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高校生編side晴人 好きな人が、自分を好きかもしれない。
76.胸の内を
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「晴。」
ベンチに座ってぼんやりしてた俺は顔を上げた。
制服姿の蓮が、息を切らせて近付いて来る。
「え、早くない⁉︎ってかバイトは?」
電話を切ってから15分しか経ってない。
それに、蓮のバイトは夜までなんじゃなかったっけ?
「バイトは早退。ってかマジ体力落ちたわ…!」
言いながら、俺の横にドサッと座る蓮。
「え⁉︎早退とか大丈夫なの⁉︎」
「お前が消えるからだっつの!」
恨めしげにこっちを見る蓮に、申し訳なさが募る。
お店の人達にも迷惑かけちゃったのかも。
「ご、ごめん…。」
俯くと、頭の上で溜息が聞こえた。
「シフト入ってないのに間違えて来た奴と交代した。店は平気だから気にすんな。」
そっか。良かった。
「でもな…。」
ぐっと俺の顔を持ち上げて目を合わせる蓮。
「俺から逃げた事は気にしろ。」
力強い手や視線とは裏腹に、声には焦燥が滲んでいて、俺は堪らない気持ちになった。
「ごめん、蓮。」
顔に添えられた手に、自分の手を重ねる。
「俺さ、蓮がバイトしてる所見てみたくて…。」
ポツポツと今日の出来事を話す。
「蓮のバイト先の名前も場所も知らないなって気付いて。サッキーに案内してもらったんだ。」
「何で俺に言わなかったんだよ。」
「サッキーが、サプライズがいいって。」
「やっぱアイツか。どうりであの後アタフタしてた訳だ。」
「えっと、それで…お店に入ったら、スタッフの人が蓮のいる所教えてくれて…。」
その時の事を思い出して、スンッて無表情になったのが自分で分かる。
「蓮が美人にデレデレしてた。」
「違う!マジで誤解!」
「いやぁ?本当に美人だったもんね。屈み込んで喋っちゃったりして?」
「メニュー指して質問されたから、読めるように屈んだだけだっつの!」
珍しく焦る蓮の反応が新鮮で、ちょっと優越感。
「腕触られて、嬉しそうにしちゃったり?」
「…触られたけど嬉しそうには絶対してない。
俺が触られて嬉しいのはお前だけ。」
「んぬっ⁉︎」
思わぬ反撃に変な声が出た。
「よ、よく言うよ!何の抵抗もしてなかった癖にさ!」
負けない!その手には乗らないんだからな!
「あの人のスキンシップは全員にだから。
女子スタッフにもあんな感じだし。」
え?そうなの?
って待て待て、チョロいぞ自分!
「蓮の事、見つめてたけど?」
「『顔が好き』って言われてる。俺は観賞用らしい。」
好きって言われてんじゃん!
あ、でも「観賞用」って事は…恋愛感情は無いの?
「や、でも蓮だって笑顔向けちゃったりして!」
普段あんなスマイルしない癖に。
「あー、それは…。」
ほら、何か思う所があるんじゃん。
「あの人の彼氏がさ。」
「え?彼氏?」
「そう。筋肉ゴリゴリのアメリカ人。」
あの女の人、ゴリマッチョの彼氏がいるってこと?
「バイク屋やってんだけど、俺が欲しいやつ割り引きしてくれることになってて…。」
「えっ?蓮、バイク欲しいの?免許は?」
「免許は持ってるし、今も乗ってるのはあんだけど親父のお古でさ。」
「蓮、バイク乗るんだ…。」
知らなかった。
「免許取ったの夏なんだよ。」
それは、俺達が話さなくなった頃。
「それに、晴には内緒で取ろうと思ってた。」
蓮は少し気まずそうな顔をする。
「自分のバイク買ってから驚かせようと思ったんだよ。晴乗せて、どっか行こうと思って。」
「え?」
「二人で遠出もしやすいじゃん。」
「蓮…。」
「金はもう貯まってて、時期が来たら買うからってその彼氏…マークに伝えてたんだよ。」
「時期って?」
俺の問いかけに、蓮は少し言い淀んだ。
「あー…『最初に後ろに乗せたい奴がいるから、そいつを誘えるようになったら』って。」
それって、俺の事?
