3 / 65
第一章
2 〜いわゆるぽっちゃりさんだ。そうデブと言ってはいけない、
しおりを挟むのんきものの彼女は、門井智美かどい さとみ31歳。顔は醜くもなく、美人でもなくいたって普通。身長はそこそこ有るが、高いと言うほどでもない。胸は有るが、ほかもあるので、いわゆるぽっちゃりさんだ。そうデブと言ってはいけない、ぽっちゃりさんである。
OL歴10年のおひとり様街道まっしぐらな寂しい自分を慰めるため、有給を使って自分への誕生日プレゼントで一人旅をしていた。
国内の南の島に行くのに旅費を浮かすため、ジェット船ではなく定期便の夜間便に乗っていた。
満月が浮かぶ夜の海がきれいで、智美は深夜にもかかわらず甲板にでて、月光で光る海原を眺めていた。
そこに男女の争う声がする。
「しつこいよ、みんなでならいいって言っただけじゃない。」
「君と一緒に旅行に行けるなら、仕方がないと思ったけど、一緒に来てくれるんだから、悪くは思ってないんだろ。」
智美はげんなりした。せっかくのいい雰囲気が台無しである。
聞きたくはないが、静寂に包まれていたこの時間帯では、聞こうと思わなくても聞こえてしまう。
船内に入ろうかなとも思ったが、行く手を阻むような位置で言い争いをしているので、どうしようかと思っているうちに、男性が女性の腕を掴んで無理やり連れて行こうとし始めた。
「ちょっと、さすがにそれは、ひどいでしょ。」
智美は関わりたくはなかったが、つい近寄って声をかけてしまった。
人がいると思ってなかった男性はビックリして女性の手を放す、逃れようともがいていた女性は、勢い余って智美にぶつかり…その勢いのまま二人で船外へ投げ出されてしまったのだった。
そして今に至る。
救助の人の姿は見たから、助けられたと信じて疑わなかったのだが、ただ、言葉の通じない外国船に助けられたのだろうかと、疑問に思う。智美は英語がからきしできないので自信はなかったが、英語ではないようだ…というか、声はきこえるがなんと発音しているのかすら聞き取れない。
入ってきたチェリーブロンドの女性は、言葉がつうじないのが分かっているのか、手振り素振りで服を着替えられるかと、サイドテーブルに置いてある、服を示して訴えているようだ。
「着替えてってこと?」
そう言葉にしながら、ベッドサイドに足を下ろそうとすると、思いのほかベッドの位置が高く、足を下ろすのに、子供のようにつま先立ちになった。立って着替えようと自分の着ている服を見て戸惑った。これは寝間着なのか?ハリウッド女優がレッドカーペットできているようなドレスに見えるんですが…。
(さらさらして絹っぽい?着心地はいいけど、この胸の空きぐあいはいかがなものかと、おまけにお腹がくびれてないんだからやめてーーーー)
智美は胸はあるがクビレはない、ぽっちゃり系の自分の体に嘆きつつ脱ごうと思ったが、どう脱いだらいいのかわからないで戸惑っていたら、そばについていたチェリーブロンドの彼女が胸下にある布地を掴んではずし始めた。どうやら、大きめのロングちゃんちゃんこのような服を、帯を胸下に巻いて止めているようだ。
するすると、帯を解かれて脱がされると、ブラはしてなくショーツも自分のものでは無いようだ、驚いてワタワタしていると迷いのない手で、民族衣装のような、見たこともない服を着せられた。その衣装をしげしげと観察していると、伸ばしっぱなしで長くなった智美の髪をチェリーブロンドの彼女は軽く櫛ですいてくれた。
智美はいつも、まとめて後ろに一つのお団子にしてしまうので、何もせずにただそのまま縛らず流しておくのは、邪魔なのだが、着替えや身づくろいの手伝いをしてもらってるし、言葉は通じないしで、何も言い出せなかった。身なりが整うと、チェリーブロンドの彼女は付いてきてというそぶりを見せドアを開けたので、素直に後についていく間、見たことのない風景に智美は挙動不審にならないように自分を落ち着かせながら進み、案内された部屋に入ると、座るように指示され、案内してきた彼女は部屋を出て行った。
座りながらあたりを見渡す。
(やっぱり、全ての作りが大きい。ドアも椅子も机も、天井もどれもなんだか高さがあるし、ここに来るまでにすれ違った、男性も女性も背が高かった。特に男性は2メートル近くあるんじゃないかな、一人だけじゃないし。髪の色もあまり見たことない色が居たな…染めてるのかな。)
この部屋に案内されるまでに、この建物に勤めている人なのか、男性、女性数名とすれ違ったが皆自分より背が高かった。智美の身長は165センチある。背が高いとよく言われるが、とびぬけてというほどでもなく、本人的には背の小さい女性に憧れていた。骨格がしっかりしていて、ぽっちゃり体系な智美はせめて身長が低ければ、まだ可愛げが出るだろと思っていたからだ。
彼女はだんだん不安になってきた。なぜなら、自分は国内旅行で船に乗っていたはずだ、海に落ちて航路上にいた外国船に助けられたのかと思ったが、なんだか変である。漂流したわけではない、落ちてすぐ溺れたところを助けられたはずだ。ならば、もともとの船か助けてくれた船上か、近隣の国にいるのがあたりまえなはずだ、しかし、どこの国かさっぱり判断できない場所にいる。
