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中学生編side蓮
18.推し(side大谷創源)
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今回は前話の大谷視点になります。
閑話的にお楽しみ下さいませ(*´∀`*)
●●●
「日直ダル~!なぁ、そこの三軍メガネ。代わりに黒板決してよ。」
そう言ったクラスメイトの視線は間違いなく僕に向いている。
中学…だけとは言わず学生生活と言うものには必ずヒエラルキーが存在する。
この中学の最上位はサッカー部のレギュラーと男女のダンス部。
対して、ほぼ最下層とも言える階級に属するのが僕だ。
三軍だとか言われる事について、僕は特に気にしていないのだけれど…上位の人間に逆らうと面倒臭いのは理解している。
「早くやれよ!」
ほら、今だって日直の仕事を僕に押し付けようとしているのは『一軍』の男だ。
と言っても、彼はサッカー部のレギュラーと補欠を行ったり来たりらしいから、しがみつく事に必死なのかもしれない。
弱い者を虐げて自分を強く見せるのは、悲しいが人間の良くない性の一つだ。
ゲラゲラ笑うそのグループに聞こえないように溜息を吐いて黒板に向かった。
あぁ、早く帰ってBLの新巻が読みたい…。
ザワッと大きく教室が揺れたのは、腐男子の僕がそんな風に現実逃避を始めた時だった。
不審に思って振り返ると、クラス中の視線が教室の後ろドアに注がれている。
あ……。
理由は直ぐに分かった。
ヒエラルキーのトップ中のトップ、頂点に君臨する彼の姿がそこにあったから。
彼こと切藤蓮は一言で言って規格外だ。
まず見た目が国宝級に良い。
背が高く股下が恐ろしく長い身体に、1ミリの隙もない完璧な顔面。
切長の目が印象的な冷たく冴え渡るようなその美貌は、中学生とは思えない程完成されている。
芸能界から数多のスカウトがあるが、その全てを『ダルい』で退けているらしい。
勉強は常に学年3位以内で、運動神経もすこぶるいい。
授業でバスケをやった時、軽々とバスケ部エースを抜いてゴールを決めた時は女子が阿鼻叫喚の大騒ぎだった。
そうなると同性からは嫌われそうだが、彼に限ってはそんな事はない。
レベルが違い過ぎて、最早張り合う気にもならないからだ。
因みに、父親は大病院の理事長で裕福。
つまり、この世の全てを手に入れている至高の存在。
僕のBL脳は如実に語っている。
もしこの世界にオメガバースが存在すれば、彼は最上位のアルファに違いないと。
少し…いやかなり…いやいや、致命的に愛想が無い事も有名だが、それでも人々は彼に惹かれてやまない。
ただし、彼に話しかける事が許されているのは一軍の人間のみ。
本人がどうこう言った訳ではなさそうだけど、中途半端な人間がその側にいる事を周りが許さないのだ。
修学旅行の時、ガードが手薄なのを狙って切藤君に告白した女子は後日、一軍から制裁を受けたらしい。
もし相手として認められるとしたら、幼馴染であり容姿頭脳共に切藤君に引けを取らない南野遥くらいだろう。
ただこの2人、僕の目から見て恋愛的な雰囲気はあまり感じられない気がする。
それよりも気になるのは、もう1人のーー
「大谷いる?」
色気のある低い声が自分の名前を呼んだ事を理解するのに暫くかかった。
クラス中が固唾を飲んでこちらを見つめていて、僕は慌てて控えめに手を挙げる。
「話あんだけど、今平気?」
話し?彼が、僕に?
