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秘宝

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「やあ下僕。突然だけどお前の後輩作ってみたから、面倒を見てやってくれないかい?」




「・・・・・・そんなお菓子作ってみたから味見してみない? みたいな軽いノリで言われても困るんだが」




 速見が最強の騎士の偵察を終え、クレアの家に帰って来たら見知らぬ黒い甲冑を着けた騎士がいた。




 その騎士の前で自分の作品を自慢するように踏ん反り返っているクレアを見て、速見は脱力すると供に大きなため息をついた。




 主人の帰宅に瞳を輝かせた太郎が、トコトコとやってきてその足にスリスリと頭をなすりつける可愛らしい様子を見て、何とか気を取り直した速見。




 太郎の頭を愛情を込めてわしゃわしゃと撫でてから、自分の後輩に当たるのだという騎士の元へと歩み寄った。




「ええと初めましてだな後輩君。俺の名前は速見純一、見ての通りしがない狙撃手をやっている。アンタ、名前は?」




 クレアが言うには後輩であるらしい騎士とコミュニケーションを計るべく、挨拶をする速見。騎士はそんな速見に深く一礼をすると、腹の底に響くような重々しい低音で自己紹介を始めたのだった。




「ハヤミ殿ですな。私の名前は暗黒騎士フェアラート。ご指導のほどよろしくお願い致します」




 騎士・・・フェアラートは非常に律儀な性格らしく、速見に対して丁寧に挨拶をした。正直後輩という情報だけでこの騎士が何者なのか計りかねている速見は、挨拶を交わしたモノのやりずらくてしょうがなく、助けを求めるようにクレアに視線を向ける。




 しかしクレアはこの騎士の仲間になった経緯を速見に話す気など無いらしく、一方的に用件を告げるべくその口を開いた。




「とりあえずだけどフェアラートの性能のチェックもかねて、お前に頼みたいお使いがあるんだけど二人で行ってきてくれないかな?」




 嫌な予感しかしない。




 クレアのお使いという言葉に不吉なモノを感じながら、速見はそのお使いとやらの内容を尋ねた。




「・・・それで? そのお使いとやらは何をすればいいんだ。またどこぞの魔王の死体でも発掘に行くのかい?」




「んーそれもいいんだけどね。今回は死体探しじゃないんだ。今後の計画に必要になるであろうとある秘宝を北の遺跡から取ってきて欲しくてね」




 そしてクレアは速見の反応を見るように一呼吸置くと、その美しい顔に意地の悪い笑いを張り付かせて続きを口にした。




「お前は ”命の宝球” って名前の秘宝を知っているかい?」



























(ショウ・・・聞こえますか?)







 声が聞こえる。




 聞き覚えのある柔らかな女性の声。







(闇がその力を増してきています)







(このままでは世界が闇に浸食されてしまう)







(止めなくてはなりません)







(アナタの力が)







(必要です)







 頭の中にぼんやりとモヤがかかったようで、上手く思考がまとまらない。




 でも、聞こえてくる声が訴えている事は理解できる。しかしどうしたら良いのだろう。ショウは考える。




 世界を救う為に、一体自分に何が出来るのか。




「俺は何をすれば良いの?」




 ショウの問いに、柔らかな声の主が微笑んだように感じた。







(ああ、愛しいショウ)







(強大な闇の力に対抗する為にはとある秘宝を探さねばなりません)







(それは北の遺跡に眠る古代の宝)







(世界の希望)







(名を ”命の宝球”)












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