──────────
後書き
今頃ですか呑気過ぎですヒロイン。
0
お気に入りに追加
117
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢は王太子の妻~毎日溺愛と狂愛の狭間で~
一ノ瀬 彩音
恋愛
悪役令嬢は王太子の妻になると毎日溺愛と狂愛を捧げられ、
快楽漬けの日々を過ごすことになる!
そしてその快感が忘れられなくなった彼女は自ら夫を求めるようになり……!?
※この物語はフィクションです。
R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。
公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-
猫まんじゅう
恋愛
そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。
無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。
筈だったのです······が?
◆◇◆
「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」
拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」
溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない?
◆◇◆
安心保障のR15設定。
描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。
ゆるゆる設定のコメディ要素あり。
つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。
※妊娠に関する内容を含みます。
【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】
こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。
梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。
あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。
その時までは。
どうか、幸せになってね。
愛しい人。
さようなら。
子どもを授かったので、幼馴染から逃げ出すことにしました
おうぎまちこ(あきたこまち)
恋愛
※ムーンライト様にて、日間総合1位、週間総合1位、月間総合2位をいただいた完結作品になります。
※現在、ムーンライト様では後日談先行投稿、アルファポリス様では各章終了後のsideウィリアム★を先行投稿。
※最終第37話は、ムーンライト版の最終話とウィリアムとイザベラの選んだ将来が異なります。
伯爵家の嫡男ウィリアムに拾われ、屋敷で使用人として働くイザベラ。互いに惹かれ合う二人だが、ウィリアムに侯爵令嬢アイリーンとの縁談話が上がる。
すれ違ったウィリアムとイザベラ。彼は彼女を無理に手籠めにしてしまう。たった一夜の過ちだったが、ウィリアムの子を妊娠してしまったイザベラ。ちょうどその頃、ウィリアムとアイリーン嬢の婚約が成立してしまう。
我が子を産み育てる決意を固めたイザベラは、ウィリアムには妊娠したことを告げずに伯爵家を出ることにして――。
※R18に※
【R18】出来損ないの魔女なので殿下の溺愛はお断りしたいのですが!? 気づいたら女子力高めな俺様王子の寵姫の座に収まっていました
深石千尋
恋愛
バーベナはエアネルス王国の三大公爵グロー家の娘にもかかわらず、生まれながらに魔女としての資質が低く、家族や使用人たちから『出来損ない』と呼ばれ虐げられる毎日を送っていた。
そんな中成人を迎えたある日、王族に匹敵するほどの魔力が覚醒してしまう。
今さらみんなから認められたいと思わないバーベナは、自由な外国暮らしを夢見て能力を隠すことを決意する。
ところが、ひょんなことから立太子を間近に控えたディアルムド王子にその力がバレて――
「手短に言いましょう。俺の妃になってください」
なんと求婚される事態に発展!! 断っても断ってもディアルムドのアタックは止まらない。
おまけに偉そうな王子様の、なぜか女子力高めなアプローチにバーベナのドキドキも止まらない!?
やむにやまれぬ事情から条件つきで求婚を受け入れるバーベナだが、結婚は形だけにとどまらず――!?
ただの契約妃のつもりでいた、自分に自信のないチートな女の子 × ハナから別れるつもりなんてない、女子力高めな俺様王子
────────────────────
○Rシーンには※マークあり
○他サイトでも公開中
────────────────────
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる