68 / 246
高校生編side晴人 守ってくれるのは大切だからだって思いたい
52.母(side啓太)
しおりを挟む
「コラ!こんな所で何やってんの?」
上から降って来た声に顔を上げると、そこには…
不二子だ!峰不二子!!
漫画から出てきたかのような、大迫力ボディの美女がこっちを見下ろしていた。
やや冷たい印象ながら完璧に整った顔立ちに、
赤い口紅が良く似合っている。
クルクルとカールした長い巻き毛がゴージャスだ。
黒いライダースを肩にかけて、その下は胸元の開いたブラウスみたいなやつを細いスカートの中に入れている。
とんでもなく目を惹く派手な存在なのに、上品で気品すら漂うその姿は女神みたいだ。
手も足も腰も細い。
なのにム……いや、ごめんなさい。
何でもないです。。
「蓮母…」
隣からの呟きに、俺は目を見張った。
切藤の…お母さん⁉︎
この美女が、母親⁉︎
声が出ない程驚きつつ、何処かで納得もしていた。
なるほど、この遺伝子なら息子がとんでもない男前なのも説明が付くわ。
「ほら、立ちなさい!」
美女…改め切藤母が俺たちに手を差し出す。
ツヤツヤした爪が綺麗で、白くて細い指に触れていいものかと悩む。
が、隣で何の迷いもなくその手を取った晴人に習って俺も失礼する事にした。
切藤母は、グッと思ったより強い力で手を握って俺達を立たせてくれる。
身体が近付いた時、今まで嗅いだことの無いようないい匂いが鼻腔をくすぐった。
「すっかり冷えちゃって。もうそろそろ12月になるのよ?こんな所にいちゃダメでしょ!」
「蓮母、ごめん。俺のせいで蓮が…」
「学校からの電話で何となく聞いたわ。
大山先生って方が丁寧に説明してくれてね。」
言いながら、震える晴人の肩を抱き寄せる。
「晴ちゃん、自分を責めちゃダメ。
蓮なら大丈夫だから。」
「でも…蓮を疑ってる先生がいて…退学とかになったらどうしよう…。」
その目から、ずっと堪えていたであろう涙が溢れる。
「そうさせない為に、私が来たのよ。」
「母」であることを感じさせない美女は自信満々に微笑んだ。
それはとてつもなく妖艶で、だけど誇り高く、傲慢で…。
壮絶に美しい笑み。
「相手が男であれば、私に叶う訳ないんだもの。」
そして顔にかかった髪をサッと後ろに払うと、ブワリと目に見えない圧が彼女から発せられる。
俺はこれに近い感覚を知っていた。
切藤がーー彼女の息子が時折放つオーラと酷似している。
これも遺伝なのか…。
芸能人がオーラ消したり出したりできるのって、こう言う事なんだろうな。
ドサッ
ふいに何かが落ちる音がしてそっちを見ると、帰ったはずの黒崎だった。
鞄を落としたまま拾うこともせずに、ジッと切藤母を見つめている。
「な…なんで女優の如月陽子がここに⁉︎⁉︎」
驚愕する黒崎に、切藤母がクスクス笑う。
「あら、君みたいな若い子が私を知ってるのね?」
「あ…いや…フランス映画好きなんで…それで…。産まれる前の作品とかも観たことがあって…。
その、綺麗すぎて記憶に残ってました…。」
赤面する黒崎!
