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中学生編side蓮
11.それぞれの思惑(※微 性表現有り)
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中2になった俺の悩みの種は、ゲームキャプテンとしての責任…なんて訳もなく。
「ほら、あれだろ?」
格技場の扉の隙間から中を除き込む3年生数人の後ろ姿。
その視線の先には剣道部。
「防具に『萱島』って書いてある。あ、ほら!
頭のヤツ取るぞ!」
ガコォンッ
「センパイ?俺の幼馴染に何か用スか?」
「ひえッ…切藤蓮…!」
「あ”?」
「す、すいません!き、切藤君!」
俺が聞き返すと慌てて言い直して来る。
そうだよな、序列の遵守は大事だよな?
この学校のカーストは教師を含めて俺がトップだ。
まぁ、当たり前だろ。
容姿、能力、財力の全てを持ち合わせてる人間なんてそうそう居ねぇから。
『晴を守るために周りが恐れる様な存在になればいい』
晴を好きだと自覚した時の決意は、俺の中で揺らがない。
「これと同じ形状になりたくねぇだろ。二度と晴に近付くなよ?」
俺の軽い蹴りで凹んだ扉を見て青ざめた野郎共は慌てて逃げて行った。
脳内で、生徒全員のデータから顔と名前を一致させる。
ふぅん、天文部か。
次見かけたら、問答無用で顔面にクレーター作ってやるよ。
「何か凄い音した…あれ?蓮?」
俺が蹴った扉から、晴がヒョコッと顔を覗かせる。
夏の男子剣道部なんて汗臭さの代名詞なのに、何でお前こんないい匂いすんだよ。
「え、もしかして今の蓮だったの?」
パチパチとまばたきするブルーグレーの瞳が、何の障害物もなく俺を見つめる。
そう、晴が瞳を出しているーーー。
その理由は、剣道するのに前髪が邪魔でピンで留めるようになったって単純なもの。
ただ、部活中に限ってだと分かっていても、その素顔が晒される事に落ち着かない気持ちになる。
10センチ背が伸びた晴は、入学当時とは別人のようだ。
部活の成果なのか、ガリガリだった身体に薄らと筋肉が付いた。
それは固さや男っぽさとは無縁のしなやかな質で、白い肌と相まってしっとりと柔らかそうにすら見える。
制服をシャツインすると際立つ細い腰と…
何より、そのラインの延長にある尻が問題だ。
家にいる時、風呂上がりに何の抵抗もなくパンイチで俺がいるリビングに現れる晴。
『暑っちぃ~、けどストレッチしなきゃ~。』
おい、何考えてんだその格好のまま始めんじゃねぇ。
呼吸法のために部活で取り入れてるらしいヨガをする晴に、内心焦りながらも目が離せない。
四つん這いになって細い腰を反らし、尻を突き上げる光景はまるでーーー
ゴクリと、知らず喉が鳴った。
『風呂入るから帰るわ』と、平静を装いながら急いで萱島家を出る。
チャリで家まで疾走しながらも、煩悩は全く消えてくれない。
自室に籠って前を寛げると、そこはしっかり勃ち上がっていた。
さっきの光景を思い出しながら、熱いそれに手を伸ばす。
俺の記憶力は寸分の狂いもなく晴の姿を再生し始めた。
動く度にチラチラ見える薄いピンクの胸の突起を指で弄ったら、どんな反応をするだろうか。
背中を伝う汗を舌で舐めとりたい。
反らした細い腰を両手で引き寄せて、突き上げた尻に後ろから俺のモノをゆっくりと含ませて。
動きを速くして追い込んでいくーー。
『蓮…、もうダメ…』
何かの拍子に晴が発した言葉と涙目の表情がリンクして、身体中を興奮が駆け巡った。
吐き出した熱い飛沫を掌で受ける。
