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中学生編 side晴人
10.アオハルかよ
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翌日、試合会場は熱気に包まれていた。
特有の甲高い掛け声と竹刀を打ち合う音が響く。
笑ってる人もいれば泣いている人もいて、そんな青春の情景をカメラで撮影してる観客もいる。
二階席が一般に開放されてるから、保護者も応援に来てるみたいだ。
「「ありがとうございました!」」
両校が試合終了の挨拶をして、俺は面を取り払った。
勝った…まさかまさかの4回戦進出。
次の試合に勝てばベスト16だ。
「信じられないよな…。」
啓太も同じ気持ちだったらしい。
だけど運の悪いことに、次の試合は県大会常連校だ。
先鋒、次鋒がストレートでアッサリと敗れて、次は中堅の俺。
試合開始と同時に速攻で放った技が相手の胴に当たり一本。2回目は動揺した相手からまた一本。
3回目は相手に胴を決められたけど、3対2で俺の勝利だ。勝った!!
値千金の一勝に俺達は沸き立ち、その勢いに乗るように副将の後輩も勝ちをあげた。
これでドロー。勝敗は大将戦にもつれ込んだ。
相手の大将は個人戦で準優勝してる奴で、中学生とは思えない程体格がいい。
頑張れ啓太!お前ならできる!
啓太は格上の相手にも一歩も引かない戦いを見せた。
1回目は相手が一本。
2回目は啓太が一本。
そして3回目の制限時間が迫って、相手校の顧問が目に見えてる焦りだす。
うちの学校相手なら楽勝だと思ってたんだろう。
「そこまで!」
試合時間終了の合図で、大将戦は引き分けとなっ
た。
2勝2敗1分。
この場合、一本をとった総数で勝敗を決める。
相手校が9、うちが5。
負けた。俺の3年間が終わったんだ。
互いに礼をして、面を取る。
外に移動すると、見学に来ていた部員一同が拍手で迎えてくれた。
女子部員も合わせると30人。
皆んなが労いの言葉をかけてくれる。
「まずは、全員お疲れ様。4回戦出場は剣道部発足以来初だ。俺はそれを誇りに思う。決して試合に出たメンバーだけの力じゃない。
応援してくれる仲間がいてこそだ。」
啓太の部長として最後の言葉に皆んなが耳を傾けている。
「俺達三年はこれで終わりだが、二年と一年にはこの先がある。日々の練習はきっと自分の力になる。仲間と競って、支え合ってこの部を強くして欲しい。部長は、豊田に任せる。」
副将を務めた二年の豊田が頷く。
「この三年間は本当に楽しかった。
でも、苦しくもあった。
部長も大将も、俺じゃなければもっと上手くいくんじゃないかと思ったことも何回もあった。
でも、皆んなはついてきてくれた。
最後の試合が不甲斐なくて申し訳ないが……。」
啓太の声が震える。
やめろ、違うだろ。
「啓太、不甲斐ないなんて言うな。
あんな強い相手と対等に戦ったお前は凄い。」
俺は堪らず声を上げていた。
「お前がいつも全体を考えてくれたから、俺達はチームワーク良くやってこれた。
お前がいるから安心して試合に望めたんだ。
誰よりも真面目に練習してたお前を、俺は尊敬してる。」
俺の言葉に部員達が頷く。
啓太の目から涙が溢れる。
俺の目からもーーー。
「…ありがとう晴人。お前にも、皆んなにも本当に感謝しかない。」
そして、泣き笑いの顔で言った。
「俺は高校でも剣道続けるからな!
扱いてやるから、強くなって入って来いよ!」
「「ハイ!!!」」
最後の言葉を終えた啓太が俺の方に来る。
お互いに、自然と歩み寄っていた。
そしてーーー。
抱き合って俺達は泣いた。
本当にお疲れ様、啓太。
お前って言う親友ができて俺は嬉しい。
俺は剣道は中学で終わりにするつもりだったけど。
お前とまたできるなら、もう少し続けてもいいかもなって思うよ。
言葉に出来ない思いは伝わっただろうか。
熱い抱擁を交わす俺達と、それを見てわんわん泣く後輩達ーーー。
会場に来ていたうちの学校の写真部が、その光景をレンズに収めていたらしい。
「アオハル」のタイトルで写真のコンテストに出されたその作品が賞を獲るのは、少し先の話しーーー。
●●●
剣道部だった友人に色々聞いたんですが、相当前の話しなので今は変わってるかもとのこと笑
剣道の描写で違和感がありましたらご容赦下さいませ(*_*)
特有の甲高い掛け声と竹刀を打ち合う音が響く。
笑ってる人もいれば泣いている人もいて、そんな青春の情景をカメラで撮影してる観客もいる。
二階席が一般に開放されてるから、保護者も応援に来てるみたいだ。
「「ありがとうございました!」」
両校が試合終了の挨拶をして、俺は面を取り払った。
勝った…まさかまさかの4回戦進出。
次の試合に勝てばベスト16だ。
「信じられないよな…。」
啓太も同じ気持ちだったらしい。
だけど運の悪いことに、次の試合は県大会常連校だ。
先鋒、次鋒がストレートでアッサリと敗れて、次は中堅の俺。
試合開始と同時に速攻で放った技が相手の胴に当たり一本。2回目は動揺した相手からまた一本。
3回目は相手に胴を決められたけど、3対2で俺の勝利だ。勝った!!
