9 / 65
第一章
8 〜カイ、何故、サトミを連れてった
しおりを挟む『まあ、年はだいたい見た目通りだったね。
31歳微妙だな…。17歳の方が成人してないんだし確実だろうか?』
ジーサの言葉に、ミエルは別盤者が来た様子に思いをはせていたことにハッとする。
『それは、どうでしょう。アイコ様は若すぎるせいか、おっしゃっていることが分からないことが多いのですが、とても”清き”と言えるような言動には思えないのですが。』
ミエルは目が覚めた時からの愛子の言動を聞いているので、思ったことを口にする。
『確かに、来た時の様子も明らかにアイコ様の方が嘘でしょうね。嘘がばれるのが嫌で水入り水晶を渡さなかったんでしょうし…。』
呆れたようにため息をつきながら、タンザがそう言うと、それまで黙っていたアル皇子が話し出した。
『はっきり聞いてしまえば良いのだろうが、女性にそんなことを聞くのははばかられるし、本当の事を言うとは限らない。
あの儀式に使う青魔晶は特別で、一つしかないし一度しかできない。
言葉の言祝ぎが失敗しても、人は死なないが、明らかにこの国の秩序や組織は崩壊して、国力は衰退してしまうだろうな。
そうならないためにも、間違ってはならない。』
そういうと、カイの方を向いて少し険しい顔をする。
『カイ、何故、サトミを連れてった。』
『青龍が、俺の泉侶を迎えに来いと言ったから。』
『『『!』』』
アルの問いに、答えたカイの言葉にみな驚く。
泉侶とは成人の義の時に起きる神の啓示により、将来の伴侶のことを漠然と知らされ、啓示を受けて得た伴侶は泉侶とよばれる。
皆が皆啓示されるわけではないが、皇族男子は、青龍が住まう青神泉にて儀式を行うことにより、青龍より直接知らされるため、皇子の妻は泉侶なことがほとんどだ。
青龍から直接伝えられるが、はっきりとした内容ではなく漠然としたイメージなことが多いので、政治的策略をされないために、皇子は内容を秘密にしていることが多い、そのため、カイ皇子の泉侶の内容も知られてなかったのだ。
『俺は成人したとき、別盤者が泉侶で、来るとき呼んでやると青龍に言われたんだ。』
淡々と話すカイ皇子のセリフにみな納得しそうになるが、疑問に思ったタンザが問いただす。
『サトミ様がそうだと青龍様がおっしゃったのですか?』
『いや、だが、サトミが俺の泉侶であるのは間違いない。』
泉侶に会えば否応なくわかると言われている。
何の根拠もなく本能でわかるというのだ。
こればかりは男性側にしかない本能のようだが、大概において女性に拒まれることはないという。
何時も無表情に近い顔でいるカイなのに、この時ばかりはほんのりと嬉しそうに見える。
そんな弟の様子にうれしく思うアル皇子だったが、釘はさしておかねばならない。
『わかった。だが、カイの泉侶とはいえ【清き乙女】ではないと言うわけではない。
はっきりするまでは契ってはならない。』
アル皇子のその言葉にカイ皇子はさっきまでの嬉しそうな様子から、眉を潜ませる。そんな弟にアル皇子は苦笑した。
『その代り、サトミが【清き乙女】であったときは、お前が儀式をすればよい。』
『当然です。』
アル皇子の言葉に、ぶぜんとしながらもカイは答えた。
『ねえ、アイコ様が【清き乙女】だったら、どうするの。』
皇子同士のやり取りを見ていたジーザが軽い気持ちで疑問を口にする。
『ある程度の魔力の強い者でないといけないのだが、愛子に選んでもらうだろうなあ。』
アル皇子の言葉に、タンザが困った顔をする。
『そうすると、明らかにアル皇子を選ぶと思いますよ。』
『そうなのか?それは困るな、私には泉侶がいるのだし…。』
きょとんとしたように、アル皇子が言いよどむと、ミエルが引き継ぐように言った。
『明日から、二人にこちらの盤園の事を、説明しようと思いますので、その時にでもアル皇子のことは話しておきます。
どちらかが乙女にしろ、こちらに来てしまったからには戻れないのでしょうから、こちらの事を理解してもらわなければなりませんでしょう。』
『ああ、よろしく頼む。』
ミエルの言葉に安堵するようにアル皇子は答えた。
『アル皇子、宰相には何と伝えましょうか?』
タンザがそう問うと、アル皇子はため息を付くように息を吐くと、きっぱりとした声で言った。
『宰相家は【清き乙女】と接触を持つことを青龍様より禁じられておるからなあ。
宰相にはどちらかはっきりするまで、待つよう言付けてくれるか。』
『分かりました。とにかく、早く青龍様が戻られるのを待つしかありませんね。』
タンザの言葉にみな同じ思いだった。
──────────
後書き
謎だらけ~どれだけ明かせば良いのか加減が難しい。
0
お気に入りに追加
117
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢は王太子の妻~毎日溺愛と狂愛の狭間で~
一ノ瀬 彩音
恋愛
悪役令嬢は王太子の妻になると毎日溺愛と狂愛を捧げられ、
快楽漬けの日々を過ごすことになる!