ここ最近俺は、無防備な晴と己の理性との戦いを強いられている。
夢に晴が出てくるのは以前から変わらないが、それを『触りたい』と思うだけじゃ足りなくなった。
快楽でドロドロにして、全身に所有印をつけて。
啼かせて、縋らせたい。
独占欲丸出しのそれは、前髪を上げるようになった晴が他人の目に留まるようになったジレンマに起因する。
『剣道部の写真にジェンダーレス男子が写ってる!』
ある日、男子生徒がそう話しているのを小耳に挟んだ俺はすぐに晴に確認した。
どうやら部活中、活動紹介のための写真を撮りたいと顧問から言われて数人でそれに応じたらしい。
廊下に掲示されたそれには、袴姿で笑顔を振りまく晴が写っていた。
教師を言い包めて写真を差し替えさせた事で、大きな噂になる前に止められたが…
『もう無くなってるけど、あの写真ってB組の萱島だろ?俺、晴人ちゃんならギリでイケるわ!』
マークしていた、最初に騒ぎ出した野郎がそんな事を言ってるのを聞いて殺意が湧く。
『へぇ?お前俺の幼馴染に手ェ出そうとしてる訳?女3人もいんのに?』
態と周りに聞こえるようにそう言ってやると、校内と他校で3股をかけていたソイツは真っ青になった。
結局、ドロドロの愛憎劇になったその事件は女3人が3股野郎をフルボッコにした事で決着を迎える。
『…で、晴が何だって?既にボコボコだけど…鼻と頬の骨折っとく?療養で学校休めるぜ?』
顔が腫れ上がったソイツに微笑んでやると気絶せんばかりだったし、周りも震え上がっていた。
俺が空手黒帯なのは全生徒に周知されてるからな。
それ以来、晴にちょっかいを出すと俺が許さないと言う事が全校に広く知れ渡った。
ただ、人の噂もなんとやら、だ。
3ヶ月が経った今、さっきのように晴を覗きに来る野郎が時折現れるようになった。
全て撃退しているとはいえ、苛ついて仕方ない。
「え、扉凹んでんじゃん!何したん?」
警戒心ゼロで言って扉の心配をする晴に言ってやりてぇ。
お前、たった今野郎に覗かれてたんだからな?
晴は小学生の時のトラウマから、自分の容姿に自信が無い。
『平凡で色素すら薄い真性のモブ』だとか何とか言ってるくらいだ。
はぁ、それがマジだったら苦労しねぇっつーの。
ただ、自覚が無い事で良い面もある。
『え?俺みたいモブが彼女欲しいとか烏滸がましいって。』
そう、恋愛に全く興味が向いていない。
晴が誰かをそう言う意味で好きになりそうなら全力で阻止するが、今の所その心配は無さそうだ。
隣で守って、じわじわと外堀を埋めて。
ゆくゆくは俺に依存させてしまえばいい。
そうすれば、俺のものだーーー。
「思いっきり蹴ったボール当たったんだわ。
理事長に言って弁償するから大丈夫だろ。」
仄暗い気持ちを隠してサッカーボールを見せると晴は目を丸くした。
「マジ!?キック力増強するシューズでも履いてんの?」
「ベルトからボールは出ねぇけどな。お前もう終わったん?」
東の名探偵の持ち物を引き合いに出す晴に同じネタで答えると、晴は楽しそうに笑った。
「うん、終わったよ!蓮も終わりなら一緒に帰ろうぜ!」
当然だ。その為に残ってたんだからな。
その後は2人で帰って、萱島家で夕飯といつものコース。
またもや風呂上がりにパンイチで柔軟を始めようとする晴を避けるように帰宅した。
つーか何で俺の前でやんだよ、誘ってんのか。
…晴だから100パーそれはない、分かってる。
だけど俺の理性が負けて、お前の目の前で勃ったらどうすんだよ。
多分、純粋な晴は怖がるだろう。
それは避けたい。
…いや待て、アイツ流石に精通はしてる…よな?
なら生理現象って言えばワンチャンなんとかなんじゃね?