驚いて蓮を見ると、照れたように目を逸らされた。
蓮は俺が離れた間もずっと、俺の事待っててくれたんだ…。
「それで、昨日マークに連絡したんだよ。バイク買いたいって。」
言いながら頭の後ろを掻く。
「それが彼女に伝わってたみたいでさ。
『良かったね』って言われて。
多分、俺が笑ってたとしたらそのせい。」
つまり、俺と仲直りして、誘える状況になったのを祝われて、あの満面の笑みだった…と。
ボンッと音がしそうな程顔が赤くなる。
とてつもなく嬉しいのに、とんでもなく恥ずかしい。
だって俺はそんな事も知らずに、女性と楽しそうだったからって嫉妬して…!!
「うっ…もう消えたい…。」
「おい、もう消えんな!」
思わず呟いた言葉に蓮が突っ込む。
「晴、もしかしてヤキモチ焼いた?」
「ッ違…!!」
揶揄うような蓮の言葉を反射的に否定しようとしてーーー
『ちょっとだけ素直になってみて?』
美優さんの言葉を思い出した。
蓮だって、胸の内を俺に明かしてくれたんだ。
大丈夫、きっと。
「…わない。」
「え?」
「…違わない…って言ったら、どうする…?」
おずおずと見上げると、蓮の目が見開かれる。
「……。」
沈黙はやめてほしい。
やっぱり言わない方が良かったのかも。
心の狭い奴だって、恋人でもないくせにって引かれたのかもーー。
「蓮…あの…わっ!!」
何とか取り繕おうとして、途中で言葉を失う。
蓮に引き寄せられたから。
「晴ーーー。」
きつく抱き締められて、耳元で名前を呼ばれる。
蓮の声は何かを堪えるように掠れて、でも嬉しいんだって事は伝わってきて…。
俺も胸がいっぱいになった。
「…蓮、引いてない?」
「引くわけねーだろ。いや、可愛すぎて引きそうではあるけど。」
何か良く分かんない事言ってるけど、大丈夫そうで良かった。
その…可愛いって、思ってくれたみたいだし。。
「それに、俺の方が嫉妬してるから。」
「え?」
「安心してもっとヤキモチ焼いてけ。」
「ふはっ!なにそれ!」
軽妙な言い方に笑うと、蓮も笑った。
そして、身体を離してーー
「晴、キスしていい?」
ええっ⁉︎⁉︎
「こ、ここ、外ーーー。」
「暗いし、こんな所誰も来ねーよ。」
でも、万が一見られたら…。
「……んっ、」
返事を迷ってる間に、唇を塞がれた。
「……聞いた意味ないじゃん。」
「ダメって言われなかったからな。」
羞恥に涙目で見上げると、蓮はニヤリと笑った。
そして、また顔が近付く。
「んっ…ふっ…」
「ダメって言わないと続けるけど?」
「ッ⁉︎…んんっ!あっ…んぅ~~!!」
慌ててストップをかけようと開けた口に、舌が捩じ込まれた。
そのまま蹂躙されて、喘ぐ事しかできない。
「もっとしていいって事?」
ニヤニヤするイケメンは、確信犯だ。
「もっ…ムリ!馬鹿…!」
息切れしてクッタリ蓮の胸に倒れ込むと、愉しそうに笑う気配がした。
「晴。」
「…何⁉︎」
ちょっと怒った声を出すと、蓮が宥めるように頭を撫でてくる。
「今度、俺と二人で出かけてくれる?」
甘い声にキュンとする。
「な、なんでそんな改まって…!」
今までそんな誘い方した事無いだろ!
「だって、デートの誘いだから。」
「デ…!!」
デート⁉︎デートって言った⁉︎
「晴、返事は?」
そんな笑顔で言われたら、俺の返事なんか一つしかないじゃんか。
「…はい。」
顔は見れなくて、蓮のシャツをギュッと握りしめたーーー。
●●●
コイツら、これでまだ付き合ってないんだぜ?笑
ベンチに座ってぼんやりしてた俺は顔を上げた。
制服姿の蓮が、息を切らせて近付いて来る。
「え、早くない⁉︎ってかバイトは?」
電話を切ってから15分しか経ってない。
それに、蓮のバイトは夜までなんじゃなかったっけ?
「バイトは早退。ってかマジ体力落ちたわ…!」
言いながら、俺の横にドサッと座る蓮。
「え⁉︎早退とか大丈夫なの⁉︎」
「お前が消えるからだっつの!」
恨めしげにこっちを見る蓮に、申し訳なさが募る。
お店の人達にも迷惑かけちゃったのかも。
「ご、ごめん…。」
俯くと、頭の上で溜息が聞こえた。
「シフト入ってないのに間違えて来た奴と交代した。店は平気だから気にすんな。」
そっか。良かった。
「でもな…。」
ぐっと俺の顔を持ち上げて目を合わせる蓮。
「俺から逃げた事は気にしろ。」
力強い手や視線とは裏腹に、声には焦燥が滲んでいて、俺は堪らない気持ちになった。
「ごめん、蓮。」
顔に添えられた手に、自分の手を重ねる。
「俺さ、蓮がバイトしてる所見てみたくて…。」
ポツポツと今日の出来事を話す。
「蓮のバイト先の名前も場所も知らないなって気付いて。サッキーに案内してもらったんだ。」
「何で俺に言わなかったんだよ。」
「サッキーが、サプライズがいいって。」
「やっぱアイツか。どうりであの後アタフタしてた訳だ。」
「えっと、それで…お店に入ったら、スタッフの人が蓮のいる所教えてくれて…。」
その時の事を思い出して、スンッて無表情になったのが自分で分かる。
「蓮が美人にデレデレしてた。」
「違う!マジで誤解!」
「いやぁ?本当に美人だったもんね。屈み込んで喋っちゃったりして?」
「メニュー指して質問されたから、読めるように屈んだだけだっつの!」
珍しく焦る蓮の反応が新鮮で、ちょっと優越感。
「腕触られて、嬉しそうにしちゃったり?」
「…触られたけど嬉しそうには絶対してない。
俺が触られて嬉しいのはお前だけ。」
「んぬっ⁉︎」
思わぬ反撃に変な声が出た。
「よ、よく言うよ!何の抵抗もしてなかった癖にさ!」
負けない!その手には乗らないんだからな!
「あの人のスキンシップは全員にだから。
女子スタッフにもあんな感じだし。」
え?そうなの?
って待て待て、チョロいぞ自分!
「蓮の事、見つめてたけど?」
「『顔が好き』って言われてる。俺は観賞用らしい。」
好きって言われてんじゃん!
あ、でも「観賞用」って事は…恋愛感情は無いの?
「や、でも蓮だって笑顔向けちゃったりして!」
普段あんなスマイルしない癖に。
「あー、それは…。」
ほら、何か思う所があるんじゃん。
「あの人の彼氏がさ。」
「え?彼氏?」
「そう。筋肉ゴリゴリのアメリカ人。」
あの女の人、ゴリマッチョの彼氏がいるってこと?
「バイク屋やってんだけど、俺が欲しいやつ割り引きしてくれることになってて…。」
「えっ?蓮、バイク欲しいの?免許は?」
「免許は持ってるし、今も乗ってるのはあんだけど親父のお古でさ。」
「蓮、バイク乗るんだ…。」
知らなかった。
「免許取ったの夏なんだよ。」
それは、俺達が話さなくなった頃。
「それに、晴には内緒で取ろうと思ってた。」
蓮は少し気まずそうな顔をする。
「自分のバイク買ってから驚かせようと思ったんだよ。晴乗せて、どっか行こうと思って。」
「え?」
「二人で遠出もしやすいじゃん。」
「蓮…。」
「金はもう貯まってて、時期が来たら買うからってその彼氏…マークに伝えてたんだよ。」
「時期って?」
俺の問いかけに、蓮は少し言い淀んだ。
「あー…『最初に後ろに乗せたい奴がいるから、そいつを誘えるようになったら』って。」
それって、俺の事?
驚いて蓮を見ると、照れたように目を逸らされた。
蓮は俺が離れた間もずっと、俺の事待っててくれたんだ…。
「それで、昨日マークに連絡したんだよ。バイク買いたいって。」
言いながら頭の後ろを掻く。
「それが彼女に伝わってたみたいでさ。
『良かったね』って言われて。
多分、俺が笑ってたとしたらそのせい。」
つまり、俺と仲直りして、誘える状況になったのを祝われて、あの満面の笑みだった…と。
ボンッと音がしそうな程顔が赤くなる。
とてつもなく嬉しいのに、とんでもなく恥ずかしい。
だって俺はそんな事も知らずに、女性と楽しそうだったからって嫉妬して…!!
「うっ…もう消えたい…。」
「おい、もう消えんな!」
思わず呟いた言葉に蓮が突っ込む。
「晴、もしかしてヤキモチ焼いた?」
「ッ違…!!」
揶揄うような蓮の言葉を反射的に否定しようとしてーーー
『ちょっとだけ素直になってみて?』
美優さんの言葉を思い出した。
蓮だって、胸の内を俺に明かしてくれたんだ。
大丈夫、きっと。
「…わない。」
「え?」
「…違わない…って言ったら、どうする…?」
おずおずと見上げると、蓮の目が見開かれる。
「……。」
沈黙はやめてほしい。
やっぱり言わない方が良かったのかも。
心の狭い奴だって、恋人でもないくせにって引かれたのかもーー。
「蓮…あの…わっ!!」
何とか取り繕おうとして、途中で言葉を失う。
蓮に引き寄せられたから。
「晴ーーー。」
きつく抱き締められて、耳元で名前を呼ばれる。
蓮の声は何かを堪えるように掠れて、でも嬉しいんだって事は伝わってきて…。
俺も胸がいっぱいになった。
「…蓮、引いてない?」
「引くわけねーだろ。いや、可愛すぎて引きそうではあるけど。」
何か良く分かんない事言ってるけど、大丈夫そうで良かった。
その…可愛いって、思ってくれたみたいだし。。
「それに、俺の方が嫉妬してるから。」
「え?」
「安心してもっとヤキモチ焼いてけ。」
「ふはっ!なにそれ!」
軽妙な言い方に笑うと、蓮も笑った。
そして、身体を離してーー
「晴、キスしていい?」
ええっ⁉︎⁉︎
「こ、ここ、外ーーー。」
「暗いし、こんな所誰も来ねーよ。」
でも、万が一見られたら…。
「……んっ、」
返事を迷ってる間に、唇を塞がれた。
「……聞いた意味ないじゃん。」
「ダメって言われなかったからな。」
羞恥に涙目で見上げると、蓮はニヤリと笑った。
そして、また顔が近付く。
「んっ…ふっ…」
「ダメって言わないと続けるけど?」
「ッ⁉︎…んんっ!あっ…んぅ~~!!」
慌ててストップをかけようと開けた口に、舌が捩じ込まれた。
そのまま蹂躙されて、喘ぐ事しかできない。
「もっとしていいって事?」
ニヤニヤするイケメンは、確信犯だ。
「もっ…ムリ!馬鹿…!」
息切れしてクッタリ蓮の胸に倒れ込むと、愉しそうに笑う気配がした。
「晴。」
「…何⁉︎」
ちょっと怒った声を出すと、蓮が宥めるように頭を撫でてくる。
「今度、俺と二人で出かけてくれる?」
甘い声にキュンとする。
「な、なんでそんな改まって…!」
今までそんな誘い方した事無いだろ!
「だって、デートの誘いだから。」
「デ…!!」
デート⁉︎デートって言った⁉︎
「晴、返事は?」
そんな笑顔で言われたら、俺の返事なんか一つしかないじゃんか。
「…はい。」
顔は見れなくて、蓮のシャツをギュッと握りしめたーーー。
●●●
コイツら、これでまだ付き合ってないんだぜ?笑
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➡︎ ただし、『番外編:本編完結後』の中に入っている作品のうち、『カイトが巽に「愛してる」と言えるようになったころ』の作品に関してはタイトルの頭に『𝟞』がついています。
個人サイトでの連載開始は2016年7月です。
これを加筆修正しながら更新していきます。
ですので、作中に古いものが登場する事が多々あります。
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