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高校生編side晴人 事件の始まり…なのにキスとかそれ以上とか⁉︎

23.計画(side相川陽菜)

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ーーもしもし、陽菜ちゃん?

5コール目でようやく電話に出た人物に私は苛立つ。いつもトロいのよね。
でも、今回は頼みがあるから怒りをグッと呑み干した。

もも、久しぶり。あのさ、ちょっと協力して欲しいんだよね。今度紹介する男子と付き合ってくれない?」

ーーえっ⁉︎陽菜ちゃん、それってどう言う…

「アンタが気になってるとでも言っておくからさ、うちの高校の文化祭来てよ。
まぁ最悪付き合わなくても、中2の時みたいにしてくれればいいから。」

ーー陽菜ちゃん…

「取り敢えず詳しいことはまた連絡するから!
じゃーね。」

電話を切って、今の相手を思い浮かべる。

桃は中学の時、私の取り巻きみたいな存在だった。
地味だから一緒にいるのは嫌だったけど、従順で自分の立場を弁えてる所はまぁ評価できた。

私の「お願い」は、何だって聞いてくれるし。

だから、今回も間違いなく協力してくれるだろう。
萱島と桃が付き合うか、もしくはそう言う関係なんだと蓮に思わせるだけでいいんだから。



私は計画を練ると、萱島が一人になるタイミングを探した。
だけど、アイツは大体中野と一緒にいてなかなかチャンスが訪れない。

夏休み前に蓮の事で中庭に呼び出した時は、敢えて目撃者を作って噂が流れるようにした。
「萱島が私に告白して振られた」って。

そうすれば私のファン達は、身の程を弁えない萱島への当たりを強くする。
それを肌で感じて、必然的に蓮といる事も身分不相応だと気付かせる目的で。

ただ、夏休み直前だったのもあって、あまり広まらなかったのは誤算だった。
アイツの近くに蓮も中野もいない時を狙うのが難しくて、あのタイミングになっちゃったのよね。

まぁ、それとは関係無く蓮と萱島の距離は開いたみたいだから良しとしよう。
後は、それを文化祭で完璧にすればいいだけだ。


文化祭の1週間前にようやくチャンスが訪れた。
社会の先生が、資料室の場所を知ってる生徒を探してたからだ。
資料が重いから男子生徒がいいと言う。

「多分、剣道部の人なら部室が近いから知ってると思いますよ!C組の萱島君とか。」

先生は、私の助言に感謝して本当にピンポイントで萱島に頼んだらしい。

資料室近くの廊下で様子を見ていた私は、思いの外上手くいって内心ビックリしてしまった。
このチャンスを逃してはならない。

「萱島くーん♪」

声をかけると、萱島はあからさまに私を警戒した。
その態度にちょっとイラっとして、蓮と離れてくれてありがとうと言ってやった。

そして本題に入る。
私が蓮と付き合う事になりそうって言うのは今はまだ嘘だけど、そう言った方が効果的だ。

すると、萱島が動揺を見せた。
それを隠そうと必死に平静を装っている。

これって、もしかして…。

萱島は桃を紹介したいって話しを断って来た。
別に付き合わなくても、文化祭の日に桃と会えばそれでいいんだから頷きなさいよ。
それで計画は上手くいくんだから!

渋る萱島にカマをかけるつもりで、言外に「蓮が付き合うのが嫌なのか」と匂わせると、明らかにビクッとした。

ふーん、そう…。
やっぱりコイツ、蓮の事が好きなんだわ。


お腹の底からジワジワと嫌悪感が沸き起こる。


男が男を好きな事に対してじゃない。
そんなのは個人の自由だからどうでもいい。


私が許せないのは!
この平凡が蓮みたいな最上級の男に身分不相応な想いを寄せてるって事!
しかも、幼馴染ってポジションを利用して、何の努力も苦労もせずにずっと傍にいたって事実よ!!


蓮の隣に自分がいる事を、身の程知らずだと思わない辺りどうかしてる。
今までずっと、蓮の同情を好意だとでも勘違いしてたんだろうか。
頭が悪いとしか思えない。

だけど、コイツの弱味は握った。
自分が蓮を好きだなんて、蓮には死んでも知られたくないでしょ?

だったら、私のお願い聞いてくれるわよね?


項垂れながらも了承した萱島に気を良くして、私は背を向けた。
途中、「遥」の事を聞いてきたけど、それが何だって言うの?


私は余裕の笑みで萱島に手を振ってやった。

海外にいる女に何ができるって言うのよ。
今、蓮の側にいるのは、私なんだから。


呆然とした萱島に溜飲が下がる。

あぁ、文化祭が楽しみでしょうがないわ。





●●●
相川の中には「身分制度」があって、下位の人間が上位の人間と親しくするなんて、あってはならない事だと考えています。
「男が男を好き」なことに対する考え方などは現代的な若者なんですが、どうしてもそこだけ凝り固まってます。






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