そんで上手いこと抜き合いにもっていけたり…
いや、そもそも自分でシてんのかも怪しいな。
性欲とか極薄そうなんだが…。
そんな事を考えていたら、うっかり晴が1人遊びしている姿を想像してしまった。
俺が何度も泊まったあの部屋で、ベッドに座った晴が拙い手の動きで自分のを擦っているーー
ヤベェ、めちゃめちゃクるわ。
またもや臨戦態勢になった自分のモノに呆れながらも、しっかりオカズにさせてもらった。
悪いな、晴。
健全な中2男子の身体は正直なんだ。
「なんか良い匂いするぅ~!」
翌日の学校で晴に抱きつかれた俺は、昨夜のアレに対する罪悪感もあって思いっ切り動揺した。
晴が惹きつけられているのは、翔から貰った香水だ。
俺が初めて霊泉家の存在を知ったあの日から少し経って、翔はモデルのバイトを始めた。
『芸能』に従事する母親を苦しめた事への、翔なりの意思表示かもしれない。
まぁ、目立つ事が好きな本人には合っているようで良かったんだろう。
読モとして、雑誌で特集が組まれる人気ぶり…と言うのは遥に指摘されて初めて知ったんだが。
この香水はモデル仲間から『ちょっと若い香りだから弟にどう?』と貰って来たらしい。
シトラス系のそれは嫌いじゃなかった為、なんとなく今日つけて来た訳なんだが…
まさか、晴が釣れるとはーー。
俺の首筋に顔を近付けてウットリするその姿は破壊力抜群だ。
「何の匂い?俺これ好き!」
「…好き…?」
「うん!超好き!」
「……………。」
親愛なる兄よ、そのモデル仲間とやらを今度連れて来い。
大手柄だ、将来生活に生き詰まる事があれば俺が援助してやろう。
「こんな頭悪そうな蓮初めて見たわ。」
呆れたように言う遥の言葉も耳を素通りしていく。
晴はすっかりこの匂いの虜になったらしく、その後も無意識に身体を寄せて来る事が多くなった。
様子を伺いつつ腰を抱いたりしてみたが、嫌がる素振りは無い。
思わぬ好カードを手に入れた俺はほくそ笑む。
このまま、ゆっくりとーー
晴が俺とゼロ距離になるのを当たり前だと思うように。
俺だけを見るように囲っていけばいい。
☆☆
「やあ、南野さん。…いや、今日は私的な場だから遥ちゃんと呼ぼうかな。」
「はい、では私も理事長ではなく豊さんと。
留学の件を両親に勧めてくださってありがとうございました。」
「いやいや、遥ちゃんにはその資格が十分にある。あんなに小さかったのになぁ。蓮も晴人君も大きくなる訳だ。」
「今日は、その2人にも関係のある事でお話が。」
「と言うと?」
「この2年間、私達3人は同じクラスでした。
それは豊さんの計らいですよね?」
「うーん、それはどうかな。」
「そう確信した上で、私からお願いがあるんです。」
「いいよ、言ってご覧。」
「ーー蓮と晴を、離してください。」
「おや。」
「そしてーー」
「私と蓮の2人だけを、同じクラスに。」
●●●
遥、動き出しました。
晴の見た目の話はside晴人18話(啓太視点)、蓮の香水の話は31話にあります。
晴からはクールに見えてる蓮ですが、胸の内は色々忙しいようです。笑
因みに香水の名前は『Sunny』
蓮が、素直に翔から貰ったのはこの名前のせいもあったりして(*´艸`*)
「ほら、あれだろ?」
格技場の扉の隙間から中を除き込む3年生数人の後ろ姿。
その視線の先には剣道部。
「防具に『萱島』って書いてある。あ、ほら!
頭のヤツ取るぞ!」
ガコォンッ
「センパイ?俺の幼馴染に何か用スか?」
「ひえッ…切藤蓮…!」
「あ”?」
「す、すいません!き、切藤君!」
俺が聞き返すと慌てて言い直して来る。
そうだよな、序列の遵守は大事だよな?
この学校のカーストは教師を含めて俺がトップだ。
まぁ、当たり前だろ。
容姿、能力、財力の全てを持ち合わせてる人間なんてそうそう居ねぇから。
『晴を守るために周りが恐れる様な存在になればいい』
晴を好きだと自覚した時の決意は、俺の中で揺らがない。
「これと同じ形状になりたくねぇだろ。二度と晴に近付くなよ?」
俺の軽い蹴りで凹んだ扉を見て青ざめた野郎共は慌てて逃げて行った。
脳内で、生徒全員のデータから顔と名前を一致させる。
ふぅん、天文部か。
次見かけたら、問答無用で顔面にクレーター作ってやるよ。
「何か凄い音した…あれ?蓮?」
俺が蹴った扉から、晴がヒョコッと顔を覗かせる。
夏の男子剣道部なんて汗臭さの代名詞なのに、何でお前こんないい匂いすんだよ。
「え、もしかして今の蓮だったの?」
パチパチとまばたきするブルーグレーの瞳が、何の障害物もなく俺を見つめる。
そう、晴が瞳を出しているーーー。
その理由は、剣道するのに前髪が邪魔でピンで留めるようになったって単純なもの。
ただ、部活中に限ってだと分かっていても、その素顔が晒される事に落ち着かない気持ちになる。
10センチ背が伸びた晴は、入学当時とは別人のようだ。
部活の成果なのか、ガリガリだった身体に薄らと筋肉が付いた。