値千金の一勝に俺達は沸き立ち、その勢いに乗るように副将の後輩も勝ちをあげた。
これでドロー。勝敗は大将戦にもつれ込んだ。
相手の大将は個人戦で準優勝してる奴で、中学生とは思えない程体格がいい。
頑張れ啓太!お前ならできる!
啓太は格上の相手にも一歩も引かない戦いを見せた。
1回目は相手が一本。
2回目は啓太が一本。
そして3回目の制限時間が迫って、相手校の顧問が目に見えてる焦りだす。
うちの学校相手なら楽勝だと思ってたんだろう。
「そこまで!」
試合時間終了の合図で、大将戦は引き分けとなっ
た。
2勝2敗1分。
この場合、一本をとった総数で勝敗を決める。
相手校が9、うちが5。
負けた。俺の3年間が終わったんだ。
互いに礼をして、面を取る。
外に移動すると、見学に来ていた部員一同が拍手で迎えてくれた。
女子部員も合わせると30人。
皆んなが労いの言葉をかけてくれる。
「まずは、全員お疲れ様。4回戦出場は剣道部発足以来初だ。俺はそれを誇りに思う。決して試合に出たメンバーだけの力じゃない。
応援してくれる仲間がいてこそだ。」
啓太の部長として最後の言葉に皆んなが耳を傾けている。
「俺達三年はこれで終わりだが、二年と一年にはこの先がある。日々の練習はきっと自分の力になる。仲間と競って、支え合ってこの部を強くして欲しい。部長は、豊田に任せる。」
副将を務めた二年の豊田が頷く。
「この三年間は本当に楽しかった。
でも、苦しくもあった。
部長も大将も、俺じゃなければもっと上手くいくんじゃないかと思ったことも何回もあった。
でも、皆んなはついてきてくれた。
最後の試合が不甲斐なくて申し訳ないが……。」
啓太の声が震える。
やめろ、違うだろ。
「啓太、不甲斐ないなんて言うな。
あんな強い相手と対等に戦ったお前は凄い。」
俺は堪らず声を上げていた。
「お前がいつも全体を考えてくれたから、俺達はチームワーク良くやってこれた。
お前がいるから安心して試合に望めたんだ。
誰よりも真面目に練習してたお前を、俺は尊敬してる。」
俺の言葉に部員達が頷く。
啓太の目から涙が溢れる。
俺の目からもーーー。
「…ありがとう晴人。お前にも、皆んなにも本当に感謝しかない。」
そして、泣き笑いの顔で言った。
「俺は高校でも剣道続けるからな!
扱いてやるから、強くなって入って来いよ!」
「「ハイ!!!」」
最後の言葉を終えた啓太が俺の方に来る。
お互いに、自然と歩み寄っていた。
そしてーーー。
抱き合って俺達は泣いた。
本当にお疲れ様、啓太。
お前って言う親友ができて俺は嬉しい。
俺は剣道は中学で終わりにするつもりだったけど。
お前とまたできるなら、もう少し続けてもいいかもなって思うよ。
言葉に出来ない思いは伝わっただろうか。
熱い抱擁を交わす俺達と、それを見てわんわん泣く後輩達ーーー。
会場に来ていたうちの学校の写真部が、その光景をレンズに収めていたらしい。
「アオハル」のタイトルで写真のコンテストに出されたその作品が賞を獲るのは、少し先の話しーーー。
●●●
剣道部だった友人に色々聞いたんですが、相当前の話しなので今は変わってるかもとのこと笑
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個人サイトでの連載開始は2016年7月です。
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