黒板消しを持って立ち尽くす僕の手元に視線が注がれる。
そして何を思ったのか、彼はもう一つあったそれを手に取った。
「コレ消せばいーの?」
長い腕によって綺麗になっていく黒板に、クラス中が騒めいた。
「あ、僕がやるので…。」
「お前あっちから消せよ。その方が早ぇだろ。」
「は、はい。」
何故だ。
何故僕は、彼と分担して黒板を消しているんだ。
「つーかさ、お前日直じゃなくね?」
掲示された日直の名前に気付いたらしい彼がそっちを見ると、ソイツは大いに慌てた。
「ち、違うんだ蓮!大谷がやってくれるって言うから…」
「ふーん。俺が大谷借りるから、後よろしく。」
「わ、分かった!」
震え声の相手に、切藤君は冷たい目を向けた。
「嘘つくならもっと言動気を付けろよ。
余裕でバレてっから。」
「…え?」
「自分の仕事ぐらい自分でやれば。
それに俺、お前に名前で呼ばれる程親しいつもりないけど?」
途端に真っ赤になったソイツを見て周りは悟った。
よく『蓮が部活で~』なんて、さも親しいように話していたが、本人には全く相手にされていなかったらしい。
「行こうぜ。」
そんな反応は気にもかけていない切藤君に付いて、僕は教室を抜け出した。
彼に関する話は、その一挙手一投足が学校中に知れ渡る。
今後うちのクラス…いや、この学校で日直の仕事をサボる奴はいなくなるだろう。
それが例え彼の気まぐれであったとしても、何百人もの人間に影響を及ぼす。
正に王としかいいようが無い完全無欠の存在。
そんな彼の唯一の弱点をこの後知る事になるとは知らず…
僕はおっかなびっくりその後を付いて行くのだった。
「夏休み剣道部の試合来てたよな。写真見せてくんね?」
と言う切藤君の意向で、僕は彼を部室にお連れした。
廊下に出た瞬間から全ての目と耳がこっちに注がれていて落ち着かなかったから、部室に着いてホッとする。
「これで全部です。」
ファイリングした全ての写真を献上すると、『何で敬語なん?』と言いながらもそれを捲り始めた。
正直、意外だった。
用があるとは言え、僕みたいな者に普通に話しかけて剰え黒板消しを手伝ってくれるなんて…。
それも、理不尽野郎をやり込める形で。
つまり、真の一軍とはこう言うものなのか…。
自分の価値を理解しているから、周りのランク付けや評価に流される事がない。
カッコイイな…。
そんな風に思っていたら、撮った写真をどうするのか聞かれた。
僕は写真を撮るのが好きなだけだから、出来上がった物はその部活で引き取って貰っている。
これが案外好評で、時折顧問からカメラマンとして同行を頼まれる事もあるくらいだ。
ただ、今回はいい写真が撮れたからコンテストに出したいと思っている。
青春の1ページを切り取ったようなその写真は…
「ふざけんなよ…」
低い声と静かな怒りに体が震えた。
「これが最上位アルファのグレア…。」
混乱した僕は思わずBL脳剥き出しの発言をしてしまい切藤君に不審がられる。
でも、そのくらい圧が凄かった。
そして、ご機嫌を損ねた原因は彼の幼馴染が友人と熱い抱擁を交わしていた事のようだ。
萱島晴人君は、色白でほっそりとした男子で、目にかかる前髪を上げると儚げ美人と言うチートまでもっている理想的な受けである。
ただ、皆がそれに気付いている訳ではなく切藤君とは『不釣り合い』なのだけれど…。
何を隠そう、その切藤君が萱島君をとても大切にしているのだ。
中1の頃から寄るな触るなと牽制しまくっていたから、平凡と言われる彼が王の特別だと誰もが知る事になった。
因みにもう1人の幼馴染である南野さんも大層萱島君を可愛がっている。
つまり、男女のツートップの愛し子。
周りがそんな存在に何かできる訳もない。
何なら『平凡な幼馴染を大切にしてるくらいだから、恋人には優しいのかも!』
なんて乙女達の妄想を駆り立てて、切藤君の人気は天井知らず。
だけど、言ってやりたい。
それは『萱島君だから』であって、他人には無効だよと。
だって、今分かったけど切藤君が僕に話かけたのは写真のチェックと牽制なんだから。
「う、受けのレーダーに過敏な攻め…」
思わずまた口をついてしまって、さらに不審な目で見られてしまった。
しかしこの写真をコンテストに出したい僕としては、彼からのNGは痛い。
アルファに逆らうつもりは毛頭ないけど、何とかしたい…そうだ!
思い付いて、夏休みに撮った写真を取り出す。
剣道部の練習を撮った日の、とあるカット。
それは、萱島君が切藤君の背中を切なく見詰めるものだ。
写真は時として、本人が押し込めている感情を映し出す事がある。
だからこれは、萱島君本人にコッソリ渡そうと思っていた。
だってーー
「偶然だと思いますけど、片想いしてるみたいな表情ですよね。」
僕がそう口にした時、ほんの一瞬切藤君が目を見張った気がした。
あまりにも表情筋が仕事を放棄していらっしゃるご尊顔だから気のせいかもしれないけれど。
でも、プロの腐男子である僕の勘が言っている。
切藤君は萱島君を恋愛的に好きかなんだって。
結局この功績により、写真をコンテストに出すことを許された。
他の萱島君が写ってる写真は全て、ネガも含めて切藤君の手の中。
さらに『晴の個人写真は禁止』なる御言葉をいただく。
「攻めセコム…溺愛攻め…」
またもや失言だがもう構わない。
それに対するツッコミにタメ語で返してしまうくらいには、僕は興奮していた。
創作意欲を掻き立てられてワキワキしながら廊下に出ると、またもや注目の的。
これ、大変だな…本人は慣れてるみたいだけど。
そんな風に思っていると、朗らかな声が切藤君を呼んだ。
こちらもド一軍の赤嶺君だ。
切藤君と行動を共にする事が多い選ばれし者。
2人はどうやら夏休み中にピアスを開けたらしく、それが先生にバレたらしい。
何だその爆イケエピソード!!
描きたい、今すぐに荒ぶるBL魂を創作にぶつけたい!
「じゃ、行くわ。ありがとな大谷。」
「大谷君悪いね、蓮借りてくわ!」
華やかすぎるオーラを放ちながら去って行く2人を惚けた顔で見送る。
名前覚えて貰ってた…切藤君だけじゃなくて赤嶺君もいい人だ。
やはり真の一軍は素晴らしい!推せる!
そして何より、最上位アルファと鈍感な受け(本人と話した事が無いのでベータかオメガかは保留!見た目はオメガでも全然あり!)の恋路から目が離せない。
俄然楽しくなってきた学校生活にニヤニヤしながら、僕は教室へと帰還したのだった。
後日『アオハル』と名付けたあの写真が賞を取った。
いつか彼らにお礼ができたらいいなと思う。
●●●
次回でside蓮中学編は完結となります!
大谷の下の名前は創源です。
恋愛対象は異性なのでBLは作品として愛しています。小5から腐りました。笑
蓮が話しかけられた時の対応
ウェルカム→晴
普通に話す→遥、赤嶺、サッカー部
塩対応→その他全員
塩なりに「ん」とか「へぇ」とか反応はします。
カーストとかは周りが騒いでるだけで本人は全く気にしてません。笑
閑話的にお楽しみ下さいませ(*´∀`*)
●●●
「日直ダル~!なぁ、そこの三軍メガネ。代わりに黒板決してよ。」
そう言ったクラスメイトの視線は間違いなく僕に向いている。
中学…だけとは言わず学生生活と言うものには必ずヒエラルキーが存在する。
この中学の最上位はサッカー部のレギュラーと男女のダンス部。
対して、ほぼ最下層とも言える階級に属するのが僕だ。
三軍だとか言われる事について、僕は特に気にしていないのだけれど…上位の人間に逆らうと面倒臭いのは理解している。
「早くやれよ!」
ほら、今だって日直の仕事を僕に押し付けようとしているのは『一軍』の男だ。
と言っても、彼はサッカー部のレギュラーと補欠を行ったり来たりらしいから、しがみつく事に必死なのかもしれない。
弱い者を虐げて自分を強く見せるのは、悲しいが人間の良くない性の一つだ。
ゲラゲラ笑うそのグループに聞こえないように溜息を吐いて黒板に向かった。
あぁ、早く帰ってBLの新巻が読みたい…。
ザワッと大きく教室が揺れたのは、腐男子の僕がそんな風に現実逃避を始めた時だった。
不審に思って振り返ると、クラス中の視線が教室の後ろドアに注がれている。
あ……。
理由は直ぐに分かった。
ヒエラルキーのトップ中のトップ、頂点に君臨する彼の姿がそこにあったから。
彼こと切藤蓮は一言で言って規格外だ。
まず見た目が国宝級に良い。
背が高く股下が恐ろしく長い身体に、1ミリの隙もない完璧な顔面。
切長の目が印象的な冷たく冴え渡るようなその美貌は、中学生とは思えない程完成されている。
芸能界から数多のスカウトがあるが、その全てを『ダルい』で退けているらしい。
勉強は常に学年3位以内で、運動神経もすこぶるいい。
授業でバスケをやった時、軽々とバスケ部エースを抜いてゴールを決めた時は女子が阿鼻叫喚の大騒ぎだった。
そうなると同性からは嫌われそうだが、彼に限ってはそんな事はない。
レベルが違い過ぎて、最早張り合う気にもならないからだ。
因みに、父親は大病院の理事長で裕福。
つまり、この世の全てを手に入れている至高の存在。
僕のBL脳は如実に語っている。
もしこの世界にオメガバースが存在すれば、彼は最上位のアルファに違いないと。
少し…いやかなり…いやいや、致命的に愛想が無い事も有名だが、それでも人々は彼に惹かれてやまない。
ただし、彼に話しかける事が許されているのは一軍の人間のみ。
本人がどうこう言った訳ではなさそうだけど、中途半端な人間がその側にいる事を周りが許さないのだ。
修学旅行の時、ガードが手薄なのを狙って切藤君に告白した女子は後日、一軍から制裁を受けたらしい。
もし相手として認められるとしたら、幼馴染であり容姿頭脳共に切藤君に引けを取らない南野遥くらいだろう。
ただこの2人、僕の目から見て恋愛的な雰囲気はあまり感じられない気がする。
それよりも気になるのは、もう1人のーー
「大谷いる?」
色気のある低い声が自分の名前を呼んだ事を理解するのに暫くかかった。
クラス中が固唾を飲んでこちらを見つめていて、僕は慌てて控えめに手を挙げる。
「話あんだけど、今平気?」
話し?彼が、僕に?
黒板消しを持って立ち尽くす僕の手元に視線が注がれる。
そして何を思ったのか、彼はもう一つあったそれを手に取った。
「コレ消せばいーの?」
長い腕によって綺麗になっていく黒板に、クラス中が騒めいた。
「あ、僕がやるので…。」
「お前あっちから消せよ。その方が早ぇだろ。」
「は、はい。」
何故だ。
何故僕は、彼と分担して黒板を消しているんだ。
「つーかさ、お前日直じゃなくね?」
掲示された日直の名前に気付いたらしい彼がそっちを見ると、ソイツは大いに慌てた。
「ち、違うんだ蓮!大谷がやってくれるって言うから…」
「ふーん。俺が大谷借りるから、後よろしく。」
「わ、分かった!」
震え声の相手に、切藤君は冷たい目を向けた。
「嘘つくならもっと言動気を付けろよ。
余裕でバレてっから。」
「…え?」
「自分の仕事ぐらい自分でやれば。
それに俺、お前に名前で呼ばれる程親しいつもりないけど?」
途端に真っ赤になったソイツを見て周りは悟った。
よく『蓮が部活で~』なんて、さも親しいように話していたが、本人には全く相手にされていなかったらしい。
「行こうぜ。」
そんな反応は気にもかけていない切藤君に付いて、僕は教室を抜け出した。
彼に関する話は、その一挙手一投足が学校中に知れ渡る。
今後うちのクラス…いや、この学校で日直の仕事をサボる奴はいなくなるだろう。
それが例え彼の気まぐれであったとしても、何百人もの人間に影響を及ぼす。
正に王としかいいようが無い完全無欠の存在。
そんな彼の唯一の弱点をこの後知る事になるとは知らず…
僕はおっかなびっくりその後を付いて行くのだった。
「夏休み剣道部の試合来てたよな。写真見せてくんね?」
と言う切藤君の意向で、僕は彼を部室にお連れした。
廊下に出た瞬間から全ての目と耳がこっちに注がれていて落ち着かなかったから、部室に着いてホッとする。
「これで全部です。」
ファイリングした全ての写真を献上すると、『何で敬語なん?』と言いながらもそれを捲り始めた。
正直、意外だった。
用があるとは言え、僕みたいな者に普通に話しかけて剰え黒板消しを手伝ってくれるなんて…。
それも、理不尽野郎をやり込める形で。
つまり、真の一軍とはこう言うものなのか…。
自分の価値を理解しているから、周りのランク付けや評価に流される事がない。
カッコイイな…。
そんな風に思っていたら、撮った写真をどうするのか聞かれた。
僕は写真を撮るのが好きなだけだから、出来上がった物はその部活で引き取って貰っている。
これが案外好評で、時折顧問からカメラマンとして同行を頼まれる事もあるくらいだ。
ただ、今回はいい写真が撮れたからコンテストに出したいと思っている。
青春の1ページを切り取ったようなその写真は…
「ふざけんなよ…」
低い声と静かな怒りに体が震えた。
「これが最上位アルファのグレア…。」
混乱した僕は思わずBL脳剥き出しの発言をしてしまい切藤君に不審がられる。
でも、そのくらい圧が凄かった。
そして、ご機嫌を損ねた原因は彼の幼馴染が友人と熱い抱擁を交わしていた事のようだ。
萱島晴人君は、色白でほっそりとした男子で、目にかかる前髪を上げると儚げ美人と言うチートまでもっている理想的な受けである。
ただ、皆がそれに気付いている訳ではなく切藤君とは『不釣り合い』なのだけれど…。
何を隠そう、その切藤君が萱島君をとても大切にしているのだ。
中1の頃から寄るな触るなと牽制しまくっていたから、平凡と言われる彼が王の特別だと誰もが知る事になった。