それは固さや男っぽさとは無縁のしなやかな質で、白い肌と相まってしっとりと柔らかそうにすら見える。
制服をシャツインすると際立つ細い腰と…
何より、そのラインの延長にある尻が問題だ。
家にいる時、風呂上がりに何の抵抗もなくパンイチで俺がいるリビングに現れる晴。
『暑っちぃ~、けどストレッチしなきゃ~。』
おい、何考えてんだその格好のまま始めんじゃねぇ。
呼吸法のために部活で取り入れてるらしいヨガをする晴に、内心焦りながらも目が離せない。
四つん這いになって細い腰を反らし、尻を突き上げる光景はまるでーーー
ゴクリと、知らず喉が鳴った。
『風呂入るから帰るわ』と、平静を装いながら急いで萱島家を出る。
チャリで家まで疾走しながらも、煩悩は全く消えてくれない。
自室に籠って前を寛げると、そこはしっかり勃ち上がっていた。
さっきの光景を思い出しながら、熱いそれに手を伸ばす。
俺の記憶力は寸分の狂いもなく晴の姿を再生し始めた。
動く度にチラチラ見える薄いピンクの胸の突起を指で弄ったら、どんな反応をするだろうか。
背中を伝う汗を舌で舐めとりたい。
反らした細い腰を両手で引き寄せて、突き上げた尻に後ろから俺のモノをゆっくりと含ませて。
動きを速くして追い込んでいくーー。
『蓮…、もうダメ…』
何かの拍子に晴が発した言葉と涙目の表情がリンクして、身体中を興奮が駆け巡った。
吐き出した熱い飛沫を掌で受ける。
ここ最近俺は、無防備な晴と己の理性との戦いを強いられている。
夢に晴が出てくるのは以前から変わらないが、それを『触りたい』と思うだけじゃ足りなくなった。
快楽でドロドロにして、全身に所有印をつけて。
啼かせて、縋らせたい。
独占欲丸出しのそれは、前髪を上げるようになった晴が他人の目に留まるようになったジレンマに起因する。
『剣道部の写真にジェンダーレス男子が写ってる!』
ある日、男子生徒がそう話しているのを小耳に挟んだ俺はすぐに晴に確認した。
どうやら部活中、活動紹介のための写真を撮りたいと顧問から言われて数人でそれに応じたらしい。
廊下に掲示されたそれには、袴姿で笑顔を振りまく晴が写っていた。
教師を言い包めて写真を差し替えさせた事で、大きな噂になる前に止められたが…
『もう無くなってるけど、あの写真ってB組の萱島だろ?俺、晴人ちゃんならギリでイケるわ!』
マークしていた、最初に騒ぎ出した野郎がそんな事を言ってるのを聞いて殺意が湧く。
『へぇ?お前俺の幼馴染に手ェ出そうとしてる訳?女3人もいんのに?』
態と周りに聞こえるようにそう言ってやると、校内と他校で3股をかけていたソイツは真っ青になった。
結局、ドロドロの愛憎劇になったその事件は女3人が3股野郎をフルボッコにした事で決着を迎える。
『…で、晴が何だって?既にボコボコだけど…鼻と頬の骨折っとく?療養で学校休めるぜ?』
顔が腫れ上がったソイツに微笑んでやると気絶せんばかりだったし、周りも震え上がっていた。
俺が空手黒帯なのは全生徒に周知されてるからな。
それ以来、晴にちょっかいを出すと俺が許さないと言う事が全校に広く知れ渡った。
ただ、人の噂もなんとやら、だ。
3ヶ月が経った今、さっきのように晴を覗きに来る野郎が時折現れるようになった。
全て撃退しているとはいえ、苛ついて仕方ない。
「え、扉凹んでんじゃん!何したん?」
警戒心ゼロで言って扉の心配をする晴に言ってやりてぇ。
お前、たった今野郎に覗かれてたんだからな?
晴は小学生の時のトラウマから、自分の容姿に自信が無い。
『平凡で色素すら薄い真性のモブ』だとか何とか言ってるくらいだ。
はぁ、それがマジだったら苦労しねぇっつーの。
ただ、自覚が無い事で良い面もある。
『え?俺みたいモブが彼女欲しいとか烏滸がましいって。』
そう、恋愛に全く興味が向いていない。
晴が誰かをそう言う意味で好きになりそうなら全力で阻止するが、今の所その心配は無さそうだ。
隣で守って、じわじわと外堀を埋めて。
ゆくゆくは俺に依存させてしまえばいい。
そうすれば、俺のものだーーー。
「思いっきり蹴ったボール当たったんだわ。
理事長に言って弁償するから大丈夫だろ。」
仄暗い気持ちを隠してサッカーボールを見せると晴は目を丸くした。
「マジ!?キック力増強するシューズでも履いてんの?」
「ベルトからボールは出ねぇけどな。お前もう終わったん?」
東の名探偵の持ち物を引き合いに出す晴に同じネタで答えると、晴は楽しそうに笑った。
「うん、終わったよ!蓮も終わりなら一緒に帰ろうぜ!」
当然だ。その為に残ってたんだからな。
その後は2人で帰って、萱島家で夕飯といつものコース。
またもや風呂上がりにパンイチで柔軟を始めようとする晴を避けるように帰宅した。
つーか何で俺の前でやんだよ、誘ってんのか。
…晴だから100パーそれはない、分かってる。
だけど俺の理性が負けて、お前の目の前で勃ったらどうすんだよ。
多分、純粋な晴は怖がるだろう。
それは避けたい。
…いや待て、アイツ流石に精通はしてる…よな?
