷるるんっ!!」
ハンゾウの問いに対してレナは肩に乗ったスラミンを指差し、不敵な笑みを浮かべる。その表情を見てハンゾウは何故か背筋が震え、これからレナが実行する行為に不安を抱く。
「れ、レナ殿?何をする気でござるか?」
「ハンゾウが動きやすいように兵士達の注意を引くだけだよ。大丈夫、正体がばれないようにするから」
「あまり無茶は駄目でござるよ?」
「平気だって……それに色々と試したい事もあるからさ。ねえ、スラミン?」
「ぷるぷるっ」
レナの言葉にスラミンは彼に頬を摺り寄せて頷き、ハンゾウは心配した表情を浮かべるが、そんな彼女にレナは安心させるように促す。
「本当に大丈夫だって。それより、ハンゾウの方こそ気を付けてね」
「承知したでござる。あ、レナ殿……」
「ん?何?」
「その……この衣装も似合っていると言ってくれて嬉しかったでござるよ」
別れ際にハンゾウ頬を赤くして告げると、彼女は近くの選手用の控室に入り込む。その姿を見送ったレナも空間魔法を発動させてマントを取り出す。先日に王妃の配下の暗殺者が使用していた代物であり、エリナの話によれば「身隠しのマント」と呼ばれる魔道具と酷似した能力を持っていたのだが、現在は効果が切れて普通のマントに戻っている。それでも身を隠すのには十分であり、レナはマントを羽織った。
「ぷるぷるっ」
「いや、スラミン殿が乗っているだけでござる」
「でもうちらは変装してますよね?逃げる必要なかったんじゃないですか?」
「あんな場所に残っていたら間違いなく事情聴取されるでしょ。そうなったらミドルにも気づかれてたよ」
空間魔法のお陰で移動する事は出来たが結局は振出しに戻ってしまい、ここからどのように逃げ出すのか考えなければならない。幸いにも兵士達はレナ達の事を捜索しているだけで一般人には姫が誘拐されたことを報告しておらず、どうにかティナを家族の元に戻せば誤魔化せる可能性もある。
「レナ殿、マリア殿の転移魔法が封じられた水晶札はないのでござるか?」
「あっ、そういえばそうだった。これを使えば安全にティナを氷雨の冒険者ギルドに移動出来るんだった」
「え?転移魔法?そんな魔法まで使えるんですか?」
もしもの時のためにマリアから渡された水晶札の事を思い出し、レナは空間魔法を発動させて水晶札を取り出す。っこれを利用すれば安全に冒険者ギルドへ移動できるが、元の場所には戻れない。
「これを使えば冒険者ギルドへは避難できるけど、ティナの家族に事情を伝えないといけないな。ハンゾウに頼める」
「問題ないでござる。拙者一人ならどうにか部屋の中に潜入できるかも知れないでござる」
「大丈夫なんすか?」
「忍者の力を信じて欲しいでござる」
「じゃあ、水晶札を使うよ……いや、待てよ?」
レナは水晶札を利用してティナだけでも安全な場所へ移動させようとした時、ある考えを思いつく。この方法ならば水晶札を利用してもこちらに戻る事が出来るかも知れず、壁に向けて掌を伸ばす。
「レナ?何してるの?」
「ちょっとね……よし、水晶札を使うよ。俺の傍に来て」
「ひしっ」
「そんなに密着しなくてもいいよ」
水晶札を掲げたレナにコトミンは真っ先に抱き着き、エリナとティナも彼の傍に近寄る。一度だけハンゾウに視線を向けて頷いた後、レナは水晶札を発動させた――
――水晶札から放たれた閃光によってレナ達の姿が消え去り、残されたハンゾウは無事に魔法が発動した事を確認する。彼女はすぐに現在の衣装から元の服に着替えるため、まずは顔に張り付いたスラミンの分身を引き剥がす。
「ふんぎぎぎっ……ふんっ!!い、意外と粘着力が強いでござる……」
「ぷるぷるっ」
「……こうしてみると愛らしいでござるな」
顔から引きはがしたスライムはハンゾウの掌の中で丸まり、通常のスラミンの5分の1程度の大きさしかない。そんな小型スラミンの愛らしさに癒されるが、慌てて本来の目的を思い出して自分の上着を脱ごうとする。
「いやいや、癒されている場合ではないでござる。すぐにここから離れなければ……ぬっ!?何奴!!」
服を着替えようとした瞬間、ハンゾウの背後から人の気配を感じ取り、彼女は咄嗟に腰に差していた短刀を引き抜いて構える。しかし、彼女の後方に存在したのは人間が通れる程の「黒渦」であり、非常に見覚えのある光景だった。
「よっと」
「ぷるるんっ」
「レナ殿!?」
黒渦から姿を現したのは右肩にスラミンを乗せたレナであり、どうして水晶札を使用して冒険者ギルドに戻ったはずのレナが現れた事にハンゾウは驚くが、すぐに空間魔法を利用して戻ってきたことを悟る。
「おおっ!!転移する前に事前に空間魔法を発動していたのでござるな!!」
「そうだよ……ちょっとややこしいから、今度からはこれの事を黒渦と呼ぶことにしたよ」
空間魔法を発動させる際に生じる「黒渦」の名前を命名し、レナはスラミンを彼女と同様にスラミンを引き剥がすと異空間に預けていた衣服を用意し、ハンゾウに渡す。
「ほら、これを渡し忘れてた。ハンゾウも俺に荷物を預けていた事を忘れてたでしょ」
「あ、拙者の黒装束!?そういえばレナ殿に預けていたままでござった……」
「さあ、早く着替えて移動しよう。ハンゾウはティナの家族に説明に向かってよ」
「それは構わないでござるが、レナ殿はどうするのでござる?」
「俺?俺はね……こいつと暴れてくるよ」
「ぷるるんっ!!」
ハンゾウの問いに対してレナは肩に乗ったスラミンを指差し、不敵な笑みを浮かべる。その表情を見てハンゾウは何故か背筋が震え、これからレナが実行する行為に不安を抱く。
「れ、レナ殿?何をする気でござるか?」
「ハンゾウが動きやすいように兵士達の注意を引くだけだよ。大丈夫、正体がばれないようにするから」
「あまり無茶は駄目でござるよ?」
「平気だって……それに色々と試したい事もあるからさ。ねえ、スラミン?」
「ぷるぷるっ」
レナの言葉にスラミンは彼に頬を摺り寄せて頷き、ハンゾウは心配した表情を浮かべるが、そんな彼女にレナは安心させるように促す。
「本当に大丈夫だって。それより、ハンゾウの方こそ気を付けてね」
「承知したでござる。あ、レナ殿……」
「ん?何?」
「その……この衣装も似合っていると言ってくれて嬉しかったでござるよ」
別れ際にハンゾウ頬を赤くして告げると、彼女は近くの選手用の控室に入り込む。その姿を見送ったレナも空間魔法を発動させてマントを取り出す。先日に王妃の配下の暗殺者が使用していた代物であり、エリナの話によれば「身隠しのマント」と呼ばれる魔道具と酷似した能力を持っていたのだが、現在は効果が切れて普通のマントに戻っている。それでも身を隠すのには十分であり、レナはマントを羽織った。
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