因みにもう1人の幼馴染である南野さんも大層萱島君を可愛がっている。
つまり、男女のツートップの愛し子。
周りがそんな存在に何かできる訳もない。
何なら『平凡な幼馴染を大切にしてるくらいだから、恋人には優しいのかも!』
なんて乙女達の妄想を駆り立てて、切藤君の人気は天井知らず。
だけど、言ってやりたい。
それは『萱島君だから』であって、他人には無効だよと。
だって、今分かったけど切藤君が僕に話かけたのは写真のチェックと牽制なんだから。
「う、受けのレーダーに過敏な攻め…」
思わずまた口をついてしまって、さらに不審な目で見られてしまった。
しかしこの写真をコンテストに出したい僕としては、彼からのNGは痛い。
アルファに逆らうつもりは毛頭ないけど、何とかしたい…そうだ!
思い付いて、夏休みに撮った写真を取り出す。
剣道部の練習を撮った日の、とあるカット。
それは、萱島君が切藤君の背中を切なく見詰めるものだ。
写真は時として、本人が押し込めている感情を映し出す事がある。
だからこれは、萱島君本人にコッソリ渡そうと思っていた。
だってーー
「偶然だと思いますけど、片想いしてるみたいな表情ですよね。」
僕がそう口にした時、ほんの一瞬切藤君が目を見張った気がした。
あまりにも表情筋が仕事を放棄していらっしゃるご尊顔だから気のせいかもしれないけれど。
でも、プロの腐男子である僕の勘が言っている。
切藤君は萱島君を恋愛的に好きかなんだって。
結局この功績により、写真をコンテストに出すことを許された。
他の萱島君が写ってる写真は全て、ネガも含めて切藤君の手の中。
さらに『晴の個人写真は禁止』なる御言葉をいただく。
「攻めセコム…溺愛攻め…」
またもや失言だがもう構わない。
それに対するツッコミにタメ語で返してしまうくらいには、僕は興奮していた。
創作意欲を掻き立てられてワキワキしながら廊下に出ると、またもや注目の的。
これ、大変だな…本人は慣れてるみたいだけど。
そんな風に思っていると、朗らかな声が切藤君を呼んだ。
こちらもド一軍の赤嶺君だ。
切藤君と行動を共にする事が多い選ばれし者。
2人はどうやら夏休み中にピアスを開けたらしく、それが先生にバレたらしい。
何だその爆イケエピソード!!
描きたい、今すぐに荒ぶるBL魂を創作にぶつけたい!
「じゃ、行くわ。ありがとな大谷。」
「大谷君悪いね、蓮借りてくわ!」
華やかすぎるオーラを放ちながら去って行く2人を惚けた顔で見送る。
名前覚えて貰ってた…切藤君だけじゃなくて赤嶺君もいい人だ。
やはり真の一軍は素晴らしい!推せる!
そして何より、最上位アルファと鈍感な受け(本人と話した事が無いのでベータかオメガかは保留!見た目はオメガでも全然あり!)の恋路から目が離せない。
俄然楽しくなってきた学校生活にニヤニヤしながら、僕は教室へと帰還したのだった。
後日『アオハル』と名付けたあの写真が賞を取った。
いつか彼らにお礼ができたらいいなと思う。
●●●
次回でside蓮中学編は完結となります!
大谷の下の名前は創源です。
恋愛対象は異性なのでBLは作品として愛しています。小5から腐りました。笑
蓮が話しかけられた時の対応
ウェルカム→晴
普通に話す→遥、赤嶺、サッカー部
塩対応→その他全員
塩なりに「ん」とか「へぇ」とか反応はします。
カーストとかは周りが騒いでるだけで本人は全く気にしてません。笑
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