なら生理現象って言えばワンチャンなんとかなんじゃね?
そんで上手いこと抜き合いにもっていけたり…
いや、そもそも自分でシてんのかも怪しいな。
性欲とか極薄そうなんだが…。
そんな事を考えていたら、うっかり晴が1人遊びしている姿を想像してしまった。
俺が何度も泊まったあの部屋で、ベッドに座った晴が拙い手の動きで自分のを擦っているーー
ヤベェ、めちゃめちゃクるわ。
またもや臨戦態勢になった自分のモノに呆れながらも、しっかりオカズにさせてもらった。
悪いな、晴。
健全な中2男子の身体は正直なんだ。
「なんか良い匂いするぅ~!」
翌日の学校で晴に抱きつかれた俺は、昨夜のアレに対する罪悪感もあって思いっ切り動揺した。
晴が惹きつけられているのは、翔から貰った香水だ。
俺が初めて霊泉家の存在を知ったあの日から少し経って、翔はモデルのバイトを始めた。
『芸能』に従事する母親を苦しめた事への、翔なりの意思表示かもしれない。
まぁ、目立つ事が好きな本人には合っているようで良かったんだろう。
読モとして、雑誌で特集が組まれる人気ぶり…と言うのは遥に指摘されて初めて知ったんだが。
この香水はモデル仲間から『ちょっと若い香りだから弟にどう?』と貰って来たらしい。
シトラス系のそれは嫌いじゃなかった為、なんとなく今日つけて来た訳なんだが…
まさか、晴が釣れるとはーー。
俺の首筋に顔を近付けてウットリするその姿は破壊力抜群だ。
「何の匂い?俺これ好き!」
「…好き…?」
「うん!超好き!」
「……………。」
親愛なる兄よ、そのモデル仲間とやらを今度連れて来い。
大手柄だ、将来生活に生き詰まる事があれば俺が援助してやろう。
「こんな頭悪そうな蓮初めて見たわ。」
呆れたように言う遥の言葉も耳を素通りしていく。
晴はすっかりこの匂いの虜になったらしく、その後も無意識に身体を寄せて来る事が多くなった。
様子を伺いつつ腰を抱いたりしてみたが、嫌がる素振りは無い。
思わぬ好カードを手に入れた俺はほくそ笑む。
このまま、ゆっくりとーー
晴が俺とゼロ距離になるのを当たり前だと思うように。
俺だけを見るように囲っていけばいい。
☆☆
「やあ、南野さん。…いや、今日は私的な場だから遥ちゃんと呼ぼうかな。」
「はい、では私も理事長ではなく豊さんと。
留学の件を両親に勧めてくださってありがとうございました。」
「いやいや、遥ちゃんにはその資格が十分にある。あんなに小さかったのになぁ。蓮も晴人君も大きくなる訳だ。」
「今日は、その2人にも関係のある事でお話が。」
「と言うと?」
「この2年間、私達3人は同じクラスでした。
それは豊さんの計らいですよね?」
「うーん、それはどうかな。」
「そう確信した上で、私からお願いがあるんです。」
「いいよ、言ってご覧。」
「ーー蓮と晴を、離してください。」
「おや。」
「そしてーー」
「私と蓮の2人だけを、同じクラスに。」
●●●
遥、動き出しました。
晴の見た目の話はside晴人18話(啓太視点)、蓮の香水の話は31話にあります。
晴からはクールに見えてる蓮ですが、胸の内は色々忙しいようです。笑
因みに香水の名前は『Sunny』
蓮が、素直に翔から貰ったのはこの名前のせいもあったりして(*´艸`*)
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➡︎ ただし、『番外編:本編完結後』の中に入っている作品のうち、『カイトが巽に「愛してる」と言えるようになったころ』の作品に関してはタイトルの頭に『𝟞』がついています。
個人サイトでの連載開始は2016年7月です。
これを加筆修正しながら更新していきます。
ですので、作中に古いものが登場する事が多々あります。
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