そしてその快感が忘れられなくなった彼女は自ら夫を求めるようになり……!?
※この物語はフィクションです。
R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。
公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-
猫まんじゅう
恋愛
そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。
無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。
筈だったのです······が?
◆◇◆
「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」
拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」
溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない?
◆◇◆
安心保障のR15設定。
描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。
ゆるゆる設定のコメディ要素あり。
つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。
※妊娠に関する内容を含みます。
【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】
こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。
梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。
あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。
その時までは。
どうか、幸せになってね。
愛しい人。
さようなら。
子どもを授かったので、幼馴染から逃げ出すことにしました
おうぎまちこ(あきたこまち)
恋愛
※ムーンライト様にて、日間総合1位、週間総合1位、月間総合2位をいただいた完結作品になります。
※現在、ムーンライト様では後日談先行投稿、アルファポリス様では各章終了後のsideウィリアム★を先行投稿。
※最終第37話は、ムーンライト版の最終話とウィリアムとイザベラの選んだ将来が異なります。
伯爵家の嫡男ウィリアムに拾われ、屋敷で使用人として働くイザベラ。互いに惹かれ合う二人だが、ウィリアムに侯爵令嬢アイリーンとの縁談話が上がる。
すれ違ったウィリアムとイザベラ。彼は彼女を無理に手籠めにしてしまう。たった一夜の過ちだったが、ウィリアムの子を妊娠してしまったイザベラ。ちょうどその頃、ウィリアムとアイリーン嬢の婚約が成立してしまう。
我が子を産み育てる決意を固めたイザベラは、ウィリアムには妊娠したことを告げずに伯爵家を出ることにして――。
※R18に※
【R18】出来損ないの魔女なので殿下の溺愛はお断りしたいのですが!? 気づいたら女子力高めな俺様王子の寵姫の座に収まっていました
深石千尋
恋愛
バーベナはエアネルス王国の三大公爵グロー家の娘にもかかわらず、生まれながらに魔女としての資質が低く、家族や使用人たちから『出来損ない』と呼ばれ虐げられる毎日を送っていた。
そんな中成人を迎えたある日、王族に匹敵するほどの魔力が覚醒してしまう。
今さらみんなから認められたいと思わないバーベナは、自由な外国暮らしを夢見て能力を隠すことを決意する。
ところが、ひょんなことから立太子を間近に控えたディアルムド王子にその力がバレて――
「手短に言いましょう。俺の妃になってください」
なんと求婚される事態に発展!! 断っても断ってもディアルムドのアタックは止まらない。
おまけに偉そうな王子様の、なぜか女子力高めなアプローチにバーベナのドキドキも止まらない!?
やむにやまれぬ事情から条件つきで求婚を受け入れるバーベナだが、結婚は形だけにとどまらず――!?
ただの契約妃のつもりでいた、自分に自信のないチートな女の子 × ハナから別れるつもりなんてない、女子力高めな俺様王子
────────────────────
○Rシーンには※マークあり
○他サイトでも公開中
────────────────────
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる