上 下
12 / 246
中学生編 side晴人

11.抱擁と動揺

しおりを挟む
お疲れ会を終えて家に帰るとリビングに蓮がいた。
父さんと母さんと談笑してる蓮の前にはマルコリーニ高級チョコレート
イケメン好きの母さんは蓮に甘くて、蓮が来ると自分の秘蔵のお菓子を惜しみなく提供する。

実の息子の俺がコッソリ食べた時は、俺のゲームのデータを消すって言う人間とは思えない制裁を下してきたくせに!

「「「おかえり。」」」

な、なんか3人で言われると照れるな。
だって蓮が家族の一員みたい…なんてね。
うそうそ、そんな事思ってないよ。うん。

「蓮、来てたんだー。あ、試合結果聞いた?」

母さんは仕事で観に来れなかったけど、父さんは来てたはずだ。
父さんから聞いてるかなと思って話しを振ったら、以外な答えが帰ってきた。

「晴、蓮君は観に来てくれたんだよ。」

「え?」

「会場でバッタリ会ったんだよね。」

ニコニコする父さんの視線の先の蓮はちょっと照れたように頷いた。

「あー、だって中学最後だろ。高校で続けるか分かんないって言ってたし。」

という事は。
俺の最後の勇姿になるかもと思って来てくれたって事か。
めちゃめちゃいい奴じゃん。

「蓮ー!!ありがとな!!」

さっきまでのお疲れ会で、泣いたり抱擁したりしまくってた俺は距離感がバグってた。
そのテンションのまま、椅子に座る蓮に抱きついちゃったんだもん。
なんなら肩にぐりぐり頭を押し付けてた。

「あらあら、昔みたいで可愛いショットね。」

「酔っ払いみたいな言動だなぁ。間違えて飲んだりしてないよね?」

母さんがスマホで連写する横で、父さんは俺の誤飲(酒)を心配してる。

「母さんやめて。それに酒は飲んで無い!
だって終わっちゃったんだもん。寂しいじゃん。」

蓮は分かってくれるよなと顔を覗き込もうとした時だった。

「帰る。」

急に立ち上がった蓮に俺はよろめいた。

「え、帰って来たばっかなのに⁉︎」

「お邪魔しました。」

俺の両親にキッチリ挨拶すると、蓮は本当に玄関ドアを出て行ってしまった。
俺は慌てて追いかける。
外は夏の蒸し暑い夜だ。

「ちょっ、待てよ!」

「それ本当に言う奴いるんだな。」

違う!別に某有名人を意識した訳じゃないから!

「本気で帰んの?もうちょっといいじゃん。」

俺は蓮の腕を掴んで見上げる。
本格的に身長差が開いてきてるよなぁ。

「ッ……‼︎あー、もう!お前、御守りは?」

何か葛藤してる?
てか急な話しの切り替えにキョトンなんですが。

「御守り?着けてるよ?」

そう言って制服のシャツの胸元をガバッと広げた。

「バッーー!!こんなとこで見せんな!!」

すぐさまシャツを閉じられた。
ボタン留めてくれるのはいいんだけど1番上まで締めるのはやめて。

「なんだよ、蓮が言い出したんだろ。」

「確認しただけで見せろとは言ってない!
…はぁ。マジ無理お前疲れる…。」

「何だよその言い方…。」

疲れるってのはちょっと傷付く。
もういいよと背を向けた俺の腕を蓮が掴んだ。

「怒んなよ。そう言う意味で言ったんじゃねーから。」

じゃあどう言う意味なんだよと思ったけど、蓮の顔がちょっと必死だったから飲み込んだ。
蓮の口の悪さは昔からだもんな。
しょうがない、ここは俺が大人になろう。

「蓮さ、そう言うの俺以外に言うなよ?」

「…あ?」

「あ?じゃねーのよ。俺は蓮の表情とか仕草で本気でそんなつもり無いんだって分かるけどさ、他の奴からは誤解されーーー。」

言葉は続かなかった。
蓮が俺の頬に手を添えてきたから。

「俺はお前にだけ伝わればそれでいい。」

真剣な眼差しでそう言われて顔が熱くなる。
心臓がドクドクと音を立てて煩い。

「な、なんだそれ!変なやつだなー!」

耐えられなくて俺はワザとおちゃらけた態度で蓮の手から離れた。
蓮の視線が俺に向いてるのを感じて居た堪れない。

「そ、そう言えば遥って…その…いつから留学するんだっけ?」

何とか話題を変えようと絞り出したのが遥の話しとか!!
しかも蓮に留学のこと聞くなんて無神経かよ俺!

「聞いてないのか?卒業式の次の日には日本を立つらしい。」

遥、俺には教えてくれなかったのか…じゃなくて、蓮には誰よりも先に伝えたって話しだろう。
遥の話題で失敗したかと思ったけど、蓮の態度が普通に戻ったから結果オーライだ。

「そうなんだ。蓮…。」

大丈夫?と問いかけそうになってやめた。
遥と付き合ってることを俺に隠してるんだから、知ってるような素振りは見せない方がいいよな。

「えと、見送り行くよな?」

急いで方向転換したけど見送りって…。
そんなん二人だけで過ごしたいに決まってるじゃん。

「行こうぜ。兄貴にも来るように言っとくわ。」

あれ?いいの?????



●●●
次回ちょっとだけイチャイチャします♡







しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

虐げられ聖女(男)なので辺境に逃げたら溺愛系イケメン辺境伯が待ち構えていました【本編完結】(異世界恋愛オメガバース)

美咲アリス
BL
虐待を受けていたオメガ聖女のアレクシアは必死で辺境の地に逃げた。そこで出会ったのは逞しくてイケメンのアルファ辺境伯。「身バレしたら大変だ」と思ったアレクシアは芝居小屋で見た『悪役令息キャラ』の真似をしてみるが、どうやらそれが辺境伯の心を掴んでしまったようで、ものすごい溺愛がスタートしてしまう。けれども実は、辺境伯にはある考えがあるらしくて⋯⋯? オメガ聖女とアルファ辺境伯のキュンキュン異世界恋愛です、よろしくお願いします^_^ 本編完結しました、特別編を連載中です!

婚約者に会いに行ったらば

龍の御寮さん
BL
王都で暮らす婚約者レオンのもとへと会いに行ったミシェル。 そこで見たのは、レオンをお父さんと呼ぶ子供と仲良さそうに並ぶ女性の姿。 ショックでその場を逃げ出したミシェルは―― 何とか弁解しようするレオンとなぜか記憶を失ったミシェル。 そこには何やら事件も絡んできて? 傷つけられたミシェルが幸せになるまでのお話です。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

あなたの子ですが、内緒で育てます

椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」  突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。  夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。  私は強くなることを決意する。 「この子は私が育てます!」  お腹にいる子供は王の子。  王の子だけが不思議な力を持つ。  私は育った子供を連れて王宮へ戻る。  ――そして、私を追い出したことを後悔してください。 ※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ ※他サイト様でも掲載しております。 ※hotランキング1位&エールありがとうございます!

公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-

猫まんじゅう
恋愛
 そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。  無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。  筈だったのです······が? ◆◇◆  「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」  拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?  「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」  溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない? ◆◇◆ 安心保障のR15設定。 描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。 ゆるゆる設定のコメディ要素あり。 つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。 ※妊娠に関する内容を含みます。 【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】 こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)

いっそあなたに憎まれたい

石河 翠
恋愛
主人公が愛した男には、すでに身分違いの平民の恋人がいた。 貴族の娘であり、正妻であるはずの彼女は、誰も来ない離れの窓から幸せそうな彼らを覗き見ることしかできない。 愛されることもなく、夫婦の営みすらない白い結婚。 三年が過ぎ、義両親からは石女(うまずめ)の烙印を押され、とうとう離縁されることになる。 そして彼女は結婚生活最後の日に、ひとりの神父と過ごすことを選ぶ。 誰にも言えなかった胸の内を、ひっそりと「彼」に明かすために。 これは婚約破棄もできず、悪役令嬢にもドアマットヒロインにもなれなかった、ひとりの愚かな女のお話。 この作品は小説家になろうにも投稿しております。 扉絵は、汐の音様に描いていただきました。ありがとうございます。

Tally marks

あこ
BL
五回目の浮気を目撃したら別れる。 カイトが巽に宣言をしたその五回目が、とうとうやってきた。 「関心が無くなりました。別れます。さよなら」 ✔︎ 攻めは体格良くて男前(コワモテ気味)の自己中浮気野郎。 ✔︎ 受けはのんびりした話し方の美人も裸足で逃げる(かもしれない)長身美人。 ✔︎ 本編中は『大学生×高校生』です。 ✔︎ 受けのお姉ちゃんは超イケメンで強い(物理)、そして姉と婚約している彼氏は爽やか好青年。 ✔︎ 『彼者誰時に溺れる』とリンクしています(あちらを読んでいなくても全く問題はありません) 🔺ATTENTION🔺 このお話は『浮気野郎を後悔させまくってボコボコにする予定』で書き始めたにも関わらず『どうしてか元サヤ』になってしまった連載です。 そして浮気野郎は元サヤ後、受け溺愛ヘタレ野郎に進化します。 そこだけ本当、ご留意ください。 また、タグにはない設定もあります。ごめんなさい。(10個しかタグが作れない…せめてあと2個作らせて欲しい) ➡︎ 作品や章タイトルの頭に『★』があるものは、個人サイトでリクエストしていただいたものです。こちらではリクエスト内容やお礼などの後書きを省略させていただいています。 ➡︎ 『番外編:本編完結後』に区分されている小説については、完結後設定の番外編が小説の『更新順』に入っています。『時系列順』になっていません。 ➡︎ ただし、『番外編:本編完結後』の中に入っている作品のうち、『カイトが巽に「愛してる」と言えるようになったころ』の作品に関してはタイトルの頭に『𝟞』がついています。 個人サイトでの連載開始は2016年7月です。 これを加筆修正しながら更新していきます。 ですので、作中に古いものが登場する事が多々あります。

隠れSubは大好きなDomに跪きたい

みー
BL
⚠️Dom/Subユニバース 一部オリジナル表現があります。 ハイランクDom×ハイランクSub

処理中です...