珍しい物を見た。
極度に女慣れしてるコイツが照れてしどろもどろになっている。
「ありがとう。如月は旧姓で、今は切藤。
蓮の母親よ。」
「はっ⁉︎⁉︎⁉︎」
いや、そうなるよな。
大パニック中の黒崎には悪いけど、俺も聞きたい事がある。
「黒崎、帰ったんじゃなかったのか?」
「あ…いや。寒い中待ってるんだろうなと思って、スタバ買って来た。」
そう言って手に持っていた紙袋を見せて来る。
…コイツ、スゲェいい奴だな。
「素敵!気遣いのできる男って最高よね!」
ウフフと笑った切藤母は、そのまま俺と黒崎にウィンクする。
「素敵なchevalierのお二人に、我が家の大切なprincesseをお願いしても良いかしら?」
操られたように頷く俺と黒崎。
「蓮母、そのプランセスってやめてよね!」
彼女のテンションに幾分元気を取り戻したのか、晴人が唇を尖らせる。
シュヴァリエ?プランセス?フランス語かな。
「ごめんね?でも晴ちゃんが大切なの。」
そして晴人の頬に交互に二度、キスをする。
フランス式の挨拶だな…なんて思っていたら、何と俺の頬にもその熱が来た。
キスはフリだったけど、密着した頬が燃える様に熱い。
黒崎は呆けたように頬を押さえている。
「晴ちゃんが風邪引いたら蓮が荒ぶるから、お願いね。」
顔を離す瞬間に囁かれた言葉に、彼女が息子の思いを知って受け入れているんだと気付く。
「楽しかったわ!Àbientôt!」
ヒラリと手を振ると、切藤母は颯爽と学校に入って行った。
「あ、えーっと、二人とも大丈夫?」
慣れているであろう晴人の気遣う声に、魂を抜かれた俺と黒崎はただ首を横に振ったのだった。
●●●
蓮母の存在感!切藤家の息子達は、
翔→顔が父、性格が母(明るい)
蓮→顔が母、性格が父(クール)
に似ています。兄弟そっくりだと言われてますが、並べて見比べると翔が犬顔、蓮が猫顔です。
上から降って来た声に顔を上げると、そこには…
不二子だ!峰不二子!!
漫画から出てきたかのような、大迫力ボディの美女がこっちを見下ろしていた。
やや冷たい印象ながら完璧に整った顔立ちに、
赤い口紅が良く似合っている。
クルクルとカールした長い巻き毛がゴージャスだ。
黒いライダースを肩にかけて、その下は胸元の開いたブラウスみたいなやつを細いスカートの中に入れている。
とんでもなく目を惹く派手な存在なのに、上品で気品すら漂うその姿は女神みたいだ。
手も足も腰も細い。
なのにム……いや、ごめんなさい。
何でもないです。。
「蓮母…」
隣からの呟きに、俺は目を見張った。
切藤の…お母さん⁉︎
この美女が、母親⁉︎
声が出ない程驚きつつ、何処かで納得もしていた。
なるほど、この遺伝子なら息子がとんでもない男前なのも説明が付くわ。
「ほら、立ちなさい!」
美女…改め切藤母が俺たちに手を差し出す。
ツヤツヤした爪が綺麗で、白くて細い指に触れていいものかと悩む。
が、隣で何の迷いもなくその手を取った晴人に習って俺も失礼する事にした。
切藤母は、グッと思ったより強い力で手を握って俺達を立たせてくれる。
身体が近付いた時、今まで嗅いだことの無いようないい匂いが鼻腔をくすぐった。
「すっかり冷えちゃって。もうそろそろ12月になるのよ?こんな所にいちゃダメでしょ!」
「蓮母、ごめん。俺のせいで蓮が…」
「学校からの電話で何となく聞いたわ。
大山先生って方が丁寧に説明してくれてね。」
言いながら、震える晴人の肩を抱き寄せる。
「晴ちゃん、自分を責めちゃダメ。
蓮なら大丈夫だから。」
「でも…蓮を疑ってる先生がいて…退学とかになったらどうしよう…。」
その目から、ずっと堪えていたであろう涙が溢れる。
「そうさせない為に、私が来たのよ。」
「母」であることを感じさせない美女は自信満々に微笑んだ。
それはとてつもなく妖艶で、だけど誇り高く、傲慢で…。
壮絶に美しい笑み。
「相手が男であれば、私に叶う訳ないんだもの。」
そして顔にかかった髪をサッと後ろに払うと、ブワリと目に見えない圧が彼女から発せられる。
俺はこれに近い感覚を知っていた。
切藤がーー彼女の息子が時折放つオーラと酷似している。
これも遺伝なのか…。
芸能人がオーラ消したり出したりできるのって、こう言う事なんだろうな。
ドサッ
ふいに何かが落ちる音がしてそっちを見ると、帰ったはずの黒崎だった。
鞄を落としたまま拾うこともせずに、ジッと切藤母を見つめている。
「な…なんで女優の如月陽子がここに⁉︎⁉︎」
驚愕する黒崎に、切藤母がクスクス笑う。
「あら、君みたいな若い子が私を知ってるのね?」
「あ…いや…フランス映画好きなんで…それで…。産まれる前の作品とかも観たことがあって…。
その、綺麗すぎて記憶に残ってました…。」
赤面する黒崎!
珍しい物を見た。
極度に女慣れしてるコイツが照れてしどろもどろになっている。
「ありがとう。如月は旧姓で、今は切藤。
蓮の母親よ。」
「はっ⁉︎⁉︎⁉︎」
いや、そうなるよな。
大パニック中の黒崎には悪いけど、俺も聞きたい事がある。
「黒崎、帰ったんじゃなかったのか?」
「あ…いや。寒い中待ってるんだろうなと思って、スタバ買って来た。」
そう言って手に持っていた紙袋を見せて来る。
…コイツ、スゲェいい奴だな。
「素敵!気遣いのできる男って最高よね!」
ウフフと笑った切藤母は、そのまま俺と黒崎にウィンクする。
「素敵なchevalierのお二人に、我が家の大切なprincesseをお願いしても良いかしら?」
操られたように頷く俺と黒崎。
「蓮母、そのプランセスってやめてよね!」
彼女のテンションに幾分元気を取り戻したのか、晴人が唇を尖らせる。
シュヴァリエ?プランセス?フランス語かな。
「ごめんね?でも晴ちゃんが大切なの。」
そして晴人の頬に交互に二度、キスをする。
フランス式の挨拶だな…なんて思っていたら、何と俺の頬にもその熱が来た。
キスはフリだったけど、密着した頬が燃える様に熱い。
黒崎は呆けたように頬を押さえている。
「晴ちゃんが風邪引いたら蓮が荒ぶるから、お願いね。」
顔を離す瞬間に囁かれた言葉に、彼女が息子の思いを知って受け入れているんだと気付く。
「楽しかったわ!Àbientôt!」
ヒラリと手を振ると、切藤母は颯爽と学校に入って行った。
「あ、えーっと、二人とも大丈夫?」
慣れているであろう晴人の気遣う声に、魂を抜かれた俺と黒崎はただ首を横に振ったのだった。
●●●
蓮母の存在感!切藤家の息子達は、
翔→顔が父、性格が母(明るい)
蓮→顔が母、性格が父(クール)
に似ています。兄弟そっくりだと言われてますが、並べて見比べると翔が犬顔、蓮が猫顔です。
45
お気に入りに追加
961
あなたにおすすめの小説
虐げられ聖女(男)なので辺境に逃げたら溺愛系イケメン辺境伯が待ち構えていました【本編完結】(異世界恋愛オメガバース)
美咲アリス
BL
虐待を受けていたオメガ聖女のアレクシアは必死で辺境の地に逃げた。そこで出会ったのは逞しくてイケメンのアルファ辺境伯。「身バレしたら大変だ」と思ったアレクシアは芝居小屋で見た『悪役令息キャラ』の真似をしてみるが、どうやらそれが辺境伯の心を掴んでしまったようで、ものすごい溺愛がスタートしてしまう。けれども実は、辺境伯にはある考えがあるらしくて⋯⋯? オメガ聖女とアルファ辺境伯のキュンキュン異世界恋愛です、よろしくお願いします^_^ 本編完結しました、特別編を連載中です!
婚約者に会いに行ったらば
龍の御寮さん
BL
王都で暮らす婚約者レオンのもとへと会いに行ったミシェル。
そこで見たのは、レオンをお父さんと呼ぶ子供と仲良さそうに並ぶ女性の姿。
ショックでその場を逃げ出したミシェルは――
何とか弁解しようするレオンとなぜか記憶を失ったミシェル。
そこには何やら事件も絡んできて?
傷つけられたミシェルが幸せになるまでのお話です。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
あなたの子ですが、内緒で育てます
椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」
突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。
夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。
私は強くなることを決意する。
「この子は私が育てます!」
お腹にいる子供は王の子。
王の子だけが不思議な力を持つ。
私は育った子供を連れて王宮へ戻る。
――そして、私を追い出したことを後悔してください。
※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ
※他サイト様でも掲載しております。
※hotランキング1位&エールありがとうございます!
公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-
猫まんじゅう
恋愛
そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。
無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。
筈だったのです······が?
◆◇◆
「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」
拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」
溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない?
◆◇◆
安心保障のR15設定。
描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。
ゆるゆる設定のコメディ要素あり。
つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。
※妊娠に関する内容を含みます。
【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】
こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)
いっそあなたに憎まれたい
石河 翠
恋愛
主人公が愛した男には、すでに身分違いの平民の恋人がいた。
貴族の娘であり、正妻であるはずの彼女は、誰も来ない離れの窓から幸せそうな彼らを覗き見ることしかできない。
愛されることもなく、夫婦の営みすらない白い結婚。
三年が過ぎ、義両親からは石女(うまずめ)の烙印を押され、とうとう離縁されることになる。
そして彼女は結婚生活最後の日に、ひとりの神父と過ごすことを選ぶ。
誰にも言えなかった胸の内を、ひっそりと「彼」に明かすために。
これは婚約破棄もできず、悪役令嬢にもドアマットヒロインにもなれなかった、ひとりの愚かな女のお話。
この作品は小説家になろうにも投稿しております。
扉絵は、汐の音様に描いていただきました。ありがとうございます。
Tally marks
あこ
BL
五回目の浮気を目撃したら別れる。
カイトが巽に宣言をしたその五回目が、とうとうやってきた。
「関心が無くなりました。別れます。さよなら」
✔︎ 攻めは体格良くて男前(コワモテ気味)の自己中浮気野郎。
✔︎ 受けはのんびりした話し方の美人も裸足で逃げる(かもしれない)長身美人。
✔︎ 本編中は『大学生×高校生』です。
✔︎ 受けのお姉ちゃんは超イケメンで強い(物理)、そして姉と婚約している彼氏は爽やか好青年。
✔︎ 『彼者誰時に溺れる』とリンクしています(あちらを読んでいなくても全く問題はありません)
🔺ATTENTION🔺
このお話は『浮気野郎を後悔させまくってボコボコにする予定』で書き始めたにも関わらず『どうしてか元サヤ』になってしまった連載です。
そして浮気野郎は元サヤ後、受け溺愛ヘタレ野郎に進化します。
そこだけ本当、ご留意ください。
また、タグにはない設定もあります。ごめんなさい。(10個しかタグが作れない…せめてあと2個作らせて欲しい)
➡︎ 作品や章タイトルの頭に『★』があるものは、個人サイトでリクエストしていただいたものです。こちらではリクエスト内容やお礼などの後書きを省略させていただいています。
➡︎ 『番外編:本編完結後』に区分されている小説については、完結後設定の番外編が小説の『更新順』に入っています。『時系列順』になっていません。
➡︎ ただし、『番外編:本編完結後』の中に入っている作品のうち、『カイトが巽に「愛してる」と言えるようになったころ』の作品に関してはタイトルの頭に『𝟞』がついています。
個人サイトでの連載開始は2016年7月です。
これを加筆修正しながら更新していきます。
ですので、作中に古いものが登場する事が多々あります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる